紅機のトアン   作:yumui

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学園祭

人工太陽の光がいつもより暖かく感じる午後。

 〈オービタル・アカデミア〉では年に一度の学園祭、〈星誓祭(セイセイさい)〉が開催されていた。

 

 

 

 「よしっ、こっちは射的コーナーの設営完了っと!」

 

 「フレームの整備よりずっと大変なんだけど……」

 

 軽口を叩くモカと、疲れた表情のユリウスが、賑やかな通りの端で飾り付けを整える。

 

 普段は戦闘訓練や企業経営の勉強で張り詰めた日々を過ごしている学生たちも、この日ばかりは思い思いの服を着て、笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 「トアン、見て! わたし浴衣着たの。似合う?」

 

 「うん。とっても……可愛いよ、リリア」

 

内気な少女が勇気を出して選んだ青い浴衣に、トアンは自然と笑顔をこぼした。

 

 

 

 一方で、シエルは浴衣ではなく、白いシンプルなドレスを選んでいた。

 

 「私は伝統より機能性派だから。露出は少なめ、でも可愛さも忘れない。……ね、どうかしら?」

 

 「完璧すぎて目立つって意味では“問題あり”かも」

 

 「褒め言葉として受け取るわ」

 

 

 

 人混みの中で、リュシオンとカイルが模擬バトルの出場受付に列を成していた。

 

 「勝者には“フレーム型チョコレート”一年分って、熱いな」

 

 「いやそれ、重量に換算して“7kg”って書いてあるんだけど……」

 

「食べきれるわけねーだろ!」

 

 

 

 「……それにしても、賑やかだな」

 

 ふと、トアンは空を見上げた。

 彩り豊かな横断幕と、風に揺れる星形の装飾。そのどれもが、誰かの手で作られた小さな希望だった。

 

午後には、模擬店巡りが本格化していた。

 

 「お好み焼き3枚、焼きそば2つ、あとイチゴ飴もお願い!」

 

 「モカ、頼みすぎ!」

 

 

 

 「……でも、全部少しずつ分け合って食べるのって、楽しいね」

 

 リリアの言葉に、皆がうなずいた。

 

 「今だけは、敵も戦いも忘れてさ」

 

 「そうね……でも、もしまた何かあっても、私たちなら」

 

 「勝てるさ」

 

 リュシオンとシエルが言い切る。

 それが“信頼”という絆で繋がった仲間たちの証だった。

 

 夜。祭の最後を飾るのは、打ち上げ花火だった。

 

 コロニーのドーム天井に設置された特殊投影装置が、空一面に大輪の光を咲かせていく。

 

 赤、青、銀、金――星のようにきらめく光たち。

 

 

 

 「……こんな時間が、ずっと続けばいいのにね」

 

 トアンが呟くと、隣にいたユリウスが静かに言った。

 

 「永遠なんてない。だが、記録に残すことはできる」

 

 「写真?」

 

 「記憶。データより正確ではないが、温かみがある」

 

「ふふ、それって……あなただけにしては詩的ね」

 

 

 

 トアンたちは花火を見上げながら、肩を寄せ合い笑っていた。

 

 

 

 誰かの手を握り返すこと。

 誰かの隣で、静かに笑いあえること。

 

 それはフレームの力よりも、強い勇気をくれる

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