そして今話を書くに当たり、光輝が当初想定していたキャラと異なる方向になってしまった…ただ、しかのこでの元のエピソード的に、光輝はこれをツッコミつつ非難しない筈がないので、ご了承ください。
前回のあらすじ
こしたんに付きまとう害獣と称してのこたんとハジメを駆除しに来た、こしたんの実妹"虎視餡子"。そんな餡子にこしたんとの仲を認めてもらうべく、彼女に直接対決を挑むこととなった"南雲ハジメ"。そして同様に対決に名乗り出て、ついでに大量のシカせんべいを手に入れようとする"鹿乃子のこ"
一触即発の中、シカ部の命運とハジメの恋(とシカせんべい)を賭けて、今…
第1回チキチキ虎視虎子王決定戦が始まろうとしていた。
((なんで?))
こしたんだけでなく、参加者のはずのハジメすらこの対決内容に疑問を抱くこととなる。
しかも観客として学校中から生徒、教師、用務員にいたる大勢の人間が集まっていたのだ。こしたんやハジメのクラスメイト達も見える。
「それでは、選手3名の紹介から入ります!」
「何? この状況!?」
「あの、先生…僕も事情の説明をお願いできますか?」
何故か鵜飼先生が司会を務めており、こしたんとハジメは事情を聞こうとするも…
「虎視虎子の妹にして大のシスコン、虎視餡子!!」
「この世界、お姉ちゃんと私以外いる意味あります?」
「ねぇ何これ?」
「シカ部所属のシカ、鹿乃子のこ!」
「シカせんべいのために頑張ります!!」
「え、聞こえてない!?」
こしたんの質問も無視して選手紹介を決行したのだ。そしてハジメの番が来て…
「シカ部副部長にして虎視さんに片思い中の、南雲ハジメ!!」
「先生、僕達が対決する場を設けてくれるとは聞きましたけど…なんでこんな大っぴらなクイズ大会になったんですか?」
「そんな3人に迫られる虎視さん、今のお気持ちは?」
「え? 僕の質問は無視ですか??」
自己紹介に便乗する形で状況に対する質問をするも、ガン無視されてしまう。そしてその質問を無視して鵜飼先生が話しかけたこしたんの方も当然…
「い、意味が分かりません…」
「非常に楽しみ、ということですね!」
「私の声は届いてますか……?」
この有様だった。
「気になる勝者への商品ですが、それぞれに希望するものを送る形となっております!」
そして各人への商品紹介がなされた。
・餡子:のこたんを奈良公園へ、ハジメを他校へ強制送還する権利
・のこたん:シカせんべい100年分
・ハジメ:こしたんへの告白の権利
「それでは張り切ってまいりましょう!」
「何、このセット? 本格的すぎません!?」
商品の紹介後、クイズ番組を思わせる回答席に座る3人。その様子に、こしたんもまた驚愕した。
「香織、どうやら南雲は虎視先輩が好きらしい。あいつの邪魔をするわけにいかないから、構うのをやめてやったらどうだ?」
「大丈夫。私、それを知ったうえでハジメ君に構ってるから」
その一方で、光輝がこの件を出しにして香織をハジメから引き離そうとするも、当の香織からは軽くあしらわれている。ちなみに、光輝はこしたんを人として尊敬するも異性としては意識していない。あくまで、香織と雫が好きらしい。
そしてクイズが開始されようとした。
(虎視先輩に関するクイズ…得意教科や、過去の実績かな? 一応、1年時のミスコンとか、僕の入学前の実績はリサーチ済みだし、腕っ節勝負じゃないならワンチャンいけるか!?)
「では第1問」
ハジメが思案する横で、鵜飼先生が問題を出題しようとした。しかし…
「虎視さんが毎晩…」
ピンポーン
「おっと餡子選手、早い!」
「え、毎晩?」
餡子が問題を読み終える前に回答ボタンを押したのだ。ハジメが問題の出だしに困惑するのも気に留めず、餡子が回答してしまう。
「『虎視さんが毎晩、寝る前にしていることは何?』答えは『部屋にいるぬいぐるみ達とお話ししてからお休みのキスをする』」
「正解!」
「やめてえええええええええええ!?」
「ナイトルーティーンってこと!? プライベートまで把握してないよ!!」
想像だにしない問題と解答にこしたん絶叫、ハジメも驚愕する。
「何この問題? メチャクチャ恥ずかしいんだけど!?」
「「ダメなの?」」
「ダメに決まってるでしょ!?」
「これに関しては僕も同意だよ!?」
「癪だけど、南雲に同意だ! 虎視先輩を辱めてるだけですよ!!」
想定外の問題内容にこしたんだけでなく、ハジメと光輝も批判の声が飛び出した。特にハジメと光輝の意見が合うのは、非常に珍しい。
「でもこしたんの好感度上がってるし、よくない?」
「「「そういう問題じゃない!?」」」
それに対するのこたんの意見に対し、3人も意見がシンクロした。しかしふと視線を観客の方に向けると…
「虎視先輩、ぬいぐるみが好きなんだ…♡」
「し、雫ちゃん?」
「可愛い…」
「推せる!」
こしたんのクラスメイト達だけでなく、雫をはじめとしたハジメ達のクラスメイトもメロメロになっていたのだ。雫の反応に関しては、香織が横で見て困惑してしまう程だった。
「正解の証拠映像はこちらです」
「ぎゃああああああああ!? プライバシーーーーーーーーーーーーー!!」
(見たいけど、見ちゃだめだ! 先輩がかわいそうだ!!)
直後、舞台セットのスクリーンに映像が映る。そこには、黒猫のぬいぐるみにキスをするパジャマ姿のこしたんの姿があった。こしたんは当然ながら絶叫し、ハジメはこしたんに気を使ってスクリーンを見ないようにする。ちなみに、光輝もだ。
「続いて第2問」
「鵜飼先生、スルーしないでください!!」
そのまま次の問題に進もうとする鵜飼先生に光輝が怒鳴るも、無視してそのまま進めてしまう。
「虎視さんは今…」
ピンポーン
「今度はのこたん選手が早い! 答えをどうぞ!!」
そしてそのまま、のこたんが問題の読み上げから始めるのだが…
「こしたんは今、ノーブラか?」
「何その問題!?」
「「いいっ!?」」
まさかの問題内容にこしたんが驚愕するが、それに対してハジメと光輝は咄嗟に耳を塞ぐ。流石に、これを聞くわけにいかなかった。ちなみに正解は…
「正解は『ブラトップなので実質ノーブラと言える』」
「正解!」
この回答に、観客達が一斉にこしたんへ視線を向ける。その顔は当然、赤らんでいて…
「そ、そんなの見てみないとわからないじゃない!」
こしたんが恥ずかしそうに叫んだ。これぞ、シュレディンガーのブラジャーである。
「第3問」
「もう帰っていいですか?」
「「あの先生、虎視先輩はせめて帰らせてあげてください…」」
クイズを止められないと悟ったこしたんは、せめてこの場から離れられないか交渉しようとする。ハジメと光輝も、ここまで来たらもうこしたんのメンタルくらいは守ろうと無意識に協力している。呉越同舟というやつだ。
まあ、聞き入れてもらえるわけなかったが。
「虎視さんがこれまで…」
ピンポーン「『これまで付き合ってきた異性は何人?』正解は0」
「いや、いるかもしれないじゃない!?」
(あの反応、いなさそうだなぁ…でも、ヤンキー卒業直後なら1人くらいいそうだけど…)
ブブー「ヌッ!?」
「え、付き合ったことあるんですか!?」
しかし、何故か不正解だった。ハジメが思わず声に出るほど驚くも、なんと問題に続きがあったのだ。
「虎視さんがこれまで付き合ってきた異性は0人ですが、なぜ0人なのでしょう? 60文字以内で理由を述べよ」
「そこ深堀りする必要あります!?」
「そんな具体的に指摘しなくても…」
「いや、普通に考えて先輩が高根の花過ぎて誰も告白しなかったんじゃ…」
とんでもない問題内容にハジメはついに呆れてしまい、光輝は至極全うそうな理由を予想。しかし、次に餡子が回答した内容が、これまたぶっ飛んでいた。
「周囲の男女が身近な人間と交際を始める中で高校生になっても初恋が訪れずいつか運命の人が現れると思っている少女マンガ脳だから」※「」を除けばジャスト60字
「ガチ考察やめて!?」
「先輩、少女漫画好きなんですね…」
こしたんの反応に、思わず食いついたハジメであった。ちなみにこしたんの愛読書は別冊〇レンド、加えて本世界線では南雲菫(ハジメの母で少女漫画家)のファンです。
そしてその後もこんな感じの問題が続き…
「虎視さんが秘密にしている小さい頃のエピソードは?」
「10歳までおねしょしていたこと」
「正解!」
「言わないで!?」
「虎視さんが実は好きなものが?」
「子供向けアニメ」
「正解!」
「実はって何よ、別にいいでしょ!?」
(あ、ダメだ。全然答えられない…僕の転校が確定になりそう)
(少女漫画に子供向けアニメが好き…虎視先輩がオタクだったなんて……いや、先輩が優等生であることに変わりは!)
ハジメは全く回答できず、敗北する未来しか見えなくなっていた。一方で光輝もこしたんの趣味嗜好に軽くショックを受けており、今までの彼女の実績と合わせて勝手に葛藤していた。
そしてクイズ勝負は続き、ついに日が沈み始めてカラスが鳴き出す時間となった頃…
「なんということでしょう…のこたん選手に餡子選手、ともに一歩引かず同点! 対して、ハジメ選手は一問も正解出来ていません!!」
「あ、当たり前ですよ…先輩のプライベートまで、把握してないってば……」
結局ハジメは一問も正解出来ず、事実上のこたんと餡子の一騎打ちとなっていた。ハジメの予想していた、学校内でのこしたんの実績や得意科目といったことに関する問題は全く出てこなかったのである。
「っていうか、どんだけ私のプライベート問題を用意してるのよ…」
「俺、入る高校を間違えたかもしれない…」
うつ伏せに倒れながら現状にうんざりするこしたんと、この空気に耐えられずに項垂れる光輝。
「こんなの絶対おかしいわ!! なんでシカ如きがお姉ちゃんの情報をそんなに…何か裏があるに違いないわ!!」
しかしその一方で、餡子はのこたんの方に視線を向け、激昂し始める。
「そうだ。きっと奴のツノが日本中のシカによる情報ネットワークを受信、それでお姉ちゃんの情報を得たんだわ!」
「「「いや、そんなわけが…」」」
挙句、餡子の口から飛んでも理論が飛び出したため、こしたん達もツッコまざるを得なかった。
「よってこの勝負は無効。実力行使で行かせてもらうわ!」
しかし餡子はそれを聞かず、何かのスイッチを取り出してそれを押す。直後、なんとのこたんを目掛けて苦無が四方八方から飛んできたのである。
「きゃあああっ!?」
「な、なんだ!?」
「え、ええ!?」
その光景を目の当たりにした観客達は阿鼻叫喚し、光輝も思わず面食らってしまう。対して、狙われてる筈ののこたんは冷静そうにしていた。避けるつもりのようだ……
「何!?」
「ぬっ!?」
直後、餡子の放った苦無が真横から飛んできた手裏剣によって弾かれる。のこたんも驚いていた様子から、どうやら本人も予想外だったようだ。
「餡子ちゃん。あなた、対決の内容がクイズになった時に直接手はあげないって約束したよね。なのにこれはどういうことかな? かな?」
「香織、君は何を……ヒィッ!?」
直後、香織が壇上に上がりながら餡子に問い訪ねる。どうやら香織が苦無を全て撃ち落としたようだが、その眼には餡子と同様にハイライトが消えて気味が悪い。加えて、般若の姿をした背後霊らしきものが幻視されたのだ。光輝が情けない悲鳴を上げながら腰を抜かし、他の観客までがその光景に恐れ慄く。
のこたんやこしたんまで圧倒される中で二人だけ、例外の反応を示す者がいた。一人はいまだ燃え尽きているハジメ、もう一人は強い敵意を発し始めた餡子だ。
「別にいいでしょ。アナタがご執心の南雲ハジメはクイズに負けたも同然で、手を出すつもりは無いわ」
「今、こうしてクイズ対決の結果を受け入れられずに鹿乃子先輩を攻撃した…そんな人の言い分を信用できると思う?」
餡子からハジメに手を出す気はない旨の発言を聞くも、香織は信用していない。そして香織が手裏剣を取り出すのを見ると同時に、餡子も苦無を取り出し、彼女の背後からも怨霊のような存在が幻視されて周囲が恐れ戦く。
「…どの道、私達は相入れないようね。なら、アナタを先に始末するわ!」
「言うね。でも、私も負けられないから!」
そしてそこから、対決が始まった。香織と餡子がそれぞれ、懐から取り出した無数の手裏剣と苦無を投擲し、それが互いに命中して地面に落ちる。
するとすかさず、餡子は苦無を右手に持ったまま香織に急接近し、切り掛かる。しかし香織は容易く回避し、無力化しようと延髄に手刀を叩きこもうとする。
「そう来ると思った」
しかし餡子は勢いよく上半身を前に倒し、その勢いのままその場で一回転。その勢いに乗せて踵を香織に叩きつけようとする。だが、香織は飛びのいて軽々と回避し…
「油断大敵だよ」
そして距離を取って手裏剣をまたも投擲。しかし餡子は苦無を投擲してこれを撃ち落とし、また香織に斬りかかってきた。だが、香織はこれも回避して餡子との近接戦へと突入していった。
(白崎香織は八重樫流剣道道場の裏部門で忍術を会得している…前情報で知ってはいたけど、訓練されただけに戦闘力はけた違いね)
(餡子ちゃんの苦無の扱い、八重樫流の門下生にも匹敵しうる…我流でこのレベルは恐れ入るね)
互いに戦闘を続けながら、互いの実力を分析する二人。その力は拮抗しており、そのまま激戦を繰り広げていく。
(ひえぇ…これは、触らぬ神に祟りなしってところか? それに後々めんどくさくなりそうだし、今のうちに帰るか)
そんな中、勝手に騒ぎの中心にされたこしたんは、この隙にさっさと帰宅しようとする。
しかし、ハジメがそんなこしたんの遥か後方から何がが近づいてくるのに気づく。
「!? 先輩、危ない!!」
「? うわっ!?」
「南雲!? お前、先輩に何を…え!?」
ハジメがこしたんを突き飛ばして距離を離し、その飛んで来るものに視線を向けると、なんと苦無が飛んできたのだ。突き飛ばしたことを光輝が咎めようとするも、すぐに苦無の存在に気づいて口を止めてしまう。
「まさか、罠が暴発!?」
「ハジメ君!」
どうやら餡子の仕掛けた罠が誤作動し、こしたんの居た方に向けて起動してしまったらしい。香織は餡子との戦闘を取りやめ、手裏剣を投げてその苦無を撃ち落とそうとする。
「(間に合わない!)ハジメ君、避けて!」
「ウソ、南雲君……」
しかし苦無のスピードが速く、手裏剣は空振ることとなってしまう。そして身動きの取れないハジメも含め、その場にいた全員が恐怖に包まれる。
ただ一人を除いて。
「し、鹿乃子……先輩?」
のこたんが咄嗟にハジメの前に躍り出て、胸に苦無を受けてしまったのだ。そして、そのまま倒れ伏した。
「なぐもん、怪我無い?」
「は、はい…先輩のおかげで」
そして倒れるのこたんは、ハジメの安否を確認する。そして答えを聞いた直後、今度は餡子に向き合った。
「ねえ…私はもうここまでだから、せめてこれだけ聞いてくれる?」
「な、何?」
餡子がその頼みについて尋ねると、のこたんから意外な言葉が出てきた。
「私のポイントを…全部なぐもんにあげて欲しいな…」
「「え?」」
「なぐもん、取り敢えず引き分け…までは持ち込めたよ。だから…これを基に…あの子と、こしたんの妹と和解、してね……」
「え…先輩?」
「おい、鹿乃子?」
「ちょ、鹿乃子先輩!?」
そしてそれを伝え終えたところで、のこたんは意識を失う。ハジメとこしたん、そして檀上に上がってきた光輝はのこたんに声をかけるが反応がない。
(もしもに備えて、シカと南雲ハジメにだけ当てるつもりで用意した罠が暴発した…これがもし、お姉ちゃんに当たってたら!?)
(私も失敗した! 餡子ちゃんとの戦闘に気を取られて、罠への対処を怠ってしまった所為だ…私の所為で、先輩が…)
一方、餡子はのこたんが食らった苦無がこしたんに命中した可能性を思案して青ざめる。香織も自分が力不足だった所為でこの事態に陥ってしまったと思い、同様に青ざめた。そしてその横でのこたんに未だ声をかけ続けるハジメ達だったが、未だ反応がない。
のこたんは、死んでしまった……
「「「なんでだよ(ですか)」」」
余りにも無情な結末に、三人は涙を流すこととなる。そして、それぞれがのこたんに聞かせるように呟くのだった。
「いつも勝手に私に付きまとって、勝手に部活作って…勝手に人のこと巻き込んだくせに、それなのに勝手に私の前からいなくなるなよ…!」
「そうですよ。クイズの結果を僕に譲るって…これで虎視先輩と付き合えたとしても、鹿乃子先輩をそのために犠牲にした見たいですよ。そんなんじゃ、胸を張って先輩と付き合えませんよ…!」
「俺は虎視先輩をヤンキー呼ばわりした件を謝ってほしいだけで、別に先輩を恨んでいるわけじゃないんです…ただ、先輩が優等生だって知ってほしかっただけなんです! だから、こんなところでいなくなられたら…」
3人の独白は観客達にも聞こえ、皆が涙を流すこととなった。そんな中、一人の女子生徒が何かに気づいた。
(ん? あれって…)
その少女は黒髪を腰辺りまで伸ばした、眼鏡の1年生だった。彼女にだけ見えたのか、周りは未だにこしたん達の方に向いている。
のこたんの体から魂が抜けていく様子が見えたのだ。そして、天使の輪と翼を持つシカ二頭に連れて行かれ、天に昇っていく様子が見えたのだ。
「あ、あれはシカの神様…?」
そして少女の目には、西洋の神様っぽい装束を纏った二足歩行のシカの前にのこたんの魂が連れて行かれる様子が見えていた。このまま、のこたんがシカの天国に招かれるのを見守ろうとした矢先…
「ぬん!?」
(あ、あれ?)
シカの神様がのこたんの魂を後ろ脚で蹴り飛ばし、そのまま魂は元の体に吸い込まれていった。そしてその直後、のこたんの体に反応が現れた。
「…先輩!?」
「……ん。なぐもん?」
そしてそれに気づいたハジメが呼びかけると、のこたんが目を開けたのだ。
「鹿乃子!?」
「先輩、無事だったんですか?」
「こしたん達も…何があったの?」
こしたんや光輝ものこたんの無事を確認しようとすると、のこたんは直前の出来事を覚えていない様子で尋ねてきた。取り合えず、さっきのことを簡単に説明した。
「いや、さっき南雲君が私を庇って食らおうとしていた苦無から、更に庇う形で…」
「で、今も胸に刺さってるけど痛くないんですか?」
「胸…?」
「鹿乃子先輩、無事だったんですか!?」
こしたんと光輝に指摘され、制服の内側を漁る。香織ものこたんが起き上がった姿を見て駆け付け、その様子を確認に向かった。
そしてのこたんが懐から取り出したのは、真っ二つに割れたシカせんべいだった。
「さっき拾った、罠のシカせんべいが守ってくれたいみたい」
「昔の映画かよ!? ていうか、シカせんべいってサックサクだから守れなくない!?」
取り出したシカせんべいを齧りながら語るのこたん。それに対するこしたんのツッコミに、無言で頷き同意するハジメと香織、そして光輝であった。
「南雲ハジメ、お姉ちゃんを助けてくれてありがとう。私の完敗よ」
かと思っていたら、餡子がハジメに話しかけてきた。そしていきなり、敗北宣言をしてきたのである。
「私は怒りや憎しみに囚われすぎて、お姉ちゃんを巻き込んでしまう可能性を考えられなかった。これじゃお姉ちゃんの妹、失格だわ」
「餡子ちゃん…」
そして今回の苦無罠の暴発を反省する旨をハジメに伝える。そして、ハジメが意識していたあることも指摘し始めたのだ。
「それに、あなたは私たちの回答をいくつか、聞かないようにしてたでしょ? お姉ちゃんのプライバシーに触れないよう、気を使ってくれたんじゃない?」
「あ、バレてたか…」
「仮にも駆除しようとしてた相手なんだから、観察くらいしてるわ」
理由はともかく、ハジメのことをじっくりと見て評価するくらいには冷静になれたようだ。そしてのこたんとハジメの二人に視線を向けると、諦めるような表情で言葉を紡ぐ。
「あなたも、そんなあなたを身を挺して守った鹿乃子のこも、私よりお姉ちゃんに相応しい…」
「「そんなことない!!」」
しかしそれに対し、ハジメが否定の言葉を叫んだ。何故かのこたんも一緒に。
「君が…ううん、こしあんがくれたシカせんべいのおかげでなぐもんを守れた。こしあんは命の恩人だよ」
「?」
例のシカせんべいが助かった原因であることを理由に、餡子を擁護する発言をしたのだ。しかし、ここでこしたんの表情に困惑の色が見える。ちなみに、餡子も仇名呼びになっていた。
「(そのシカせんべい、鹿乃子先輩を始末するために用意したはずじゃ…)えっと…僕も対決前に言ったけど、虎視先輩と仲良くするなら親族とも仲良くしたいとは思ってるからさ。だから相応しいかどうか関係なく、餡子ちゃんも先輩の隣にいていいと思うよ」
ハジメも困惑しつつも、それを抑え込んで餡子をフォローする発言をしたのだ。
「なぐもんもこう言ってるしさ。私たち、いい友達になれない?」
そしてのこたんが締めると同時に、握手を求めようと右手を差し出す。そしてそれを見て、ハジメも習って握手を求めた。それに一瞬だけ呆気に取られた餡子だったが、すぐに観念したと言わんばかりに表情を崩し、その握手に応える。
「南雲先輩と、のこたん……そう呼ばせていただいても?」
「「もちろん!」」
そして、三人は結果として和解に成功したのだ!
「素敵よ、あなた達!!」
そんなシカ部一同に、感動の涙を流しながら称賛する鵜飼先生。観客も一斉に拍手をあげる。まさに大団円だ…
「えっと、これなんだったの白崎さん?」
「さ、さあ? あと、先輩のプライバシーってどうなるんでしょうね?」
「あ、その問題があったわ」
「虎視先輩。俺もヤンキー疑惑の時同様、出来る限りフォローしますから…あと、南雲と上手くいくといいですね」
「あ、ありがとう天之河君…(まだ付き合ってすらないんだけど)」
置いてけぼりになってたこしたん、香織、光輝を残して。
その一方で…
「あ、ちなみにだけど……南雲先輩をお姉ちゃんの友人とは認めるけど、クイズ対決は先輩の負け。のこたんの提案を入れても引き分けだから恋人云々はまだ認めないわ。あしからず」
「あ、ですよねー…」
ハジメの恋は、前途多難だった。
そして先ほど、のこたんの昇天を見ていた少女は…
「シカ部…私の夢のためにも調べてみようかな? そして、内容によっては入部も…」
シカ部に興味津々だったようだ。
終盤で出た黒髪ロングの眼鏡女子ですが、実はありふれ本編のキャラで、ありふれサイドの最後のシカ部入部者となっています。次回は彼女の入部回になるので、完全オリジナルエピソードです。
ちなみに、原作から一番改変がされたキャラです。