ありふれたシカ部のありふれない日常   作:玄武Σ

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今回、一話でまとめるつもりでしたが、長かったので二回に分けました。
ハジメの片思いに、今回と次回で変化が起こります。


第3話「こしたんへの手紙」

謎の鹿娘、のこたんこと鹿乃子のこが転校してきた翌日。ハジメと香織は、行事関連の用事からいつもより早い時間に登校するも、朝から疲れた顔をしていた。

 

「ハジメ君、大丈夫? なんだか、疲れた顔してるけど…」

「香織さんこそ。まあ、原因は昨日転校してきた先輩だろうけど…」

「だよね。あの人、なんだったんだろう…」

 

案の定、のこたんの不条理な行動の数々で精神的に疲弊してたからであった。謎の存在について考えてながら校門をくぐると、二人はこしたんを見つける。

 

「あ、虎視先輩。おはようございます」

「…あ、ごきげんよう。南雲君に白崎さん」

「先輩、おはようございます。その、昨日は大丈夫でしたか?」

 

ハジメ達に声をかけられて、優等生スタイルで挨拶を返すこしたん。そんな彼女に、香織は昨日のことについて尋ねてみる。

 

「昨日…まさか、あの転校生の?」

「はい。鹿乃子先輩、でしたっけ? 教室でとんでもない呼ばれ方をしたと聞いたんですが…」

「あ、はい。でも、お二人のクラスの天之河君がデマだと学校中に触れ回ってくれたおかげで、どうにか終息しまして…」

「光輝君がですか…幼馴染だからわかるんですけど、彼ってカリスマ性凄いですからね。なら納得です」

 

まさかの形で光輝が活躍。正史ならこのカリスマ性と過去の経験からくる"自分が正しいと思うことが世界にとっても正しい"と思い込んでるご都合主義思考から大きな問題を起こしてしまうも、今回はそれが良い方向で動いたようである。

するとそれを聞いて、ハジメはこしたんに一言物申す。

 

「でも、僕は先輩が本当に元ヤンでも、なんなら極道や犯罪者の娘だろうと、味方でいます。過去がどうあれ、今の先輩が優等生で良い人なのは僕がよく知ってますから!」

「南雲君……ありがとう。そう言ってくれて、心強いわ」

 

そしてこしたんはハジメにお礼を言うと、自分の下駄箱から上履きを取り出そうとする。すると中に何かが…

 

「ん?」

「先輩、どうし…」

 

気になってハジメ達もこしたんの下駄箱を除く。すると、その中にある何かに目が入った。

 

「「「「手紙?」」」」

 

入っていたのは、ハート型のシールで封をした便箋だったのだ。しかしリアクションする声が一人分多く聞こえたため後ろを見ると…

 

「「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」」」

「のつ!」

 

人影あったために3人揃って絶叫する。しかし、その正体はのこたんだった。

 

「のつ、じゃないわよ! なんっっっでいるのよ、こんな朝っぱらから!?」

「鹿乃子先輩も、僕たちみたいに早朝から用事がある……とかですか?」

 

声を荒げて問い尋ねるこしたんと、一応丁寧に尋ねるハジメ。しかし、のこたんの口から、予想外な理由が語られた。

 

「寝返り打ってたらここまで来た」

「「「どんな寝相!?」」」

 

まさかの理由に思わずツッコむ3人。これが本当なら、家から学校まで寝返りし続けたことになる。

 

「ていうか、私の背後を取るなんてあなた本当に何者?(こちとら、命の取り合いしてきてるのよ)」

「あの、先輩…背後取るとか、自分から肯定しちゃってないですか?」

「!? ん゛、ん゛ん゛ん゛ん゛ん゛…気にしないで、南雲君。それより、気配感じなかったのはどうして?」

 

ヤンキー疑惑を肯定しかねない発言をハジメにツッコまれ、誤魔化しつつのこたんに問尋ねるこしたん。

 

「何者って、そりゃシカだし…野生の力的な?」

「先輩、なんでもシカで片付けていいと思ってません?」

「まあそんなことは置いといて…」

「「「いや置いといてじゃ…というか投げてる!!」」」

 

対するのこたんの返答も、相変わらずメチャクチャだ。香織のツッコミも無視して話をすり替えようとするが、置くではなく投げるジェスチャーをしていたため、声を揃えてツッコむ3人であった。

しかし、直後にのこたんの発言で全てを持って行かれてしまう。

 

「下駄箱に手紙ってこれ…

 

 

 

 

 

 

こしたんへのラブレターなのでは?」

「…!?」ボッ

「ファッ!?」

(ハジメ君の口から聞いたことない声が!?)

 

その指摘にこしたんは顔が真っ赤になり、ハジメは変な声で反応してしまう。そのハジメの声を聞いた香織もつい驚いてしまう。

 

「その反応……もしかして、こしたん貰うの初めて? そしてなぐもんも、こしたんが好きなの?」

「そっそんなわけ…なくもないっ…」

「ぼっ僕、も…虎視先輩を好きなんておこがましいっていうか…」

 

反応からのこたんに内心を悟られたこしたんとハジメは、そのまましどろもどろになってしまう。そして言い訳に入るのだが……

 

「恋愛対象っていうより手の届かない存在っていうか…"みんなの虎視さん"ですし、学園のアイドルですし、抜けがけ禁止的な? でもそろそろ来てもおかしくない頃合いかなぁとは思ってたけど」

「僕、昔に一目ぼれした人が実はいるんですけど、その人に先輩が似ていてですね、それが確証できてるわけじゃないし、その確証が持てないまま付き合って人違いだったら先輩にもその人にも失礼じゃないですか?」

(ハジメ君、日野の猛獣さんが好きなのは知ってたけど、そこまで本気だったんだ…で、鹿乃子先輩がまた変なあだ名で呼んでるし、もしかして私もそのうち?)

 

こしたんもハジメも、超早口で言い訳してくる。するとこしたんが話題をそらすのも兼ねて、のこたんに向けてある疑問を投げる。

 

「そういうあなたは、ラブレター貰ったことあるのかしら!?」

「ない!!!」

「「「ないんかい! しかも即答!?」」」

 

あまりにも力強く、しかも即答してきたのでまた三人そろってツッコミを入れてしまう。しかし、直後にのこたんは自分の下駄箱を指さしながら言い出した。

 

「貰ったことはないけど…私の下駄箱からラブレターの気配を感じている」

「なっ…!?」

「私のツノがそう告げているんや」

(にわかに信じがたいが…私の正体を見破ったツノだしな)

(野生の勘なんて物も持ってるらしいし、ありえなくも…)

 

ツノを点滅させるのこたんの自信満々な言動から、こしたんもハジメも説得力を持たされている。そしてのこたんが下駄箱を開けるのを固唾を飲んで見守るが…

 

 

 

 

 

 

空っぽだった。

 

「!?」

「あの…先輩、そんな落ち込まなくても」

「そうですよ。こういうのは縁とかもありますし…」

 

ショックを受けて項垂れるのこたんを、なんとかフォローしようとするハジメと香織。しかしのこたんがまた口を開き、こんなことを言い出す。

 

「いいもん! きっと今頃、原作編集部やアニメ制作会社に山ほど私宛のファンレターが届いているはずだし!!」

(((な、なんかメタいこと言ってる…)))

 

良ければ送ってあげてください。

 

「で、こしたんはどうするの? 付き合う?」

「つっつつつつつ付き合う!?」

(あ、そうだ! 先輩のラブレター?のこと忘れてた!!)

 

かと思ったらのこたんが話を本題に戻してきたので、またこしたんとハジメに動揺が走る。

 

「いや、まだラブレターだって決まったわけじゃ…そ、それに急につつつ付き合うとか言われても…

(先輩の反応、めっちゃ初心だし…何ならまんざらでもなさそうな?)

 

こしたんの反応を見て、ハジメの中で不安が大きくなる…

 

何あまっちょろいこと言ってんだよ!!

「「「え!?」」」

 

のこたんの覇気のこもった声と表情に、黙って見守っていた香織も含めて動揺する。

 

「こしたんはそう言って逃げればいいけど、ラブレターを書いた人の気持ちはどうなるのさ!! ちゃんと考えてから答えを出すべきなんじゃないのか!?」

(せ、正論…!!)

 

こしたんに物申した直後、今度はハジメにも向き合ってまた物申す。

 

「なぐもんも、仮にこしたんのことが本当に好きだとしてもこしたんの側にも選ぶ権利がある…だから、なぐもんがこしたんに恋愛して欲しくなくても咎めちゃダメなんだよ!!」

(そ、そうだ。自分の気持ちにばっかり気が行って、先輩の気持ちを全然考えてなかった!!)

(私もそうだ…「虎視先輩がラブレターにOKしたら、ハジメ君が振り向いてくれるチャンスかも?」なんて考えて、ハジメ君の気持ちを全然考えてない!?)

 

ハジメへ向けた言葉だったが、香織にも正論が飛び火することとなる。そのままハッとした三人だが、のこたんはこしたんに向き合い、彼女の肩に手を置いて涙目で告げた。

 

「時間をかけて、真剣に向き合って…もしこしたんも彼に惹かれたらさ。その時は……私の分も、恋愛してよね…

鹿乃子さん…!

 

直後、今度はハジメとも向き合って同様に告げる。

 

「なぐもんもこしたんが彼と上手くいきそうだったら祝福してあげてよ。でも、もしこしたんが彼と合わないと思って告白を断ったら……私もなぐもんを応援してあげるから…

先輩…!

 

 

そしてこしたんが封を開け、手紙の中身を確認する。ハジメ達も、自分勝手なことを反省しながらその様子を見守った。そして手紙の見出しに書いてあった内容は……

 

 

 

 

 

 

 

 

果たし状

「紛らわしいんだよクソが!!!」

(ラブレターじゃなかったんだ……じゃない、果たし状!?)

 

まさかの内容に、こしたんぶち切れ。ハジメものこたんの話を理解しつつも安心した直後に、驚愕。香織まで、口をあんぐりと開けて驚いていた。

 

「………」

「なんか言えよ!!」

 

無言で見つめてくるのこたんにキレ気味でツッコむこしたん。そして、その怒りのまま早口でまくし立てる。

 

「喧嘩くれぇメンチ切って売りやがれクソが! 人の心もてあそびやがってクソが!! いや別に本気でラブレターとか思ってなかったけど、マジで!!!」

「本当、僕だって不安だったけどさ! それにしても紛らわしいよ!! というか、あの便箋で嫌がらせに使うとしたら、嘘告白とかじゃないの!!! 何、果たし状って!? いや、自分で言っておいて嘘告白だったらぶち切れる自身あるけど!!!!」

(先輩、素が出てるな…でもハジメ君も気づいてないし、私も気づいてない振りしておこう)

 

香織が一人冷静だったので、こしたんの元ヤン疑惑が強まる言動を見なかったことにしてあげた。

 

「……」

「「なんか言えよ(言ってよ)!!」

 

またのこたんが無言だったので、今度はハジメも交えてブチギレた。しかし現実問題、果し状が今の優先問題なので内容を確認する。

 

「体育館裏で待つ…先輩の例の噂を信じているか、確信を持った人がいるってことですよね」

「先輩、どうします?」

「どちらにしても、私をご指名なので行きますけど……いいこと? 鹿乃子さんに南雲君達、絶っっっっっっっっっっっっ対についてきちゃだめよ? 絶っっっっっっっっっっっっ対にね?」

 

メチャクチャ念押ししてくるこしたんに対して、ハジメと香織は無言で何度も頷く。対してのこたんはというと…

 

「わかった!!!」

「ピノ〇オなの?」

 

笑顔で返事するのこたんのツノが伸びたため、こしたんからそんな返しが来てしまう。

果たして、この果たし状を出したのは何者なのか? そして、出した相手に対してこしたんはどうするのか? ハジメの片思いは果たしてどうなるか?

後半へ続く。

 

 




次回でこしたんの決闘やらなんやらに突入します。
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