ありふれたシカ部のありふれない日常   作:玄武Σ

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久しぶりに投稿した者です、玄武Σと申します。リハビリ兼ねてこれまでの投稿作と全くの別物を書かせてもらいました。
コンセプトはあらすじにもあるように「しかのこのアニメ一周年」と、「アンチなしのありふれ二次」となっております。


第1話「ボーイ&ガールズ・ミーツ・シカ」

とある月曜日、一人の男子高校生が眠そうな顔で登校していた。顔立ちこそ整っているものの、黒髪で華奢な体躯に地味な雰囲気から陰キャという言葉がこれ以上ないくらいに似合っている。

すると、そんな少年の目の前に一人の女子高生が写った。伸ばした金髪にセーラー服が映える、これ以上ないくらいの美少女だ。

 

「虎視先輩、おはようございます」

「ごきげんよう、南雲君」

 

少年のあいさつに対し、振り返ると同時にいい笑顔でお淑やかに返す少女。そして再び向き直して登校する少女を、少年は見つめ続ける。

 

(今日も先輩は綺麗だなぁ……って、見惚れてる場合じゃない! 今日こそ、先輩があの人かどうか、確かめないと)

 

そして我に帰った少年も登校するのだった。

 

 

南雲ハジメ

都立日野南高校に通う高校一年生。彼の座右の銘は"趣味の間に人生"……だった。だった、そう過去形なのだ。今の彼は本来の世界線と違い、授業中の居眠りはしないし、両親の仕事の手伝いも学業に支障が出ない範囲に留めている。オタク趣味こそ隠していないためクラスのワル達に揶揄われこそすれど、クラス全体から反感を買っていないのである。まあ、白崎香織には正史同様に付き纏われているので、天之河光輝に噛みつかれているが。

なぜ彼がこの様に生活態度を改める様になったかと言うと、それは中学の頃に遡る。

 

〜回想〜

「ごめんなさいごめんなさい! どうか二人のことは許してやってください!!」

「は? 急に出てきてなんだ??」

「邪魔なんだよ、陰キャ野郎!」

 

中学時代のハジメは、不良たちの前に出て土下座をしていた。不良達は子供がぶつかって服を汚されたことに難癖をつけ、その子の祖母らしき老婆を恐喝していたのである。ハジメは反射的に助けようと両者の間に立つも、非力なオタク男子の自分では不良の撃退など出来ない。なのでとにかく、二人の分も必死に謝ると言う策しかとれなかったのだ。

そして不良達はハジメを疎ましく思い、彼に暴力を振おうとする。正史ならここで彼らにボコボコにされた挙句、助けた子供と祖母を含む周囲の人間から変人として見られる。そんな報われない結末が待っていたのだが……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここが分岐点となった。

 

「テメェら、私のシマで何ダセェことやってんだ?」

 

聞き覚えのない少女の声がすると、その場にいた全員が声のした方に視線を向ける。

そこにいたのはハジメと同じ中学生ほどの少女だったが、鋭い目つきに金髪ロングと言う見た目。服装は×印の入ったマスクと、足元まで伸ばしたスカート。しかも手には釘バットという物々しい武器をを持っている。まさに前の二人組と同じく、不良と言うべき人間だったのだ。そしてそれを見て真っ先に反応したのは、不良二人組だ。

 

「ま、まさかテメェは"日野の猛獣"か!?」

「何でこんなところに!?」

 

少し怯えの色が見える声音で、少女のことを話す不良達。通り名があることから、彼女が不良の間で恐れられる実力者と思われる。

 

「言っただろ、ここが私のシマだってな。そこで年寄りと子供の恐喝なんて、くだらねぇ事した挙句に止めに入った相手を一方的にボコろうなんて見捨てるわけにいかねぇだろ」

 

それに対しての少女の返答から判ったのは、彼女が昔の不良漫画等に出てくる様な"弱きを助け強きを挫くタイプの不良"の様だ。不良達が子供とその祖母を恐喝した時点から、どうやら助けようとしていた様だ。

 

「なるほど、こいつのお陰で出遅れちまったわけか……癪だが、こいつの言う通り許してやった方が良かったか?」

「相棒、それはちょっとな……それに、さっきはビビったけど俺らに優位性は高いぜ」

 

しかし不良コンビの片割れが恐れ慄く中、もう片方が何故か勝ち誇った様な表情を浮かべる。

 

「相手は武器を使うとはいえ中学生、しかも女で一人しかいない。俺らは数も上背も腕力も上だ、勝ち目は十分にある」

「なるほどな。となりゃ、日野の猛獣をぶちのめして俺らが市内最強の座を手に入れられる!!」

 

相棒からの説明を受けた不良は、そのままコンビで目の前の不良少女に戦いを挑むことを決めた様だ。そして指ポキポキをした後、そのまま拳を構えて臨戦体制に入る。

 

「「というわけでボコさせてもらうぜ、日野の猛獣さんよぉおお!!」」

 

そして不良二人はその少女に戦いを挑むのだが……

 

 

 

〜5分後〜

「これに懲りたら、足を洗うんだな」

「「ずびばぜんでじだぁああああ!」」

 

涙目で顔中を腫らした不良二人が逃げ帰る光景がハジメ達の目に入る。少女の圧勝だった。

 

「お姉ちゃん、ありが…」

「やめなさい、危ないわよ!」

 

そんな中、助けられた子供がお礼を言おうとするのを祖母が止める姿が見える。助けられたにも関わらず、少女も危険だと見なして孫が近づくのを止めてしまったのだ。

するとそれに気づいた少女が二人を見て、祖母の方が萎縮し始める。煙たがったことで報復されると思ったのだろうが、不良少女は思わぬことを口にする。

 

「坊主、礼を言うなら私じゃなくてそっちの兄ちゃんに言いな」

 

少女は煙たがられたことを気にすることもなく、それどころかハジメをフォローする様なことを言うのだ。子供も、意図を察してかハジメの方を見た。

 

「兄ちゃんって、あのどげざしてたかっこわるいお兄ちゃんのこと?」

「そうだ。その兄ちゃんは自分が弱いってわかっててもお前と婆ちゃんを助けようとしてくれたんだ。なかなか出来ることじゃねえぜ」

「ん〜………ぼく、わかんないかな? お姉ちゃんのほうが、つよくてかっこいいと思うけど」

 

小さな子供なら、アニメや特撮に出てくるような強くてカッコいいヒーローに憧れるのは至極当然だ。そのため、出てきていきなり土下座するハジメより目の前の不良少女の方がヒーローに見えるというわけだ。

 

「じゃあ、坊主の友達がさっきの奴らにいじめられてたら、助けに行けるか?」

「! そっか、そうなんだ。ぼくなら、たぶんこわくてできないけど、お兄ちゃんはそれでもやれたってことなんだね!!」

「ああ。それでいて、坊主と初めて会ったばかりなのにそれが出来たんだぞ、あの兄ちゃんは。私なんかより、百倍はかっこいいぞ」

 

自分のことに例えて話すことで、ようやく少年にも理解出来たようだ。加えて不良少女の補足を聞いて、目を輝かせ始める。

 

「あ、あの!」

 

するとそれに割って入るようにまた別の少女が現れた。その少女も中学生ほどのようだが、ハジメとも不良少女とも違う制服を着ているため、別の学校の生徒のようだ。

原作ヒロインの一人、白崎香織である。

 

「私も見てたんですけど、そこの彼がすごいと思います! 私も助けなきゃって思ってたんだけど、結局足がすくんで動けなかったんで…」

「ほら。私だけじゃなかって、そこの姉ちゃんも言ってるんだ。すごいんだぞ、この兄ちゃんは」

 

そして香織からもハジメをフォローする発言が飛び出し、さらに不良少女も畳み掛ける。そしてそれがとどめとなり、少年がハジメの方に駆け寄った。

 

「お兄ちゃん、たすけてくれてありがとう! それと、さっきはかっこわるいとかいってごめんなさい!!」

「あ、いいよ。気にしないで…ぶっちゃけ、いきなり土下座とかして変だったよね? こっちこそ、怖がらせてごめん」

 

少年からのお礼と謝罪の言葉に対し、ハジメも急に取った不可解な行動について謝罪する。すると、それに触発されて祖母や周りで見ていた人たちもハジメや不良女子に近づいていき、次々に謝罪の言葉を投げかけていく」

 

「あなた、助けてくれてありがとうね。それとごめんなさい。あなたの事、実はちょっと怖かったのよ。そこの不良のお姉さんも同じく、怖がってごめんなさい」

「俺もすまなかった。すげぇんだな、お前」

「私もごめんなさい。日野の猛獣さん、だっけ? あなたのことも怖がってごめんね」

「いいってことよ。それじゃあ、私はこの辺で」

「ああ、お礼のためにせめて名前だけでも!」

 

するとそのまま不良少女は去ろうとするので、ハジメは名前を聞こうとする。しかし…

「名乗るほどのもんじゃねぇよ。ああ、それと……」

 

すると振り返って一つだけ忠告していく。

 

「私は不良じゃなくてヤンキーな。そこんところ、間違えんなよ」

 

それだけ告げ、少女は去っていった。今の発言を聞くに、ヤンキーという呼称にこだわりが強いと言うことだけがわかった。

 

(日野の猛獣さん。助けてくれただけじゃなくって、自分も怖がられてる中、僕のフォローまでしてくれて…カッコいい)

(あれ? この人、あのヤンキーのお姉さんの方を見て、顔が赤い?)

 

これがハジメと香織のファーストコンタクト、そしてハジメが生活態度を改めるキッカケとなった事件だ。ハジメはこの"日野の猛獣"と呼ばれたヤンキー女子に憧れの念を抱き、彼女に少しでも相応しくなりたいと生活態度を見直し、同様に少しは逞しくなろうと努力したことで本来の世界線から外れることになったのだ。

ちなみに後日、香織はこのことに気づきつつもハジメに告白し玉砕している。しかし、「だったらあの人を見つけるまでに私が振り向かせる」と諦める気は無いという意志も伝えており、それまでは友人として仲良くしようということで収まった。

 

それから月日が流れ、ハジメと香織が日野南高校に入学して数日後のこと。

 

「あら? あなた達、新入生ね」

「「え!?」」

 

スカーフの色から2年生と思われる女子生徒と遭遇するのだが、その容姿が日野の猛獣と呼ばれた、ハジメの恩人のヤンキー女子と瓜二つだったのだ。

 

「あの、どこかでお会いしたことありませんか?」

「あ、右に同じくです」

「? ごめんなさい、覚えがないわ」

 

しかし当の本人にハジメ達との面識がある様子が見られない。本当に初対面なのか、会ったことあるものの覚えてないのか、それともそれを隠しているのか…するとその先輩が自己紹介をはじめる。

 

「まあそれはそれとして……ごきげんよう。私は2年生の虎視虎子(こしとらこ)といいます。何か困ったことがあれば、遠慮なく言ってくださいね」

「あ、ありがとうございます。僕、南雲ハジメといいます」

「白崎香織です。これからよろしくお願いします、先輩」

 

そして後日、虎子が優等生で来年の生徒会長候補でもあると知ったハジメ達は、この事からヤンキーである事実を隠していると推察。彼女に迷惑をかけない範囲で真偽を確かめようとするのだった。

〜回想了〜

要約すると、ハジメはこの時のヤンキー女子・日野の猛獣に惚れていた。そしてその日野の猛獣が虎視虎子に似ていたため、彼女と同一人物かどうかを見定めていたのである。

 

「ハジメ君、おはよう!」

「あ、香織さんおはよう」

 

すると後ろから香織が掛けてきて挨拶をしてくる。ハジメも挨拶を返して、そのまま二人で談笑しながら登校していると、あるものが視界に入った。

 

「あれ? 虎視先輩、なんで電柱の上に…」

「ハジメ君、あれ見て!!」

 

何故か虎子が電柱に登ってる姿を目の当たりにする。目を凝らして見てみたら、誰かを降ろそうとしているようだ。

 

「電線に誰かが引っかかって……え゛」

 

そこでハジメと香織は目を疑った。電線に引っかかった少女の頭に、シカを彷彿とさせる角が生えており、これが電線に引っかかっているようだ。それでいて同じ日野南高校の制服を着ているため、驚きもひとしおだ。

 

「あ、南雲君に白崎さん! 少し悪いんですけど、手伝ってもらっても…」

「虎視先輩? 手伝うって…」

「この人、見た目と違ってクソ重…ん゛っん゛ん゛っとても重たいんで、全然降ろせないの! 手を貸して欲しくて…」

 

するとこちらに気づいた虎子から手伝いを頼まれたのでとりあえず手伝うと……

 

 

 

「生⭐︎還」

(((メッチャクチャ重い!!!)))

 

なんとか3人がかりでシカ娘を地上に降ろすことに成功。想像以上に消耗し、地にふせる虎子。そんな彼女に代わり、香織がシカ娘に事情を聞く。

 

「えっと…あなたうちの生徒、しかもスカーフの色的に2年生ですよね? なんであんな所に??」

「それが、朝起きたら既にあそこにいたんだよね。何故か」

「「「マジでなんだよ!?」」」

 

思わず、声を揃えてツッコミを入れてしまう3人。するとシカ娘の口からお礼の言葉が出るのだが……

 

「とにもかくにも、助けてくれてありがとう! ヤンキーのお姉さん(・・・・・・・・・)!」

「別にこれくらいどうってことないか…ら…」

 

自身の呼び方に対し、虎子は返事を返す途中でフリーズしてしまう。

 

「そっちの2人もありがとうね!!」

「ちょ、それいいから! 今、虎視先輩がヤンキーって…」

「ハァアーーーーーーーー!?」

 

そして今のシカ娘の発言についてハジメが問い正そうとした時、虎子が驚愕のあまり絶叫した。

 

「ヤンキーって誰が!?」

「お姉さんが」ヌン

「ハァアーーーーーーーー!?」

 

そしてもう一度でも聞いてみると、虎子はやはり自分がヤンキーと呼ばれたと認識、もう一度絶叫する。

 

「違うの?」

「ちっちちっちちちちちちち違うわよ! 何言ってんの、どこ見て言っちゃってんの!?」

 

あまりにも動揺して、虎子は口調が早口になってしまう。そしてそのまま弁明に入る。

 

「立てば芍薬(しゃくやく)、座れば牡丹(ぼたん)と言われるこの私が!? ヤンキー!?

あああああああああああああありえないでしょう!? 南雲君達なら、ご存知でしょう!?」

「ま、まあそうですね…(僕としては虎視先輩がヤンキー、というか日野の猛獣なら嬉しいんだけど)」

「そ、そうですよ(今の様子、やっぱり先輩はヤンキーなのを隠してるのかな?)」

「そっか~。ヌ~ン……」

 

ハジメと香織からの言質を得て、虎子のヤンキー疑惑が否定されようとする。だが、シカ娘から予想外の言葉が飛び出す。

 

「でも匂うんだけどなぁ……」

「「「何が!?」」」

「ツノも反応してるし」

「「「それ、光るの!?」」」

 

更にツノが赤く点滅し始めたため、もはや訳がわからなくなる3人。

 

「き、気のせいじゃないかしら!? 人違いとか……私、急ぐからもう行くわね! 南雲くん達も遅刻しないように!!」

 

すると虎子は自分のヤンキー疑惑を否定しながら、無理やり話を切り上げて走り去ってしまう。

 

「あ、そうそう! もうあんなところに引っかからないようにね!!」

 

最後にシカ娘に注意喚起だけはしておく虎子。ヤンキーか否かは抜きにして、根は普通に善人なのは間違いなさそうである。

 

「…そうだ、学校! 香織さん、今時間って…」

「大変! ハジメ君、走らないと予鈴鳴っちゃうよ!!」

「シカ……の先輩も、急いでくださいね! それじゃあ!!」

「のつ! わかったよ!!」

 

虎子のさっきの指摘を思い出したハジメは、香織と二人で時間を確認。急いで学校に向かうのだった。そしてそれを手を振りながら見送るシカ娘。

 

 

 

この出会いがきっかけで彼らのありふれた日常が終わり、ありふれない日常が始まるのであった。

 

異世界トータス? 行きませんよ。これは「ありふれた職業で世界最強」のキャラクターが「しかのこのこのここしたんたん」の世界で暮らす話なので。




とりあえずストックが無くなるまでは定期投稿します。後、しかのこはコミック寄りの時系列になってるので、餡子やばしゃめの出番はしばらく先になります。
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