「ルカ、気持ちはわかるけどアタシらはまだ現実を受け入れられてないんだ。ワガママ言わずにさっさと帰るよ!」
「やだ! 俺もみんなにかっこいい所見せたいんだもん!」
「『だもん!』じゃないよまったく……ああ、なんでマーリンに似て欲しくない所ばっかり似てるんだい……」
「それは酷くないかのう?」
ばあちゃんは頭を抱えているけどこの状況は仕方ないと思う。
だってシンばっかりズルいもん。俺だってみんなを驚かせたい。
「はぁ……わかったよ。でもシンの攻撃魔法を剣で受けるなんて危険なことはさせられないからシンの防御魔法に剣で攻撃する形でも構わないかい?」
「それでいいよ」
つまり俺の防御力より攻撃力が見たいと言うことだろう。
とっておきの技を見せてやんよ!
「じゃあシン、頼んだよ」
「わかったよばあちゃん。ルカ、どんなのがいい?」
「ならデカくてとにかく硬い壁をよろしく」
「りょーかい!」
そう返事をしてからシンは俺たちから少し離れて魔法を行使。俺の要望通りめちゃくちゃ硬そうな壁を作ってくれた。
「じゃあ早速……」
「ちょいとお待ち! ミッシェル、先に攻撃してあの壁の硬さを確認してもらえるかい?」
「わかりました」
ミッシェルさんはばあちゃんの要請を快諾して壁の前まで進み出る。
「はぁ!!」
腰から剣を抜き、全力で目の前の壁へと斬り付ける。
しかし壁は斬り裂けず、逆にミッシェルさんの剣が折れるという結果となってしまった。
「ふむ……これは相当に硬い壁ですな」
「ミッシェル様の剣が折れるだなんて……」
「一体どうやったらあんな硬い壁が作れるんだよ……」
ミッシェルさんは感心した様に壁に手を触れているが、クリス姉ちゃんは大きく目を見開いて驚いており、ジークはどうやったらあんな壁が作れるのか考え込んでいる。
「これは凄まじいね……ルカ、あんたこれ斬れるのかい?」
「余裕」
俺はミッシェルさんと入れ替わり壁の前に立つ。
刀を抜き、正眼に構え目を閉じて意識を集中させていく。
「ふぅぅぅ……」
肚の底……丹田から気を引き出して全身へと巡らせ、同時に魔力を集めてその魔力を用いて《身体強化》の魔法を発動させる。
気と魔法両方で強化を行う《混合身体強化》が完成した所で開眼し、刀を振り上げる。
刮目せよ! これが俺の必殺剣『瞬迅剣』だッ!
全ての関節を連動させ、音速を超えた神速の一刀を振り下ろす。
次の瞬間、目の前の壁は轟音と共に崩れ去った。
「「……は?」」
振り返ると、大人たちはポカンとした様子で俺の方を見ながら立ち尽くしていた。
「いや……いやいやいやいや、なんだよこれ!? なんで剣を一回降っただけで壁が粉砕されるんだよ!? おかしいだろ!?」
一番最初に叫んだのはジークだった。
ジークは俺と崩れた壁を交互に見て混乱を露にしている。
「ジーク、一度ではありません。私の目には十回斬り付けたのが見えました」
「あの一瞬で十回も……」
クリス姉ちゃんとジークが話しているが、残念ながら十回じゃないんだよなぁ……
「お前の目には十回に見えたのか……私の目には十五回に見えた」
「お、ミッシェルさん正解! 俺は十五回斬り付けたよ!」
俺の必殺技である『瞬迅剣』は剣を一回振っただけに見えるが実は何度も斬り付けているというアニメや漫画では割とポピュラーな技である。
前世では肉体を鍛え上げ、気を練り上げて一振りの間に五回の斬撃が限界だったが、魔法の力を手に入れ気と魔法の混合強化を習得したので劇的に斬撃を振るう回数が増えている。
今は十五回が限界だが、百連撃を目標に日々鍛えている。
「頭が……頭が痛いよ……」
「どうしたら……どうしたらいいのだろうか……」
ミッシェルさんたちと話していると、今度はばあちゃんとディスおじさんが頭を抱え蹲っている姿が視界に入ってきた。
無事驚かせることが出来たようで何よりだ!
◇◆
「さて……シンくんには魔法学院を勧めたがルカくんはどうするか……」
「陛下、ルカは魔法も使えるのですからシンと一緒に魔法学院に入学させればよろしいのでは?」
「ふむ……」
「お待ちください。ルカは魔法は苦手だと言っていますし、先程の剣技を見る限り魔法学院よりも騎士養成士官学院の方がルカには合っているのではないかと思います」
「ふむ……どちらも悪くない提案だな。ルカくん、ルカくんはどうしたい?」
家に戻り、今度は俺の進路についての話となった。
ジークがシンと一緒に魔法学院へ進むことを勧め、反対にクリス姉ちゃんは騎士養成士官学院という学院を勧めてきている。
ちなみにシンは魔法学院への進学を決めたようで、学院生活に思いを馳せニヤニヤしている。楽しそうでなによりだ。
「俺は強いやつと戦いたい……」
「……ルカくん、キミにとって辛い現実かもしれないが、これだけは言っておこう」
ディスおじさんが俺の希望を聞いてきたので素直に希望を伝えると、真剣な顔をして俺の瞳を覗き込んできた。
「何?」
「ルカくん。少なくともルカくんより強い戦士はこの国には存在しない」
「うそ……」
「嘘じゃない。この国で最も強い戦士はそこにいるミッシェルだ。ルカくんはミッシェルより強いだろう?」
「うん……」
俺が昔立てていた『15歳までに気も魔力も使わずにミッシェルさんに勝つ』という目標は達成されている。
ミッシェルさんは魔法は使えないが、無意識に気の力を使っていたようで本気で戦った時にはかなり驚いたが、何とか勝つことが出来た。
今では俺が『操気術』の概念を教えたので身に付けるために鋭意努力中らしい。身に付けたらまた戦う約束をしているのでとても楽しみにしている。
しかしミッシェルさんより強い戦士は居ないのか。
なら――
「魔法使いに関しては間違いなくシンくんが世界最強だろうね。シンくんを超える魔法使いは存在しないと断言しよう」
「えっ……」
「ふむ、ルカくんはマーリン殿が『魔人』と呼ばれる魔物化した人間を倒して『英雄』と呼ばれているのは知っているよな?」
「それは知ってるけど……」
「我が国は魔人が現れた時、対抗できなかった。マーリン殿とメリダ師がおられなければ滅んでいたとしても不思議では無い」
「そんなに……」
「ああ。そんな魔人を討伐したマーリン殿とメリダ師は『最強の魔法使い』と言われていたんだ。そんな2人を超えるシンくんは……わかるね?」
「うん。規格外ってことだよね」
「おい!」
最強の魔人を倒したじいちゃんたちを超えるような魔法使いは今でも現れていないらしい。
なのでそのじいちゃんたちを超えるシンは規格外ということだろう。
そう思って口に出した所、先程までニヤニヤしていたシンが突っかかってきた。
「なんだよ規格外」
「規格外言うな! てか俺が規格外ならその俺より強いルカ兄はなんなんだよ!?」
「そりゃ……史上最強?」
とてもいい響きだ……
しかし何かに打ち勝ってそう呼ばれるようになったのではなく気が付けばなっていたと言うのはなんだか切ないな。
そうだ、いいこと思いついた!
「シン、お前魔法学院でお前並に強い魔法使い育てろよ」
「は?」
「そんでシンが魔法を教えた奴に俺が剣と躁気術を教えるから。俺たちで最強の魔法戦士を育てようぜ!」
「無理だろ」
「強いやつがいないのなら自分たちで育てればいいじゃない!」
こうして俺も魔法学院へ進学することを決意した。
元々剣を使える生徒ばかりな騎士養成士官学院に行ってそいつらを鍛えることも考えたのだが、どうせなら魔法や《身体強化》も使えた方が強くなるだろうという判断だ。
将来の好敵手を俺の手で育てるんだ!
「わかった。なら学院には2人が試験を受けることを伝えておこう」
それから話は雑談へと移り、何故国王であるディスおじさんがちょくちょく我が家を訪れているのか話を聞いた。
なんでも先程話に出た魔人騒動の時に志願して戦場に出たディスおじさんが絶対絶命の危機に陥った際にじいちゃんたちに助けられ憧れたからなんだって。
その話を聞いて志願したディスおじさんも颯爽と現れディスおじさんを助けて魔人を討伐したじいちゃんばあちゃんもカッコイイなぁと思っていると、なんとその話を元にした『英雄物語』という本があるという話を聞いた。
「トムおじさん、俺その本欲しい! 出世払いで!」
「あんたは何を言い出すんだい!」
ツケで本を買おうとしたからか、ばあちゃんに『衝撃倍加』の付与をしたハリセンで後頭部を引っ叩かれた。
普通に痛い……
「ばあちゃん、痛いよ」
「お黙り! あんな話小っ恥ずかしい本なんて読ませたくないんだよ!」
「そんなぁ……」
「ルカ、あんたアタシと爺さんの夫婦生活が書かれた本なんて読みたいのかい?」
「絶対やだ!」
「なら、諦めな」
ばあちゃんに説得されたことで俺は本を購入することを諦めた。
しかし今なんか聞き流してはいけない言葉が聞こえたような……?
「じいちゃんとばあちゃんって夫婦だったの!?」
それだ!!
「……ほっほ」
「若気の至りさね……」
マジか……