そんなこんなで研究会説明があった日の翌日、俺たち『究極魔法研究会』始動の日がやって来た。
本当なら別に昨日から活動しても良かったのだが、昨日は俺とシンが大変に疲れていたので今日からということにしてもらった。
まぁ昨日はあれからマーカス先生が『入会審査』をしていたので今日からでちょうどいいだろう。
「マーク=ビーンッス!」
「オリビア=ストーンです」
まずは昨日の入会審査を潜り抜け見事入会を果たした1年Aクラスの2人に自己紹介をしてもらった。
ビーンくんは茶色の髪にクリっとした大きな黒い目でソバカスがある何となく可愛らしいタイプの男子生徒だ。
しかしその可愛らしい顔とは対照的に鍛冶屋の仕事で鍛えられたのかわりと引き締まった体をしている。
これは鍛えればモノになるかもしれない。
ストーンさんはセミロングの髪に黒い目をした美人さん。可愛いより綺麗な感じ。美人だとは思うが残念ながら俺の好みでは無い感じ。
ちなみに2人とも有名な店の子供らしく、ビーンくんは『ビーン工房』という腕のいい鍛冶師が多く働いている工房の息子で、ストーンさんは『石窯亭』というグラタンがとても美味しいと評判のお店の娘だそうだ。
「是非皆さんで来てください。おもてなしします!」
「やったねシンくん! これは素晴らしい人材だよ!」
「失礼な褒め方すんな!」
石窯亭の名物料理『石窯グラタン』が大好物らしいアリスがヨダレを垂らしながらふざけたことを言い、シンがツッコミを入れているのを横目で見ながら俺は気になったことをビーンくんに聞いてみたい。
「ねぇビーンくん、ビーンくんは鍛冶屋の息子ってことで何か作れたりするの?」
「は、はい! あ、いえ……自分はまだ一番下っ端なもんでナイフくらいしか……」
「そうなんだ。でもナイフが作れるなら鍛冶の技術は学んでるんだよね?」
「は、はい! まだまだ未熟ッスけど……」
「固い、固いよビーンくん! 俺は王族でも貴族でもない一般人なんだからもっと気軽に接してよ。とりあえず今日の目標は俺のことを『お前』って呼ぶことね!」
「一般人って……英雄のお孫さんッスよ!?」
別に爵位がある家の子な訳じゃないんだから一般人で間違ってないでしょうよ。
「確かにじいちゃんとばあちゃんは英雄って呼ばれてるみたいだけど、俺は別に――」
「何を言っている? お前も英雄と呼ばれるに足る実績を上げているだろうが」
「んぇ?」
「呆けた声を出すな。来週の頭にはお前とシンも英雄で有名人になる」
「なんで……ってそっか、なんか勲章貰えるんだっけ? 決まったの?」
「お前たちが叙勲されることは決まっていたぞ。決まっていなかったのは叙勲式の日時だ」
「いつ?」
「だから来週の頭だ。おそらく既に家に通知は行っているから帰ったら忘れずに確認しておけ」
「だってよシン。覚えといて」
「お前も覚えておけ!」
オーグに怒られた……
別に俺かシンのどっちかが覚えてたらいいんだからそういうのはしっかりしたシンに言ってください。
「まぁちょっと話が逸れちゃったけど、出来れば普通に接して欲しいな。それと、マークって呼んでもいい?」
「え……と……す、すぐには無理かもしれないッスけど鋭意努力するッス! あと名前呼びは全然問題ないッスよ!」
「おーけー、じゃあ改めてよろしくね。それでさっきの話なんだけど……」
「で、殿下のことはいいんスか?」
「オーグ? なんで? 別にあいつの事は今はいいよ?」
「で、殿下をあいつ呼び……」
「こいつとシンは私のことをあいつやお前と呼ぶことがあるな。ビーン、お前も可能ならそう呼んでくれて構わないぞ?」
「そそそそんな恐れ多い!!」
流石にマークにそれは無理だろ。そのくらい俺にだってわかる。
「オーグ、流石にそれは無理だよ。自重しなさい」
「……お前にだけは言われたくないのだが」
「俺はほら、現時点では一般人だから」
「そういう事ではなく……はぁ、もういい。ビーン、ストーン。ここは完全実力主義の高等魔法学院なのだから私や貴族の家の者を必要以上に敬う必要は無い。だからそこまで緊張するな」
「は、はいッス!」
「が、頑張ります!」
まぁこればっかりは慣れるしかないよ。頑張れ2人とも!
「それでオーグがチャチャ入れてくるから話が逸れまくりなんだけど、マークに見て欲しい物があるんだよね」
「見て欲しい物ッスか?」
「うん、これなんだけど……」
俺は《異空間収納》を開き中から竜裂を取り出してマークに差し出した。
「……これは?」
「俺が《錬金魔法》で作った武器なんだけど、鍛冶師目線で出来を見て欲しいんだよね」
俺は刀作りの知識はあっても経験は無い素人だからね。
刀鍛冶師じゃなくても本職の鍛冶師に一度見てもらいたいと思っていたのだ。
「ちょっと気になり過ぎる単語があったッスけど、とりあえずまずは見せてもらうッス」
マークは《錬金魔法》よりも刀に興味があったようで詳しく聞こうとはせずに刀を受け取り、鞘から抜いて検分し始めた。
「これは……普通の剣とは全然違うッスね。なんだろう、色々思うところはあるッスけど、一番に思うのは『かっこいい』ッスかね」
「だよね! 刀ってかっこいいよね!」
「はいッス! これは素晴らしい武器ッスよ!」
「でしょう? マーク、キミとはいい友達になれそうだ」
「ウォルフォードくんにそう言ってもらえるなんて……嬉しいッスよ!」
「あ、俺のことはルカって呼んで。ウォルフォード呼びだと俺を呼んでるのかシンを呼んでるのかわからなくなるからさ」
「わかったッス!」
「ちなみにマークはこの刀を振るのと作るのどっちがやりたい?」
「どっちって……出来ることならどっちもやってみたいッスけど……」
「その言葉が聞きたかった! マーク、俺が作り方を教えるから刀を作ってみない?」
「え……いいんスか!? 鍛冶師の技術って門外不出が当たり前ッスよ!?」
そういえば刀作りを教えてくれた先生も「水の温度は門外不出、水の温度を調べようとした門外の刀匠が水の温度を調べるために焼船の中に腕を突っ込んだらその腕を斬り飛ばされた」なんて伝説があると教えてくれたな。
けど……まぁ……ここは日本じゃないんだから別にいいよね?
むしろ異世界に日本の刀作りを広めた偉人として称えられてもいいんじゃないかな?
「現時点で刀の作り方を知ってる人は俺以外に居ないと思うからそれは気にしなくていいよ。作り方をマスターしたらマークが考案したってことにしてもいいし……」
俺は名誉じゃなくて名刀が欲しい。
「いえ、考案者として歴史に名前を残すのはルカくんであるべきッス。俺は製作者として隅っこの目立たないところに残してもらえればそれで……」
「まぁ歴史ってあとの時代の人が作るものだから今俺たちが気にしても仕方ないよ。俺の名前を使うのか、マークの名前を使うかは歴史を編纂する人が気分で決めたらいいよ」
「そんなんでいいんスか?」
「いいよ。別に名誉とかいらんし。『世界最強』って褒め称えられたい気持ちは無くはないけど、それは一部界隈の人が知ってればそれでいいし」
一般の人に『最強!』って称えられるのも気持ちいいけど、やっぱその道に詳しい専門家みたいな玄人に『この時代の最強は間違いなくルカ=ウォルフォードである』って言われる方が嬉しい。
「なんだかよくわかんないッスけど、わかったような気がするッス!」
「マーク、ルカ兄の言ってることは話半分で聞くくらいでちょうどいいからあんまり深く考えない方がいいよ」
「なんだとこのやろう! 最強の座をかけて俺と勝負しろ!」
「ね? 意味わかんないでしょ?」
こうしてこの日は雑談に徹し、新加入の2人が打ち解けた頃に解散となった。
「そうだ、ルカくん、シンくん、これからウチ来ないッスか? ルカくんの刀作りの話もシンくんの新しい武器の話も両方親父に話してみたいッス」
「お、いいね!」
「お邪魔じゃないなら是非!」
解散となったのだが、俺たちはこのままマークの家にお邪魔することになった。
ちなみにシンの武器の話とは「薄くて軽いバイブレーションソードが折れやすいから何とかしたい」という相談だ。
シンのバイブレーションソードも俺が《錬金魔法》で作っているのだが、折れる度に俺に直してもらうのが心苦しいらしい。
俺としてはシンの頼みならいくらでも直すし予備も作るのだが、昔冗談で言った「お代はこの先お兄ちゃんに絶対服従」を警戒しているらしくあまり頼ってもらえない。
昔の俺をぶん殴りたいよ……
「そうだ……シシリー、マリア。マークの家に寄っていいかな?」
「いいですよ」
「私もいいわよ。マークの家のお店も見てみたいし」
シンがマリアとシシリーに確認すると、2人も同行すると答えた。
「僕も行っていいかい?」
「なら、私も行こうか」
トニーとオーグも参加を表明し、渋っていた護衛のトールとユリウスもオーグが説き伏せ同行することになり、マークとご近所さんなストーンさんも加えて10人の大所帯でマークの家に向かうことになった。
最近毎日バラ積みバラ降ろしばかりで死にかけてる愛飢夫です。
体力的にキツすぎて全然書けてません……ですので今後不定期更新になると思います。
とりあえず週2、3回更新目指して頑張りますので良かったら応援してください。