連邦の白い棺桶に乗ってしまった…(助けて)   作:デーデーデー

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Beginning編 回顧3と始まり

 それは、薄々と気づいていた事だった。

 ガンダムに乗った時から。敵とガンダムで戦ってから。オデッサの戦いを垣間見ながら。シャアと戦ってから。敵とFAガンダムで戦ってから……。

 

 GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHを実際にプレイしていたり、実況動画やプレイ動画を見た事のあるガノタならば、一度は思った事がある筈だ。

 

 ザクマシンガン数発で破壊されるガンダム。ビームサーベルで敵を倒したら、その爆発で破壊されるガンダム。ザクに力負けするガンダム。当たらないビームライフル。地雷やセントリーガンやマゼラアタックに成すすべもないガンダム。盾で防御してたのに何故か万歳しながら、やられるガンダム。ザクのパンチで爆散するガンダム……。

 

 こんなのが、 "連邦軍最強のモビルスーツ" とかなんとか呼ばれている……。

 

 これ、ただのパンジャンドラムみたいな欠陥兵器や珍兵器の話じゃなくて、連邦の命運をかけた "V作戦" の要とも言えるMSの話なのである。

 

 皆、思った筈だ。

 こんな欠陥兵器を基に連邦はMSを作って本当に大丈夫なのか?……と。

 

 その懸念は見事に的中した。

 的中してしまった。

 

 0079年12月14日。

 連邦軍のチェンバロ作戦が発動。連邦軍は本格的に制宙権の確保、ジオンへの大規模作戦に乗り出した。この世界においても連邦軍は正史と同じ事を行った。

 艦隊戦力の打ち上げ。 "ガンダム" を参考に開発した連邦軍念願の量産型MSの大量投入。

 つまり、正史において連邦軍初の量産型MSであった "RGM-79ジム" がこの世界においても爆誕したのだ。

 あいにく、連邦軍初の正式量産MSの立場はこの世界では陸戦型ガンダムに譲ってしまったが、それでも宇宙戦闘可能な正式量産MSという文脈に限定すれば、間違いなく連邦軍初の正式量産MSと言えるだろう(ちなみに、あとボールもちゃんと生まれた)。

 

 12月24日には連邦軍がソロモンを陥落させたとの報が、その時は地球を挟んで反対側の宙域に居た俺を含めたホワイトベースの面々にも届いた。

 ホワイトベースの艦内では各所でソロモンの陥落を祝う歓声が聞かれたのをよく覚えている。

 

 歴史は正史通りに進んでいる。この時の俺はそう思っていたのだ……。

 

 そうではなかった。

 

 俺達が連邦軍の本隊から離れてゲリラ的な活動に勤しんでいた12月29日……。

 ジオンはルナツーへの大規模攻撃を実行。後に連邦側ではルナツー攻防戦、ジオン側ではルナツー攻略戦と呼ばれる戦闘が勃発したのだ。

 

 ホワイトベースはこの報に大混乱に陥った。

 連邦は順調に勝ち進んでいた筈ではなかったのか。何故、このタイミングでルナツーが攻められているのか。様々な困惑が渦巻き、そしてそれは俺も同じだった。

 そんな中、明らかに慌てた連邦軍本部より命じられたホワイトベースも至急、ルナツーへと急行し現地部隊を加勢すべしとの命令。

 

 命令を受けてホワイトベースは現行の任務を中断してルナツーへと向かった。

 そこで俺はジャブローでシャアと戦った時の次位には命の危険を感じる戦いを経験した。

 

 そして、それと同時になぜ、反撃にまわった筈の連邦軍が一転して攻め込まれている状況なのかを俺はその戦場で理解する事になったのだ。

 

 俺は飛んだ。飛んで飛んで飛びまくった。

 敵部隊の合間を突っ切り、その通り抜け際にビームライフルからはビーム砲、9連装ロケット弾ポットからはロケット弾をばら撒き、こちらに気がついた敵からのザクマシンガンやビームライフル攻撃を必死に避けまくった。

 俺は敵の密度で言えば、これまでに経験した如何なる戦いよりも、敵が大勢いる戦場を経験した。

 実感した命の危険はジャブローでのシャアとの戦いが最大であり、この戦いで感じた命の危険はそれに勝る物ではなかったとはいえ、ジャブローでの次位には、命の危険を感じる物だった。

 

 全方位から敵の攻撃が飛んでくるのだ。

 それだけではない。これまでの戦闘では敵から攻撃はMSや宇宙戦闘機に限定すれば機関砲、ロケット弾、ザクマシンガン、バズーカが中心だった。ビーム兵器は基本的には艦艇から発砲されるものだった。

 しかし、この戦場においては違った。ジオンもビームライフルを遂に実戦投入し艦艇だけでなくMSもビームライフルを撃ってきたのだ。

 ハッキリ言ってビームライフルは避けるのが実体弾に比べてかなり難しい。それも当然だ。真空においては亜光速で飛んでくるのだ。普通に考えれば狙われた時点でアウトな代物だ。

 それが四方八方から。

 生きた心地が全くしない。むしろあの状況下で生き延びられた事が不思議だ。これは今でもそうだが、俺は自分がどうやってビームを避けられているのか余り分かっていない。とにかく感覚的に選択肢を押しまくってるだけだ。

 

 四方八方から撃たれる攻撃の中、俺はカイやリュウ、コア・ブースターと共に必死に戦った。

 残念ながら、コア・ブースターは2機とも撃墜(コア・ブースターはクッソ強いが、こういう状況では、AMBACできないのが致命打になったのかもしれない……)されてしまったが、俺的には正直、生き残れただけで大満足だ。

 あの戦場の様子を見れば、自己保身が強い俺じゃなくても、誰でもきっとそう思うだろう。

 

 なぜならば、ルナツー攻防戦は完全に……ジオンによる連邦軍の一方的な蹂躙戦と化していたのだから……。

 

 戦力比は圧倒的に連邦軍の方が数的に有利だった。

 艦艇も。MSも。MA以外は正史と同等規模でジオン軍を完全に圧倒していた。

 ……いや、よく考えてみれば、MS部隊の規模はボールも含めて体感で正史よりもジオンの倍近く連邦側の戦力は居たかもしれない……(地球連邦政府は戦争が終わった現在も詳細な投入戦力を公表していない。一応公表している数値はあるが、この数値は明らかに過小だという指摘もある)。

 

 にも関わらず、俺が戦場で必死に飛び回りながら目にした光景は、ジオン軍のMS部隊に次々と喰い破られる連邦軍のMS部隊の哀れな姿だった。

 何故、こんな光景が繰り広げられる事になってしまったのか。

 その原因は明白だった。

 

 連邦軍のMS部隊だ。

 

 端的に言おう。

 産廃兵器ばかりだったのだ。この世界の連邦軍のMSは……。

 

 RGM-79ジム。

 正史においてジムはガンダムを基にコア・ブロックシステムや装甲へのルナ・チタニウム合金の採用を見送りコストを削減し、より量産性を重視して開発され、連邦の工業力を背景とした物量戦の展開にも大きく貢献し、連邦の勝利に大きく貢献した、まさにMS史に名を遺す傑作機と言える非常に重要な機体。

 

 だが、それは、あくまで正史での話。この世界でのRGM-79ジムは正史と比べれば外見や仕様、武装は同じであっても、その戦い様は全くの別物と化してしまっていた。

 

 この世界のRGM-79ジムは、 "あの" RX-78ガンダムを基に作られた。

 あの、連邦の白い棺桶と化したガンダムを、だ。

 

 ジムはガンダムをよりブラッシュアップした機体だと言えるだろう。

 正史においてはジムはガンダムをコストダウンし量産に特化する様に設計された機体だったが、この世界においてはその立場は全くの逆と言える。

 量産性に関して言えば、ジムよりもガンダムの方が。そして、そのガンダムよりも陸戦型ガンダムの方が圧倒的に高い。

 生産費用こそはコア・ブロックシステムを採用しているガンダムの方が高いが、ガンダムのその量産性は折り紙付きだ。

 試作機であるガンダムは百機以上生産され、ガンダムをさらにコストダウンした陸戦型ガンダムは短期に1,000機以上が生産された。

 

 ではジムはどうなのかと言うと、ジムの量産性は比較的正史に近いと言えるだろう。

 これは明らかに、この世界のガンダム系列の機体はジムよりも量産速度が早い事を示し、それと同時にジムの方が作るのに手間暇をかけて作っている事を意味している。

 つまりだが、この世界においてガンダムはジム以下の機体だという事だ。

 これがジムがガンダムをブラッシアップした機体だと言うことを表す良い例と言えるだろう。

 

 ジムがガンダムよりもブラッシュアップされた機体だというのは、その仕様を見ればより分かる。

 まず、ジムは量産性を向上させる為にコア・ブロックシステムはオミット。そして、その最大の特徴として装甲にルナ・アルミニウム合金……ではなく、チタン系合金やチタン・セラミック複合材を採用している。これにより本体重量は41.2t。

 装甲にルナ・アルミニウム合金が採用されずに、チタン系合金やチタン・セラミック複合材が採用されたのは、ガンダムと陸戦型ガンダムがその防御力の無さを実戦で余りにも露呈したからだ。余りにも損失を出したため、危機感を覚えた連邦軍は流石に装甲を強化しなければならないと考え、ルナ・アルミニウム合金よりも、より強固な素材であるチタン系合金やチタン・セラミック複合材を採用した。

 これにより、ガンダムよりも高い防御力と、ビームサーベルで切って敵が爆発しても自機が爆発に巻き込まれて爆散する事も無い防御力をジムは手に入れた。

 

 ちなみに、このチタン系合金やチタン・セラミック複合材の採用の背景にはガンタンクやガンキャノンの存在がある。何故ガンタンクやガンキャノンが出てくるのかと言えば、実はこの世界のガンタンクとガンキャノンは装甲にチタン系合金やチタン・セラミック複合材を採用していたのだ。

 連邦軍はガンダムが次々と破壊される中で、ガンタンクとガンキャノンのたった2機が多くのガンダムよりも長く生存していた事や、特にガンタンクがシャアザクからのザクマシンガンの連続射撃を2回、防ぐ事に成功したという報告が連邦軍の目にとまり、チタン系合金やチタン・セラミック複合材の採用に繋がったという。

 

 この他、ジムは武装や防御装備にビームスプレーガン、ハイパーバズーカ、ビームサーベル、頭部バルカン(ルナ・チタニウム弾)、盾(ルナ・チタニウム製)を装備と、概ね様相はバルカンの弾薬にルナ・チタニウム弾を採用している事以外は概ね正史通りと言えるだろう。しかし、実はこの武装にこのジムの構造上の問題点が表れている。

 

 まず、ビームスプレーガンだが、正史ではビームライフルは技術的問題の他、過剰威力だと判断されてコストダウンの結果生まれた物だとされている。しかし、この世界におけるビームスプレーガンの採用には悲し過ぎる理由がある。

 

 それは、ガンダムの実戦投入により発覚したビームライフル当たらない問題だ。

 

 連邦の大型人型ロボット技術はジオンよりも未熟で、ビームライフルの反動を安定的に制御する事ができず、結果としてビームライフルはただの威嚇兵器に成り下がった。これを受けて連邦軍は当たらないのに高い金と資材を投入してビームライフルをジムに装備させる必要性は無いと判断。ビームライフルを簡素化し威嚇目的に特化してビームスプレーガンを採用した。

 

 次にハイパーバズーカは、事実上のジムが有する唯一の長距離射撃武器として採用された。

 ガンダム、ガンタンク、ガンキャノンの実戦投入により分かったのは、手持ち式の武器の殆どは反動制御の問題から殆ど役には立たないが、ハイパーバズーカの様なショルダーマウント式の装備は反動が手持ち式の武器に比べて制御が容易であるという事だ。

 

 これを受けて連邦軍はハイパーバズーカをジムの実用的な遠距離射撃武器として位置付けた。

 射程はビームスプレーガンに劣るが、当たらないビームと、射程はビームスプレーガンよりも短いが当たるハイパーバズーカ、どちらを採用するかなど、自明の理だった。

 なお、本当は連邦軍としてはガンダムよりも同じくショルダーマウント式の武装を搭載したガンタンクやガンキャノンの方を量産化したかった様だが、残念ながらガンタンクとガンキャノンはラスベガスでシャアに破壊されデータが失われてしまった為に連邦は苦肉の策としてガンダムをベースにジムを開発したという逸話もある。

 ハイパーバズーカの採用はある種、ジムにガンタンクやガンキャノンの役割をさせたいという、この世界の連邦軍の表れだったと言えるだろう。

 

 ビームサーベルと頭部バルカンは、まぁ、ガンダムの装備している武器の中で唯一良い結果を示している為に採用された。

 

 これだけ見ても同じ装備とはいえ、正史とは余りにも様相が違い過ぎるのが、この世界のジムだった。

 

 そして、連邦軍はジム以外にも、ボール、ジム・キャノン、重キャノンといった機体も投入している。ボールは正史と大して性能も能力も変わらないボールだから良いとして……。

 

 ジム・キャノンはジムの右肩に肩部240mmロケット砲を搭載した機体だ。

 正史にも設計コンセプト上はガンキャノンの量産版として設計されたという経緯のある機体として登場するが、この世界におけるジム・キャノンも概ねの概要は同じだ。違うのは、正史が実戦配備を急いでジムの生産ラインを流用したのに対して、この世界のジム・キャノンはガンキャノンが失われてしまった事から、仕方なくジムの生産ラインを流用したという点だろう。

 

 次に重キャノンだが、こいつは恐らく正史に登場しなかった機体だ。

 ルナツー攻防戦が初投入の機体で、ジム・キャノンの肩部240mmロケット砲の命中精度が良かった事を受けて、連邦の技術者が、 "これ、もしかしたらロケット砲じゃなくてビーム砲搭載すれば、今まで威嚇にしか使えなかったMSのビーム兵器をちゃんと兵器として使えるんじゃね?" と思いついた事でジム・キャノンをベースに開発された。

 

 主な装備は右肩にビーム砲、頭部バルカン、ビームサーベル、手持ち武器としてショットガン(驚異のルナ・チタニウム製散弾である)、盾となっている。

 恐らく重キャノンは1年戦争中に連邦軍が開発したMSの中で最も強い機体だ。

 何故ならば、肩に搭載したビーム砲は設計通りの役目を果たし、ちゃんと命中する性能を示し、連邦軍のMSの中で最大の有効射程を誇る機体となった。

 そして、接近してきた敵に対しては盾で防御しつつ、ショットガンで攻撃(なんで、ショットガンなのかって?それは周囲に弾を沢山ばら撒けば近づいてきた敵なら腕の反動制御がクソでも絶対に当たるからさ!)、ショットガンでダメな場合は頭部バルカン、それもダメな場合は、ビームサーベルによる格闘戦で戦う。これが重キャノンだ。

 重キャノンは概ね連邦軍のMSが抱えていた問題にある程度、対処する事が出来た傑作機だと言えるだろう。

 この重キャノンがジムよりも登場が早かったのなら、連邦はジオンに負ける事はなかったかもしれない。だが、現実は非情で、重キャノンの生産数は100機を少し超えた程度だった。

 

 連邦軍はこれらジム、ジム・キャノン、重キャノン、そしてボールを駆使したMS同士の連携戦術を実施した。ぼ、ボール君もほら、一応分類的にはMSだから……(震え声)。

 

 具体的にはジムにはハイパーバズーカとビームスプレーガンのいずれかを装備させた部隊を混合で運用しつつ、ビームスプレーガンで敵部隊を牽制。重キャノンは牽制ではなく普通に敵の撃墜を目指してビーム砲で遠距離砲撃。

 中距離にまで入って来た敵に対してはハイパーバズーカ、肩部240mmロケット砲、キャノン砲(ボール)、ビーム砲(重キャノン)で攻撃。

 近距離にまで接近してきた敵に対しては、ハイパーバズーカを装備していないジムがカバーに入り頭部バルカンで応戦(ジム・キャノンや重キャノンもこれには参加)。

 極至近距離にまで接近してきた敵に対してはビームサーベルで近接格闘戦を仕掛ける。

 

 これがこの世界の連邦軍の基本的なMS戦術だった。

 

 だが、この様な連邦軍のMSの性能や戦術に対して一方のジオンの方はどうだったかと言うと……ジオン軍の運用していたMSは概ね正史と同等か、ザクマシンガンに関しては正史以上の威力を誇っていた。もちろん命中精度に関しても正史と同等クラスだ。

 

 これ、連邦にとっては、ただひたすらに悪夢だったのだ。

 何故なら、これが意味する事はとてつもなく恐ろしい事だったからだ。連邦軍のMSの攻撃は遠距離ではほぼ命中弾を得る事は出来ず、頼みの綱の重キャノンも初戦はルナツー攻防戦であり、その生産数も100機を少し超える程度。

 対するジオン軍はゲルググを始めとして正史レベルの精度でビーム攻撃が出来る。これが意味する事はつまり、遠距離戦において連邦軍のMS部隊はジオン軍のMS部隊にほぼ手が出せぬ程に一方的に撃ち負ける状況だと言う事だ。

 さらに中距離戦においても、連邦軍のMS部隊がハイパーバズーカ、肩部240mmロケット砲、キャノン砲、ルナツー攻防戦からは重キャノンのビーム砲などが主体なのに対して、ジオン軍のMS部隊はビームライフル、ザクバズーカ、ジャイアントバズ、ザクマシンガン。

 ザクマシンガンがある事により、攻撃の手数も相手の方が多い。連邦軍が優れていたのは、事実上近距離戦だけだったのだ(バルカン最強伝説)。

 

 さらに悪い事というのは重なる物だ。

 なんと連邦軍の希望の星であるハイパーバズーカ、重キャノンのビーム砲も連邦軍のMSの武装の中の評価においては優秀な部類に入る命中精度と評されていたが、とうの相手方のジオン軍からの評価は、ジオンのMSのバズーカ系装備やビームライフル以下の命中精度と評されてしまうという中々にお寒い物だったのだ。

 

 この状況で連邦軍のMS部隊に採れる戦術は一つしか無かった。

 それは、遠距離戦だと勝ち目無いから、とにかく接近して物量で押しつぶして戦う!これだ。

 

 後々、聞いた話によると、実際にこれで連邦軍はソロモンを堕としたらしい。

 とんでもない犠牲を出しながら……。

 

 勝てる訳なかった。

 連邦としてはジオン以下の性能のMSでどう戦うか、必死に考えた末でのこの物量突撃戦術だった訳だが、こんな、低性能なMSで、あのジオンを相手に戦争で勝てる訳が無かったのだ。

 

 確かに連邦軍はソロモンを堕とした。

 しかし、ジオンはザクやドム以外にも、ゲルググや、正史に登場したブラウ・ブロ、ビグロ、ザクレロ、ビグザム、サイコミュ高機動試験用ザク、ジオング等々のMAやMSまでも続々と登場させて来た。

 勝ち目なんて最初から、ありはしなかったのだ。

 

 なお、ビグザムに対しては意外にも連邦軍は正史よりも苦戦せずに倒す事ができたというバグが発生している。理由は、この世界の連邦軍のMSのビーム兵器の精度がクソエイム過ぎた為に、ハイパーバズーカ等の実体弾を主軸とした兵器を正史よりも多く投入していた為だ。

 その結果としてビグザム自体はソロモンでの記録を見る限り、正史よりも連邦軍は迅速に倒す事に成功している。

 

 だが、それ以外はからっきしだ。連邦軍は物量戦で押し切ろうとしたが、その物量もジオンを倒すには至らなかった。もっと準備期間が長ければ話も違っていたかもしれないが、1年戦争の間には間に合わず、連邦軍のMS部隊はジオン軍のMS部隊に食い破られた。

 

 12月30日、ルナツーの防衛線は突破され、ジオン軍が上陸。

 ルナツー内での守備隊の籠城戦を経て0080年1月2日、ルナツーは陥落した。

 

 さらには、ルナツー攻防戦と平行して12月31日に敗北を悟ったワッケイン指揮下の連邦軍部隊は苦し紛れにジオン占領下の月面のグラナダへのソロモン落とし作戦を実行。

 しかし、グラナダに残っていたシャア率いる僅か4隻の艦隊に阻まれ、ソロモン落とし作戦は内部で発生させられた核爆発の連鎖反応によるソロモンの破断によって失敗する。

 

 こうして0080年1月3日、宇宙における全ての拠点を喪失した地球連邦政府は戦争継続を断念。

 ジオン公国に対して停戦を求め、ジオン公国もこれを了承。停戦条約が発効され、地球連邦軍は宇宙から完全撤退した。

 停戦とは言う物の事実上、連邦宇宙軍は消滅し、停戦条約の発行までに、まだ解放されていなかったジオン占領下の地球の決して少なくない地域の解放も出来ず、事実上の一部領土の明け渡しも容認する事になり、誰がどう見ても、これは連邦のジオンに対する完全敗北だった……。

 

 停戦命令が下された時、俺はルナツー近傍の宙域に居た。

 防衛線が突破され、戦闘がルナツー守備隊の籠城戦に移行した段階で、防衛線を形成していた連邦軍部隊は崩壊し、ルナツーを死守するべく、あえてその場に残ったり、もしくは事情があって退避できなかった部隊を除けば、生き残った半数近くの戦力がルナツーから散り散りに退避していた。

 ホワイトベースも散り散りに退避した部隊の一つであり、数隻のサラミスやマゼランと合流し艦隊の再編作業を進めていた。

 なお、マゼランには、ハニ・アサナ将軍が搭乗しており、ハニ・アサナ将軍はルナツー攻防戦前にコロニーレーザーによって焼かれたレビル将軍に変わって連邦宇宙軍の総指揮を執っており、今回のルナツー攻防戦にも参加していた。

 そんな敗残兵と化した状態で、ホワイトベース内の格納庫にて、いつでも出撃できる様にスタンバってた時に停戦命令が下され、1年戦争が終わった事を知った。

 連邦の事実上の敗北にホワイトベース内では多くの人員が、あのカイやリュウですら意気消沈の雰囲気を醸し出したが、一方の俺は内心で歓喜し小さくガッツポーズをしていたりもした。

 俺はこんな白い棺桶でこれ以上、命の危険を晒したくなかったのだ。

 

 その後、俺達はハニ・アサナ将軍の命令でミノフスキークラフトのお陰で大気圏降下が出来るホワイトベースはその場にいた残存艦艇の乗組員の一部を乗せると地球へと降下。

 地球のジャブローへと帰投する事となり、こうして俺の1年戦争は幕を閉じた。

 

 ようやくだ。

 ようやく、平和がやってくる。

 

 当時の俺はそう思っていた。

 しかし、その考えが甘かった事を俺は嫌でも認識する事になるのだ……。

 

 

 地球連邦側で1年戦争、ジオン公国側でジオン独立戦争と呼ばれた戦争はこうして終わった。

 終戦後、地球圏は1年位は比較的平和だったと言えるだろう。俺やホワイトベースの面々は殆どジャブローに缶詰状態ではあったが。

 

 連邦にとっての最大の試練は1年戦争ではなく、むしろ戦後と言えた。

 戦後、連邦は混乱の渦に包まれた。

 膨大な犠牲者を出したにも関わらず敗戦(ただの敗戦ではない。誰がどう見ても無残で無様な敗戦だ)した責任を巡って責任の擦りあい合戦が始まったのだ。

 

 最初に槍玉に上がったのは、連邦軍だった。

 地球連邦政府は敗戦の責任を連邦軍に擦り付けつけ、多くの軍上層部の人間が辞任や退官に追い込まれた。ハニ・アサナ将軍もその筆頭例だと言えるだろう。

 

 また、連邦政府は所謂、レビル批判を行った。

 曰くレビル将軍が俗に言う "ジオンに兵無し" 演説をせず、あの時点でジオンと停戦していれば、ここまで犠牲は出なかったという物だ。

 故にこの戦争の結果は、レビル将軍の判断ミスが招いた結果なのだと批判した。

 

 さらにはワッケインによる月面グラナダに対するソロモン落しも、正義の連邦をジオンと同列にまで貶め、スペースノイドの連邦離反を加速させたと批難された。

 実際、ソロモン落し後、スペースノイドは完全に連邦に対して愛想を尽かした。

 1年戦争時点において連邦のスタンスとしては、あくまでグラナダはジオン軍に占領された状態なのであって、そこに住まう人々は、連邦が守るべき連邦市民だった。

 にも関わらず、連邦軍はグラナダの連邦市民ごとソロモン落しを実行したのだ。ソロモン落しはスペースノイドに対して連邦は市民を守らないとの印象を強く付けてしまった。

 

 だが、連邦政府が全責任を擦り付けたいレビルは既にコロニーレーザーで蒸発している為にこの世に無く、ソロモン落としもワッケインは予備役にされる処分は下されたが、敗戦の責任を押し付けるにはワッケインでは余りにも役不足だった。

 

 故に連邦軍内では様々な処分の渦が巻き起こり、当時の軍上層部はほぼ全員が更迭され刷新されたと言っても良い状況にまでなったが、連邦政府の政治家や役人も責任を全て軍に押し付けて、自分達は充実したエリート街道を謳歌する事はできず、世間からの批判の渦からは逃れる事は出来なかった。

 

 国民は政府に対して批判の声を強め、連邦大統領は辞任。政府閣僚も多くは辞任か責任の擦り付けの果てに免職。議員達に関しても、戦後すぐに地球全土で政府に対するデモや暴動が頻発していた事で連邦議会の解散総選挙となり、選挙の結果、当時の与党は歴史的大惨敗となり野党連合による連立政権が発足する事となった。

 

 だが、混乱は収まる事を知らず、ますます加速した。

 地球各地では地球連邦政府に対する不信感の声が高まり、また、真っ先に敗戦の責任を押し付けられた連邦軍内においても、連邦政府に対する不満が高まった。

 

 そして、0081年2月。

 高まった不満は遂に爆発した。

 

 東南アジアの仏教圏地域が南洋同盟と名乗り地球連邦政府からの一方的な離脱を宣言。これを皮切りに、様々な勢力による民主的手段の他、連邦軍や警察組織による軍事的反乱など、様々な手段により地球連邦からの離脱を主張する地域がドミノ倒しの様に出現し、5月には地球連邦からの離脱地域はユーラシア大陸、アフリカ大陸、アジアを中心に実に地球上の3分の1以上にも及んだ。

 これに対し、地球連邦政府は離脱を許さず、軍事力による阻止に乗り出した。こうして地球連邦は1年戦争の終結から僅か、僅か1年ちょっとで新たな戦乱の時代に突入してしまった……。

 

 俺にとってこの戦乱は寝耳に水だった。

 1年戦争末期に起こったワッケインによるソロモン落とし。

 これを聞いたガノタなら、きっとジークアクスを思い出す筈だ。

 少なくとも俺はそうだった。

 

 俺はワッケインがソロモン落としをやったという話を聞いてこの世界はジークアクスルートに入ったのかと思っていた。

 ここまでガンダムで頑張って来たのに戦争に負けるのは、色々思う所はあったが、ジークアクスルートに入るのは、それならばそれで良かった。

 何故ならば、ジークアクスルートに入れば少なくとも5年間は平和な時を謳歌できると思っていたからだ。

 

 しかし、現実はどうだ。

 確かにジオンやサイド6は平和なのかもしれない。

 だが、この世界においては、地球は全く平和では無かったのだ。

 

 地球圏は一気に燃え上がった。

 各地では反連邦勢力とそれを武力で抑え込もうとする連邦軍とが衝突。さらに戦火は地球だけでなく宇宙にも及んだ。

 1年戦争の敗北により地球連邦軍は宇宙より完全撤退したが、実は連邦政府の撤退命令を無視して、かなりの数の連邦軍の敗残兵が宇宙艦艇やMS戦力を伴ったまま、戦争で壊滅したサイド1、サイド2、サイド4、サイド5のスペースコロニーの残骸群に隠れ潜んだ状態であった。

 1年戦争末期、ジオン軍はルナ2の攻略に全力を挙げて集結しており、その隙をついた事で連邦の敗残兵はコロニーの残骸群に逃げ込み隠れ潜む事が出来たのだ。

 

 正史を知る俺からすれば、ネオ・ジオンならぬネオ・連邦と言ったところか。

 

 戦乱の勃発前、これらの敗残兵は一定の秩序だった行動を取っており纏まりがあった。しかし、地球で内乱が勃発すると宇宙の状況は大きく変わった。

 撤退命令を拒否した連邦軍部隊には少なからず、地球出身者が多く存在していた。それらの兵士達の中には自分達の出身地が連邦と敵対する選択を取った者も数多くいた。

 連邦からの離脱を主張する地域の出身者の兵士達は連邦軍が武力で離脱を主張する地域の弾圧を強めると、それに反発し反乱を起こした。

 結果として当初、撤退を拒否したのは皆一様にジオンからの脅威に対抗する為だったにも関わらず、宇宙の連邦の敗残兵達はジオンそっちのけで盛大に内輪揉めを始めた。

 こうして、1年戦争では共に連邦軍の仲間としてジオンと戦った者達同士で盛大なドンパチを地球でも宇宙でも行うに至ったのだ。

 

 そして、連邦が盛大に内輪揉めをするのをラッキー!と言わんばかりにジオンは裏から各反連邦勢力に接触し支援を行い火に油を注いぎ、ただでさえ、1年戦争により衰えていた連邦の体力をさらに削っていった。

 

 そして当時、まだ連邦軍に所属していた俺やホワイトベースの面々はこの不毛な争いに否応なしに連邦軍側の兵士として巻き込まれて行く事になったのだ……。

 



 

●ガンダムタンク Mk-Ⅱ

地球連邦軍が1年戦争後にRX-78ガンダムが、ラスベガスの戦いで行ったガンダムタンク形態を参考に開発したMS。

 

ガンダムタンクとは言うものの、例のガンダムタンクが、コアブロックシステムを利用して合体した代物だったのに対して、ガンダムタンク Mk-Ⅱ(以降、Mk-Ⅱと呼ぶ)は合体した機体ではなく、コアブロックシステムも未採用で、これ自体が1つのMSとして開発されている。ガンダムタンクをより重厚感に満ちた感じにした様な外見的特徴。

 

装備は手持ち装備として100mmマシンガン、ハイパーバズーカ、大型ヒートサーベル(背中にマウント)、爆発反応装甲装着したルナ・チタニウム製の盾を一括で装備出来る。この他、頭部には安定のバルカン。無限軌道が備えられた下半身には、まるで旧世紀の駆逐戦車の砲を彷彿とさせるような125mmキャノンが搭載。

 

Mk-Ⅱの最大の特徴としては4つの点が存在している。

 

1つ目はMk-Ⅱの射撃精度。

Mk-Ⅱの射撃精度は連邦軍のMSの中でも最も優秀な性能を有しその精度はなんとザクやドムに匹敵。これまでの連邦軍のクソみたいな射撃性能のMSと比較すれば圧倒的命中精度を有している。

 

2つ目はビーム兵装が使用出来ないという事。

Mk-Ⅱはガンダムの名を冠しているにも関わらず、ビーム兵装を使用出来ない。これは、機体の構造が影響しており、通常、MSはビーム兵装を使用するに当たって、機体のジェネレーターからエネルギーを供給するが、Mk-Ⅱにはエネルギーバイパス機構が搭載されていない。故に物理主体の兵装のみのラインナップになっている。

 

何故、エネルギーバイパスが無いのかと言えば、これには1つ目の射撃精度の話にも関わってくるが、実はなんと、このMk-Ⅱ、腕の装甲を外した内部の機構は丸っとそのまま、ジオンから連邦軍が鹵獲したドムの腕の内部構造が流用されているのである。ビーム兵装が使えないのもこの為。こんな事をした理由は単純明快で連邦軍MSの致命的弱点である射撃精度を向上させる為。だから、ドムやザク並みの射撃精度を実現した。

 

3つ目は装甲。

それまでのガンダムの名を冠する機体は装甲がルナ・アルミニウム合金で作られていたが、Mk-Ⅱは装甲にジムと同じ装甲を採用しており、ルナ・アルミニウム合金のガンダムよりも高い防御力を有している。

 

4つ目は増設ブースター。

Mk-Ⅱの背中には核融合炉を搭載したバックパックが装着可能であり、この核融合炉のエネルギーを利用した増設ブースター "VOB" が装着できる。このVOBは "ある機体" の為に本来は開発された物だが、Mk-Ⅱにも採用された。

 

このVOBを装着した場合、Mk-Ⅱは宇宙や大気中を飛行する事が可能になる。ただし、本来のVOBは本体重量10tレベルのMSに搭載する予定であったのに対して、Mk-Ⅱの本体重量は56tにも達している為、本来の想定速力よりもスピードダウンしてしまった事や、バックパックの核融合炉の出力だけでは長時間の飛行は出来ない問題を抱えている。

 

そこで、Mk-Ⅱはスピードダウンは解決できなかったが、長時間飛行の問題を解決する為に、VOBの推進力の為にMk-Ⅱ本体の方の核融合炉のエネルギーも推進力にまわす事で飛行時間の延長を実現している。ただし、機体のバランスが非常に悪い為(言ってしまえば、ガンダムタンクの背中にでっかい箒を付けた様なもの。地面にそのまま置くと、後ろに倒れそうになるレベル)、地上で使う場合においては、着陸する場合にはVOBは着陸前に投棄しなければならない。

 

この他、Mk-Ⅱはガンダムシリーズに一貫して搭載されている戦闘コンピュータ―が搭載されている。戦闘コンピュータ―は1年戦争後、酷評されまくり、以降の連邦軍の多くのMSからは廃される事になるのだが、Mk-Ⅱは戦闘コンピュータ―に慣れたエースパイロット向けに開発された為、戦闘コンピューターが継続されている。

 

Mk-Ⅱは宇宙空間では宇宙戦闘攻撃機として。地上においては特定の戦場にVOBで急行、VOBを空中投棄し地面に無限軌道で強行着陸して敵に打撃を与えるというコンセプトで開発された。宇宙での使用は宇宙戦闘攻撃機としてこの機体を見た場合、ビーム兵器が使用できない為に武装が役不足感が否めない為、こういう使い方もできますよ程度の物でしかない為、実質、地球上での運用が想定されたMSとなる。このMk-Ⅱに乗った連邦軍のMSパイロットは、皆一様に連邦軍がこれまでに開発してきたどのMSよりも性能が良い機体と評価している。

 

しかし、生産数は非常に少なく30数機程しか生産されていない。

理由は単純かつ明快で、鹵獲品のドムの腕の内部構造を流用しているから。戦争が終わり、新しいドムが手に入らない以上、連邦軍にはこの機体を量産できないのだ……。

 

ちなみに、30機の内、後期に生産された機体は鹵獲ドムの部品が枯渇しそうだった為に鹵獲ザクの腕の内部構造が使用されている(つまり、これ、連邦がプライド捨てて作った、自分をガンダムだと思い込んでる実質ドムかザクなニコイチ、ヨンコイチ機体なんだよね……)。

 

なお、このMk-Ⅱに乗って戦ったFAガンダムを提案した経歴のある、とあるMSパイロットはこの機体を見て、白目になりながら、この様な意味不明な感想を述べたとされている。

 

「外見だけは昔、pixivで見た "ガンダムタンク オリジナルアレンジ" ってイラストの機体みたいだな……外見だけは。それにVOBくっ付けた感じ……」

 



 

 "どうやら、連中の索敵網に引っかからずに済んだみたいだな。おい、分かってるな!もうじき予定の地点に到着だ!間隔を開けすぎるんじゃないぞ!"

 "言われなくても分かってるぜ!"

 

 Mk-Ⅱのコックピット内でGに耐えながらノイズ交じりのカイとリュウの通信を聞き、それに対し俺は "同じく" と答える。

 

 "センサーに反応有りだ!前に少なくとも戦車12、装甲車7、モビルスーツ6、ファンファン8の隊列確認!"

 "おいおい、あれジムでもザクでもないぞ!あのMSは確か連邦が最近、実戦配備したばかりヤツじゃなかったか!?なんで連中も使ってるんだ!?"

 "大方、スパイにでも盗まれたんだろうさ!それより、もう到着するぞ!ヤツが例の新型と同じだとすると、ビームピストルを持ってる筈だ!ビームピストルとファンファンの有線ミサイルに注意しろ!"

 

 コックピットのモニターには遠くに見える山脈と辺り一面に広がる荒野が広がる。俺は地形マップに表示された自身の機体の位置情報を表すポイントに注目する。俺の機体の右隣にはカイとリュウが乗る2機のMk-Ⅱが映し出されている。

 自機が、ある特定のポイントに到達すると、俺はコマンドを操作しVOBをパージする。横を見れば同じくVOBをパージしたカイとリュウのMk-Ⅱが見れるだろう。とはいえ、慎重な操作が要求される場面である為、2人を見る余裕は無いが。

 

 VOBをパージした事により、推進力を失った俺達の3機のMk-Ⅱは無限軌道を使って地面に強行着陸する。土煙を上げながら無限軌道が唸りを上げて、物凄い勢いで回転し、Mk-Ⅱは着陸時の機体の速度の勢いを落とす着陸滑走を行う。

 

 速度が落ち機体が安定したのを確認すると俺達は、ハイパーバズーカ、125mmキャノンを使用し、攻撃目標の敵部隊の側面に対して斉射を開始。装弾数上、ハイパーバズーカが一番最初に弾が切れ、投棄されると、100mmマシンガンに武器を持ち換え戦う。

 

 これは何処の戦いだっただろうか。

 正直、もう余りよくは思い返せない。俺、カイ、リュウ、そしてホワイトベースの面々は地球で戦乱が始まってから直ぐに、地球連邦軍側の部隊として参戦する事を余儀なくされた。

 俺達、ホワイトベースのパイロット組は、連邦軍の開発した当時、新型のMSだったガンダムタンク Mk-Ⅱが宛がわれ、これに乗って各地の戦場を転戦する事になった。

 

 そして、この戦乱は1年戦争の期間よりも長い実に2年近くもの間続き、その間、俺達は戦いを余儀なくされてしまったのだ……。

 

 数多くの戦いに参加させられ、俺は正直、頭のネジが何本か抜けてしまったのだろう。

 もう色々と麻痺している。1年戦争以降に経験した特定の戦場など、よほど記憶に残る様な印象深い出来事でもなければ、何処であった戦いなのか、俺にはもう思い出せそうにない。

 

 だが、基本的には俺達、ホワイトベースのMk-Ⅱで構成されるMS部隊は、常にこの戦い方だった。宇宙でFAガンダムで経験した一撃離脱戦法を地上にも無理やり当てはめた戦い方をしていた。

 

 宇宙での戦いと違うのは、宇宙では常に高速で飛び回っていたのに対して、地上では高速で飛び回るのは最初だけなのと、宇宙ではゲリラ戦的な戦い方をしていたのに対して、地上では必ずしもゲリラ的ではなく、連邦軍とやり合っている敵部隊の側面もしくは後方から襲撃し敵部隊を混乱させる役回りが多かった事だろう。

 

 俺達は本来ならFAガンダム用に開発したVOBで敵部隊に急速接近し、VOBのパージ後に強行着陸し、とにかく見える敵に対してハイパーバズーカ、125mmキャノン、100mmマシンガンを浴びせて、一通り弾を撃ちまくったら、交戦状態を維持しつつ、速やかにその場から後退し離れるという、連邦軍の主力部隊が敵陣を切り崩すのを、とにかくサポートする役回りだった。

 

 1年戦争が終わって僅か1年程しか経っていないにも関わらず、俺は0081年から0082年までの実に約2年間続くこの戦乱に身を投じ、この様な戦い方でMk-Ⅱで任務に当たり、ただひたすらに反連邦勢力と戦った。

 

 とにかく、とにかく、とにかく、戦って戦いまくった。

 

 ハッキリ言ってこの戦乱は1年戦争以上に終わりが見えない泥沼の戦いだったが、戦いは唐突に終わった。互いに争っているとはいえ、どちらも1年戦争によって深く傷ついているのには変わらない両陣営。故にもはや体力の限界だったのだ。

 地球連邦政府は反連邦勢力と和解。地球連邦政府は反連邦勢力の独立は認めないものの、軍事力を含む広範な自治権を認める事とし、これに反連邦政府も消極的に受諾した。

 このやや連邦に有利な条件で和解が結ばれたのには、泥沼化していたとはいえ、全体的に見れば戦乱は連邦有利の状況だったからだろう。

 

 まったく今にして思えば最悪の日々だった……。

 

 この戦乱期にあえて何か良い事があったかと考えれば、それはガンダムにではなく、Mk-Ⅱに乗せてもらえた事だろう。

 初めてMk-Ⅱに乗って戦えと言われた時は、またガンダムタンクかよ!?と恐怖したものだが、いざ乗ってみると、Mk-Ⅱはガンダムよりも遥かに優れた機体で、それ以前の戦いに比べて遥かに戦いがしやすかった。流石はガンダムの名を冠した中身ジオンな機体なだけはある。

 もっとも、この戦乱以降、Mk-Ⅱ級に戦いやすい機体には二度と俺は乗る事は出来なくなるのだが……。

 

 こうして戦乱は終わった。

 俺はようやく、つかの間の平和が訪れるものだと思い込んでいた訳だが……現実はとことん、俺にとって厳しく最悪な物である事を俺は思い知る事になるのだ……。

 

 結論から言えば、俺を含めてホワイトベースの面々(第13独立部隊)は戦乱が終わる数カ月前に、ジャブローに呼び戻され、そこで上官から現在、連邦政府と反連邦勢力との間で和平交渉が進められており、この戦いは遠くない内に終わるという事が伝えられ、だが、それと同時に戦後、1年戦争中に民間人も巻き込んでパイロットにした上に多数の犠牲者を出したガンダムや、そのガンダムを基にジム等のMSを作ってしまった事などが、連邦政府や連邦軍が世間から追及される要素になり得るとして、そうなる前に予防的処置としてガンダムの試験運用を行ったホワイトベースの面々には連邦軍を辞めてもらうと通告されたのだ。

 

 それは多くの者にとって余りにも理不尽な内容だった。これまで地球連邦の為に必死に戦ってきたホワイトベースの面々は当然、大反発(あの穏健なブライトさんすらキレた。あの人もキレる事あるんだな)。

 だが、欠陥兵器を作って、それに多くの若者を乗せて多数の犠牲者を出した事を追及されるのを恐れていた連邦軍の上層部は、その決定を覆す事は無かった。

 

 ただ一応、連邦軍としてもホワイトベースの働きは一定程度は認めているし、マスコミなどに俺達の方からタレコミをされる訳にもいかない為に、ある代わりの待遇を用意していた。

 

 それは、表向きは第13独立部隊は軍籍を剥奪され部隊は解散となるものの、秘密裏に所属を地球連邦軍情報局へと所属を転換。速やかに現在独立状態にあるサイド7へと移動し、そこで民間軍事会社を設立し、そこに所属し引き続き連邦軍の秘密部隊として活動せよという物だった。

 

 もちろん報酬ははずみ、第13独立部隊の各部隊員には、それぞれ "口止め料" も兼ねて連邦軍から一生遊んで暮らせる、とまでは言わないものの、それなりに大金が支払われ、給与も一般兵よりも高い給与を約束するとされた。

 俺達には、それを断るという選択肢もあった。だが、その場合にはジャブローにて事実上の軟禁状態に置かれるとされていた為、実質、選択肢は無かったが。

 

 結果として俺達は全員、サイド7行きを承諾する事となった。

 

 要は、連邦政府と連邦軍は欠陥兵器を作った責任を俺達に擦り付け俺達を島流しにしたのだ。

 

 第13独立部隊は人員も装備も一緒くたにサイド7へと放逐された。

 ホワイトベースも。ガンダムタンクMk-Ⅱも。当時、遂に完成したばかりだったFAガンダムも。コアブースターも。ガンペリーも。

 

 一方で俺はこのサイド7行きについてどう思っていなのかだが……。

 

 正直、俺的にも、この一件はかなり堪えた。堪え過ぎた。

 これまで俺は必死に戦った。それこそ精神をすり減らして。にも拘らず、あんなクソMSを曲りなりにも何とか、乗りこなして戦っていた功労者に対する扱いがこれか?と。

 

 この時、俺の中で最後まで残っていた何かが壊れた。

 

 俺は前世の記憶を思い出したとはいえ、この世界で連邦市民として生まれ育った記憶も気持ちも消えた訳では無かった。だから、自分が生存する事が一番大事なのには変わらないが、それでも連邦とジオンだったら、連邦の方を応援していた。

 

 だが、この一件以降、俺はこれまでの1年戦争から振り返って戦いに身を投じてきた日々が一体何の為に戦ってきたのか分からなくなった。

 もちろん、自分が生き残る為というのもあるだろう。だが、それ以外には?そう思った時、俺の感情を満たしたのは只ひたすらの虚無だった。

 

 無意味。

 

 俺は文字通り、恐怖とストレスで血反吐を吐きながらやって来た戦いに何の意味も見いだせなくなった。この戦いに意味があると思っていたからこそ、戦い続けられた側面が、ほんの少し位はきっとあったのだ。そして、そのほんの少しが、戦いの中でゴリゴリに削られて、もう限界を迎えていた俺の心の中で他が先にすり減った事で重要になっていたのだ。

 

 だが、それはまやかし。まったく、くだらない戦いの日々。時間の無駄。そう思った。

 思ってしまった。

 

 そう思った時、俺は心の底から、"もうどうなってもいいや" と思った。

 

 自分以外の多くの事が、もう俺には、どうでも良くなってしまたのだ……。

 

 

 そして現在、0085年。

 

 俺の姿はサイド7、スペースコロニー・グリーンノア1の内の俺行きつけの、とあるバーの中にある。俺はバー最奥の席に座り、テーブルの上には南国風の甘いスウィートカクテルの他、インドの菓子であるグラブジャムンやラスグッラが何個か乗った皿、そして電子書籍の内容が表示されたタブレット端末があった。

 スウィートカクテルを飲みながら時折、フォークで菓子を食べ、小説を読んで時間を潰す。ここ1年くらい続けている俺のいつもの休日の過ごし方だ。

 

 宗教的に酒を飲まない地域の中には酒では無く糖分で酔うという行為を行う人も多いのだという。俺は別に無神論者だから、酒は普通に飲むが、それと同時に、めちゃくちゃ甘い菓子も食べている。その為、飲む酒の量が少ないとしても、酔いが直ぐに回るし、そのおかげて自分が読んでいる小説が今どこを読んでいるのか分からなくなる事がよくあるが、別に読み返せば良い。

 

 グリーンノア1。

 俺にとって出身地であるのと同時に因縁の場所。俺がガンダムに乗ってしまった場所だ。

 

 グリーンノア1は、俺にとって色んな意味で思い出の深いコロニーだが、今のこの場所にはかつての面影は全く見えない。

 俺の記憶の中のグリーンノア1は人口が少ないのもあって街よりも川と緑地が広がる自然豊かな田舎と言ってはなんだが、そんな落ち着いたコロニーだ。だが、今のグリーンノア1にはその自然豊かな姿は全く見る影もない。

 

 それも当然だ。

 あの日、ガンダムを含めた連邦軍の試作MSを巡るジオンの奇襲攻撃とその戦闘によってグリーンノア1には大穴が空き事実上グリーンノア1は壊滅した。

 俺はバーの天吊り式モニターに映る、バーの入る施設の外部カメラの定点カメラ映像を見る。そこには、かつての緑豊かな様子ではなく、枯れた自然の拡がるコロニー内の様子が4分割された映像に映し出されている。

 4分割画面はそれぞれ一定時間で映像が切り替わるが、その中には、ザクが爆発して出来た大穴の場所を映した映像もあった。

 

 なぜ、壊滅したにも拘らず、バーなんて物があるのか。

 それはグリーンノア1がある意味ではコロニーとして現在も生きている為だ。もっともそれは健全な状態ではないが。

 

 現在、グリーンノア1は、穴が空き空気が無くなった居住区画内に複数の密閉式の居住棟や多目的棟が設けられ、各棟間を結ぶ様にクモの巣状に連絡通路が張り巡らされている。

 俺が居るのも、そんな多目的棟の一つだ。

 もしも、コロニー内を俯瞰して見れば、通常の外壁(コロニー内の通常、建物等が建っているエリア)の各所に四角い大きな箱物の印象を受ける居住棟や多目的棟があり、その施設間を太陽光を取り込む外壁ガラスも通常の外壁も関係なく、まるで病的にクモの巣状に連絡通路が巣くっているかの様な印象を受ける光景が広がっているのを見る事が出来るだろう。

 

 コロニー自体はその核とも言える居住区画に穴が空いてしまっているとはいえ、それ以外の機構に関しては生きている状態だ。

 つまり、コロニーを回転させ人工重力を発生させ、ミラーで太陽光を取り込んだり、太陽光発電を行ったり、太陽光遠心炉だったり、宇宙港だったり、それらの能力は使えるのだ。

 現在の状況は居住区画に密閉式の各棟を設ける事で、限定的ながらも人間が生活できる環境を整え、それ以外のコロニーの機能も使用している状況だ。

 

 俺はふとバーを軽く見渡す。

 バーには俺以外にも複数の客の姿があった。だが、バーテンダーを除いて、その姿はどいつもこいつも、こいつら絶対まともなシノギやってねぇだろという様な風貌の者達ばかりだった。

 

 もっとも俺も人の事は言えない。

 俺はバーの壁にインテリアとして飾ってある鏡に目を移す。そこには席に座る自分の姿が見える。機動戦士ガンダム第08MS小隊に登場するカレン・ジョシュワ、テリー・サンダースJr、ミケル・ニノリッチなどが着用していたのと恐らくは同じ種類の野戦服をだらしなく着崩した、アナベル・ガトーみたいな白髪のポニーテール姿の男*1

 

 ただ、武人の様な佇まいをしているガトーとは違いその表情に気迫などは全く無い。やつれ、まるで世捨て人の様な印象すら受ける。それは正しく俺の今の姿だ。

 髪型と髪色こそガトーに似ているが、正直、武人気質な彼と比べるのは、おこがましいだろう。ガトーの髪色は恐らく地毛だが、対して俺はというと、俺の髪色は元は黒髪だったが、1年戦争中にガンダムに乗って戦う恐怖とストレスから、気が付けば全部白髪になってしまった。髪が長いのも、もう色々とどうでも良くなって切るのもめんどくさくなったからだ。ガトーと俺は恐らく対局の存在だろう。

 

 自分の姿を見ていても面白くもなんともない。俺は鏡から目線を外すと読書に戻った。そして、読書に戻って僅か数分後、俺の読書はまたもや中断を余儀なくされるのだった。

 

「そんなに甘い物ばかり食べてると身体に障りますよ」

 

 俺はその言葉が俺にかけられている事に気が付き、この世紀末みたいな場に似つかわしくない可愛らしい声だなと思いつつ、声のした方を見る。

 そこには、ベージュ色のラフなレディースのスーツを着た黒髪の恐らくは俺と同年代くらいの女性が立っていた。

 

「……今時の薬は優秀でね。糖尿病の予防薬があるんで心配御無用ですよ」

「あら。結構、お金稼いでるんですね」

「そうでもありませんよ。給料の半分は薬代に消えてますし……それはそうと、あなたの様な女性がこんな所で、しかも、よりによって俺なんかに何かご用で?」

「あなたは、"アブ・ル・ハウルPMC" のパイロット、ライス・ポンペイオさんですよね?」

「……そうですが」

 

 なんだろう……なんか何処かで見た事がある様な……。

 

「ふふ、おたくの社長さんに聞いたら、ここに居るって言ってたから、ぜひ一度会っておきたいと思ったの」

「ブライト社長から?というと……ああ、なるほど」

 

 警護対象か何か貨物の運搬の依頼者だろう。見た目的に "同業者" には見えないし……。

 

「いや、失礼。そうとは知らず。少々、お待ち頂いてもよろしいですか?なにせまだ食べてる途中でして」

「いえ、そのままお食事を続けてくれてかまいませんよ。私から押しかけておいて、中断させるのは悪いですから。相席させてもらっても?」

「ええ、どうぞ」

「えっと何か、お勧めのメニューはあるかしら?」

「それでしたら、ニューヨークチーズケーキはどうでしょう。ここのチーズケーキは美味しいですよ」

「なら、それにするわ」

 

 そう言うと、その女性はバーのウェイターを呼ぶとニューヨークチーズケーキとコーヒーを注文する。そこから何故か注文した品が来るまで謎の沈黙が続いた。

 俺は妙な緊張感を感じながら、少し急ぎ足でテーブルの上の菓子を食べるペースを速める。すると、そうこうしている内に、ウェイターがチーズケーキとコーヒーを運んできた。

 

「まあ!美味しそう!」

「……ここのマスターは昔、有名なホテルのレストランのシェフをしていたみたいですよ」

「そうなのね」

 

 頼んだ商品が来ると女性はようやく喋りだす。俺は妙な沈黙の時間が終わったと安堵した。

 

「サイド7は初めてですか?」

「ええ、今回が初めてね。聞いてはいたけど、正直、想像の遥か上をいっていますね……治安もそうですけど、まさか本当に穴の開いたコロニーを使ってるなんて……」

「1年戦争後の混乱で今やジオンとサイド6を除いた、かつての他サイド宙域は今や、違法薬物やブラックマーケットなどの様々な犯罪シンジケートの温床。連邦軍の残党や、リストラされたジオン兵まで色んな背景の連中を中核とした輩のたまり場……。

 そんな各組織が宇宙港を求めて作ったのが、もっぱらこの場所です。サイド7政府としても、使用できるコロニーがグリーンノア2しかないのは色々と問題があったので、都合が良かったというのもありますが。

 もっとも、田舎過ぎるサイド7政府、連邦の敗残兵、ジオンのリストラ組程度が幾ら集まった所でコロニーを修理するなんていう芸当ができる筈も無く、最低限の設備しか整える事はできずに、今の光景が広がっている訳です」

「お詳しいんですね」

「1年以上は居ますからね。流石に詳しくもなります。

 一応、警告しておきますが、ここでは身辺に気をつけた方が良いですよ?いくら、サイド7が犯罪シンジゲートや軍事会社の協定で戦闘禁止宙域に指定されているとはいえ、あなたの様な女性は良からぬ連中に狙われるので。ここは今、ある意味、宇宙で一番危険な場所だ」

「ふふ、心配してくれるのね。でも大丈夫です。私、こう見えて腕っぷしには自信があるんです」

「そう言うのでしたら、俺からはこれ以上、言う事は無いですが。

 ……ところで、俺に会っておきたいと言っていましたが、何故、俺に会いたかったんですか?」

 

 ニコニコと笑顔を崩さない女性に、ほんとに何者だ?と思いつつも、余り詮索しないのがこの業界のルール。本当はうちの会社の客ではなく、どっかの会社からの回し者の可能性もあるが、その時は、スパイなら情報を渡さない様に発言内容に気をつければ、それで良し。

 何か手を出してくるつもりなら、その時は綺麗な女性相手には忍びないが、ずっと腰の拳銃のホルスターにかけっぱなしの手で拳銃を取り出して応戦するのみだ。

 

「ええ、あなたとは、ぜひ早くお話がしたかったんです。……元第13独立部隊所属で、あのガンダムのパイロットの中で最初の戦いから最後まで唯一生き残ったライス・ポンペイオ中尉。あなたとは」

 

 女性はそう言うと、ある特定の地球の地名が側面に書かれたボールペンをポケットから取り出しテーブルに置く。

 

「…………あんた連邦軍か」

「こういうの初めてするけど何だか秘密部隊って感じがしてワクワクするわね」

 

 ある特定の地名が側面に書かれたボールペンは符号だ。

 俺の所属する表向きはアブ・ル・ハウルPMC。しかして、その本当の姿は連邦軍情報局の宇宙兵器開発部隊。その関係者を示す秘密の符号。それがこの地名入りボールペンだ。

 これを出して俺の経歴や階級まで言い当てたと言う事は……。

 正確な照会は会社に戻ってからでないと無理だが、十中八九、この目の前の女性は "お仲間" である可能性が極めて高い。

 

「名乗り忘れたわね。私はシイコ。シイコ・スガイ。情報局での階級はあなたと同じ。

 今日から、あなたと同じ会社に所属するわ。気軽にシイコと呼んでね……ってどうかしたかしら?」

「い、いえ……真偽は会社に戻ってからでないと無理ですが、まぁ、こんなすぐバレる嘘をつく必要無いですね。

 よろしく……えっとじゃあシイコさん。俺の事も気軽にライスかポンペイオと呼んで下さい」

「それじゃあ、ライス君と呼ばせてもらうわね。これからよろしく。ライス君」

 

 シイコと名乗った女性は手を差し出す。俺も手を差し出すと握手を交わしたのだった。

 

 なお、シイコ・スガイの名前を聞いた時の俺の内心はというと……。

 シイコ!?シイコ・スガイ!?そうだあああああああああああああ!!見覚えある筈だわ!!あの、シイコ・スガイじゃねぇかああああああああああああ!!!!!。

 てか、何で気づかなかったんだよ俺!?ジークアクスで、めちゃくちゃ好きなキャラだったじゃねぇか!!あれか!?有名人と現実で会うと案外、気づきにくいってあれか!?あれなのか!?

 そうだよ!腕っぷしに自信ある筈だよ!だってユニカムだもん!強くてもおかしくないよ!!

 

 ずっと戦ってきたせいで色々とぶっ壊れ、ここしばらく全く感情に浮き沈みがなかった俺の心は久し振りに、めちゃくちゃ動揺していたのであるが、それは秘密である。

 

 あと、口調がシイコさんから情報局のお仲間の符号が出された事で、いつもの、ため口調に一瞬戻ったが、相手がシイコさんである事に脳の処理が追いつくと、俺はシイコさんに、ため口は極力使わない事を決めたのだった。

 

 いや、だってあのシイコさんだよ!?ジークアクス大好き勢でシイコさん大好き勢だった俺からしたら、ため口で話すのはハードル高いって!。

 

「お互い食べ終わったみたいだし、ドック39に戻るなら、良かったらご一緒しませんか?まだここに来たばかりで道に慣れてないの」

「よろこんで」

 

 俺とシイコさんは会計を済ませるとバーを後にした。なお、シイコさんのお代は俺がおごった。シイコさんは申し訳なさそうにしていたが、俺は無理を押し切った。実物のシイコさんに会ったのに金払わせる訳いかねぇよなぁ!?。

 

 バーを出た俺達は荒くれ者共ばかりの施設内を進む。

 今居る施設は小さな街が内包された様な施設だ。まるで新宿歌舞伎町とイオンモールを混ぜてサイバーパンク要素をマシマシに加えたかの様な廃退的で汚い様相が施設中に広がっている。

 ネオンの光の下で荒くれ者が行き交い、まともな国や地域では絶対に規制されている様な売り方をしている過激な売春宿も堂々と商売を行い、壁際を見れば薬物中毒者やアルコール中毒者が倒れている。

 グリーンノア1では割とそこら中で見る事ができる光景だ。

 

 そんな光景をシイコさんは何処か悲痛さを感じる表情を時折浮かべながら見ていた。

 まぁ、地球からここへ初めて来たのなら、当然の反応だろう。

 どこからどう見ても治安が終わって世紀末だし、しかも、ここに居るのは、多くが元々が同じ連邦軍の兵士達だった者達だ。それ故に連邦軍の制服を着ている者もちらほら見える(俺もその一人だ)。

 かつてはジオンの蛮行に皆一様に恐怖し怒り立ち向かった者達だ。だが、今ここに居るのは、当時の感情など今は昔。ただただ欲望に溺れ廃退に身を任せる者達の哀れな末路だ。

 シイコさんから見て、何も思わない方が難しいだろう。

 

「ここには、あちこちに定点カメラのモニターがあるのね」

「監視の為です」

「監視?」

「グリーンノア1は通常のコロニーと違う点が2つあります。1つは1年戦争中に空けられた大穴がある事。普通なら、外壁に守られている筈のコロニー内に容易く戦艦だって同時に数隻も入る事ができる。2つ目は皆、世間から疎まれている事をしている自覚があるから、襲撃に脅えている」

「でも、確かここは戦闘禁止宙域だったわよね?」

「確かに。でも、皆、身内以外は基本的に信用してないし、それに襲撃は、なにも犯罪シンジケートやPMCだけとは限りません……ここの連中は、例えばジオンとかサイド6とか、連邦ですら警戒してる」

「……なるほど。確かにそれはそうね」

「まぁ、詰まる所、こんななりでも皆、警察の摘発が怖いんですよ」

「ふふ、身の蓋もないわね。連邦の人々が受ける犯罪の被害は承服できかねるけど……でも、まぁ、そうね。ジオンが痛い目を見る分には爽快ね」

 

 シイコさんはこれまでと同様、ニコニコと笑みを浮かべて平然とそう言うが、俺には何処か影を感じる発言に聞こえた。

 

 それから、俺達は他愛もない話をしながらドック39⸻つまるところ、俺の所属する会社のある棟へと向かう為に、各棟を繋ぐ連絡通路に到着。連絡通路内の主要な交通手段である4人乗りのエレカに乗り込み移動を始めた。運転は俺。

 移動中、シイコさんはまるで空を眺めるかの様に車外を見るが、連絡通路に透過素材は一切使われておらず、純粋なトンネルである為、天井の照明に照らされたトンネル以外に景色らしい景色は無い。

 

「……本当は少し嫌味の一つでも言おうと思ってたの」

「……嫌味?」

「私は……あの戦争でジムでジオンのMSを100機以上撃墜したから世間からスーパーユニカムなんて言われたわ。自分で言うと恥ずかしいけどね。

 でも、私は自分の事を特別な存在だとは思っていないの。私は何とか、私なりにジムの戦い方を見つける事ができたから生き残る事ができた。ただそれだけ……。

 でも、今はあえて、そのスーパーユニカムの名を出して言わせてもらうと、ジムで100以上のMSを堕とした私から見てジムも含めて連邦のMSは欠陥兵器も良い所だわ。

 だけど……それだけでは片づけられない位、余りにも多くの人があの欠陥品に乗って命を落とした。そして私はそれを間近で見てきた……。

 ジオンも許せなかったけど、こんな欠陥品を作って私達を乗せた事も許せなかった。そんなある日、ここに連邦のMSの基になったガンダムの試験運用に関わったパイロットが居るって聞いたの。しかも、ジム以上に生還率の低いガンダムに初戦からずっと乗って生き残っているって聞いて本当に驚いたわ。

 だから、ひとめ、どんな人が乗ってるのか会って確かめてみたくなったの。そして、あなた達がこんな物を戦場に送り出したから、連邦は負けたんだ!……って一言文句を言ってやろうと思って」

「…………そう……ですか。それで、言う気になったんですか?」

 

 俺は影の差したシイコさんの言葉にプレッシャーを感じる。

 

「いいえ。あなたと今日、少しの間だけどお話してみて、言う気はなくなりました」

「そう……ですか」

「あなたも苦労したのね」

「……ええ。まぁ」

「その髪の毛も染めたり地毛ではないでしょ?」

「……すごいですね。よく気づきましたね」

「ただの勘……だけどね。どうしてガンダムに乗ったのか聞いても良いかしら?」

「いいですよ。面白い話でもないですが……俺は元々はパイロットでは無かったんです。このコロニーで、ただの一介の整備兵でした。

 でも、ジオンの奇襲攻撃で正規パイロットが死んでしまって、俺も基地に避難してきていた民間人と共にガンダムに乗り込む事になったんです。それからは……とにかく、あの産廃兵器に乗って戦いの連続でした。

 本当に毎日が生きた心地がしませんでしたよ……この髪の毛も1年戦争中に真っ白になってしまいました。もともとは黒髪だったんですがね。たぶん、死の恐怖と戦いのストレスが毎日の様に特に最初の方は極限状態が長く続いたんでそれのせいですね。

 何故か変な才能に目覚めたのか、気づいたら最初からガンダムに乗り続けてるパイロットの中で唯一の生存者になってはいましたけど……。

 でも、そんな思いまでして必死に生き残る為に戦ってきましたが、その末路が今って訳です。連邦軍からはガンダムは政治的に厄ネタだからと、追い出され、俺も含めて第13独立部隊はここに流れ着いたと言う訳です」

「そう……お互い大変だったわね」

「俺からも一つ良いですか?」

「ええ、良いわよ」

「シイコさんは、なぜここに?シイコさん程のキャリアがあれば、連邦軍でちゃんと活躍できたでしょう。俺達は秘密部隊ですから結構、日陰者ですよ?公的な記録にも残らないですし」

「……ここに所属していれば、ジオンと戦う機会があると思ったから。正規の連邦軍では、もう宇宙に上がって戦う事は今の現状を見ると到底不可能だもの」

「……そう、ですか」

「いえ、少し違うわね。正直、私はもうジオンはどうでも良いの。それよりも私には、どうしても倒したい男が居るの」

「…………それって」

「戦争に負けても私は負けてない。赤い彗星は私が倒すのよ」

 



 

●サイド7

1年戦争後、サイド6が1年程、ジオンの占領統治下に置かれる中、査察団は来てもジオンに占領さえされなかった1年戦争終結時点でコロニー1つしかない弩田舎サイド。

地球連邦から独立したサイド6の独自政府が樹立されたのと同じタイミングでサイド7も独自政府を立ち上げた。

 

サイド3(ジオン)、サイド6を除いた、かつてのサイドがあった宙域には1年戦争後、降伏を拒否した連邦軍の残党がコロニーの残骸群に隠れ潜んだが、地球連邦が戦乱期に突入すると、残党同士で無数の盛大な内輪もめを行い、残党内の人心が急速に廃退し、0085年現在は、これらの宙域は違法薬物の製造及び密輸、詐欺、身代金目的の誘拐、人身売買、宇宙海賊行為等々etc……が日夜行われる地球圏最大の犯罪宙域と呼ばれる魔境と化している。

 

サイド7は犯罪組織や、これらの危険な宙域で商売を行う民間軍事会社や運送会社の一大拠点の一つと化しており、サイド7はこれで儲けている。大航海時代のカリブの海賊に準えて、宇宙のトルトゥーガとも呼ばれている。かつてのサイドがあった宙域とサイド7は地球を挟んでかなり、互いに距離は離れているが、関係者しかしらない秘密の航路が存在していて頻繁な行き来がされている。

 

サイド7の首都はスペースコロニー・グリーンノア2に置かれているが、流石にコロニー1つでは独立国家の運営は厳し過ぎる為、1年戦争中に外壁が破壊され放棄されていたグリーンノア1をサイド7政府、犯罪組織、民間軍事会社、運送会社などが共同で改修し部分的に使用可能にしている。

様々な勢力からして、サイド7は重要かつ貴重な拠点である為、犯罪組織と民間軍事会社の協定により、サイド7周辺は戦闘禁止宙域に指定されている。

 

こうした経緯もあり、サイド7は宇宙一危険(治安的な意味で)なサイドとして知られており、中でもグリーンノア1は宇宙で最も廃退的な場所として知られている。

 

●アブ・ル・ハウルPMC

グリーンノア1を拠点に活動する連邦軍崩れの民間軍事会社。ペガサス級強襲揚陸艦やMSを運用している。商船の護衛から、犯罪組織間の抗争、物品の運搬まで幅広く依頼を請け負っている。本社の所在地はグリーンノア1・ドック39。

しかして、その正体は元第13独立部隊の人員と機材で構成される連邦軍情報局 "宇宙兵器開発部隊" 。

戦乱後、表向きは軍を除籍された第13独立部隊の転属先。なお、連邦軍はガンダムの試験運用を行った部隊が搭乗していたペガサス級強襲揚陸艦をホワイトベースから1番艦のペガサスだった事にして公文書を偽造し隠蔽工作をめちゃくちゃ頑張っている(政治問題化するとヤバいから……)。

 

●ファンファン

地球連邦軍の戦闘用ホバークラフト。戦乱期において、連邦軍と反連邦勢力の双方でMSの代用戦力として積極的に投入された。MSに対抗する為、1年戦争後に誘導ミサイルの性能のアップグレードが行われており、有線ミサイルカーと同規格の有線ミサイルを採用。これによって命中さえすればザクレベルのMSでもただでは済まない威力になっている。

 

連邦軍ではファンファンⅡと呼ばれる新型機種も開発。この機体は搭乗員を4名に増強し、パイロット以外の他3名が有線ミサイルを操作する事で、有線ミサイルを3発、同時発射し誘導できる。状況に応じてパイロットも有線ミサイルの誘導作業に参加する事も可能で、この場合は4発の同時発射と誘導ができる。また、センサーポール(伸縮棒の先端に簡易センサーを付けた物)と呼ばれる装備を搭載し、これを使用する事で機体のホバリング機能を活かし物陰に隠れつつ、周囲を確認する事も可能にされている。

 

●ライス・ポンペイオ

どっかの元国務長官みたいな苗字の名前の本作主人公。

不幸にも実写版ガンダム準拠の宇宙世紀世界に転生してしまった。転生前は日本人。

戦いのストレスで髪の毛は真っ白になり、1年戦争とその後の戦乱の経験後、色々とどうでも良くなり、髪の毛を切るのもやめてガトースタイルの髪型……ではなく、リトバスの棗鈴みたいな髪型になった。

 

現在の趣味は読書と糖分で酔う事。以前は酒も飲まず、甘いものも好きだが節度を保っていたが、戦乱後に、どうでもよくなり、休日は行きつけのバーで、とんでもない量の糖分を摂取している。

こんなに食ってるのに何故か太らない体質。

 

実はラスベガスの戦い以降、視界が徐々におかしくなりはじめ、人間の姿が二次元キャラの様に見え始める謎の症状を発症している。症状は少しずつ悪化し、戦乱期が終わる頃には極一部の人を除いて完全に見る人が二次元キャラの様に見える様になった。周囲には黙っている。

 

●シイコ・スガイ

アブ・ル・ハウルPMCに配属される事となった連邦軍情報局のパイロット。1年戦争中はジムで100キル以上を達成した唯一のエースパイロットとして、スーパーユニカムと呼ばれる。

なお、この数字は本人が謙遜して言っており、実は正確には正史アムロに迫る140キル近くを成し遂げている。なお、ジークアクスでは100キル以上なのに、この世界では、こんなに撃墜数が異常に伸びているのは、ジークアクスでは連邦軍が本格的に量産MSを投入したのは終戦の1ヶ月前なのに対して、この世界では正史と同じく投入は2ヶ月前となっている事から、ジムで戦う期間が長かったから。

 

ジークアクスの軽キャノンよりもポンコツなジムでこの戦果を……?(恐怖)。

 

ジークアクスではシャアがゼクノヴァって行方不明になった為、シイコの中で一区切りがついて軍を辞めていたが、この世界のシャアはジークアクス世界以上に無双しまくり、さらにはスペースノイドの独立に対して正史のシャアよりも思想が強めだった事が影響して、ソロモン落としの際にオリチャーを発動せず、ゼクノヴァらなかった結果、行方不明にはなっておらず、現在もジオンで元気に健在でいる為、シイコは恋愛も結婚もせず、復讐の機会を伺って軍に所属し続けている(え?結婚してないのにスガイなのはおかしいって?それはこの宇宙の歪みとか多分そんな感じの理由なんだよ!)。

 

ただし、現在は情報局に所属している為、正規の軍籍は除隊扱いにされており、表面的には、あくまでアブ・ル・ハウルPMCに就職した元連邦軍のパイロットの一般人という肩書となっている。

 

●シャア・アズナブル

最強の男。ケツアゴシャア。1年戦争後、ジオンでグラナダを救った英雄としての肩書を最大限生かしまくり、今ではグラナダのキリシアと同じ階級にまで昇進。1年戦争終結後の僅か2年後にギレンの謀殺に成功。現在のジオンはキシリアとシャアの二大派閥体制によって統治されている。

 

なお、キシリアは正史やジークアクスとは違って、シャアへの恋愛というか母性というかを全く拗らせてはおらず、むしろ、このケツアゴをずっと滅茶苦茶警戒し一切の油断を見せていない。それ故にキシリアはザビ家の中で唯一現在まで生き残っている模様。

 

*1
……と本人は思っているが、誰がどう見ても、ガトースタイルの髪型と言うには前髪は全然、オールバックになってないし、ポニテの高さも全然違うしで、どちらかと言うとリトバスの棗鈴の髪型の方が圧倒的に似ているというのは秘密の話。

あなたが連邦兵で以下の中から自由に乗れる機体を選べるなら、どれに乗る?(あ、61式戦車とボールは操縦訓練を受けてもらう事になっちゃうけど、MSは訓練必要無しで操縦知識が無くても大丈夫!最新の戦闘コンピュータ―が君の反応能力に合わせて全ての機能を最適化してくれるから安心!)

  • RX-78ガンダム
  • 陸戦型ガンダム
  • ジム
  • 61式戦車 or ボール
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