賢者の孫のお兄ちゃん   作:愛飢夫

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土日休みとか言っておいて昨日シレッと投稿してるので昨日見てない方は前のお話からお読みくださいませ。

愛飢夫はこうしてたまに嘘をつきます。皆様暖かく見守ってください。


学院探検隊

 教室に着くと、殆どの生徒は既に登校していた。

 

「おはようルカ、シン。入学早々女連れで登校とは……いやはや流石だな」

「おはようオーグ。そしてうるさいぞ! 理由は知っているだろうに」

「わかってはいるがな。揶揄わずにはいられなかった」

「お前……」

「そうだぞシン! 入学早々両手に花とかうらやまけしからん!」

「なんでルカ兄はそっち側に寝返るんだよ! 一緒に登校したじゃんか!」

「だって俺はオマケですし」

 

 マリアとシシリーの護衛はお前だからね? 俺は出発地点と目的地が同じだから着いてきただけだもの。

 

「おはようございますルカ殿、シン殿」

「お二方共お早う御座いまする」

「「おはよう」」

 

 そうしてクラスメイトたちと朝の挨拶を交わしていると、小さな影が教室に滑り込んできた。

 

「だぁ! 間に合った!? 大丈夫だよね?」

「まだ先生来てないからセーフだよ。アリス、ナイスガッツ」

「ナイスガッツって……入学早々ギリギリで登校ってどうなんだ?」

「いやぁ、今日の授業が楽しみで寝付けなくてさぁ……寝坊しちゃった!」

「子供かよ!」

 

 シンの奴、せっかく俺がギリギリ間に合ったアリスを褒めたのに苦言を呈した挙句ツッコミまで入れやがった。

 女性には優しくしろってあれほどクリス姉ちゃんに言われてたのになんて奴だ。

 

 あ、一応言っておくとクリス姉ちゃんのことはとっくに諦めてるよ。

 ジークは「アイツが28になっても相手が居なければ……」とか言ってたし、クリス姉ちゃんも「ジークももう少し女性関係がまともなら……」とか言ってたからお互い憎からず思ってるんだろうなぁって。

 まぁ俺がクリス姉ちゃんに惚れたのは『初めて見た若い女の人』というのも大きかったと思うし。

 だから今は普通に姉ちゃんだと思って接してる。

 

 多分そのうちくっ付くんじゃないかな?

 

「皆おはよう。ホームルームを始めるぞ、席に着け」

 

 そんなことを考えているうちに時間になったようで、マーカス先生が教室に入ってきた。

 アリス……ガチでギリギリだったんだね。

 

「よし、全員居るな。では、改めておはよう」

「「「おはようございます」」」

「じゃあ今日の予定を伝えるぞ。昨日言ったように午前中は学院を見て回る。昼食後は初めての魔法実習だ。この後案内するが、第一練習場に集まるように。持ち物は特に必要無い……と言っても全員《異空間収納》は使えるみたいだな。流石Sクラスだ。今日の連絡は以上、何か質問は?」

 

 俺を含めクラスメイトの机に鞄は置かれていない。それはすなわち全員が《異空間収納》を習得していることを意味している。

 

 通学途中には鞄を持って歩いている生徒も見掛けたので割と難しい魔法なのかもしれない。

 

「質問は無さそうだな。では、学院を案内する」

 

 ここにマーカス先生を隊長とした学院探検隊が発足した。

 

 

 

 ◇◆

 

 

 

 案内された学院は校舎が2つあった。

 

 1つは教室がある校舎。

 1学年4クラスあり、1年生が3階、2年生が2階、3年生が1階となっている。

 

 もう1つは職員室や生徒会室、その他実験室や研究会の研究室がある。

 

 この研究会とは言うなれば部活やサークルのようなもので、放出系の魔法を研究する『攻撃魔法研究会』や付与魔法を使って色々な魔道具を制作することを目的としている『生活向上研究会』、身体強化系の魔法を極める『肉体言語研究会』などがあるそうだ。

 

 ふむ、肉体言語研究会か……そこに行けば将来的に俺の好敵手となりえる存在が居るかもしれない。

 いや、今は複数の弟子を取るよりユリウスを育て上げることを優先した方がいいか。

 

 ある程度ユリウスを鍛えたら殴り込みを掛けるのも面白いかもしれない。

 

「ふむ、肉体言語研究会で御座るか……」

「なんだ、参加したいのか? 私のことは構わないから参加すれば良いではないか」

「いえ、そういう訳ではありませぬ。拙者はルカ殿に師事した身、故にルカ殿が入るのならば、と思っており申した」

「そ、そうか……ルカ、ユリウスはこう言っているが、お前はどうするのだ?」

 

 オーグがこちらに話を降ってきたので考えている内容を素直に話す。

 

「んー、あんま参加するつもりは無いかな。ある程度ユリウスが仕上がったら道場破り的な感じに殴り込むのもアリかなと思ってる」

「道場破りって……お前……」

「俺が鍛えたらユリウスが上級生相手にどれだけ戦えるのか見たいしね。そうだ、フレイドくん、フレイドくんも俺たちと一緒に強くならない?」

 

 ここで俺は最初の自己紹介の時に目を付けていたフレイドくんに声を掛けた。

 真帆学院のSクラスに居ながら騎士学院にも行けるような剣の腕を持つフレイドくんならきっと強くなれるハズ。

 

「うーん……とても魅力的な誘いなんだけど、僕はSクラスから落ちると強制的に騎士学院に転校させられちゃうから魔法を優先して学びたいんだよねぇ」

「あー、それは大丈夫。俺たちは『最強の魔法戦士育成計画』を立ててるからもちろん魔法も教えるよ。シンが」

「うぉい!」

 

 シンがなにやら叫んでいるが、こいつはなんやかんや言いつつも俺のお願いは断らないからきっとしっかり教えてくれることだろう。

 

「うーん……それならお願いしようかなぁ」

「是非是非。よろしくフレイドくん」

「こちらこそ。それとトニーで構わないよ。僕もルカって呼んでもいいかな?」

「もちろんさぁ。よろしくトニー」

 

 よっしゃ、2人目の弟子ゲットだぜ!

 

「……よし、あの3人は置いておこう。シン、入りたい研究会はあったか?」

「俺? 俺は特には……」

「ふむ、それもそうか。お前が入るにはどの研究会も物足りないと思っていた。いっその事、自分で研究会を立ち上げてみるか?」

「お、おう?」

 

 む? シンとオーグが何か面白そうな話をしているな。

 

「ほう、ウォルフォード弟の作る研究会か……それは興味深いな」

 

 あちらの話に乗っかろうとしたところで俺より先にマーカス先生が話に乗っかってしまった。

 

 出遅れた……

 

「そうですよね先生。シンがどのような研究会を作り、どのような活動をするのか興味があります」

「確かに興味深い」

 

 シンが研究会を立ち上げられるってことは俺も立ち上げられるってことだよね。

 それならこの3人で研究会を立ち上げるっきゃない!

 

「あたしも興味ある! もし作るならあたしも入りたい!」

 

 ここで魔法大好きっ娘のヒューズさんも話に加わっていった。

 

「私も入りたいかもぉ」

「あたしも! あたしも!」

「自分も……殿下が入られるならば是非」

 

 ヒューズさんに続いてカールトンさん、アリス、トールも声を上げる。

 

「ふむ……先生、どうすれば研究会は作れるのですか?」

「5名以上の会員と顧問の教師を用意して申請書を提出すれば作れるぞ。もし本当に立ち上げるのなら俺が顧問を引き受けよう」

 

 5名の会員……えっと……俺、ユリウス、トニー……あれ、3人しか居ない。

 となるとあと2人必要だ。クラスメイトでまだシンの立ち上げる研究会に参加を表明していないのは……

 

「あの……マリアさんにシシリーさん? 俺たちと一緒に最強の魔法戦士を目指しませんか?」

「ごめんなさい。私はシンくんの作る研究会に入らないといけませんので……」

「私もちょっと……申し訳ないけど、あっちに入れてもらうわ」

「そんなぁ……」

 

 まさかの……人数が足りない……

 

 いや、待て。待つんだ俺。

 ここは冷静になって逆に……そう、逆に考えるんだ!

 

 元々の『最強の魔法戦士育成計画』では俺が気と武術を、シンが魔法を教える計画だった。

 ならばシンは俺たちに協力すべきではなかろうか?

 

 何勝手に研究会立ち上げようとしてるんだよ。こっちの研究会に入りなさいよ。

 

 よし、これでいこう!

 

「シン――」

「どんな研究会にするかは午後の授業の後で決めたらいい。顧問は俺が引き受けてやるし、申請書もその時持ってこよう」

「わかりました」

 

 待って! ちょっと待って!

 

「よし、じゃあ案内を続けるぞ。校舎は見たから次は練習場だ」

「「「はーい」」」

「先生待って! 研究会の事でひとつお話が!」

「ウォルフォード兄、その話は午後の授業の後でな」

「うぐっ……」

 

 完全に手遅れでした。

 

 それから先生の案内は再開され、練習場の確認もした。

 この学院には練習場が3つあり、その中でも最も強固な魔法障壁が張られているのが第一練習場で、俺たちの魔法実習は基本的にここを使うと教えられた。

 

 そして練習場を見た後、最後に案内されたのは食堂だった。

 あちこち見て回っているうちにちょうど昼休みになったのでそのまま皆で昼食を摂ることになった……というよりマーカス先生が時間を調節してちょうど昼休みになるタイミングで食堂に案内したんだろうなぁ。

 

 ちなみにこの食堂全て無料で食べ放題らしい。

 なんでも家が貧しい人でもしっかりと集中して学べるように学費やら何やら全て無料なのだそうだ。

 これは毎年国の予算として組まれているというのだからアールスハイドは下手したら日本よりも教育先進国なんじゃないだろうか?

 

 さて、無料とはいえ肝心の内容だが……凄かった。

 学院の食堂ということで食券を買って定食を注文するもしくは毎日決まったメニューを渡されるのかと思ったが、トレーを持って自分で好きな物を好きなだけ取るシステムだった。

 

 こういうのなんていうんだっけ……バイキング? ビュッフェ?

 

 まぁ肉料理や魚料理、スープやサラダ、パンも複数種類用意されており、毎年新入生が食べすぎて苦しそうにしているのを眺めるのが毎年の風物詩となっているらしい。

 

「うっぷ……」

「だから言ったじゃん。取りすぎだって」

「だって……どれも美味しそうで……」

「だからって全種類はやり過ぎだよ」

 

 もう少し早く言って欲しかった……

 

 俺とユリウス、アリスの3人でその風物詩に加わり、3人で食べ過ぎの苦しさを分かちあったのだった。

 

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