ガンダムSEED Re:   作:とーふ@毎日なんか書いてる

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第92話『PHASE-35『神のいかずち』』

 地球軌道上。

 数週間前まで酷く静かな場所であったそこは、現在地球連合軍とZAFTの激しい戦場となっていた。

 

 引き金はZAFTの起こした事件『オペレーション・メテオ』である。

 本来の作戦では、『オペレーション・スピットブレイク』で地球連合軍の本部を叩き、宇宙への道であるパナマ基地を『オペレーション・メテオ』で同時に撃破する事により、地上の地球連合軍に大打撃を与え、後は順次地域を制圧してゆく作戦であった。

 しかし、予想に反してアラスカ基地にはそれほどの人員はおらず……逆にZAFTの部隊がアラスカの自爆に巻き込まれ大部隊を失ってしまった。

 

 パナマ基地に連合軍の本隊があれば、また話は違っただろうが……作戦を実行した者たちの観測データでは、パナマ基地は通常通りの部隊しか配置していなかったという。

 

 では、連合軍の大部隊はどこに消えたのか?

 

 答えはシンプルだ。

 既に地球連合軍はその部隊の大半を順次月基地へと移送していたのである。

 

 本来であれば、地球と月基地の部隊移動を監視していたZAFTも、オペレーション・メテオの準備等でそこまで手が回っておらず、地球連合軍の大移動に気づかなかったのである。

 ここにきて、ZAFTの数的不利が浮き彫りになっていた。

 

 結果としてZAFTは地上の戦力が大幅に削られ、パナマ基地をマスドライバーごと消失させた為、逆に追い詰められてしまったのである。

 もし、ビクトリア基地に地球連合軍の部隊が宇宙と地上から集結すれば、ZAFTの全戦力を集めたとしても勝てはしない。

 うまく敗走出来たとしても、宇宙へと帰る手段を失うのだ。

 

 故に、ZAFTは二大作戦が失敗した事を即座に受け入れ、ビクトリア基地から地上戦力の宇宙への離脱を行った。

 もはや地上を戦場にしては勝てない。

 そう判断したのである。

 

 しかし、その行動は地球連合軍に察知され、ZAFTは地球連合軍からの猛攻を受ける事となった。

 

 地球軌道上に集まった帰還部隊に、月の第六艦隊が襲い掛かったのである。

 しかも、その艦隊には実戦配備されたばかりの『地球連合軍のモビルスーツ』が配備されており、ZAFTは苦戦を強いられた。

 

 ジンの装甲を容易く貫くビームライフル、そしてビームサーベル。

 さらにはビーム兵器をも防ぐ事が出来るビームシールド。

 

 それらが、連合軍の物量で一気に襲い掛かってきたのだ。

 もはやZAFTが容易く勝てる戦場は……宇宙からも消えてしまった。

 

 

「艦長! 月方面より地球軍の艦隊多数! これ以上は抑えられません!」

「えぇい! 我らが退けば地球に残された同胞は帰る場所を失う! 何としても持たせるんだ!」

 

 オペレーターの悲鳴の様な声に艦長は応えるが、それでどうにかなるという事もない。

 連合軍の戦力は増え続けており、ZAFTの部隊は減り続けている。

 それが全てなのだ。

 

 今までであれば多少連合軍が多くても問題にはならなかった。

 だが、そんな話は既に遠い過去の話だ。

 

 戦場を埋め尽くす様に現れた連合軍の量産型モビルスーツ『ストライクダガー』はZAFTの量産機であるジンを圧倒しており、既にジンは時代遅れのモビルスーツとなりつつある。

 かつてオーブでキラやギナが想像した様に、戦争は次々と新しいモビルスーツを導入させ、古き機体は何も出来ずに落とされる事しか出来ないのだ。

 

 しかもそれが連合軍の生産力で次から次へと送り込まれるとあれば、ZAFTが追い詰められていくのも当然の話ではあった。

 元より国力が違い過ぎるのだ。

 それをコーディネーターとナチュラルという種族の違いで埋めてきたが……キラとセナの作ったナチュラル用のOS、そして物量。

 それが組み合わさった瞬間、世界は変わってしまった。

 

 このまま戦い続けてもZAFTに勝ち目はない。

 それは揺るぎのない事実であった。

 

 だが、それでも希望が完全に失われたワケではない。

 

 これ以上は駄目かと艦長が退却の指示を出そうとした時……一つの通信が入ったのだ。

 

『まだ生きてるか!?』

「援軍か!?」

『あぁ! とは言ってもそこまで多くは無いがな! ビクトリアから帰ってくる奴らを受け入れるくらいの時間は持たせられる!』

「スマン! 皆! 後少しだ! 何としても持たせるぞ!」

 

 そして、三隻のナスカ級と共に現れた右肩をオレンジ色に染めたゲイツ部隊が連合軍の量産型モビルスーツ『ストライクダガー』を次々と破壊していった。

 その猛攻により何とか戦線を持ち直したZAFTは全ての帰還兵を収容し、最後に地上へ向けて一つの兵器を射出した。

 

 その兵器の名は『グングニール』

 強力なEMP(Electo Magnetic Pulse(電磁衝撃波))を発生させ、電子機器を破壊する戦略兵器である。

 

 これで地上に残されたマスドライバーごと、基地を全て破壊するつもりなのだ。

 

 ビクトリアのマスドライバーが破壊されれば、地球上に残されたマスドライバーはオーブと、どこにあるのか分からない移動式の民間マスドライバーだけだ。

 後者は使う事が難しい為、残るはオーブだが……それは地上に残されたZAFTの残存勢力で防衛する作戦である。

 

 オーブは中立を貫いているが、ビクトリアのマスドライバーが破壊されれば連合軍はオーブを攻めるだろう。

 如何にオーブが強国とはいえ、連合軍に勝てる訳もない。

 そうなればプラントと同盟を結ぶはずであり、プラントはオーブというマスドライバーを手に入れつつ、キラやセナとの繋がりを手に入れる事が出来る。

 

 そういう作戦であった。

 あったのだが……一つ誤算があった。

 

 それはグングニールを射出した地上に一機の白きモビルスーツが飛来していた事だ。

 彼女はこの作戦をZAFTの基地をハッキングする事で知り得ており、グングニールによる破壊を止めに来たのであった。

 

 

「グングニール。……強力な電磁衝撃波でマスドライバーごと施設を破壊する作戦ですか」

「戦場が宇宙に移るだろうと予想して、部隊を宇宙へと逃がしつつ、マスドライバーを潰して宇宙への道を閉ざす作戦」

「隕石よりはマシという考えも出来ますが……オーブが戦場になるのを見過ごす事は出来ません」

 

 ビクトリアの大地に降り立った白亜の機体『ホープ』は宇宙へと逃げず、グングニールを発動させる為に残ったZAFT兵の前で両腕を広げた。

 そして、セナの能力と繋がったホープの力で、この場に居る全てのモビルスーツ……及びグングニールをハッキングにより制圧する。

 

『な、なんだ!?』

『隊長! 機体が動きません!』

 

「ビクトリア基地にいる全てのZAFT兵に告げます。皆さんの機体は全て私の管理下に置かれています。抵抗は無駄です!」

 

『何者だ!?』

 

「その質問にお答えする事は出来ません。そして……グングニールも全て破壊させていただきます」

 

 セナはハッキングして、全ての操作系を奪ったジンを操り、マシンガンをグングニールに向ける。

 そして、マシンガンを全て打ち尽くしグングニールを完全に破壊してしまうのだった。

 

「では機体の操縦はお返しします。私はこれで」

 

『ま、待て!?』

 

 ZAFTの部隊長は高速で飛び去ってゆくホープへと手を伸ばすが、ジンの性能では追いつくことは出来ず、ホープはそのまま何処かへ消えてしまうのだった。

 それからZAFTの部隊はせめて少しくらいは作戦を成功させようとマスドライバーを可能な限り破壊し、地球軍の姿が見える頃にジンをマスドライバーの近くで自爆させてビクトリアから撤退するのだった。

 

 

 それから少しして、周囲を警戒しながらもビクトリア基地に到着した地球連合軍は、ビクトリア基地を制圧し管理下に置いた。

 しかし、マスドライバーは激しく傷ついており、修復には時間が掛かる状態であった。

 

「おのれ……ZAFTめ。マスドライバーを破壊するとは……人類の資産を何だとおもっているのか!」

「自分だけ良ければ良いという考えが、今回の戦争を起こしたというのに!」

 

「パナマを失い、ビクトリアもすぐに動かせぬとあれば、月基地は早々に干上がる! それでは反攻作戦どころではないぞ!」

「しかし、直すしか無いでしょう。そうしなければ宇宙へと上がる術はない」

 

「オーブは……オーブはどうなっておる!」

「再三徴用要請はしておるが、頑固者のウズミ・ナラ・アスハめ! どうあっても首を縦に振らん」

 

 地球連合の高官たちが集まる会議で、様々な意見が飛び交う中、一つの意見を耳にしたアズラエルがチラリと視線をそちらへ向けた。

 穏やかに、冷静に振舞ってはいるが、身の内では確かに怒りと憎しみの炎が燃え上がっている。

 

「おやおや。おかしいですねぇ。オーブが我々に協力していないとは。中立だから? 娘さん達は最期まで必死に戦っていたというのに。困った国だ」

「アズラエル……!」

「ですが、もう中立だなんだという理屈を振り回している状況では無いでしょう。連中は隕石落としなんて始めて、こちらを絶滅させようとしているんだ。のんびり外交。なんてやってる余裕は無いでしょう」

「そうは言うがな。オーブとて、歴とした主権国家の一つなのだ。仕方あるまい」

「地球の一国家であるのなら、オーブだって連合に協力すべきですよ。違いますか? そうやって、世界の全てを一つにして平和を作ろうとしていた少女を、皆さんはもう忘れてしまったのですか?」

 

「それは……!」

「我らとて分かっている。だが、かの国はキラ姫とセナ姫の母国だ。手は出せんよ」

 

 アズラエルは申し訳なさそうな顔をして俯いている高官たちにため息を吐いた。

 そして、椅子から立ち上ると軽やかに宣言する。

 己の行動を。

 

「分かりました。ではオーブとの交渉。僕の方で引き受けましょう」

「なに?」

「皆さんはビクトリア基地のマスドライバーを早急に直して下さい。ノンビリしていると、また宇宙からゴミを落とされてしまいますからね」

「……あぁ。月艦隊を動かして地球軌道上の防衛を行いつつ、マスドライバーの修理に全力を注ぐ」

「よろしくお願いいたします。じゃあ、僕はオーブに向かうんで。後はお願いします」

 

 そして、アズラエルは会議場を出ながら電話を鳴らす。

 

「あぁ。僕だ。次の予定が決まったよ。そう……オーブを地上から消す。あの裏切者の国を焦土に変えるんだ。アレの準備をさせろ。徹底的に叩きにいくよ」

 

 電話を切って、虚空を見やるアズラエルは静かな怒りで全身を包みながら、カツカツと靴を鳴らして廊下を進むのだった。

 次なる戦場を目指して……。

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