1人の男がパーティーを抜けて旅をするだけのそんなお話 作:SGMY
夜のうちに街を出て師匠と住んでいた家へと向かう。その近くの川でボクが拾われたからその川を辿ればボクが住んでいた場所などがわかるのではないだろうか。
そう考えたボクは旅は長くなるだろうと何度か街に寄って食料などをいくつか買った。馬車を使えば早く帰れるが夜道は賊やモンスターが馬車を狙って襲ってくる可能性があり、野営をする時は必ず冒険者などが見張りをしないといけない。無料で乗せる代わりに夜は守ってくれってことだろう。
「普通に歩いたほうが早いし馬車はなしかなぁ…」
それにボクはまだ寝れていない。あの宿を出てから一睡も出来ていない。正直キツい。今までは簡単に街の宿で泊まれたが今はお金が貴重なためそう簡単に泊まれない。と言うか宿代が最近高い。理由は最近モンスターの出現が減り、賊も減少して外でも夜を越せるほどに安全になったため、金払うぐらいなら外で野宿のほうが安いらしい。
「ん?」
次の街に行こうと街の門近くに向かうと野営セットというものが売られていた。中身は本と布団になる布。これは罠だ。というのもまず野営するのに雨風凌げるテントのようなものが必要だ。布一枚で防げるものじゃない。せめて地図や焚き火の枝を集めるためにナイフのようなものも入れて欲しいところだ。
その野営セットを無視して門をくぐり街の外に出る。門番に止められると思っていたがあっさりと通された。一応有名人だからだろうか。
月明かりに照らされた外は消して明るくない。しかし綺麗な星々が輝いていた。
何がいけなかったんだろうか、何故パーティーを外されて何故破門にされたのか、ボクは何かをしてしまったのだろうか。
これでも頑張ったつもりだった。お師匠様には劣るけど他の魔法使いよりも高い魔力を持ち、いくつもの魔法を一度に発動できる。
「アレがマズかったのかなぁ…」
夜道を歩き隣町まで向かいながら何故こんな事が起きたのか考えて1つ思い当たることがあった。
それはパーティーに加わってすぐの時の話だ。異世界より召喚された勇者ユウキさんしかいなかったところに王様の命令でボク達が加わり、旅が始まった日のことだ。
戦い方を全く知らないユウキさんにボク達は魔法をいくつか教えて少しでも手札を増やそうとしたんだ。
「う〜ん、ここを…こう!」
でもいくら試してもユウキさんは上位の魔法は使えなかった。使えても初級の簡単なものだけだった。これにはいくつか理由があり、1つはユウキさんの体質が問題だった。
「故郷じゃ魔法なんてなかったからね〜」
魔法どころか魔力すらないらしい。そんな世界があることに師弟揃ってびっくりしたのを覚えてる。でも剣の使い方はある程度知っているらしく魔法よりも何倍も早く使いこなしていた。
ユウキさんと最初に戦ったのはフォレストオーガだった。武器は実践して慣れていくタイプとのことで王都から遠く離れた村でフォレストオーガの出現情報が出た。
「初クエ…じゃなかった、初バトル!これは気合い入れないとね!」
ユウキさんはすぐに村へと向かいボク達もその後を追いかけた。
フォレストオーガは人よりも何倍もの巨体で家々を踏み潰していた。フォレストオーガは本来複数パーティーが束になって戦うような相手でユウキさんだけじゃ危険だとボクとお師匠様は走り出したユウキさんの援護をしようと魔法を発動させようとした。でもそんな考えはすぐに打ち砕かれた。
「やぁー!」
一番最初に王様から支給された大剣をフォレストオーガへと投げ付ける。そのうちに誰かが戦闘してたのだろか、フォレストオーガに武器が刺さっていた。軽い身のこなしで素早くフォレストオーガの背後に着き、刺さっている武器を掴み引き抜くように振り上げる。引き抜かれたことで傷が広がりフォレストオーガの傷から魔力が漏れ始めていた。
「っと!」
引き抜いてすぐにフォレストオーガから距離を取るユウキさん。フォレストオーガはすぐにユウキさんのほうを向きその巨腕で叩き潰そうとした。
フォレストオーガの巨腕が振り下ろされると先ほど引き抜いた剣を巨腕へと投げ付けて今度は最初に投げた大剣へと走る。
剣は巨腕に刺さりフォレストオーガはその痛みに耐えれず後退る。その足元に大剣が刺さっていることに気付いた時には遅かった。ユウキさんがその大剣を振るいフォレストオーガの足を切り裂いた。片足を失ったフォレストオーガは倒れる。体を起こして最後の抵抗と言わんばかりに両腕を振るい暴れだす。誰も近づけないようにと腕を振るうが背後に立っていたユウキさんに首を切り飛ばされてフォレストオーガは魔力となってこの世に消えた。
ボク達の勇者は多彩な戦い方をする人だった。その後、単独でフォレストオーガの討伐に成功したユウキさんは王様の命令で世界を平和にする旅に出てそれにボク達もついていくことになったんだ。
「お、隣街だ!」
過去のことを思い出しているともう隣街についた。門番は優しく受け入れてくれてすぐに宿を取って寝ることにした。
「あ、そうだ」
あの後、初めての宿にテンション上げていたユウキさんはすぐに部屋へと向かった。ボク達も続くように部屋へと向かう。部屋に入ってすぐにお師匠様にいくつかお使いを頼まれたため買い物へと向かったんだ。近くのお店ですぐに買えたため早々と宿に戻りお師匠様に渡そうと部屋に入ったんだ。そしたらお師匠様は着替え中で頬を引っ叩かれたんだ。
「あれがダメだったのかなぁ…」
そう思いながらボクは眠った。明日起きたら寄り道せずにすぐにあの家へと帰ろう。そうした方が良い。