連邦の白い棺桶に乗ってしまった…(助けて)   作:デーデーデー

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Beginning編 回顧1

 結局、俺にとっての、この戦争は何か意味があった事なのだろうか。

 

 俺が自らの致命的な状況に気がついたのは、ジオンがサイド7の連邦軍のV作戦の研究施設を襲撃し、自身がRX-78ガンダムに乗り込んだ時の事だった。

 単なる整備兵であった俺は上官からの "誰でも良いガンダムに乗り込んでくれ" という突然の指示に従い乗った事もないモビルスーツに乗り込んだ。

 施設の各所では爆発音が鳴り響き、その音と振動はジオンの主力MSであるザクⅡたったの2機によって、この基地で試験が行われている "百を超える" MSが破壊される度に起こっていた。

 ガンタンクや "多数のガンダム" が破壊されていた。

 

 通信機からは俺の上官が "操作は簡単だ。戦闘コンピュータを起動させるだけで良い" "コックピットに乗り込めば、自動的に君の反応能力に合わせて全ての機能を最適化してくれる" と指示が聞こえる。

 

 俺はその状況、そしてコックピット内の "操縦用コンソール" を見て思い出した。

 ここが機動戦士ガンダムの宇宙世紀の世界であるという事に。

 それだけではない。ザクマシンガン数発で次々と葬られるガンダム。この今の自身の状況に符合する作品はガンダム広しと言えど、そんな作品は1つしかない。

 

 GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH。ガンダム初の実写ゲームにしてその、ゲーム仕様から鬼畜ゲーだのクソゲーの代名詞扱いされ、かの有名なケツアゴシャアを産み出した怪作。あとジーンが大活躍する。

 

 自身が何故、GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHの世界に居るのか、そんな事を考える余裕は無かった。

 宇宙世紀世界においてRX-78ガンダムと言えば、最強のMSの筆頭格だ。強力なルナチタニウム装甲によってザクマシンガン程度の火力は寄せ付けず、強力なビームライフルやビームサーベルによって敵のMSを、ちぎっては投げ、ちぎっては投げする。

 

 しかし、それは、ここが本当にGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHの世界であるならば、通用しない話だった。

 何故ならば、GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHの世界のガンダムはザク以下のクソザコMSだからだ。確かにビームライフルもビームサーベルもある。ザクよりも強力な動力を有しているのだろう。

 しかし、GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHのガンダムは操作方法が簡略され過ぎて、ある意味難し過ぎ、起動すら難しく、装甲はザクマシンガンを数発でも食らえば即ドカンレベル。ビームライフルは撃てるが当たらない。ビームサーベルはあり格闘戦能力は高いがザクの爆発に機体が耐えられない。ザクに殴られて爆散する。ザクに抱きつかれて爆散する。ザクとの力比べては毎回力負けする。唯一頼りになるのは頭部バルカンだけだ。余りにもバルカンが活躍するからバルカンゲーなんて呼ばれ方もしていた。あとは妙に耐熱性だけは高くて片足を失った状態でも盾も構えずに大気圏突入が出来る所か。

 

 そんな有様だ。そんな有様にガノタの間からは連邦の白い悪魔ならぬ "連邦の白い棺桶" や "連邦軍最強のMS(笑)" 呼ばわりされていた。

 そんな有様の可能性が高い物に自身が乗ってしまっている事に気が付いたのだ。それは他の事を考える余裕なんて無い筈だった。こんなMSに乗ってしまっているのだから。

 恐らく、GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHを知っている人間からすれば、仮に自分も同じ状況に置かれれば誰だって絶望するだろう。俺は絶望した。

 

 だが、俺はある意味で幸運だったと言える。何故ならば俺はこのGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHをかなり、やり込んだ経験があったからだ。

 この時はまだ、この事を考える余裕も無かったが、俺はこのGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHの世界に転生(と言って良いのだろうか?)する直前、とある配信者がGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHのクリア耐久をしているのを見て、自分もこのゲームをやってみたいと思う様になり購入した。

 そして、地獄の様な繰り返しの末にこのゲームをクリアした。それどころか、俺は妙な熱が入ってしまい、このゲームをノーミスでクリア出来る様になっていたのだ。

 これで、もしも俺がこのGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHを未プレイの人間であったのだとしたら、即詰んでいた事だろう。

 

 俺は状況を理解すると混乱し絶望し訳が分からなくなったが、だが、このままでは数十のガンダムを葬りさってきたジーン大元帥がここに、やってきて俺はこの白い棺桶と共に殺されてしまう事は理解した。死を避けるにはただ絶望しパニックしている余裕は無く、直ぐに動かなければならなかった。

 俺は状況に混乱し恐怖しつつも、幸運にも迅速な行動が出来た。戦闘コンピュータを無事に起動させる事ができ、ガンダムを起動させる事が出来た。多くのガンダムが起動すらも出来ぬままに破壊されたのを思えば、起動させられただけでも幸運であった。

 

 そして、俺の居る格納庫にジーン大元帥の乗るザクがやって来た。数々のガンダムを葬り去って来たジーン大元帥が乗るザクを実際にモニター越しとはいえ目にして俺は心底恐怖したが、俺の身体は動いてくれた。

 俺は無事、頭部バルカンでジーン大元帥が乗るザクを倒す事に成功。盾を回収して格納庫の外で角待ちしてるデニムの猛攻を何とか防ぎ切り、ビームサーベルで倒す事が出来た。

 ビームサーベルでザクを切ると爆発でコロニーに大穴が空く為、頭部バルカンで破壊できないかとも一瞬頭に考えが過ったが、少しでも判断を間違えば葬り去られるのがこの世界だという事を思い出し、自身の生存を優先して俺はビームサーベルでデニムのザクを破壊した。その後のザクの核融合炉の爆発に対しても盾で防ぐ事に成功。

 スペースコロニーの外に放り出され、そこで遂にケツアゴシャアとも遭遇。それに対しても、上手く対処する事が出来た。

 

 そして救援に来てくれたホワイトベースに回収され、クールになったブライトさんと対面。ブライトさんは人手不足を理由に連邦軍最強のMS(こんなのが連邦軍最強のMS!?)の操縦をお願いされた。連邦下士官待遇で受け入れるとも。

 ただ、このブライトさん。原作よりも性格が優しく暴力も振るわないしクールであるが、超絶短気であり、ガンダムのパイロットになってくれとバッチを手渡してくる時に1秒以内にバッチを受け取らないと、すぐに手を引っ込めてホワイトベースから降ろされる為、直ぐにバッチを受け取らなければならない。

 大抵、ゲームでは初見ではこのバッチを受け取るのはかなり難しくゲームオーバーとなる有名なシーンが現実でも起こった。俺はブライトさんから手が出された瞬間には手を伸ばして無事にバッチを受け取り、こうして、ただの一介の整備兵だった俺は連邦の白い棺桶もとい、RX-78ガンダムのパイロットとなり、地球連邦軍のハニ・アサナ将軍(誰だお前は!?)配下のホワイトベース隊のメンバーとなった。

 

 なお、この時、バッチを渡してくる前にブライトさんとハニ・アサナ将軍が通信をしている場面があったのだが、俺は内心、バッチを受け取らない方が良いんじゃないかと思った。

 そうすれば、ゲームの発言通りならルナ2への医療用シャトルに乗ってこの白い棺桶に乗せられずにすむからだ。しかし、毎回ゲームオーバー画面で生首の状態となるガンダムを思い出し、連邦軍の秘密を知った俺が本当に無事でいられる保証が無いと思い、俺は苦渋の決断でバッチを受け取った。

 今にして思えば、一か八かの賭けでもホワイトベースを降りてれば良かったのかもしれない。そうすれば、その後に味わう恐怖も絶望も俺は味わずに済んだのかもしれないのだから……。

 

 ホワイトベースに乗り込んだおかげで、ようやく、その時の俺は少し落ち着いて自分自身の状況を正しく確認する事が出来る時間を得た。

 まず、第一に、自分が何故、GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHの世界に居るのかについてだが、これに関しては正直、全く分からなかった。状況的には転生と呼んでも良いだろう。何せ、俺はこの時点において、この世界で普通に22年間を過ごしていたからだ。

 

 俺はサイド7出身で、地元の工科大学を可もなく不可も無くの成績で卒業後、連邦軍に入隊し工科大学を出ているという理由から直ぐに整備兵に配属されていた。工科大学には軍の奨学金制度を利用して入学したから、大学の卒業後は、連邦軍に入るか、民間企業に勤めて奨学金の返済をせねばならず、俺は連邦軍に入って奨学金を完全免除してもらう事を選んだ。

 2年間。たった2年間、軍に入っていれば奨学金は全てチャラになって、しかも志願兵だからそれなりの給料と退職金を貰って終わる筈だった。でもそんな人生設計はジオンの独立戦争で見事に粉砕された訳だ。

 まぁ、探せば同じ様な経緯のヤツはごまんと居るありきたりな人生を送ってきたが、しっかりと22年間を過ごしてきた為、これはもう転生と呼んで差支えないだろう。

 だが、肝心の何故、GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHの世界に転生したのかについては良く分からない、そもそも死んだ記憶すらないのだ。最後に覚えているのはGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHをノーミスでクリアできたその瞬間までだ。だから、これを転生と呼んで良いのかも俺は分からなかった。

 

 とまぁ、自身を巡る転生関係の事は結局、良く分からないという結論は出す事ができた。おかげで、これに関する混乱は以降、完全に解消されたと言えるだろう。少なくとも、コックピットの中で状況に困惑し脳味噌がクラッシュする様な事態は防げた筈だ。

 コックピットで前世の記憶に目覚めこの世界がGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHの世界だと気づいた時には完全に頭がクラッシュしていた。あの時の行動は半ば、動かなければ死ぬと条件反射的に行っていた気がする。

 

 一方で、この世界の詳しい状況についても落ち着いた事で見えてくる物があった。それは、この世界は確かにGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHの世界であるものの、それは成功と失敗が完全に融合した世界という事だった。

 成功と失敗。つまりは成功とは正規ルート(主人公が間違った選択をせずにゲームクリアするルート)の事を指し、失敗とは非正規ルート(主人公が間違った選択をしてゲームオーバーになるルート)を指す。

 この二つが同時に存在している状況とはそれ即ち、生き残るガンダムも居れば敵にやられるガンダムもこの世界には居るという事である。

 GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHではゲームオーバーシーンは数多く用意はされているが、あくまでもゲームの正しいストーリー上はガンダムがやられる事は無く、あくまでガンダムは1機しかなく、それを中心にストーリーが進んで行く。

 だが、この世界においては、ゲームオーバーシーンもストーリーラインに含まれている様だった。

 この世界において、ガンダムはジオンによる襲撃前のサイド7の連邦軍の研究施設時点において100機以上が量産されていた(いずれも試作機)。つまり、ガンダムは滅茶苦茶沢山有ったのである。

 この世界においてジーンはあの基地でガンダムを破壊しまくった。これはつまり、GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH的に言えば、破壊されたガンダムは間違った選択をしたガンダムで、俺を含めて脱出に成功したガンダムは正しい選択をしたガンダムという訳だ。

 

 そして、それに伴ってホワイトベースも滅茶苦茶デカい。数十機のガンダムと1機ずつのガンタンクとガンキャノン、それと予備パーツや弾薬を満載出来る位にはこの世界のホワイトベースはデカかった。

 

 GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHにおいて、ガンダムに乗ったのは民間人だったが俺は連邦軍の整備兵だ。この違いはなんだと思ったが、それは単純な事だった。この世界においては俺は沢山居るガンダムの内の1機のパイロットになったのだ。

 恐らくGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHにおいて主人公であった民間人もこの時、ホワイトベースの何処かに居たのだろう。パイロットが多すぎて結局、最後まで接触できなかったから分からないが。

 GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHの主人公であった民間人の様な存在はホワイトベースにおいては稀な存在だった。そもそもあれは、避難中に渋滞を避ける為に軍の基地を無理やり突っ切ろうとしてガンダムに乗るという、とんでもない経緯の人物である為、この世界におけるガンダムのパイロット全体のサンプルとしては例に挙げるのは適切ではないだろうが。

 なお、本人も事情が事情なだけに、この経緯を隠していたのか、それらしい話もホワイトベース内では聞かなかった為に、その人物を特定する事も難しかった(そもそも顔すらも分からない)。

 

 ガンダムのパイロットは大半が軍の施設で働いていた人間だった。俺の様な整備兵や、正規軍人ではないが施設で仕事をしていた軍属の民間人、警備兵、あとは戦闘が始まった時に軍の施設に "運悪く" 逃げ込んできてしまった民間人も含まれる。

 これらのパイロットの数はサイド7から地球へ向けて出発した段階で恐らく数十名は居た。

 

 ホワイトベースにはGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHでお馴染みのあの人物達も居た。

 初対面でガンダムのパイロットに嫌味を言っている様にしか聞こえない発言をする、お調子者感漂うポニテ日系人のカイ・シデン。

 ラッキーボーイだぜぃ☆で有名な面白外国人枠と化した黒人のリュウ・ホセイ。

 GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHでは如何にも、主人公と合わせて仲良し3人組な雰囲気であったが、この世界においてはガンダムの数が多く、パイロットも多い為、ホワイトベースのMS部隊の総まとめ役的な立場だった。

 性格や雰囲気は変わらず誰に対しても、あの態度で接する為、部隊内ではかなりのムードメーカーだった事をよく覚えている。

 

 とはいえ、パイロットの数が多い為、流石に全員と友情を育めてはおらず、現に俺は、二人との関係はそこまで深く無かった。

 例の民間人パイロットは、もしかしたら俺の知らない所でGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH通りの仲を築いていたかもしれないが、それは知る由もない。

 俺はこのホワイトベースが征く先の地獄を知っている為に、そんな誰かと仲良くしようとする様な努力をしているだけの余裕が全然無く、部隊内ではかなり孤立していた。

 二人の明るい様相に励まされ、笑顔を取り戻していくガンダムパイロット達を傍から見て、この内、何人が生き残れるのか、そこに俺は含まれるのか。そんな事を考えつつ、自身の状況に絶望していた。

 今にして思えば、そんな孤立していた俺ですら、たまの会話や、作戦中などでどうしても喋らなければならない時等でも分け隔て無く接してくれた二人は人格者だったのかもしれない。

 



 

 ●RX-78ガンダム。

 正史の宇宙世紀世界においてルナ・チタニウム合金製の装甲を採用しザクマシンガン程度の火力では貫く事の出来ない強靭な装甲を実現し、さらにザクの5倍のエネルギーゲイン、そして戦艦の主砲並みの威力のビームライフル、ビームベルを実現した1年戦争期における文字通りの連邦軍最強のモビルスーツであり、主人公のパイロットとも組み合わせれば、連邦軍どころかジオン軍を含めても間違いなく最強のモビルスーツ。

 ザクマシンガン数発で爆発する事も無ければ、ザクに力負けする事も無い。ビームライフルも撃てばちゃんと当たる。ビームライフルが全く当たらないなんて事は無い。

 

 しかし、この世界におけるRX-78ガンダムは全く違う。この世界におけるガンダムはルナ・チタニウム合金製の装甲は実戦データを記録したコンピュータが搭載された頭部の他には盾のみに採用。

 それ以外はルナ・アルミニウム合金製の装甲が採用されている。ルナ・アルミニウムの採用により、連邦軍はモビルスーツの大幅な軽量化と安価な大量生産を可能とした。史実では43.4tあった重量は10.6tにまで軽量化されている。また、表面加工には特殊な耐熱塗装が施されており、理論上は大気圏突入にも耐えられる仕様だ。

 だが、ルナ・アルミニウム合金の装甲は堅めの装甲車レベルの水準でしかない。ザクマシンガンの攻撃に耐えるなど不可能だった。

 

 さらに、エネルギーゲインについてはビーム兵器を運用する為に恐らくは正史と同等の出力の核融合炉を搭載しているが、この世界の連邦はジオンよりも大型ロボットの開発技術に問題がある様で、強力な核融合炉に対してガンダムの手足が出せる出力は脆弱である。それ故にザクとの格闘戦程度でも力負けしてしまう。

 また、ロボット技術の未熟さは兵器の運用面においても致命的な影響を与えており、手持ち射撃武器の反動を正しく制御できず、命中精度が大幅に下がる結果を齎している。故に頭部バルカンに過度に依存する状況となっている。

 ビームライフルは撃てるが当たらず、ビームサーベルやハイパーバズーカが唯一の救いとなっている(バズーカはショルダーマウントで使用する為、ビームライフルよりも反動を制御できる)。

 影響は兵器の運用面だけではない。防御面にも。ガンダムは低い防御力をルナ・チタニウム製の盾で補う事が出来るが、余りにも非力な馬力故に敵の攻撃を盾で受け止めすぎると腕が耐えきれず防御姿勢が崩れてしまう。

 

 機体制御には連邦がこの点のみはジオンよりも遥かに優れるOS技術の粋を極めた戦闘コンピュータが採用されており、これにより機体制御を移動、攻撃、防御、アクション、のたった4つのコマンドにより出来る様にしている。

 普通に考えれば複雑なMSの操作をたった4つのコマンドで行うなど不可能だが、それを可能にしているのが、戦闘コンピュータの最適化機能だ。戦闘コンピュータは起動時に搭乗者の脳波情報を自動でスキャンし、機体の挙動を搭乗者の反応能力に最適化する。これにより、搭乗者が望む動きを戦闘コンピュータは機体で再現する事ができる。

 これは脳波コントロールとかではなく、戦闘コンピュータが搭乗者のしたい行動をある種、機械的にシミュレートし搭乗者の命令(コマンド入力)でそれを実行に移すシステムだ。

 しかもシステム上、シミュレートされる内容は常に搭乗者が冷静な判断を行った内容が演算される様にされている。

 

 だが、このシステムには致命的な欠陥があり、4つのコマンドの内、正しい選択肢は常に僅かしかない。なぜ、僅かしかないかと言えば、詳しい事は良く分からないが、このシステムは操縦者がコマンドを選択する事に意味があるのだという。

 かなり心理学的要素を含んだ話の様で選択を行わないと、機体動作に問題が生じる様なのだ。それならば、正しい選択肢を事前に教える等の対策も出来そうなものだが、それに関しても、それをすると機体動作に問題が生じるのだという。結果として搭乗者は選択肢のロシアンルーレットをしなければならない。

 そして、間違った選択肢を選んだ場合だが。その挙動はなんと戦闘コンピュータが想定していなかった動きになってしまう為(戦闘コンピュータはあくまでも一番最適化された動きを実行する準備に演算能力の大半を費やしているのだ)、酷いと敵の前でただ棒立ちの状態になってしまったり、などなど挙動に影響が出るというMSとしては酷過ぎる問題も抱えている。

 

 一見して開発のコンセプトが見えにくい様相を呈しているガンダムであるが、その辺は意外にもしっかりと存在している。

 まず、第一の目的はジオンの主力MS、ザクに対抗する為だ。ビーム兵器を採用し機動力や格闘戦においてジオン軍のMSを圧倒する事を目的に開発された。このコンセプトは正史と同じであると言えるだろう。

 しかし、この世界のガンダムにはもう一つのコンセプトが存在した。それはパイロットとして専門的な技能が無くても "誰でも動かせる事" である。

 ジオンとの初戦において連邦は多数の熟練兵を失った。余りにも大きな出血を強いられた連邦は、ジオンと戦うには熟練兵が足りないと判断し、その穴埋めを専門的な訓練を受けていない者に求めたのだ。開戦初期に多くの熟練兵を失ったのは正史でも同じだが、この世界の連邦はその対策として、専門的な訓練を受けていない者をどうにかして使えないかという要らない事を考えてしまった。

 そうして、開発されたのがガンダムに搭載された戦闘コンピュータだった。連邦軍の考えとしては流石に民間人を使うつもりはなかったが、それでも最低限の軍事教練(歩兵としての対人格闘術や射撃訓練)を受けた者達を乗せる事で、戦闘コンピュータの補助によって、その者の戦闘技能を機体へとフィードバックし誰でも、ある程度の戦闘技能を持ったMSパイロットになる事ができると考えたのだ。なるほど。実現できれば、これほど素晴らしいシステムは他にはないだろう。

 

 だが、コンセプトは所詮コンセプト。そうして出来上がった代物は完全に産廃兵器だった。ザクに力負けするのは100歩譲って許そう。ただの連邦の技術不足だ。

 だが、なぜ、格闘戦を想定しているのに、装甲がこんなにも薄いのか。ザクと戦う事を想定しているのに、なぜ、ザクマシンガンにも耐えられない様な装甲を採用したのか(ビームライフルがまともに当たらないとなれば、ビームサーベルによる格闘戦が重要になるのに……)。さらには敵を倒したら盾を構えなければ自分も巻き添えで木っ端微塵になるのに、格闘戦を主軸にしているのはどういう事なのか。それに加えて、事態をさらに悪化させる戦闘コンピュータ。

 ハッキリ言って、矛盾を探し出したらキリがない程、矛盾塗れなのがこの世界のガンダムだ。

 

 唯一、このガンダムに利点があるとすれば、バルカンが正史よりも圧倒的に強いという点だけだろう。この世界のガンダムのバルカンに採用されている60mm口径弾は、なんと超高純度のルナ・チタニウム合金をさらに圧縮処理し強度をルナ・チタニウム合金の理論値の限界値にまで高めた弾薬を使用している。

 正直、こんな物にルナ・チタニウムを使うくらいなら、機体の装甲にまわすべきだが、この世界の連邦軍はMSの装甲にルナ・チタニウムを使用するよりも、徹甲弾としての利用に集中した方が軍全体での運用を考えた時に敵へ打撃力への面から効率が良いと判断した。その為、ルナ・チタニウムの装甲素材としての利用はホワイトベース等の一部の艦船、ガンダムの頭部、盾などに限定されている。

 だが、如何なる経緯があるにしても、バルカンが優れている事には間違いは無い。このルナ・チタニウム合金製の弾丸により、ガンダムのバルカンは非常に高い貫通力を実現し、MSの装甲を貫通するのに充分な威力を有している。さらに、機体の構造上、ガンダムに搭載可能な全ての射撃武装の中で一番の命中精度も有している。バルカンの威力に関してだけは、正史の宇宙世紀世界を越えていると言えるだろう。

 

 1年戦争中にジオンによって鹵獲されたガンダムの評価試験に参加した、とある "緑のおじさん" はガンダムの操縦システムについて、こんな言葉を残している。

 

「何と言うか……この様な表現は私の好みではありませんが、あえて言わせてもらえば、気持ち悪いの一言。で、しょうかね。まるで自分と同じ考え方の常に冷静な人間がもう一人居て、その人物と無理やり二人三脚と同時にオールド・メイド(ババ抜き)をさせられている様な、そんな機体です」

 



 

 サイド7を脱出した後の展開は概ねGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHの展開通りだった。ホワイトベースは地球のジャブローへと向けて針路を取ったものの、地球の衛星軌道上にてケツアゴシャアこと、シャアの追撃にあい、ザクの編隊による攻撃を受けた。

 ホワイトベースはガンタンク、ガンキャノンを直援としつつ、即座に出す準備が整った十数機からなるガンダム "部隊" をムサイを牽制する為に向かわせた。対するシャアはザクの部隊をホワイトベースへと向かわせ、自身はガンダム部隊を迎え撃った。

 

 俺はここでも出撃メンバーに選ばれガンダムに乗って出撃。味方のガンダムと共にシャアと戦った。戦力差はシャアのザク1機に対してガンダム十数機。これが正史の宇宙世紀なら、幾ら相手がシャアとはいえ圧勝確実な状況だっただろう。

 

 しかし、俺達が乗っているガンダムは悲しいかな、正史の激強ガンダムではなく、連邦の白い棺桶なのだ。そして相手は、シャア史上最強(不本意)の異名を持つケツアゴシャア。

 俺たちの部隊のガンダムは次々とシャアによって撃墜されていった。ガンダムを締め壊し、シャアは容易くビームライフルを避け、ザクマシンガンで破壊した。俺はそんな中でも正しい選択をして唯一生き残る事が出来た。

 

 ホワイトベースが地球上のネバダから、諏訪キャノンの俗称でも有名なジオンの謎の超兵器ソア・キャノンによる地上からの狙撃によって地球に墜落し、俺の乗るガンダムもシャアによって足が破壊されGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTH通りに大気圏に突入する事となったが、何とかこの危機を俺は乗り切る事が出来た。

 ハッキリ言って正史の宇宙世紀を知る俺からすれば生きた心地が全くしなかったが、何とかこの大気圏突入を俺は成功させた。半信半疑だったが、この世界のガンダムは本当に極めて高い大気圏突入能力がある様だった。

 

 その後はホワイトベースを発進に障害となるソア・キャノンを破壊する為にラスベガスでの市街地進行に突入。

 ホワイトベースはガンダム部隊をガノタの間ではそのダサさに定評のあるガンダムタンクの状態でハイパーバズーカを装備して出撃。 "何故か" 地雷原の中を無限軌道で進まされた。ブライトさん的には市街地戦はガンタンクのBパーツが適していると判断した様だ(困惑)。地雷、セントリーガン、ミサイル発射機、マゼラアタック、ザクによって犠牲が次々と出る中、俺を含めて一部が市街地の突破に成功。

 残存部隊はソア・キャノンの状況を確認し、ガンペリーにて修理した俺のガンダムのBパーツを含めた他のガンダムのBパーツも輸送し現地で換装し、ソア・キャノンを襲撃した。

 ソア・キャノン攻略は、さながらノルマンディー上陸作戦の様だった。ソア・キャノンが格納されたジオン軍の基地は周囲が完全に平地であり、隠れる場所は一切無く、さらに、そこには多数の砲台が設置されていた。

 

 このソア・キャノンの内部に突入するまでの戦いは今でもたまに悪夢に出る。

 崖を降下し一斉にソア・キャノンへと駆けて向かう俺達のガンダム部隊。それを阻止せんと地面から現れる隠された砲台やソア・キャノンを格納したドームに設置された砲台群。砲台から繰り返される無数の弾の嵐に、選択肢を間違えた仲間のガンダムは次々と破壊されていった。

 ここでの正しい選択肢はハイパーバズーカでの攻撃でも、防御でも、ド派手なアクションでもない。バルカンだ。ただ一直線にソア・キャノンに向かって素早く移動しつつ、最小限の動きで頭部を動かし、バルカンによって砲台を無力化する。それが正解だ。

 俺は正しい選択をし砲台を無力化。俺と同じく正しい選択をして生き残る事が出来た仲間と共にドームの内部に侵入。そこで銀色のグフと対決。ヒートロッド、ヒートサーベル、そしてグフの決死の捨て身攻撃を受けつつも、それらを全て退ける事に成功し、爆発するソア・キャノンからの脱出にも成功した。

 グフに勝って完全に油断していたり、基地の爆発にパニックになり基地から脱出できなかった仲間達を横目に見ながら。

 未来を知っているのだから、仲間達に声をかけるなどして脱出を促すなどしていれば、脱出できた者はもっと多かったかもしれないが、俺はそれをしなかった。いや、厳密には出来なかったと言うべきだ。選択肢を少しでも間違えれば死が確定する様な状況において、知り合って僅かしか経っていない様な他人を気にする余裕などなかったのだ。

 そしてそれについて悔む事も無い。そんな事はこれから先の戦いの連続で考える余裕も無かったのだから。

 

 ソア・キャノンを破壊した後、生き残ったガンダム部隊はホワイトベースへと速やかに帰還する事になった。

 だが、その途中、ソア・キャノン襲撃前にガンダム部隊にBパーツを届けに行くガンペリーを目撃しホワイトベースの位置を把握したシャアがガルマを謀殺するべくこの状況を利用し、ホワイトベースの射線上にガルマの乗るガウ戦闘空母を誘導する事態が発生。

 シャアがガルマを謀殺しようとしているとは夢にも思っていないであろうホワイトベースは偶然の好機とばかりにガウ戦闘空母を攻撃。

 ガルマは突然の攻撃に混乱しつつも、恐らくはこの世界においてもシャアから犯行声明(私の復讐は君から始まるのだ!)からの、謀ったなシャア!しつつホワイトベースへの特攻を実行。

 俺を含めてガンダム部隊は息つく間も無く、ガウ戦闘空母の特攻を阻止する事になった。

 ホワイトベースはガウ戦闘空母に俺達が張り付いているにも関わらず、ミサイル攻撃を実行。一応、流れ弾に注意しろとのお達しは来ていたが、味方が居るのにミサイル攻撃なんて正気の沙汰ではない。実際、ホワイトベースからのミサイルによって少なくない味方のガンダムが誤爆で吹き飛んでしまった。

 俺はこのまま何もしないで、ガウ戦闘空母をホワイトベースにぶち当ててやろうかとも一瞬脳裏を過ぎったが流石にそんな事はせず、ガウ戦闘空母のコックピットをビームサーベルで突き刺し無力化(ガルマすまん)。ガウ戦闘空母の落下軌道を逸らす事に成功した。

 

 ガウ戦闘空母の特攻の回避に成功した後は、そのままシャアとの戦いだ。ホワイトベースへの撤収作業を進めるMS部隊。ガンキャノンは先に格納庫に帰還。ガンダムも残存部隊が速やかに格納庫に帰還した。俺はあえてガンダム残存部隊の最後に乗り込むのを選んだ。

 GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHでのラストバトルに備えた対応だった。ゲームではこの後、リュウの乗るガンタンクが一番最後に格納庫に入ろうとしてシャアに攻撃され、そして格納庫に上がり込んでくる。この状況で助かるには、シャアのザクをカタパルトを起動させてガンダムで押し出すしかない。そうしなければ、ガンダムは格納庫内では身動き出来ない為、シャアによって破壊されてしまう。だから、そうならない様に俺は最後に乗り込んだ。

 

 そして、その通りとなった。ガンタンクが最後に格納庫へと表れ、横からシャアによるザクマシンガンの攻撃(ザクマシンガンの攻撃を2回も防ぐとか、ガンタンクの装甲固すぎィ!)を受けリュウは "カイ!ガンダム!やられ千葉ァ!" した。

 そしてシャアのザクが格納庫に侵入し、壁にかけられたハイパーバズーカを奪取。真っ先にガンキャノンを破壊した。俺はここまでの戦いを経験してきたからこそ言えるが、ガンキャノンは間違いなくガンダムよりも強い機体だ。それを一番、目の前に居る俺のガンダムにではなく、その後ろに居たガンキャノンを狙う当たり、シャアの戦術眼は確かだと言えよう。俺がシャアの立場でも、こんなクソザコMS(ガンダム)なんか後回しにして、ガンキャノンを狙う。

 

 ガンキャノンが破壊され、バズーカの砲口が俺のガンダムに向いた時、俺は意を決してカタパルトを起動させて、体当たりし、そのままの勢いでシャアのザクをホワイトベースから追い出した。俺に続いて他のガンダムも一斉に格納庫から飛び出してくる。

 それからはシャアとガンダム数機による戦いだ。棒立ちでバズーカにやられるガンダム、ザクマシンガンでやられるガンダム、ヒートホークでやられるガンダム、シャアの演説中に原因不明の爆発を起こすガンダム、シャアと取っ組み合いになりザクに情けなく力負けして自分のビームサーベルでやられるガンダム、ザクのパンチ一発で爆散するガンダム。

 

 なお、GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHではシャアの挑発に乗ってホワイトベースのブリッジにハイパーバズーカで誤射する展開があるが、その展開は俺だけが気をつけて何とかなる問題では無い為、通信回線で、撃つなッ!誤射するぞッ!と声を必死に張り上げて味方がやらかす事を阻止する事に成功した。

 

 ちなみに、余談であるが、これはブライトさんとサラ・ホリン少尉(誰だお前は!?)がホワイトベースの廊下で話していた内容を偶然聞いてしまった事なのだが、MSのパイロット達には秘密にされているが、実はホワイトベースが破壊された場合、機密保持の為にホワイトベースに搭載されている全てのV作戦のMSは自壊プログラムが発動し自爆する仕様になっているという。この事は艦内の士気に影響を与える為、隠すと二人は話していた。

 これをこっそり聞いてしまった俺は、GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHでガンダムはやられてないのに、ホワイトベースがやられてガンダムの首がもげてゲームオーバーになるのは、まさかのこれが原因だった!?と戦慄した。いずれにせよ、俺が味方による誤射を防ぐ為に俺らしくもなく声を張り上げたのには、この様な背景がある。

 

 もしも、これでホワイトベースが破壊されてもガンダムが大丈夫なら、ガウ戦闘空母の特攻の時点で俺はホワイトベースを見限ってホワイトベースが破壊されたのを確認した後に直ぐにガンダムを乗り捨てていただろう(ブライトさんや、サラ・ホリン少尉など、ホワイトベースクルーはキャラクターとしては好きだが、自分の命をかける程かと問われたら、それは、はっきりと否だ。それにキャラクターへの好感度以上にガンダムタンク叱り、ガウ戦闘空母でのミサイル誤爆叱り、不満が好感度を上回っている)。

 

 いずれにせよ、ホワイトベースを助け、シャアとの戦いのイベントに進んだ以上、過去の選択について悩んでいる余裕はなく、味方のガンダムが次々とシャアによってやられていく中、俺は必死に選択肢を間違えぬ様に努力しシャアと激戦を繰り広げた。

 俺は選択肢を間違える事は無かった。俺はシャアのザクの腕を切り落とす事に成功。シャアを撤退に追い込む事にも成功。俺は "勝った" のだ。

 

 シャアとの戦いが終わった時、サイド7から脱出した時に数十機は居たガンダム部隊の生き残りは俺だけになっていた……。

 

 ソア・キャノンの脅威を取り除き、シャアも退いたホワイトベースは身を隠していたラスベガスの地から発進し旅立った。

 発進後、ホワイトベースはハニ・アサナ将軍からのホワイトベース全クルーへの激励の言葉プラス、オデッサでの反抗作戦への参加を指示する命令(はぁ!?この惨々たる状況でオデッサ行けってマジィ!?)を受信。ブライトさんはホワイトベースの針路をジャブローから、オデッサへと変更。

 さらに、そのちょうど同時刻にジオン驚異の情報伝達メカニズムでガルマの死から、そう時間も経ってもいないにも関わらず、ジオン本国では盛大な国葬をギレンが行い中継された。

 恐らくは、その頃、シャアはガウ戦闘空母4隻を率いてホワイトベースの後背に付いて(流石にここはゲームの様に目視できる距離に居た訳ではなかった)、ハニ・アサナ将軍からの命令の通信を傍受しつつ、また会う時を楽しみにしているぞと言いながら、高笑いをしていた事だろう。

 

 俺はGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHのシナリオで登場したイベントを全て生きて消化する事に成功した。

 

 しかし、ここまで、ただでさえ精神をすり減らし俺に絶望を齎した激戦の数々は、俺にとって真の意味で、ただのチュートリアルに過ぎなかったのだ……。

 この世界の真の洗礼はまだ始まっておらず、俺にとっての本当の地獄はここから始まったのだ。

 

 

 

 

 シャアとの戦いを終えた俺は安堵していた。GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHに登場したシナリオを全て乗り越える事が出来たからだ。

 しかし、そんな甘い感情は戦闘から数十分後にホワイトベースに届けられたハニ・アサナ将軍から通信によって急激に氷点下にまで冷め、俺を再び、いや、今までよりもさらに強い絶望感へと叩き込んだ。

 

 確かにGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHで登場したシナリオは終わった。だが、俺はこの世界を生きているのだ。つまり、俺にとっての戦いはまだまだ続くという事だ。

 それを示すかの様にハニ・アサナ将軍から示されたホワイトベースのオデッサでの反抗作戦の参加の指示。そう、俺の戦いはここで終わりなのではなく、俺はむしろここから、あの白い棺桶(ガンダム)に乗ってさらに激しさを増すであろう1年戦争を戦わねばならないのだ。

 冷静に考えれば、この世界を生きているのだから、ゲームのシナリオを消化したとて、そこで終わりにはならないであろう事はもっと早くに気づいも良い事だっただろう。

 だが、この時の俺は前世の記憶を思い出して以来、生き残るのに必死で完全に一杯一杯で、こんな簡単な事も考えられない位、追い詰められていたのだ。

 もしかしたら、無意識的に考えない様にしていたのかもしれない。だって、ここまでの絶望は他に無いのだから。

 

 命令を受けたホワイトベースは北米大陸の西沿岸沿いを飛行しながら、アラスカに至り、そして、そのままシベリア方面から北極圏を駆け抜けてオデッサへと向かう針路をとった。

 正史では太平洋を横断して中央アジア方面からオデッサへと向かう針路をとったが、この世界では針路が大幅に違う様だった。俺はなんで針路が正史と違うのか訝しんだが、思い返せばGUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHでハニ・アサナ将軍の通信をシャアが傍受している時にシャアが見ている画面には確かに太平洋を横断せず、大陸伝いに行く針路が表示されていた様な気がした。

 

 ハッキリ言って地獄の様な戦いだった。それまでの戦いが可愛く思える位に。俺は人生で初めて諦めて自分の死を覚悟した。

 戦闘規模としては正直、それまでと余り変わらない規模の物が多かったが(戦闘回数は体感で激増したが……)、ラスベガスでの戦いより先は俺が全く知らない未知の領域なのだ。正しい選択肢を知る訳でもない。絶望し死を覚悟して当然だった。

 しかも、航路的にも非常によろしくなかった。何故ならば、この世界のホワイトベースが選んだ航路は思いっきり、ジオンの勢力圏内だからだ(こんな航路を選ぶとか正気か!?)。

 

 不幸中の幸いだったのは、ランバ・ラルに遭遇しなかったという点だろう。もっともランバ・ラルに関しては声的にソア・キャノン内で遭遇した銀色のグフがランバ・ラル疑惑(そうじゃない可能性もある)がある為、既に倒したという見方もできるし、もしくはこの世界には存在しなかったという可能性もある(セイラ、ハヤト、フラウ、ミライ、マチルダなどなど、本来正史で登場したお馴染みの人物達がこの世界においては存在していない例も多い)。真相は今も分からない。

 

 俺はシャアとの戦いの後の数日後には直ぐに次の戦闘に参加した。通常のザクの編隊とマゼラトップによる攻撃だった。迎撃に当たったのは俺、カイ、リュウの三人だ。ガンキャノンとガンタンクは既に失われてしまった為、カイとリュウの二人はガンダムの予備パーツを組み上げた機体に乗り込む事になった。

 

 正直に思い返せば、俺はこの戦いで遂に命運が尽きて死ぬと思っていた。正しい選択肢を知らないのだから当然と言えば当然と言える。GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHを初見でノーミスでクリアする様なものだからだ。

 だが、俺はこの戦いに生き残った。当たらないビームライフルで敵を牽制し、その隙に敵に接近してビームサーベルで切りつけたりバルカンでバルカンしてバルカンしたりした。

 何度も選択肢を選んだが俺は間違える事なく、戦いを生き延びる事ができた。俺は運が良かったとこの時は思った。

 GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHでもこういう事が無い訳ではない。俺は生憎、経験はないが、実況動画とかでたまにノーミスで一部のステージを突破出来た配信者を何人か見た事がある。俺もこの域に達したのだろうと思った。

 

 だが、その次の戦いも、さらに次の戦いも、さらに次の次の戦いも俺は選択肢を間違える事無く生き残った。

 

 流石にここまでくると、ただの偶然では片づけられなくなった。

 しばらくは、その理由について全く心当たりも思いつかない日々を送ったが、やがて俺は実戦の中で、自分が直感的にどの選択肢が正しいのかが分かる様になっている事に気がついた。

 分かるのだ。どの選択肢を選んだ方が良いのか。理由はない。直感的に。

 最初は自分が生き残る事だけで精一杯だったのに、やがて戦いの中でも、戦術的な事を考える余裕まで出てくる様にまでなった。例えば、カイやリュウを援護した方が良いのか悪いのかなどを考える余裕ができた。

 ブライトさんや、カイやリュウはそんな俺を見てガンダムをここまで上手く操れる人間は他には居ないと言って、俺の事をニュータイプなんじゃないかと言った。

 

 俺は自分の事をニュータイプだとは思ってはいない。正しい選択肢が何故か分かる以外には、特にこれと言ってニュータイプらしい超空間認識能力も無いし、相手の思考が読み取れる訳でも無いし、それに、それまでの戦闘でなんとか敵を退けられてはいるが、撃墜数自体も一応は恐らくは連邦軍内でエース級として扱われる位の戦果は身分不相応ながらも挙げているとはいえ、本来のガンダムのパイロットであるアムロなんかに比べたら雀の涙程の戦果しかない事から、こんなのをニュータイプと呼ぶにはおこがましいからだ。

 

 だが、ニュータイプではないにしても、ここまで正しい選択肢を選び続ける事ができている事から、これを全て偶然で片づける事はできず、自分の身体に何かが起こっている事だけはそうなのだろうと思った。

 戦場の極限状況下で何か人間が持つ潜在的なものが目覚めたのかもしれない。もしくはニュータイプではあるのかもしれないが(だって俺、生まれも育ちもずっと宇宙のスペースノイドだし、あり得ない話ではない)選択肢を選ぶ事に対してのみに能力が開花した、かなり限定的なニュータイプなのだろうという結論に自分で達した。

 とはいえ、いかなる能力とはいえ、正しい選択肢が直感的に分かる事はありがたい事だった。安心はできないが、当初程の常に張り詰めた絶望感は少しは薄れた(完全に消えた訳ではないが……)。頼れるものがあるというのは良い事だ。

 それからは、俺は戦闘中は自分の直感を半分信じて戦う事を心がける様になった。本当に自分に、そんな能力があるのか確信が持てない為、完全な信頼を置く事はできないが、それでも生き残れる可能性が少しでも上がる方に俺は賭ける事にしたのだ。

 

 そうして、あるかも分からない不確かな "直感" に僅かに縋り付ける希望を見出した俺は0079年11月、遂に発動されたオデッサ作戦に参加する。

 

 オデッサ作戦。 

 ジオンの地球降下作戦によって占領された欧州方面の重要な資源工業地帯を連邦が奪還し、ジオンの継戦能力を削ぐ事を目的にした連邦軍によるジオンに対する一大反抗作戦。

 

 この作戦はこの世界においても実施された。

 そして、それと同時に今にして思えば、ここが正史とこの世界の歴史とを分かつ分岐点の始まり……。

 

 いや、分岐点自体はそれよりも、もっと前から……この世界のガンダムが産まれた時には既に始まっていたが、それが明確な形で露わになったのが、このオデッサ作戦だったのだ。

 

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