賢者の孫のお兄ちゃん   作:愛飢夫

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土日お休み週休2日と言っておきながら社畜精神旺盛な愛飢夫に2日間のお休みは耐えられなかったようです。


感謝

「オーグ、シンたちは?」

「む? シンならばマーリン殿たちとクロードの屋敷に向かったぞ」

「なんで?」

「何故って……シンがクロードの護衛をすることになって今後《ゲート》で送り迎えをするから《ゲート》を開く先を確認しに行ったのだが……」

「なるほど」

 

 《ゲート》は一度訪れたことのある所にしか開けないから開く場所を確認しに行ったのか。

 

「殿下……ルカ殿……《ゲート》とは何で御座ろうか?」

 

 ああ、ユリウスは知らないのか。というかオーグはなんで知ってるんだろ?

 

「《ゲート》はシンが創った移動魔法だよ。俺の《瞬間移動》は見たよね? それとは違って扉を創って場所と場所を繋げるみたいな……オーグ、わかる?」

 

 俺には上手く説明出来なかったのでオーグに聞いてみたのだが、オーグもわからないようで首を横に振られた。

 

「私もシンからそのようにしか聞いていないからな。それよりルカ、お前は《ゲート》は使えないのか?」

「使えないよ。覚える必要性も感じなかったし」

 

 あれは移動魔法だからね。誰か1人使えればいいかなって。

 一家に1人シンが居れば問題無いんだから俺が覚える必要無いでしょう?

 

「そういうものか」

「そういうものだよ。《ゲート》の魔法の理論を勉強するくらいならその時間に逆立ち片手指立てでもやってた方がいいよ」

「逆立ち……なんだ?」

「指立てだよ。まずは逆立ちをします」

 

 オーグが『指立て』に反応したので実際にやって見せるためその場で逆立ちをする。

 

「お、おい!?」

「逆立ちをしたらこうやって……指だけで体を支えます」

 

 指に力を入れて手のひらを浮かせ、10本の指だけで体を支える。

 

「そして片手を浮かせて……」

 

 左手を浮かせ、右手の指5本だけで自分の全体重を支える。

 

「ぐっと沈みこませて……持ち上げます」

 

 そのまま肘を曲げて体を沈め、持ち上げる。

 

「こ、これは……!?」

「これを毎日行うことで主に三角筋や腹直筋を鍛えることが出来ます。でも初心者にはおすすめ出来ません」

「ど、どうすれば良いで御座るか!?」

「まずは片手腕立てと逆立ち腕立てを極めてください」

「片手腕立てと逆立ち腕立て……わかり申した!」

「ルカ、ユリウス……話が逸れているぞ」

「「ハッ!?」」

 

 えっと……なんの話してんだっけ?

 

「まったく……《ゲート》の話を……っと、言ったそばから《ゲート》が開いたな」

 

 オーグの言う通り部屋の中には《ゲート》が開いており、扉からシンとじいちゃんとばあちゃん、そして知らない男の人と女の人が現れた。

 

 誰だろう?

 

「「へ、陛下!?」」

「ん? ああ、《ゲート》の説明をしていたのか」

「ディスおじさんまだ居たんだね」

「アウグストたちもまだ話しているからね」

「そっか。じゃあ俺たちは戻るから、ゆっくりしててよ」

「うむ」

 

 ディスおじさんが頷いたことを確認したシンはそのまま《ゲート》を潜って元の場所に戻ってしまった。

 

「……クロード夫妻も戻ると良い」

「「ハッ! 御前失礼致します!」」

 

 知らない男性と女性は一度その場で跪いて頭を下げてからじいちゃんたちに続いて《ゲート》を潜る。

 

 ふむ、察するにシシリーのお父さんとお母さんか……

 シンの《ゲート》の実演をしたのだろうけど、扉を抜けたら目の前に王様居たらそりゃ驚くよね。

 シンも繋げる先をもっと考えたらいいのに。

 

「しかしわざわざ《ゲート》で送り迎えをしなくとも護衛を雇えば良い話では?」

「トール、そう言ってやるな。あれはあえてその案を無視しているのだろう」

「そう……ですね」

「マーリン殿とメリダ殿はクロードに狙いを定めたか……ところでルカ」

「ん? 何?」

「お前はどうなのだ? そうだな……メッシーナのことはどう思う?」

 

 なんだよ突然。しかしマリアのことかぁ……

 

「んー……可愛いし友達想いだし素敵な女の子だとは思うよ」

「ふむ、では……」

「でも付き合いたいとかは思わないかなぁ……俺の事よりオーグはどうなの?」

「私か? 私は婚約者がいるぞ」

「え? マジ?」

「ああ。ちなみにそちらの2人も婚約者はいるぞ」

「そうなんだ……政略結婚ってやつ?」

「私は違うな。きちんと互いを大切に想い合っている」

「王族なのに?」

「ああ、ルカは知らないのか……アールスハイドでは政略結婚よりも恋愛結婚が主流なんだ」

「マジで? 貴族って家の為に結婚するもんじゃないんだ」

「それはこの国では古い考えだな。貴族と平民はもちろん、王族と平民の結婚も認められているぞ」

 

 王族や貴族と平民って価値観とかも全く違うだろうし、逆に苦労しそうだけど。

 

「そうなんだ……ところでユリウスとフレーゲルくんはどうなの? 恋愛結婚なの?」

「拙者は政略で御座ったが、今ではリサ以外考えられないで御座る」

「自分の相手は幼馴染なのでどちらとも言えますね。それとルカ殿、自分のことはトールと呼んで頂いて構いませんよ」

「わかったよトール。オーグもユリウスもトールも婚約者がいて、シンも青春真っ最中……俺も青春したいなぁ」

「Sクラスの他の女性はどうなのだ?」

「うーん……アリスは妹って感じだし、ヒューズさんは魔法好きってことしか印象に無いから俺とは合わない気がするし、カールトンさんは単純に胸……色気が半端なかったことしか覚えてない」

「ルカ殿それは……いえ、自分も似たようなものですね」

「拙者もで御座る。カールトン殿の胸はけしらからんで御座るな」

「お前たち……」

 

 とても楽しい。

 友達とどうでもいい話をするのがこんなに楽しいということを初めて知ったような気がする。

 

 前世の俺ってボッチだったのかな?

 

「ただいまー」

「ほっほ、戻ったぞぃ」

「おやディセウム、まだ居たのかい」

 

 そうしてオーグたちとの雑談を楽しんでいると、シンたちが戻ってきた。

 ばあちゃんは帰宅後最初の一言の攻撃力が高すぎると思う。

 

「いやぁ、ルカくんたちと話すアウグストがとても楽しそうでして……つい長居してしまいました」

「ほっほ、ルカにも友達が出来たようで何よりじゃ」

「そうさねぇ……皆、これからもルカとシンをよろしく頼むよ」

「ちょ、ばあちゃん!」

「恥ずかしいからやめてよ!」

 

 急にじいちゃんとばあちゃん穏やかな顔をしてそんなことを言い始めたので慌てて止めようと声を上げるが、その様子をオーグたちがニヤニヤしながら見ていたので手遅れだと諦めた。

 

 そうしてその日はお開きとなり、翌日早速シンは《ゲート》を開いてシシリーたちを迎えに行った。

 その間にばあちゃんから「話がある」と言われたので朝ごはんを食べながらばあちゃんから話を聞くことにした。

 

「話って?」

「ああ。シシリーのことさね。ルカ、アンタはシシリーのことどう思ってる?」

「シシリー? 可愛らしいなぁとは思うけど……」

「付き合いたいとかは?」

「無いね」

 

 俺にとって気弱なタイプの女の子は庇護対象であって恋愛対象ではないのよね。

 俺は気も体も強いタイプが好きです。

 

「そうかい。そういえばルカはクリスの事が好きだったんだからシシリーはタイプじゃないのかい」

「ちょっと待って!? なんで知ってんの!?」

「なんでって……アンタはクリスの前でだけ態度がおかしかったんだから見てたらわかるさね」

「嘘だろ……」

 

 悲報、俺の初恋がばあちゃんにバレてた件。

 

「クリスが来る前日にはあれだけソワソワしておいてバレないとでも思っていたのかい? みーんな知ってたよ」

「皆って……まさか……」

「シンも爺さんも、ディセウムも知ってたかねぇ」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」

 

 もうやだ……穴があったら入りたい……掘ろうかな。

 

「朝からうるさいねぇ……まぁアンタのことは置いておいて、シンとシシリーがくっ付くとしたらどう思う?」

「どう思うって……いいんじゃないの? シンってシシリーにベタ惚れみたいだし。あと俺のことは永遠に置いておいて」

 

 そして忘れてくださいお願いします。

 

「なら賛成なんだね?」

「うん。応援するよ」

「そうかい……良かったよ」

 

 ばあちゃんが心の底から安堵したようなため息をついた。

 

「何が? 何に安心したの?」

「いやね、ルカもシシリーを気に入っていてもしアンタたち兄弟で取り合ったらと思うと……」

 

 ばあちゃんは俺とシンが本気でやり合う光景を想像したのか渋い顔になった。

 

 いや……たとえ同じ人を好きになったとしても本気でやり合ったりしないよ?

 

「そんなわけないじゃん。ほら、俺とシンってそこまで似てないし……女性の好みのタイプも違ってて当然じゃん」

「何言ってるんだい……アンタたちほどそっくりな兄弟も珍しいさね」

「え? 俺とシンってそんなに似てる?」

 

 双子だから顔立ちが似てるのは認めるけど、性格はかなり違うんじゃないかな?

 

「お調子者なところとか、何かを思いついたらすぐに試さずにはいられないところとか、自重を知らないところとか……そっくりじゃないか」

「……それはじいちゃんに似たんだよ」

 

 だんだんジト目になっていくばあちゃんが恐ろしかったので咄嗟にじいちゃんを出すとばあちゃんは「頭が痛い」とでも言いたそうに頭を抑えて大きなため息を吐いた。

 

「はぁ……あの爺さんに任せていたアタシの責任なのかねぇ……もっと様子を見ておくべきだったよ。寂しい思いもさせちまっただろうし……」

「別に寂しくなかったよ? ばあちゃんは数日毎に会いに来てくれたし、他の人だってちょくちょく来てくれてたし……俺、あの家で暮らしてた時楽しかったよ」

「ルカ……」

「それに……これからはずっと一緒に居てくれるんでしょ? じいちゃんのこともばあちゃんのことも大好きだから嬉しいよ」

「ルカ……アンタって子は……」

「ほんに……ほんにいい子に育ったのぅ……」

 

 あれ? じいちゃん居たの? 気付かなかったよ。

 

 まぁいいや、せっかくの機会だし、思っていたことを全部伝えておこう。

 本当はシンも居る時が良かったんだけど、今この場に居ないあいつが悪い。

 

「じいちゃん、前にも言ったけど俺たちを拾って……助けてくれてありがとう。じいちゃんの孫になれて俺は幸せだよ」

「ル゛ガ……」

「ばあちゃん、いつも俺たちを見守ってくれてありがとう。怒られてばっかだけど、厳しくて優しいばあちゃんのこと大好きだよ」

「ルカ……」

「だからさ、これからもいっぱい迷惑掛けちゃうかもだけど……将来はちゃんと俺たちでじいちゃんとばあちゃんを支えていくから。だから……えっと……よろしくお願いします……みたいな?」

 

 最後の方は照れくさくなってしまい少し濁してしまったが、俺の言葉を聞いたじいちゃんは感涙に咽び、ばあちゃんは静かにハンカチで目元を拭っていた。

 

「ただいまー……ってこれどんな状況?」

 

 そんなしんみりした空気をぶち壊すかのように部屋の中にシンの気の抜けた声が響き、シンとマリア、シシリーの3人が部屋に入ってきた。

 

 馬鹿弟め、空気読め。

 

「おや、おかえりシン」

「ばあちゃん泣いてんの!? どうしたの? ルカ兄がまた何かやらかしたの?」

「ほっほ、なに、ちょっと話をしておっただけじゃよ」

「話をしてただけって……」

 

 シンが何か問い詰めたそうな顔でこちらを見てくるが、マリアやシシリーに聞かせるには恥ずかしい話なので曖昧に笑って返しておく。

 

「シンには夜にでも話すよ。それよりマリアとシシリーを連れて来たなら早く出発しないと遅れちゃうから行こうぜ」

 

 そう言って俺が立ち上がると、じいちゃんとばあちゃんも俺たちを見送るために立ち上がり、玄関までついてきた。

 

「じゃあじいちゃん、ばあちゃん、行ってきます」

「行ってきまーす」

「うむ。頑張っておいで」

「くれぐれも人様に迷惑を掛けないように気を付けるんだよ!」

 

 それからマリアとシシリーもそれぞれじいちゃんとばあちゃんに挨拶をして、俺たちは4人で連れ立って学院へと向けて歩き出した。

 

 まぁ……10分で着くんですけどね。

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