ありふれたシカ部のありふれない日常   作:玄武Σ

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ついにシカ部結成。それとハジメとこしたんの関係が若干進展します。この回と餡子初登場である程度恋愛面について触れた後、終盤までは恋愛要素が一気に薄まる予定です。


第6話「結成、シカ部」

(委員会の会議、ようやっと終わった~。帰って明日の予習しねぇと…)

 

ある日の下校時間、こしたんは次の予定を心の中で整理していた。そんな中、ある人物と遭遇する。

 

「あ、先輩」

「な、南雲君!?」

 

ハジメと遭遇したのだ。果たし状の騒動でハジメは一週間の入院を余儀なくされていたが、退院した後も互いに顔を合わせてなかった。というのも…

 

「「……///」」

 

前回、入院前に起こった体育館爆破騒動の際、檜山が察する形でハジメがこしたんを好きだと知ってしまったからだ。そのため、二人揃って顔を真っ赤にしている。

こしたん自身、騒動の発端となった果たし状がラブレターを思わせる便箋だったことから、その際の反応で初心であることもバレている。ハジメも自分が告白する心の準備を整えてないまま檜山経由で気持ちを知られてしまい、気まずさを感じている。

 

「あ、ハジメ君いた……先輩もいる」

「あ、白崎さん…」

 

そこに香織がハジメに声をかけようとするも、こしたんに気づいてしまう。彼女もハジメが好きだが、こしたんが気持ちに応えたら素直に諦めるとハジメ本人にも宣言している。とはいえ、それでも複雑な心境であった。こしたんも、いつもハジメと一緒にいる彼女の様子から気持ちを察していたのでどう話せばいいかわからなかったのだ。

しかしそんな中、違異変は起こった。

 

ゴンッ

「!?」

「物音…何処から?」

 

謎の物音に気を取られ、そのまま音の出所を探す。しかし、ある理由ですぐに気づくこととなった。

 

「ぎゃああああああああああああ!!?」

「今度は悲鳴!?」

「しかもこの声…まさか檜山君?」

「物音と関係あるのかな?」

 

檜山の悲鳴が聞こえたため、例の物音と関係あると思いそこに駆け付けることが出来た。そこは使われてない部室と思しき建物で、入り口で檜山が腰を抜かしているのが見える。駆け付けた一同が中で見たものは…

 

「檜山、どうし…って、ぎゃああああああああああああああ!?」

 

脳天に折れたツノが刺さって、流血しながら倒れるのこたんの姿であった。流石にこしたんも悲鳴を上げることとなる。

 

「ひ、檜山君! まさか、これ君が!?」

「違う、俺じゃねぇ! 俺はこいつの弱みを握ろうと後をつけただけで、来た時にはもうこうなってたんだ!?」

「う、嘘は良くないよ! 自首した方が罪も軽くなるって!?」

 

ハジメと香織は、すでに檜山を犯人だと決めつけている。日頃の行いの所為だろう。しかしその直後、その疑いもすぐ晴れることとなった。

 

「あ、みんな!」

「わぁあああああああああああ! 先輩生きてたぁあーーー!?」

 

元気そうに起き上がるのこたんに、ハジメが思わず絶叫する。そして怯えながらも、香織の方からのこたんに事情を聞いてみる。

 

「あ、あの先輩…何があったんですか? その怪我、檜山君が?」

「ううん、脚立から落ちちゃって…」

「ほれ見ろ、俺なんもやってねぇだろ!!」

「み、みたいだね…ごめん」

 

流石に第一印象だけで疑ってしまったのもあり、ハジメ達は檜山に謝罪する。

 

「それで膝擦りむいちゃった」

「「「「いや、頭頭~!!」」」」

 

ただし、のこたんは頭の傷に気づいてないようだった。

 

~数分後~

「で、こんなところで何してたんだよ?」

「ん-? 掃除してた! で、手当ありがとー」

「へぇ。先輩、一人でですか?」

「うん」

 

傷の手当てをしながらのこたんから事情を聞いてみるこしたんとハジメ達。事情は不明だが、この空き部屋の掃除を頼まれてたようだ。そしてそれを聞いたこしたんは、少しの沈黙の後…

 

「よかったら、手伝おうか?」

「えー、いいの!?」

「ですね、先輩。鹿乃子先輩一人じゃ何しでかすかわかんないし」

「えっと…ハジメ君がやるなら私も!」

 

そのままこしたん、ハジメ、香織はのこたんの掃除を手伝うことを宣言するのだった。するとこしたんは檜山の方を向き…

 

「おし、檜山も手伝え」

「はぁ!? なんで俺まで…」

「いいのか? 悪意を持って他の生徒を尾行してた、なんて知られたらまた停学になるぞ。優等生の私と問題児のお前で、先生達はどっちの言い分を信じるだろうな?」

 

元ヤンの血が騒いだのか、悪そうな顔で檜山に脅しをかけるこしたん。どっちが悪役かわからない光景だが、実際に檜山が前回同様にのこたんを尾行してたのだから仕方なかった。

 

「クソ…わかったよ、掃除すりゃ良いんだろうが」

「まあまあ。こうやって良い事をしたら、先生からの評価も上がって後々便利になるからさ」

 

結果、悪態を吐きつつも掃除を手伝う事になった檜山であった。ハジメが一応フォローしておくが、ちゃんと聞いているだろうか?

 

(虎視もシカ女を尾行してたこと南雲に打ち明けたら、幻滅して…イヤ。白崎に振り向く可能性あるしやめとくか)

 

あまり真面目に聞いてなかった。

 

〜掃除を始めて30分程が経過〜.

「にしてもテメェ、掃除なんて雑用を楽しそうにしやがるな」

「檜山君、口悪いってば」

 

ある程度片付いてきた所で、檜山からのこたんに対しての悪態が飛び出す。それをハジメが諌めようとした直後、のこたんがこんなことを言います。

 

「えー? みんなと一緒だし、楽しいよ」

「なっ!?」

「お、大げさだな。たかが掃除に///」

 

屈託のない笑みで臆面なく言うのこたんに、思わず檜山も驚く。こしたんもつい顔を赤らめるのだった。

 

「掃除も誰かとやると、こんなに楽しいんだね」

「え?」

「先輩、まさか転校前って…」

 

のこたんがそんな意味深なことを言い出したため、こしたんとハジメは思わずそれについて聞こうとしてしまう。しかし直後に誰かが入ってきたため、それは中断となった。

 

「あら。ずいぶん綺麗になったわね」

 

部室に一人の女性が入ってきたのだ。この日野南高校に勤める、英語教師の鵜飼(うかい)先生である。

 

「あ、先生」

「せんせー、のつ!」

「はいはい、のつ」

 

こしたんとのこたんが反応し、鵜飼先生ものこたんの挨拶を返した。このノリの良さもあって、人気は高いらしい。

 

「虎視さんに、一年生のみんなも掃除を手伝ってくれたのね。特に檜山君、一学期の問題行動もあったから関心したわ」

「いえ。これくらい、何ともないですよ~」

「お、俺は成り行きで仕方なく…でも、あざっす」

 

鵜飼先生の反応に対して、こしたんは優等生スマイルで返す。そして意外にも、檜山が若干照れてる様子が見えた。流石の彼も、教師からの素直な誉め言葉には照れるのが見て取れた。

 

「鹿乃子さん一人じゃ心配だったけど…虎視さん達がシカ部に入部してくれるなら安心だわ」

「そうで……?」

 

しかし鵜飼先生から奇妙な言葉、具体的にはシカ部なる部活動らしき謎の単語が飛び出したのだ。これに当然、こしたんは疑問を浮かべる。ハジメ達も当然困惑したのだった。

 

((((シカ部?))))

「それじゃあ、約束通りここは自由に使っていいわよ」

「やったー!」

 

しかしこしたんやハジメ達一年生組の困惑に気づかず、鵜飼先生とのこたんは話を続けてしまう。

 

「ちょ、ちょっと待ってください。シカ部?って、いったい何のことです!?」

「そ、そうですよ。僕達は鹿乃子先輩が一人で掃除してるのが大変そうだから手伝っただけで、事情も知らないですし…」

 

なので当然、こしたんとハジメが代表してその詳細を問い尋ねると、のこたんの口から衝撃の事実が明かされた。

 

「私がシカ部を立ち上げたんだ~」

「「「何その未だかつて類を見ない部活!?」」」

「おい、ちょっと待て! それが何でここの掃除につながるってんだ!?」

 

こしたん、ハジメ、香織の三人が思わず声を揃えてツッコミを入れる。一方で、檜山は突然の部活発足と自分の入部が不服だったので、それと今の掃除が繋がった理由を問い尋ねる。

 

「私も鹿乃子さんの要望を聞いてあげたかったんだけど、部室も部員も足りなくてね。だから、ここの掃除をしてくれたらそのまま部室として使っていい。そう約束したの」

「「ねーっ!」」

((ねーっ! じゃねぇんだよ、ねーっ! じゃ))

 

鵜飼先生が理由を説明した後、のこたんと仲良さげに伝えたので、心の中でツッコむこしたんと檜山。前回の動物園尾行騒動と同じ現象がまた起こっていた。

 

「で、部員をどうしようと思ったんだけど…虎視さんや南雲君達一年生が入ってくれるなら安心だわ」

「え゛っ」

「いや、それはえっと…」

 

このままでは、流れで入部してしまいそうだ。こしたんはどうにか断ろうとするも…

 

「虎視さん、しっかりしていて面倒見もいいし」

「頼れるアネゴ!」

「う゛…」

「明るくて優しいから、楽しい部活になりそうだし」

「アットホームな部活!」

「ふ~ん…」

「頭もいいから、何か賞とかも取れそう!」

「インターハイ! 全国大会!!」

「ぐぬぬぬぬぬぬ///」

(あ。先輩、満更でもなさそうだけど…まさか)

 

鵜飼先生とのこたんからおだてられ、徐々に顔を赤らめていくこしたん。その様子にハジメが気づき…

 

「こしさんが入部してくれるなら、シカ部の大活躍は間違いなしね!」

「任せてください!」

 

こしたんがキラキラした目で入部を宣言する。意外にチョロかった。

 

(やっぱり、入部を決めちゃったか…なら、僕も)

(たぶん、ハジメ君の答えは…なら私も!)

「「先生、僕(私)も入部します!」」

「南雲君と白崎さんも入部してくれるのね。ありがとう!」

「やったー、なぐもん達もいっしょだー!!」

 

そしてこしたんが好きなハジメと、ハジメが好きな香織も、そのままシカ部の入部を決めるのだった。鵜飼先生とのこたんもうれしそうだ。

 

「ケッ、馬鹿馬鹿しい。センサー、俺そんなわけわかんない部活は入部しないんで、帰らせてもらいますぜ」

 

そんな中、一人だけやる気ないと言わんばかりでそそくさと帰ろうとする檜山。しかし、何故か鵜飼先生はそんな檜山の肩を掴んできて、その状態で話しかけてきた。

 

「檜山君。さっき指摘したように、あなたは一学期に同級生を恐喝して停学させられてたわよね? 他にも問題行動も多いし、成績も特別いいわけじゃない…」

「セ、センセー? 何が言いてぇんですか?」

 

檜山が視線を向けた先には、変わらず笑顔の鵜飼先生がいた。しかし、目が笑っておらず、そのまま話を続ける。

 

「このままじゃ退学させられちゃうから、部活に入るなりの実績を付けることをお勧めするって、先生からの親切よ。さっき掃除の手伝いしただけじゃ足りないと思ったから檜山君にも入部してもらおうと思ったけど…まさか、無碍にするんじゃないでしょうね?」

 

そのまま凄まじい圧を放つ鵜飼先生に、檜山は冷や汗を流し…

 

「はい! 檜山大介、喜んでシカ部に入らせていただきます!!」

「わかりました。じゃあ、明日からよろしく」

 

見事なまでの敬礼で、そのままシカ部に属することを宣言するのだった。そんな二人のやり取りを見ていたこしたん達は、コソコソと話をしていた。

 

「檜山と同じ部活…嬉しくねぇ」

「でも先輩、鵜飼先生のあの様子じゃあ私達が拒否しても聞いてくれなさそうですよ」

「だよなぁ。南雲君は、これについてどう思う?」

 

不服そうなこしたんと香織が、ハジメに話題を振る。しかし、ハジメから予想外の返答が来て、しかもこれがすごい納得のいく内容だった。

 

「香織さんに先輩、逆に考えれば檜山君が悪さできないよう手綱を握れるわけでもあるから、これはこれでよくないですか?」

「「あ、なるほど」」

「わーい! 一気に部員が増えたぞー!」

 

一方で、のこたんは純粋にうれしそうだ。そしてそのまま、のこたんが鵜飼先生から貰った部活届を書き始めるのだが…

 

「部活名:シカ部…

部長:虎視虎子…」

「…は?」

 

何故か部長の欄にこしたんの名前を記入したのだ。

 

「いやいや、ちょっと待て!」

「部活内容:シカのお世話…」

「聞きなさいよ!」

「どうしたの、こしたん。トイレ?」

「んなわけないでしょう! どうしたも何も、なんで私が部長なのかしら?」

 

当然、不服に感じてのこたんに問い尋ねる。しかしそれに対して、のこたんだけでなく鵜飼先生までが意外な反応をしたのだ。

 

「部長はこしたんだよ?」

「そうよね?」

「えっなんで私がおかしいみたいになってるの?」

 

さも当たり前のようにこしたんが部長をやる流れのため、ハジメがフォローに入る。

 

「えっと、立ち上げた本人…じゃなくて本シカの鹿乃子先輩が部長をやらないのは何故ってことじゃないですか? 僕もシカに関係する部活なら鹿乃子先輩が部長をやるべきだと思うんですけど…」

(南雲君、ナイス!)

「ああ、そういうことか」

 

のこたんもようやく、こしたんの言い分を理解できた。それに対して、こしたんを部長にした理由を説明し始めたのだが…

 

「シカ部の活動内容に、シカのお世話って書いたでしょ?」

「あ、はい。それがどうしたんですか……?」

「私はシカ部所有のシカになるから…」

「「「シカ部所有のシカ!?」」」

「部員ですらねぇのかよ!?」

「そのお世話係が部長、つまりこしたん!」

(な、納得できねぇ…)

 

のこたんの言い分に、どう反応したらいいかわからないこしたんだった。

 

「先輩、シカのお世話ってどういう活動内容なんですか?」

「さ、さあ? 農業高校の真似とか…」

 

そして香織とこしたんで部活の内容について考察(という名の現実逃避)が行われている横で、のこたんが部活届を提出しようとする。

 

「はい、先生。提しゅ…」

「鹿乃子先輩、待ってください」

「ヌン?」

 

突然、ハジメがのこたんに対して待ったをかけたのだ。

 

「な、南雲君…私が部長になるのを止めてくれるの?」

「残念ですけど、それはノリ的に難しいと思います」

 

こしたんが期待の眼差しでハジメに問いかけるが、問答無用で回答を否定する。しかし、ここからが本題だった。

 

「だから、妥協案として僕に考えが」

 

そしてハジメは、鵜飼先生と向き合って一つの提案をしたのだ。

 

「鵜飼先生。虎視先輩が部長をやるんだったら、僕が副部長に立候補していいですか?」

「あら?」

「え、南雲君?」

 

ハジメの突然の発言に、こしたんも鵜飼先生も思わず反応する。そしてそれに対し、ハジメから説明が入る。

 

「その、鹿乃子先輩が部所有のシカってことは、二年生は部長をやる虎視先輩しかいないんですよね? だったら三年生がいない以上、他に副部長やれる部員は一年生しかいないから、僕でも立候補出来そうかと…」

「なるほどなるほど…」

 

すると鵜飼先生は納得した様子で、のこたんの方を見る。そしてそれを察して、のこたんも記入欄にペンを入れた。

 

「それじゃあ、副部長:南雲ハジメ…と。先生、提出!」

「はい、受理しました〜。南雲君がこれで副部長よ」

「先生に先輩、ありがとうございます!」

 

そしてのこたんと鵜飼先生にお礼を言うハジメ。

 

「それじゃあ虎視さんに南雲君、鹿乃子さんのお世話をよろしくね」

「よろしくぬん!」

「え、えーっと…」

 

突然のハジメの提案もあり、再度困惑するこしたん。我に返った後も、いい笑顔で「任せてください」と言った手前、断れないのだった。

 

その後、部室の入り口に看板をつけてようやく部室は完成したのだった。

 

「ついに念願のシカ部…結成! やったー!!」

「シカ部部長…シカのお世話係…」

「な、なんか予想外の展開になりましたね。虎視先輩…」

「え、ええ。白崎さん…」

 

嬉しそうにするのこたんの横で、いろいろと予想外の事態が続いて頭痛を訴えだすこしたんと香織であった。そんな中、ハジメがこしたんに向き合う。

 

「先輩。僕が副部長になったからには、先輩にばかり負担はかけません。僕も鹿乃子先輩のお世話を手伝うから、いくらでも頼ってください!!」

「な、南雲君///」

 

そしてハジメからこしたんに向けて、力強く宣言されたことで当のこしたん本人も顔を赤らめる。

 

「明日、シカせんべい持って来ようっと」

「…楽しそうだし、まあいっか」

「ですね、先輩」

 

しかし直後、のこたんの無邪気な笑顔を見て満更でもなさそうにするハジメとこしたんであった。

一方、同様に頭痛を訴えて一足先に下校した檜山派というと…

 

「クソがぁ。なんで俺が、こんな意味不明な部活動に……いや、待てよ」

 

悪態をついていると、とある閃きがあった。内容は、まさに小悪党な彼らしいものだったが。

 

(俺の宿敵、虎視と鹿乃子と南雲が一堂に介している…ってことは、まとめて弱みを見つけ出すことも出来るってことでもある。ヒヒッ、ツキが俺にも巡ってきたわけか!)

 

それぞれの思惑?もある中、結成されたシカ部。しかし、これが彼らのありふれない日常を加速させることになろうとは誰が思っただろうか?

いや、みんな思いますね。

そして次回、早速シカ部に危機が迫る。




鵜飼先生が檜山を脅すシーンですが、アニメ最終回でのこたんがシカの穴に行ったらシカ部が廃部になることを楯に、こしたんにも対決に参加する様に告げたシーンを参考にしました。
全員、こしたんと同じくツッコミ担当です。あと一人、ありふれ側からシカ部に入る予定なのでお楽しみに。ちなみにその人は、ボケ担当です。
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