賢者の孫のお兄ちゃん   作:愛飢夫

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少し成長しました

 森の木で長く生い茂った草の影に隠れ潜み、少し離れた場所にいる兎の様子を窺う。

 

 餌を食んでいた兎が顔を上げ、その場から移動しようと足に力を入れた瞬間、魔力で石の弾丸を創り出し兎に向かって放つ。

 

 俺の放った弾丸は狙い違わず兎の頭に直撃し、昏倒させた。

 

「よし!」

 

 即座に倒れた兎へと駆け寄り、風の魔力を纏わせた手刀で首を掻き切る。

 続けて魔法で穴を掘り、兎の脚を持って穴に血を落として血抜きをする。

 

 仕留めた獲物はすぐに血抜きをしなければ肉が血なまぐさくなってしまうし、血を撒き散らすと他の獣を呼び寄せてしまう。

 

 別に集まってきても前世最後に戦った熊程度なら片手間で勝てるので問題は無いのだが、別に率先して熊を狩りたいわけではないので出会ったなら倒すがわざわざ呼び寄せる必要は無い。

 

 そんなことを考えている間に血抜きも終わったのでこれまた魔法で創り出した異空間に収納し、本日の成果は十分だと判断して家路についた。

 

 どうも、5歳になりました。ルカ=ウォルフォードです。

 

 あれから俺はシンと共にじいちゃんから魔法を学んでいる。

 じいちゃんは魔法に対し造詣が深く、俺とシンに懇切丁寧に教えてくれている。

 

 お陰様で5歳にして俺は前世の強さを超えている。魔法ってつおい。

 

 まぁそれは置いておいて……じいちゃんは俺たちに魔法を教える時めっちゃ楽しそうにしているし、俺たちが教えられた魔法を使えるようになるとめっちゃ嬉しそうにに褒めてくれる。

 森で食料になる獲物を仕留めてくるとこれまた喜んでくれるので俺とシンは夢中になって魔法の練習や狩りに取り組んでいる。

 

 そういえば魔法を教えて貰っているとは言っても実はこの世界の魔法に『詠唱』や『魔法名』は基本的には存在しない。

 

 魔法は『イメージ』。自分がイメージした通りに魔法が発動するのだ。

 

 ただ、そのイメージをすることが難しく、普通に魔法を習うとなると目の前で魔法を使ってもらいそのイメージを具現化しやすくするために詠唱をする人が多いらしい。

 

 なので皆似たり寄ったりな魔法を使うのだそうだ。

 

 これが『基本的には』と言った理由。まぁ『無くても使えるがあったら楽』みたいな感じなんだろう。

 

 それに対して俺とシンは元々サブカルチャーが氾濫し、創造力(妄想力?)は世界の斜め上を行くHENTAI……いや、日本人だったのだからアニメや漫画、ゲームなどで多くの魔法や技を見てきている。

 なのでその『映像』をイメージすればいいだけなので詠唱はしていない。

 たまにはかっこいい詠唱をしてみたい気分にはなるけどね。

 

 ちなみに幼い頃から武術を叩き込まれている俺にアニメや漫画、ゲーム知識があるのはうちの流派が『新しいものはどんどん取り入れよう』という考えだから。

 うちの流派にはアニメや漫画、ゲームのそのままの技だったりアレンジした技が多くあるのだよ。

 

 アニメや漫画、ゲームの技を実際に使いたいオタクくんはうちの道場の門を叩けばいいと思う。

 

 話が逸れてしまったが、じゃあ俺たちはじいちゃんから何を教わっているかと言うと、『魔力の制御』である。

 

 いくらイメージがしっかりしているからといっても、それだけで魔法が発動していては世の中は大変なことになってしまう。

 

 魔法を使うには、魔力が必要だ。

 魔力はこの世界の何処にでも在るものだが、この魔力に干渉して制御出来る人間はそう多くはないらしい。

 とはいえ魔力有りきの世界なので全ての人は無意識レベルで体を動かす時に魔力を使っている。むしろ魔力が無くなると人は生きてはいけないそうだ。

 

 この辺は俺が扱う『気』と同じような感じだね。

 体内を巡る『気』を操作することで身体能力を上げたり怪我や病気を癒したりすることが出来るようになる。

 

 流石にアニメや漫画、ゲームのように気を固めて飛ばしたり、自身を気で包んで浮かせたりは出来ないけど本気を出せば大木を蹴り倒し大岩を粉砕することくらいなら出来るようになる。

 目覚めた時にシンにやったように手が届く相手なら自分の気を流して相手の気を活性化させ回復させることも可能だ。

 

 何故ここで気の説明をしたかというと、気と魔力は割と似ているから気を操作する要領で魔力制御も行えるということだ。

 

 とはいえ最初は似ているが故に魔力を集めて制御しているつもりが気を高めていたり、集めた魔力と俺の気が反発してせっかく集めた魔力が霧散したりもしていたが、慣れてくると何とかなった。

 

 っと、そうこうしているうちに家に着いた。

 

「じいちゃん、ただいま!」

 

 元気よく帰宅の挨拶を口にしながら玄関の扉を開けて中に入る。

 

「おお、ルカも戻ってきたか。おかえり」

「おかえりルカ兄!」

「おじゃましているよ」

 

 森の中では別行動をしていたシンも既に帰ってきていたようだ。

 リビングでじいちゃんとがっちりした体格の男性と3人でなにやら談笑していた。

 

「ミッシェルさん来てたんだ。いらっしゃい」

 

 この人は『ミッシェル・コーリング』さん。

 太すぎず細すぎずのいい感じに引き締められた筋肉を持つナイスマッチョだ。

 今日は私服のようだが、この前来た時には俺の厨二心をくすぐるかっちょいい鎧を着用していた。

 

 何をしているのかは聞いてないけど、着ていた鎧に紋章が刻まれていなかったことからどこかの騎士団に所属しているとは思えない。

 なので勝手に冒険者なのかなと思っている。めっちゃ強いし。

 

 そんなミッシェルさんは時々じいちゃんを訪ねてきては俺とシンに魔法以外の剣術や槍術、弓術などの武術を教えてくれている。

 じいちゃんもある程度は武術を修めているがあくまで魔法使いなのでミッシェルさんには遠く及ばないとのことだ。

 

 ちなみに俺の見立てではじいちゃんとシンは互角、ミッシェルさんは俺が全力で気と魔力による身体強化を行ってようやく互角といったところ。

 10歳までには気を使わず魔力による身体強化のみで、15歳までには気も魔力も使わずに勝てるようになりたいと思っている。

 

「ほっほ。それで、ルカは何を狩ってきたのかのぅ?」

「今日は森兎が4匹とホロウ鳥が2羽だよ! それと美味しそうなキノコ!」

 

 日本では兎の数え方は『羽』だったがこの世界では『匹』を使う。

 日本で『羽』を使うのは宗教的な説とぴょんぴょん跳ねる様子が鳥を連想させるという説があると聞いたことがある。

 

 とりあえず美味いので数え方は何でもいいと思う。

 

「ほっほ、ルカ、このキノコは毒キノコじゃから取ってはいかんよ」

「そうなの? 食べたらどうなるの?」

「お腹を壊して苦しみながら死ぬぞ」

「怖すぎ笑えない」

 

こんなに色鮮やかで美味しそうなのに……

 

「はっはっは! キノコについては要勉強だな! それよりルカもホロウ鳥を狩れるのか」

「森兎は魔法で狩ったけど、ホロウ鳥はまだ魔法じゃ無理だから投石だよ!」

 

 俺はまだそこまで魔法を上手く扱えないので魔法を使うよりその辺の石を拾って投げた方が手っ取り早くて強いのだ。

 

「その方がすごくね?」

 

 そう言ってシンも話に入ってきたのだが、俺としては狩りは魔法の練習だと思っているので投石で狩るのはなんだか負けた気持ちになってしまう。

 

「でもシンは魔法でホロウ鳥を狩ったんだろ?」

「そうだけど……俺は投石でホロウ鳥は狩れないよ」

「シンは貧弱だからなー!」

「ルカは魔法下手くそだからなー!」

「なんだとこのもやし野郎!」

「やんのかこの脳筋ゴリラ!」

 

 互いの胸ぐらを掴み合い、メンチを切り合う。

 

「ほっほ。仲がいいのぅ」

「元気もありあまっているようだし、これならもう少し稽古を厳しくしても良さそうだな!」

 

 俺たちが睨み合っている間にどうやらミッシェルさんの稽古が厳しくなることが確定したらしい。

 

 シンは絶望したような顔をしているが、俺としては望むところだ。

 

「よっしゃ!」

「うへぇ……」

 

 喜ぶ俺と落ち込むシン。対象的な反応をする俺たちを見て、じいちゃんとミッシェルさんは楽しそうに笑っていた。

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