連邦の白い棺桶に乗ってしまった…(助けて) 作:デーデーデー
「その様子だと、無事に会えたみたいだな。では、改めて紹介しよう。情報局から増員として、うちの部隊に派遣されてきたシイコ・スガイ中尉だ。今日から表向きは、我が社に所属するパイロットとして活動する事になる。ここに来たばかりで、分からない事もあるだろうから、その時はライス、君が教えてやってくれ」
「了解です」
「それじゃあ、スガイ中尉。そこのライス中尉を使ってくれても構わんから、ドック39内の案内でも受けてくれ。ああ、それと、基本的にこれ以降は、階級での呼び方は無い方向で進めてくれ。一応、我が隊は秘密部隊だからな。スーパーユニカムの力、期待しているぞ」
「はっ」
グリーンノア1内に張り巡らされた連絡通路をエレカで走った俺とシイコさんは、やがてグリーンノア1の無重力区画へとやってきた。そこにドック39と言われるドックがあり、そこが、旧第13独立部隊の面々が現在所属するアブ・ル・ハウルPMC⸻またの名を連邦軍情報局 "宇宙兵器開発部隊" の拠点だった。
ドック39はアブ・ル・ハウルPMCが独占所有しているドックであり、ここに居る者はいずれも、俺達の "お仲間" だ。
この場所に到着した俺とシイコさんは、そのままの足で会社の事務所に併設されている執務室へと向かった。そして、そこで部隊の指揮官兼、この会社の社長として活動しているブライトさんと面会したのだった。
ブライトさん、1年戦争の頃と相も変わらず、ブカブカの連邦軍の制服を着て(なお、この世界の連邦軍はこれがデフォである)様子も当時と殆ど変わりない*1。
そこで、シイコさんが確かに連邦軍情報局のお仲間であり、俺達、宇宙兵器開発部隊に新しく配属された事を俺は確認した。
こういう確認作業は大事だ。シイコさんという超特大ネームドキャラが嘘をついて俺に接近してくるメリットなんて無い為、十中八九 "お仲間" だろうなとは思っていたが、ブライトさんからの正式な確証が示された事で、これでようやく警戒しなくて済む。
執務室でいつもながら、クールで、にこやかなブライトさんと話し、内心で今日も昨日と髪型が違うなーと思いつつ、俺とシイコさんは執務室を後にした。
いずれ、シイコさんも、ブライトさんの髪型が毎日の様に変わる事に気づく事だろう。
「えっと、それじゃあ、何処を先に案内しましょうか。何か希望はありますか?ホワイトベースも含めると、ここ、それなりに広いんで」
「うーん、そうねぇ……」
「今日明日はずっと非番なんで、好きなだけ付き合いますよ」
「それじゃあ、格納庫を見せてくれる?」
「格納庫というと……ドックじゃなくてホワイトベースの方ですか?」
「ええ。ぜひ、本物のガンダムをこの目で見てみたいの」
そう笑みを浮かべて言うシイコさんの表情は何処か怪しく妖艶に感じられた。
シイコさんの望みに従い俺はドック内に停泊しているホワイトベースへとシイコさんを案内する。
ペガサス級強襲揚陸艦ホワイトベース。
正史において、ペガサス級強襲揚陸艦は元々、開放型宇宙空母として建造が進められていたものをV作戦に際してMS運用母艦として改修された経緯を持つ。そして、その2番艦がホワイトベースだった。
この建造経緯はこの世界においても凡そ正史と変わりない。搭載している武装も大口径連装実体弾砲1基、連装偏向型メガ粒子砲2基、連装機関砲18基、ミサイルランチャー40門で正史と叱りだ。
ただし、この世界のホワイトベースは凡そ2つの点が正史のホワイトベースとは完全に異なっている。第一には、ペガサス級の大きさだ。
この世界のペガサス級はデカい。クソデカい。マジでデカい。
どれ位、デカいかと問われれば、MSを100機は余裕で乗せられるレベルでだ。概ね正史のホワイトベースのサイズを全体的に拡大した雰囲気であると言えるだろう。外見は正史と変わらない為、正史を知る俺からすればサイズ感がバグって見えて仕方ない。
第二には0085年現在まで現存している事だ。正史においてはホワイトベースは1年戦争中に撃沈しその短い生涯を終えている。だが、この世界においてはホワイトベースは撃沈される様な被害を受けた事は一度も無く現在まで、ピンピンしている。
連邦軍を表面上は除籍させられて民間に払い下げされた上にアイデンティティの一つである白い艦体がサラミス級みたいな無難なグレー一色に塗り直されている事をピンピンしている表現できるのであればだが(軍上層部はホワイトベースに目立ってもらいたくないのだ)。
そんなホワイトベースの搭乗口から俺とシイコさんは中へと入る。
この世界のホワイトベースは正史よりもデカすぎて初めて乗る人なら、艦内で余裕で迷う確率100%であるが、俺はもうこの艦になんやかんや乗り込んで5年近くになる為、もう慣れたものだ。目隠しをされて手探りの状態でも迷わない自信がある。
慣れたホワイトベースの艦内を俺を先頭にシイコさんは進む。無重力である為、宙に浮いた状態でだ。
そうして、やがて俺達は格納庫へと入る。
「ペガサス級は見た事あったけど、実際に中に入ると本当に大きいわね」
「ええ、広過ぎてよく迷う人がいますよ」
「ふふ、それじゃあ私も気をつけないとね」
「シイコさんはペガサス級は初めてですか?」
「ええ、遠目で見た事はあるんだけど、あいにく乗り込む様な機会はなくて」
この世界のホワイトベースの格納庫は正史と違い段々構造になっている。これはMSや艦載機を多く載せるための機構だ。
だが、それ故に格納庫は異常に広い為、格納庫に入ってもなお、まだ目当ての物が置かれてる場所へは移動が必要だった。
だが、俺達はやがてホワイトベースの左舷最下段の格納庫にてシイコさんが目当ての物が置かれた場所へと到達する。
「わぁ、これがRX-78⸻ガンダム」
俺のガンダムを前にシイコさんは目を細めた。
シイコさんはガンダムの周りを浮きながら見回る。
「私が知っているガンダムとは随分違うのね。この背中のバックパックとかブースターとか盾とか」
「この機体は今の所、ガンダムの最新近代化改修仕様ですから」
俺とシイコさんの目の前にある機体は5年前とはもう殆ど別物だ。
現在のガンダム⸻FAガンダム。
俺が5年前にハニ・アサナ将軍に提出したガンダムの改修案に基づいて大幅に改修された機体だ。
1年戦争中、俺は3つの改修案を提出し、当時は2つ目の案が採用された。だが、戦後も俺の案を基にしたFAガンダムの開発は続いた。
あれから5年の月日を経た現在では3つ目に提示した段階までの開発が既に完了している。
はっきり言ってもう正面から見た様相は素体がトリコロールカラーの普通のガンダムである事を除けばサンダーボルトに登場したFAガンダムと大差ない。
バックパック上の大型メガ粒子砲と6連装ミサイルランチャーと4枚盾装備はまさにサンボルのFAガンダムその物だ。
正面の見た目で違う点はと言えば、手持ちの武器は2連ビームライフルが無くて通常のビームライフルだという点(今は装備していないが)と、足のウェポンベイに搭載された装備位だろう。
もっとも、幾ら見た目が近くとも、中身は全くの別物であるが(本体の防御力は相変わらず紙同然だ)。
「……このバックパックに装着されたブースターがVOBね。大きいわね。
この機体、AMBACはどうしてるのかしら?確か私の記憶が正しければガンダムの本体重量は10.6t程度しかなかったと記憶してるけど、明らかにバックパックとブースターの方が遥かに重いわよね?」
「ガンダム⸻FAガンダムの、AMBACにはVOBを使ってます」
「VOBで?」
「はい。シイコさんの指摘通り、FAガンダムの本体重量は僅か10.6tしかないから、ただバックパックとブースター等の外装装備を付けた状態では、外装装備の重量の方が重くなって、AMBACに支障がでます。
なのでFAガンダムはその問題の解決策としてVOBを構成するブースターのそれぞれが向ける角度を自由に調節できる様になっています。これで、AMBACしています」
「なるほどね……」
「正直、VOBを装着した状態のFAガンダムは、もはやMSと言うより、MAの一種と言った方が良いかもしれませんがね」
「運用はやっぱり無重力環境かしら?」
「はい。VOBを装着した状態では重力環境では今の所、無理ですね。理論上は重力下でも飛べますが、色々と問題が。一応、VOBと本体のブースターで無理やり姿勢制御を行えばコロニー内程度なら安定して飛べるとは思いますが、それが限界です」
「ふーん……なるほどね。武装は何を?」
「頭部バルカンを除けば、基本的には手持ち武器はビームライフル、ビームサーベル。バックパック上の大型メガ粒子砲とミサイルランチャー。脚部のウェポンベイに今装着されているのは3連装の有線式ミサイルランチャーがそれぞれの脚部に1基づつです」
「ビームライフルとビームサーベルはておき、バックパック兵装と有線式ミサイルランチャーは連邦軍のMSでは余り見ない兵装ね」
「脚のは最近、導入されたばかりの新型の試験兵装ですよ」
「ミサイルの誘導方式はなんのかしら?」
「バックパックのミサイルランチャーは通常の誘導方式のミサイルですね。ミノフスキー粒子散布下の環境では誘導性能はないですが、逆を言えばミノフスキー粒子が散布されていない場所であれば、有効な武装なので搭載してます。脚の有線ミサイルは射程5,500mの視線誘導方式です」
「視線誘導?」
「コックピットのモニターと、ミサイルに搭載されたカメラが映した標的の映像を手元の操作盤に映した映像を使って、パイロットが視線で標的を捉え続ける事で戦闘コンピュータ―が標的を認識してミサイルを誘導する新しい誘導方法です」
「……それ戦闘中に出来るの?」
「……かなり難しいですね。使って見ましたが、ミサイル1発なら頑張れば、それなりに精密に誘導できます。でもそれ以上になると、タスクが増えすぎてミサイルからの映像による精密な誘導はもう不可能です。精々、コックピットのモニターに映った敵に大雑把に誘導するのが関の山ですね。でも、シイコさんなら出来るかもしれませんよ?」
「ふふ、流石に私もあんなポンコ⸻戦闘コンピューターで戦闘中にそんな操作している余裕はないわ。と、ちょっと待って。と言う事は、やっぱりガンダムはまだ例の戦闘コンピュータ―を使ってるのね?」
「ええ、もう俺はそっちに慣れちゃいましたからね。今さら普通の操縦は出来ませんよ。悪い意味で」
「そう……これにもアレが……」
シイコさんはガンダムに興味があると言ったが、その興味は俺の予想以上の物だった。
シイコさんはその後もガンダム、厳密に言えばFAガンダムについて、あれこれ質問してきた。装備からジェネレーター、機体の特性から問題点まで色々と。
俺の説明に対してシイコさんは非常によく聞き入っていた。また、説明中、ここが無重力である事を活かしてFAガンダムの周りを飛び回り、かなり興味深そうに色んな角度から眺めて周っていた。そして、時折、FAガンダムを鋭い目つきで、色んな感情を押し込めた様な目で見つめていたのだった。
だが、そうこうしている内にFAガンダムの説明は終わった。余りにもシイコさんが熱心に矢継ぎ早に質問を投げかけてくる為、大方の説明を直ぐに消化し殆ど終えてしまったのだ。
FAガンダムの周りを飛び回っていたシイコさんも一通り見たのか、俺の側に戻って来た。
「付き合ってくれて、ありがとう。大変良く勉強になったわ」
「いえ、聞きたい事があったらいつでも聞いて下さい。それで、俺からも一つ聞いても良いですか?」
「ええ、私ばかり質問しているのも悪いものね。ふふ」
「説明している時に気がついたんですが、もしかして、あのジムって……」
俺はそう言うと格納庫の一角を見る。
そこには1機の見慣れないジムの姿があった。宇宙兵器開発部隊にはジムは配備されていなかった筈だ。だが、見慣れないジムがホワイトベースの格納庫にある。と言う事は。
「私の機体よ。今日、あなたが居ない時に午前中に運び込まれたの」
「やっぱりシイコさんの機体ですか。見ても?」
「あなたの機体を見せてもらったんだもの。もちろん良いわよ」
シイコさんから了解を貰うと、俺とシイコさんはジムに近寄る。
そして近づいて初めて分かった事だが、肩にはシイコさんを表す、魔女のマークが刻印されていた。間違いなくシイコさんのジムだ*2。
ジークアクスを知る俺からすれば、シイコさんのゲルググ(GQ)をそのままジムにしたみたいなカラーリング……うん、ちょっと何を言ってるのか分からなくなる位、混乱するが、そんな感じに見えた。
俺はジムとその周りに置かれた恐らくはジム関連の物資であろう荷物も見る。
「基本的には普通のジムと変わりないわ。マグネットコーティングっていう摩擦キャンセル技術がしてある事を除けばね」
「マグネットコーティング……」
「MSの関節の摩擦を無くす新技術よ。内戦中に私の機体に導入されたけれど、でもまぁ聞かなくても当然ね。今の連邦軍のMS技術は関節の摩擦がどうのと言ってる以前の問題ばかりだもの」
正史を知っている俺からすればマグネットコーティング等、正史に登場した技術ならば既に知っているが、それは口には出さない。
というか、こんな世界でも既に存在していたのか。
「ん?マグネットコーティング以外はと言う事は戦闘コンピューターも?」
「……ええ、そのままよ」
「シイコさんなら、普通の操縦システムの方が良さそうな気もするんですが……というか、重キャノンじゃないんですね。シイコさん程のエースパイロットなら重キャノンも扱えると思うんですけど……」
「確かに重キャノンも使えるわ。けど、1年戦争中に戦闘コンピューターに悪い意味で慣れちゃったの。あなたと同じ。それに、重キャノンはジムと比べると機動力が若干落ちてるの。機動性の面では今でもジムの方が優れているわ」
「なるほど……それにしても、てっきりジムはもう連邦軍では完全に退役しているとばかり思ってましたよ」
「ふふ、多分、私で最後なんじゃないかしら。ジムを現役で使ってるのは。あっでも、こっちの部隊に配属されたって事は私のジムも書類上は退役させられた事になるのかしらね」
「装備はなんなんです?」
「装備も基本は変わらないわ。ビームスプレーガン、ビームサーベル、頭部バルカン、盾。ただ、私はそれ以外に、スティグマとビームバズーカを使っているわね」
「ビームバズーカというと、もしかして、あれですか。あそこにある白いハイパーバズーカナイズされた」
「ええ、そうよ。元々は1年戦争後すぐにビームスプレーガンに変わるジム用のビーム兵器として開発されたんだけど、ジムの退役と "
「あーいえ、はい。ちょっと風の噂で」
「ふーん……」
本当はジークアクスで知ってましたなんて口が裂けても言えん。
「でも、本当にジムなんですね」
「信じられない?」
「いや、信じないわけでは無いんですが、ジムでジオンのMSを100以上も撃墜したのが想像出来なくて」
「ふふ、おかしな事を言うわね。あなただって、ガンダムでずっと生き残ってるじゃない。私からすれば、そっちの方が信じられないわ」
「はは……それは確かに俺も思います。でも本当に良かったですよ。シイコさんが来てくれて」
「そう?」
「そうですよ。シイコさんは見た所、近接戦に特化した戦術が得意なんじゃないかと思うんですが、合ってますか?」
「ええ、その通りよ」
「うちの部隊には、MS乗りが今、実質、俺しか居ないんですよ。で、俺の戦闘スタイルはというと、一撃離脱戦法が専門だから、護衛任務とかの場合、護衛対象ががら空きになってしまう事があってですね。その辺り、戦力が不足してたんです。でも、近接戦が出来るシイコさんが居れば、充分にカバーできる様になります。FAガンダムは戦術的に融通が利かないんで、大変なんですよ」
「MS乗りが実質あなただけ?この船の戦力はどれくらいあるの?」
「FAガンダムが俺の機体以外にも他に2機あります。それ以外だと、今日来たシイコさんのジムを除けば、コアブースターが6機と、殆ど最近は出番も何もありませんが、ガンダムタンク Mk-Ⅱが3機ですね」
「ガンダムタンク Mk-Ⅱ……そんな物もここにあるのね。でも、確か私が聞いた話だと、この部隊には、あなた以外にもMSパイロットがあと2人居るって聞いたのだけど……」
「ええ、俺と一緒に1年戦争を戦ったカイ・シデン中尉とリュウ・ホセイ中尉が居ますよ。ただ、二人とも、今はグリーンノア2で暮らしてて、こっちでパイロットとして仕事はもうしてませんね……」
カイとリュウは戦乱後、連邦軍から俺達が厄介払いで追い出されたのを物凄く激怒していた。
それはもう普段のおちゃらけた感じが嘘かの様に当時は激怒していたのをよく覚えている。2人は人当たりが良く、民間人も含まれるガンダム部隊のパイロット達をその明るい性格でもって牽引してくれていた。俺は、ガンダムのパイロットは殆ど死ぬなと割り切っていた為、無用に関係値を深める様な事はしなかったが、2人はそうではなかった。
そんな2人にとって、この連邦軍上層部からの扱いは何か強く思う所があったのだろう。
ただ、俺達には選択肢は無かった。連邦軍には残る事は出来ず、表面上は軍を辞めてこの秘密部隊に所属するか、ジャブローで事実上軟禁されるかの選択肢しかなかった。
俺達はここまでに地球連邦の腐敗というものを嫌と言う程見てきた。敗戦の責任を全て軍に押し付けようとした連邦政府の政治家や官僚。そしてきっかけは連邦政府からの責任のなすり付けとはいえ、連邦軍も敗戦の責任の擦り付け合いを盛大に行った挙句、当時の軍高官が事実上、総とっかえになった状況、いや醜態の数々。
ジャブローでの軟禁など受ければ、最悪、口封じで殺されてもおかしくはないと皆が思う程に連邦政府は腐りきっていた。だから、俺達の選択肢は実質的には、この秘密部隊に転属しサイド7に放逐される事だけだった。
この状況で、2人はもはや地球連邦そのものに愛想を尽かせてしまったのだろう。サイド7に移ってからは、もう司令部の言いなりは御免だと言って、MSの搭乗を拒否。現在はグリーンノア2で軍から貰った金で道楽の中暮らしている(仕事してなくても、この部隊は実質、口封じの為にあるからサイド7に留まっている限りは、例え仕事をしていなくても、普通の連邦軍将兵よりも多い給与が支払われるのだ)。俺はオブラートに事情をシイコさんに説明した。
「……どうして、あなたは、まだガンダムに乗って戦っているの?」
「…………」
「あなた、ガンダムに乗るのが怖いんでしょ?」
「…………なんで……でしょうね」
「分からないの?」
「…………なんだかもう。色々あり過ぎて分からなくなっちゃったんですよ。今は単に生活の為に乗ってます。ほら、お菓子、酒、予防薬とか色々お金要りますし。もっとも、これに、お金使いすぎなきゃ、直ぐにでもパイロット辞めてるとは思うんですけどね……気づいた時には時遅しってやつです。今の生活が止められなくなっちゃって……ははは。
ほんと、自分でも意味分かんないですね……。頭ではこんな生活もガンダムのパイロットもさっさと辞めた方が良いって分かってるんですけどね。恐怖は相変わらずあるんですけど……でも、なんだが、恐怖も限度を超えると、なにも分からなくなんちゃうんですよね。もう、どうでも良いかなって……。ははは、頭のネジ、何処かに落としてきちゃったんですかね」
「…………そう」
何故、今もガンダムに乗っているのか。その問い対して話した俺の顔を見たシイコさんは、何処か暗い表情を浮かべる。
俺には知る良しは無い事だったが、シイコさんから見た俺の表情はシイコさんに対して弱弱しく笑みを浮かべて言いつつも、その目はドス黒い物が渦巻いている様な……。
闇が何重にも重なり合ったせいで、その闇が眩しく輝いている様な……、色んな物をぐちゃぐちゃに混ぜ合わせたかの様なそんな目だったという……。
シイコさんは、そんな俺の目を直視し続ける事は出来ず、すぐに視線を逸らすのだった……。
●RGM-79 ジム
ガンダムを基に開発された連邦軍初の宇宙戦闘も可能な正式量産MS。正式量産されたMSとしては陸戦型ガンダムに次いで二番目に当たる。しかし、産廃兵器と化したガンダムを基に作って成功する筈もなく……。
1年戦争後、地球連邦議会により全会一致で退役が採択され、直ぐに要らない子認定されシイコ機の様な極一部の例を除いて大半の機体が退役させられる結末を辿ったのだった……。
●重キャノン
1年戦争末期、ルナ2攻防戦に投入されたジム・キャノンを基に開発されたMS。肩部にビーム砲を1門搭載しているのが特徴。また、戦闘コンピューターではなく通常のMSの操縦方法を採用している。連邦軍のMSの中で最も成功した機体と評価されている。
1年戦争後、連邦軍はジムに代わる主力機として重キャノンを採用。しかし、ジオンがルナ・チタニウム合金製の実体弾の脅威を認識し、戦後は同素材の地球向け輸出を制限したため、連邦軍はルナ・チタニウム合金製弾頭の使用をほぼ廃止せざるを得なくなった。
重キャノンは肩部ビーム砲による遠距離攻撃が可能だが、ショットガンや頭部バルカンが封じられた為、兵装が不足していると判断され、これを補う為の活路を連邦軍はビーム兵器に求めた。そこで新兵器 "ビームボレーガン" を開発。この兵器は熊手状に5門の銃口を持ち、広範囲にビームをばら撒く構造で、クソエイムでも接近してきた敵なら当てる事ができるのが最大の特徴*3。ビーム1本の威力はビームライフル並みで、破壊力は絶大。遠距離攻撃は相変わらず、ほぼ間違いなく当たらないが牽制には使える。さらに一応、銃口を1方向に収束し強力な一撃を放つ機能もある(ただし、狙って当たる要素は相変わらず皆無な為、威力がデカいだけの単なる威嚇兵器な模様……)。
この武装により火力は大幅に向上したが、1年戦争時の核融合炉では出力不足となり、高出力型への換装が必要になった。しかし、ビームボレーガンと新型炉はコストが高くつき、重キャノンは高級量産機となった。ただでさえ、予算の限られた戦後の連邦軍では量産が進まず、0085年時点でも生産数は800機未満に留まっている。
そのため、連邦軍はコスト重視の "SPRS作戦" による新型MSを、重キャノンと並行して量産機として採用することになった。
●
1年戦争後に地球連邦軍が実施したMSに関する大規模な軍事改革。
1年戦争中、連邦はV作戦によりMSを投入したが、重キャノンとボールを除いて大失敗に終わってしまった。これを反省し、戦後に "実戦で使えるMS" を一から見直すプロジェクトが始動した。それがSPRS作戦。
この作戦では、V作戦初期の実験機をベースに、ジオンに劣るロボット技術や、戦闘コンピューターには深刻な問題がある事を前提として認めた上で新型MSを開発する事とし、0081年末、反連邦勢力との戦乱の中で実戦投入に成功した。
この新型MSは、1年戦争中に効果の認められた "MSが有線によって通常兵器の射撃を補助する戦術" をより特化させ、頭部センサーは大幅に強化。その代わりに頭部バルカンは廃止(ルナ・チタニウム合金の供給難も影響している)。
装備にはビームサーベルやハイパーバズーカに加え、新開発のビームピストルとビームラッカーガンを採用している*4。これら新兵器は従来のビーム兵器より威力を大幅に抑えた代わりに、連邦製MSでも "両手持ち" ならば反動を制御できる様に低反動に設計されている。
ビームピストルの貫徹力はマゼラアタックの175mm砲並で射程はハイパーバズーカ程度。威力が低いため弾数は従来のビームライフルの3倍。
ビームラッカーガンはラッカースプレーの様にメガ粒子を瞬間的に噴射して広範囲を攻撃する武器で対人殺傷に特化、威力と射程は低いが頭部バルカンの代替に位置付けられている。
これらにより、連邦軍はMSに対して初めてショルダーマウントではない手持ち式の射撃兵器を実用化する事に成功した。ハイパーバズーカ、ビームピストル、ビームラッカーガン以外の手持ち式射撃武器は相変わらず、命中精度が壊滅的になってしまうが、威力が弱くてもビーム兵器をまともにMSで使える様になった事が連邦軍にとっては画期的を通り越して革命的な事だった。
つまり、MSの手持ち武器に連邦の技術力では戦艦並のビーム砲は無理と割り切った。
機体構造にはチタン系合金やチタン・セラミック複合材を使用し、操縦は戦闘コンピューターではなく通常のMS方式。これ以降、戦闘コンピューター搭載機は連邦軍から消える事になる。
この新型MSは、その宇宙服のヘルメットのような頭部から "宇宙服" や "宇宙飛行士" と俗称され、重キャノンより低コストで製造が可能である事から量産が進められた。しかし、反連邦勢力にも技術が流出し、戦乱2年目には同型機同士の戦闘が各地で発生。
この技術流出の背景にはジオンの影があるとされ、ジオンとしては、この程度の技術なら普及しても脅威にはならないとの判断で反連邦勢力に支援を行ったと噂されている。
ただ、いずれにしても、この新型MS⸻ "ガンボーイ" は連邦軍においては重キャノンに次いで評価を得たMSとなったのだった。
なお、SPRS作戦は "Safe, Practical, Reliable, Stable" の略で、日本語に訳すと "安全性、実用性、信頼性、安定性" を意味していて、クッソ身の蓋も無いと同時に連邦軍に最も不足している要素の名前となっている。余談だが、ガンボーイを見たある秘密部隊のガンダムパイロットは以下の様な意味不明な感想を述べている。
「これ、既視感あると思ったら、ギレンの野望のV作戦の開発映像で出てくる白とオレンジ色の上半身しかない宇宙服のヘルメットみたいな頭の実験MSやん」
「依頼内容を説明する。
今回の依頼主は旧サイド2宙域を拠点に活動している元連邦軍第177即応航空団の華僑系犯罪シンジケート、チャイニーズファルコン。宇宙海賊以外のあらゆる犯罪を手広くしている組織だ。
依頼は同じく旧サイド2宙域で活動し敵対している宇宙海賊ブルーシャークの壊滅。
ブルーシャークは元連邦軍第205即応航空団を母体とした宇宙海賊で最近、規模を拡大し、民間だけでなく同じ犯罪組織に対しても見境なく攻撃を仕掛け宙域を荒らしまわっているらしい。中でもチャイニーズファルコンとは、以前から関係が悪かった為にその密輸船が標的にされている様だ。チャイニーズファルコンはブルーシャークと交戦もしたようだが、戦力の規模は相手の方が上で、効果は芳しく、だから、今回の我々への依頼となったという訳だ。
犯罪シンジケート同士のろくでもない縄張り争いだが、依頼は依頼だ。我々の活動資金の足しにさせてもらう。
既にブルーシャークの根城の位置と戦力情報はチャイニーズファルコンから提供されている。敵はサラミス級を2隻、ムサイを1隻、輸送船として使っているパブリクを18機、保有している様だ。MSに関しては、正確な数は不明。ただ、少なくと10機以上は保有していると見て間違いない。ブルーシャークの艦艇や宇宙船は漏れなく青色に塗装され、サメのノーズアートが施されているから見れば直ぐに判別できるそうだ。
ホワイトベースは戦域外に待機。今回の依頼はスーパーユニカムと言われたシイコの合流によって我が隊の能力が何処まで向上したのかを確認する場でもある為、基本的にMS戦力のみで事に当たってもらう。ただし、戦況次第ではコアブースターも投入する予定だ。ライスは敵海賊船への攻撃、シイコは敵MSと艦載機を攻撃してくれ。詳細はさっき各員に渡した資料にある通りだ。何か質問は?」
サイド7を出航したホワイトベースのブリーフィングルームでブライトさんは、俺とシイコさん、そして、コアブースターのパイロット6名が集まり、今回の、うちの会社受けた依頼内容の確認を受けていた。
依頼内容は聞いての通りの、対立する犯罪組織間の抗争の助っ人役。まぁ、よくある仕事内容だ。すると、シイコさんが控えめに片手をブライトさんへと向けて上げる。
「……元連邦軍の犯罪組織がジオンのムサイを?」
「ああ、シイコはこの手の任務は初めてだったな。宇宙へ上がるのは1年戦争以来か?」
「はい」
「なら、知らなくても仕方ない。旧サイドのコロニーの残骸に潜んでいる犯罪シンジケートは確かに連邦軍崩れが多いが、最近は難民や、ジオンからリストラされた兵士、退役したジオン製の兵器も流入している。もはや元連邦軍だとか、そういうプライドはここの連中には無いらしい」
「と言う事はザクの様なジオン製MSも居る可能性が?」
「あると考えてもらって構わない」
「分かりました」
「他に質問のある者はいるか?……よし、質問がないようなら、これで解散とする。本艦は18時間後に旧サイド2宙域に到着する予定だ。それまで身体を休ませて作戦に備えてくれ」
そう言ってブライトさんによるブリーフィングは終わる。ブリーフィングルームに居た面々は各々に部屋を後にする。
俺もその一人であり、隣に座っていたシイコさんと自然に退室した。
俺とシイコさんは艦内で割り当てられた自室が隣同士であったという事や、お互い自室に戻る以外に特に他に行く予定も無かった事から、戻る道中も一緒する。その間、俺達は今回の作戦における俺達の役割について少し話した。
そして、互いの自室に到着すると、そのまま、そこで分かれる。俺は隣の部屋にシイコさんが居る事に、あのシイコさんと隣の部屋に居るよ……とやや、そわそわしつつも、自室に入ると、いつものルーティーンを開始する。
部屋の照明を点けつつ、強力な睡眠導入剤を口に含み冷蔵庫に入れてあった飲み物で流し込むと、寝具の横になり眠りく。
作戦まで18時間もある。数時間でも良いから、出来るだけ寝ておくべき。これまでの経験から得た俺の知見からによる行動だ。睡眠不足はやはり身体のパフォーマンスに影響する。戦闘は出来る限り身体を万全な状態で行うべきだ。
それに、サイド7から旧サイド2宙域への航路は危険な物ではない。多少寝て休む時間は充分にある。もっとも、もしも予定外の戦闘などになったとしても、このパイロット向けの自室の艦内サイレンは物凄くうるさいから絶対に目を覚ませられるし、睡眠薬の効果がまだ残っていて意識がぼんやりとしていたとしても、覚醒促進薬も用意してある。準備に余念は無いだろう。
シイコさんが居る事を除けば、ホワイトベースの艦内の様子は普段と何も変わらず、もう慣れた物だった。
そして18時間後。ホワイトベースは無事に旧サイド2の作戦宙域に到着する。
「ライス、FAガンダム発進する」
「シイコ、ジム発進します」
俺はFAガンダムで、シイコさんは盾無しのジムでホワイトベースより飛び立った。俺はVOBの出力を絞り、FAガンダムの速度をジム程度にまで落とす。
発艦後、直ぐにFAガンダムの速度にまで追いついたジムがその脚部を掴んだ事を確認すると、俺はVOBの出力を引き上げ、ジムを牽引しつつFAガンダムの速度を加速させる。
モニターに映る周囲の景色は1年戦争が作り出した地獄そのものだ。
上から下、右から左、何処をどう見ても、かつてこの宙域に存在した何千万もの住民を収容していたコロニーの成れの果ての残骸が無数に辺りを漂う。
そんなデブリ群の合間を縫う様に、俺のFAガンダムはVOBで通常のMSでは到底出す事の出来ない速度で駆け抜けていく。
コロニーの残骸群の中を飛ぶ、その姿は大方、前から見ればサンボルのFAガンダム、後ろから見ればACモドキといった所だ。
『ほんとに酷い場所……』
通信越しにシイコさんの呟きが聞こえる。だが、俺はそれには答えず、操縦に集中した。
俺はもう見慣れた光景だが、言われてみれば確かにコロニーの残骸を見れば当然の反応なのかも知れない。
「ん……。シイコさん、ミノフスキー粒子戦闘濃度です。情報は正しかった様です。一旦、速度を落とします」
『分かったわ』
ミノフスキー粒子の濃度が戦闘濃度に高まったという事はこの宙域に何者かが良からぬ意図で撒いたという事……。
ミノフスキー粒子影響下の場所では通常のアビオニクスは使用不能となる。しかし、裏を返せば、その場所で何者かが活動をしているという証だ。
俺は少しして、手頃な瓦礫を見つけると、その影に機体を隠した。そして、その瓦礫の影から覗く様に頭部デュアルセンサーで周囲を確かめるのと同時に出撃時に左手に持ってきていた筒状の物体を起動させる。それは開かれた左手を小さくスラスターを噴射しながら離れると、瓦礫の影から飛び出した。よく見れば、その筒とFAガンダムとの間にはケーブルが繋がっている。
『それは?』
「衛星用の天体望遠鏡を改造した使い捨ての偵察機材です。視野は狭いですが、MSのセンサーよりも遠くが見えるので偵察に使います。本当はジオンの狙撃用MSのパーツが手に入ればもっとやりやすいんですがね……映像共有します」
俺はシイコさんにそう説明しながら、モニターに表示されたウィンドウに映し出された映像を見て、FAガンダムのコマンド操作とは別で手元にあるフライトコントローラーを慎重に操作する。
ウィンドウに映し出されている映像は偵察機材からの映像だ。当然、フライトコントローラーは偵察機材を操縦する為に使っている。この偵察機材はあくまで、FAガンダムと有線で接続しているとはいえ、操縦系統は全くの別物。FAガンダムのコマンド操作では操作できない。
「……見つけました。前方距離⸻の地点にサラミス2、ムサイ1、情報通り青い船体にサメ顔のノーズアート。その周囲にパブリクが……ここから見える範囲で15。MSは見える範囲でジム8、ザク6、ガンボーイ10……いや、12、ボール11」
『情報よりも多いわね。それに宇宙海賊如きがガンボーイまで……どうやって入手したのかしら』
「さぁ……そこまでは。ただ、この界隈で最近増えているのは確かです。それに一応、連邦軍崩れが多いんで、反連邦勢力から支援を受けている可能性や、なんなら連邦軍から横流しされている可能性もありますね。前はジム、ザク、ボールばっかりだったんで、多少は気が楽だったんですが、お陰で、仕事が少々、面倒になってますよ」
『ろくでもない状況ね……』
「ですが妙ですね。ここまでMSが周囲に展開している事を見ると、もしかしたら襲撃がある事を予想していたのかもしれません」
『あり得るわね。それでどうする?』
「予定通り行きましょう。俺が最初に突っ込んで、場をかき乱します。シイコさんはその後に突っ込んで下さい。ただ、数が多いので極論、MSなら、ある程度なら撃ち漏らしても問題ないと思います」
『どうして?依頼は確か壊滅よね』
「宇宙空間で母艦もない孤立したMSなんて死んだも同然ですし、そもそも依頼は壊滅で全滅では無いんで大丈夫ですよ。多分」
『分かったわ。それにしても…………仮にも降伏を拒否した元連邦軍が本当にムサイやザクを使ってるなんて』
最後の方、シイコさんは、宇宙海賊がジオン製兵器を使っている事に幻滅したかの様に呟いたが、俺の直感はこれは無視したほうが良いとスルースキルを発揮した。
俺は持ってきた偵察機材を手元に引き寄せると、ケーブルを切り離し俺達が隠れている瓦礫の影に浮かせておく。後で回収する為だ。
「それじゃあ……行きます」
俺は少しだけ深呼吸をしシイコさんにそう言うと、ジムはFAガンダムの足首から手を離し、通信が遮断される。
依頼開始だ。
俺は相変わらず、たった4つしかないFAガンダムのクソ仕様な操縦コマンドの内、移動を選択した。
FAガンダムの戦闘コンピューターは、俺の思考を読み取り……いや、機械的にシミュレートして俺のやりたい行動を実行に移した。
FAガンダムは瓦礫の陰から飛び出ると、VOBを出力全開に吹かせて急激に加速、停泊している宇宙海賊の艦隊へと向かう。その間に、FAガンダムの腕は両手でビームライフルを構え、4枚の盾は機体前方を守る防御姿勢を取る。一方で俺は射撃用スコープを覗き込む。
瓦礫を避けて、避けて、避けて……そして、遂に、ガンダムの頭部のデュアルセンサーが敵を捉えマークした。
FAガンダムは敵から見れば左舷上方から接近している形となる。
捉えた。敵は、まだこちらに気づいていない。
俺は攻撃のコマンドを選択。照準に入っているのは敵のサラミス級だ。FAガンダムはビームライフルを発射する。
最初の2射撃はサラミス級の上下を掠めるのみで命中はしない。有効射程距離に入った途端に発砲しているのだ。当たらなくても、おかしくはない。
だが、それは織り込み済み。俺は立て続けに攻撃コマンドを連打する。FAガンダムは最初の2射撃の中でも加速を継続中だ。つまり、急速に敵艦隊に接近し命中率は上がっている。
ビームライフルは次々と発射され、これによって3射撃目以降は、サラミス級の艦首、甲板、中央、中央・喫水線下、エンジンブロックへと立て続けに命中。攻撃を受けたサラミス級は直後に爆発を引き起こす。
また、攻撃はそれだけではなく、4射撃目の辺りから、バックパックの大型メガ粒子砲も同時に使用し、ムサイを狙い3度の射撃を行い、内1発は外すも、中央、左舷エンジンに命中させ、左舷エンジンを爆発させた。
その後も、手に持っているビームライフルよりも、発射方向を調整でき融通の利く大型メガ粒子砲で、付近に居るパブリクを狙い発射を続ける(……手に持ってるビームライフルよりも、バックパックの大型メガ粒子砲の方が融通が利くとはこれ一体……n回目の感想)。
なお、敵のパブリクはどうやら運搬等の目的等に改造されている様で、どの機体も腹に機体よりも大きな構造物を抱えている。あれでは、パブリク本来の速度等は生かせず、極めて鈍重な挙動しか出来ないだろう。
だが、流石にここまで派手にやれば、当然、敵も気が付く。
慌てた様に周囲に居たMSが艦隊に急接近してくるFAガンダムに対して、迎撃行動を取って来た。ジムはハイパーバズーカや、恐らくは手製兵器であろうショルダーマウント式3点バーストマシンガン*5なんていう珍妙な物を使い、ザクはザクマシンガン、ボールはキャノン砲を使用して攻撃してくる。
しかし、混乱している為か、まともな迎撃行動を取れる機体は少ない。
幸いビーム兵器を使用できるガンボーイは、FAガンダムが何処にいるのか、まだ分かっていない様子だ。だからビームは飛んでこない。
これがミノフスキー粒子の無い戦場であったなら、瞬く間にFAガンダムの位置は部隊全体に共有されて対応できる機体の数ももっと多かっただろうが、ここはミノフスキー粒子影響下の環境。情報伝達能力は著しく低下し、こうした奇襲時の対応能力はどうしても鈍くなる傾向がある。
まさに目の前のこの海賊たちはその典型例だった。
そして、FAガンダムを見つけ、迎撃行動に移行できても、FAガンダムの速度が速い為に焦りと合わさって命中精度はどうしても悪化する。
殆どの弾はFAガンダムには命中しない。バズーカやキャノンの弾なんかは当たる気配もない。一方でマシンガン系の武器は時折、命中弾を出していた。だが、それもFAガンダムが装備する盾に弾かれる(弾が盾に当たる音は正直、全く生きた心地がせず、真から冷える気持ちになるが……)。
そうこうしている内に、FAガンダムは敵部隊の至近距離にまで接近していた。
ここまで来ると敵の一部も俺の目的に気が付く。俺の目的は一撃離脱。敵艦隊を攻撃しながら、その中を高速で突っ切って距離を取る!これだ。
俺の目的に気づいた敵の一部のMSが俺の針路上を塞ごうと攻撃しながら向かってくる。
俺はそれを見ると、脚部の有線式ミサイルランチャーを起動。戦闘コンピュータ―はFAガンダムから目視で一番近い場所に居ると推測出来る敵MSをマークした。
一方でそれまで絶え間なく発射を続けていた大型メガ粒子砲の操作を停止。有線式ミサイルランチャーの操作に集中する。
俺はモニター上でマークされている敵MSを出来るだけ集中して視線に捉える。敵機はFAガンダムが装備している有線式ミサイルの装弾数と、おあつらえ向きに同じ6機。
準備が整うと俺は有線式ミサイルを一斉に連続発射。俺の視線に誘導されて有線式ミサイルは勢い良く、それぞれの目標に向けて飛んでいく。
そして、直ぐに結果は露わになる。宇宙空間に爆発による4つの火球が出現する。
ミサイルが命中したのだ。命中弾は4発。まぁまぁ、俺にしては、このミサイルにしては良い結果だ。酷い時だと6発撃って2発しか当たらなかった事もある。
なお、当たらなかった場合には、とにかくビームライフル、大型メガ粒子砲、6連装ミサイルランチャーを、当たらなくても良いから撃ちまくって、ばら撒く事になるが、今回は有線ミサイルが上手くヒットした為、それによって空いた敵部隊の穴を突破する。
FAガンダムは高速で瞬く間に、何の比喩でも無く、敵艦隊を爆発炎上するサラミス級の下を潜り抜け、突っ切り駆け抜けていく。
そしてダメ押しと言わんばかりに、機体を後ろに向かせると慣性の動きで敵艦隊からは急速に離れつつも、大型メガ粒子砲を炎上するサラミス級へと向けた。
初撃で爆発したサラミス級はもはや戦闘能力どころか、まともな宇宙船としての機能が残っているかどうかも怪しかったが、艦橋に関しては無事であった為、その艦橋に対して大型メガ粒子砲をぶっぱする。
当然ながら、大型メガ粒子砲を受けた艦橋は吹き飛び、これで、あのサラミス級は完全にお釈迦になった。
ここまで最初のビームライフルの射撃から30秒足らずの出来事である。
ガンダムを使った戦闘はとにかく時間との勝負。敵と同じ土俵に乗って戦ってはいけない。ガンダムは貧弱なのだ。だからこその一撃離脱戦法なのだ。
その後、直ぐに機首をまた反転させると、FAガンダムは敵艦隊と距離を取り、上方方向へと上昇。そして、今度は敵艦隊からみて、右舷上方から突っ込んでいく。
だが、今度は先程と違って、先程は両手持ちだったビームライフルの構えは解かれ、片手うちの姿勢に。また、それと同時に4枚の盾をより防御に特化した状態に展開し直し機体の防御姿勢を強化した。
二度目以降の襲撃は敵に、こちらの存在が既に露呈済みな為、難易度が飛躍的に高まる。ビームライフルの両手持ちは命中率がより向上するが、腕に盾を装備している以上、どうしても、真正面の守りが薄くなってしまう。紙装甲なガンダムで防御姿勢を取らずに突っ込むのは自殺行為だ。
敵の残るサラミス級が甲板上と右舷側面のメガ粒子砲を旋回させFAガンダムを撃墜しようと2射撃のビーム砲を撃ってくる。
俺はそれを寸前で移動コマンドを押して機体を最小限に右に左に横ロールしつつ回避。
実体弾なら、いざ知らず、流石にビームを盾で受け止めることは無理だ。
回避に成功すると機体の姿勢を正し間髪入れずに大型メガ粒子砲を僅かに機体を上方に傾けながら2射撃する。
大型メガ粒子砲から放たれたビームはサラミスの甲板中央と、艦橋直下の中央を貫くが、発砲時に僅かに機体を上方に傾けた事により、ビームがただ貫くだけでなく、艦体を貫いた上で、なぞりあげ、傷を押し広げた事により、サラミスは直後に大爆発を引き起こし、さらには中央部付近で艦体が破断し真っ二つになる。
恐らくは弾薬庫か何かに引火し誘爆したのだろう。
最後のサラミス級は無事に無力化される。
だが、状況は次の局面へとさらに進む。
サラミス級の爆炎の中を突き破る様にムサイが現れた。俺の方から見れば、ムサイが突然、現れた様な錯覚を受けるが、よく見れば俺が大型メガ粒子砲で撃ったムサイだ。
大型メガ粒子砲の直撃を2度受けて、まだ動けるのは正直、驚きだが、現実に動いているのだから疑いようがない。
ムサイは艦体を軋めかせながら、半ば強引に、姿勢制御スラスターを吹かせて旋回させサラミスの爆炎から姿を表していた。
そして、さらに艦体ごと正面をFAガンダムの方へと向ける。ムサイは搭載された3基の連装メガ粒子砲の砲門を向けた。
「ッ!!」
俺はその瞬間に移動コマンドを押す。瞬間、ムサイのメガ粒子砲が各砲門に極僅かな射撃間隔を設けながら一斉射を行う。
FAガンダムはそれを、当る寸前で機体を大きく右に左に上に下に大きくロールし緊急回避する。
「思い切った事をするッ!」
俺は全弾回避後にムサイへの攻撃を仕掛けようと考えるが、それは実行されなかった。
変わりに行ったのは、ロール回避に加えて、それまで敵艦隊に向けて降下していた状態だったのをジグザクな回避軌道を描きながらの上昇だった。
FAガンダムの周囲には複数のビームの閃光とバズーカやキャノン砲の弾頭が飛び交う。俺はその回避に忙しかった。
ムサイの攻撃の直後、敵のMS部隊が遂に迎撃体制を整え、一斉にFAガンダムに向けてビームピストル、ハイパーバズーカ、キャノン砲を撃ち込んできたのだ。
見ればザクまでもが接近を試みている。FAガンダムはつい先ほどまでは加速しつつ敵艦隊に向けて降下していた姿勢であった為、針路を上昇に転じVOBを最大出力で噴射しても、慣性の関係上、こちらに接近するザクの方が分があるだろう。逃げ切るのは難しい。
直にザクマシンガンの射程にも入り、ビームやロケット弾、砲弾に加えてザクマシンガンも飛んでくる筈だ。
俺はどうやって、ムサイを無力化するか方法を考えていると、その時だった。
ムサイの艦橋直下からメガ粒子砲が積まれた区画にかけてが突如として爆発した。それだけではない。ムサイの船体中央部にも爆発が生じる。
俺は何もしていない。では、誘爆か事故か何かが起こったのだろうか。だが、それは違う。
俺は回避に忙しく針路方向を大幅に変更していた為に視線は既にムサイから離れてはいたが、確かに視界の端で一筋のビームがムサイの後部MSデッキ付近から、MS連絡路にかけて、貫く様子を目撃し、また2射目のビームが艦中央に直撃したのを目にしたのだった。
ムサイは爆炎に包まれ完全に沈黙した。
ムサイが突然やられた事で敵の統率が崩れる。せっかく俺の奇襲攻撃の混乱から立ち直り、反撃に移っていたのに、またもや混乱に叩き込まれたのだ。
そんな混乱する敵のもとに新たな混乱の元凶が現れるのを俺は目にした。
ビームの光が断続的に見えた。そのビームの光が1度光る毎に、敵のパブリクやMSが爆発する。
ビームの発光源は急速に敵部隊へと接近していくのが見えた。恐るべき命中率。明らかに俺の射撃の腕を大幅に超えている。
俺は敵が混乱し攻撃が減少したとはいえ、相変わらず、攻撃は継続されている為、回避運動を継続している。あのビームの発光源がなんであるのか、視覚的には正確には捉え切れていなかったが、その正体は直ぐに察する事はできた。
急速に敵部隊へと向かうビームの発光源。
シイコさんだ。シイコさんのジムだ。
シイコさんのジムが俺が撃ち損じたムサイをビームバズーカで無力化しつつ、断続的に発射を続けながら、敵部隊に突っ込んできていたのだ。
シイコさんはある程度、敵部隊に接近すると、ビームバズーカを投棄。
敵MSに急接近すると、 "異常な軌道で" 敵MSを翻弄。至近距離でビームスプレーガンを浴びせて破壊する。いくら、エイムがクソでも、あれ程の至近距離で発砲されれば、命中は必至だ。
敵は一体何が起こっているのか、恐らく分からないままに撃墜されているだろう。だが、俺はジークアクスを観ていた為に、シイコさんが何をやっているのか、想像がついた。
スティグマだ。スティグマ戦術だ。
ワイヤーフックを敵のMSに引っ掛けて通常のMSでは不可能な挙動で敵を翻弄し、敵の至近距離で攻撃する魔女の戦法。
シイコさんのジムは、まるで次々とターザンが木々に飛び移るかの様に敵のMSにワイヤーを引っ掛け、殆どの場合、僅か1度か2度程度、周囲をぐるりと異常な軌道で飛ぶと、ビームスプレーガンやビームサーベルで破壊し、破壊を終えると再び、近くのMSに向かいワイヤーを引っ掛けスティグマ戦術を仕掛けるというのを繰り返していた。
俺には到底不可能な処理速度でシイコさんは、敵のMSを処理していく。シイコさん周辺の敵部隊はさながら、恐慌状態だろう。
「あれがスティグマ戦術……!そりゃ魔女の異名もつく……わな!」
俺はアクションと移動コマンドを入力し、VOBのブースターを姿勢制御目的以外には全て停止。機体を後ろの方向へと反転させる。慣性の働きにより相変わらず、機体は先程の進行方向に進み続けているがそれで良い。
その直後、ザクマシンガンの攻撃が始まった。FAガンダムは4枚の盾でそれを防御する。そろそろザクマシンガンの有効射程に入るとふんで、FAガンダムを俺は反転させたのだ。
敵の数はザク2機。それ以外には接近を試みている機体の姿は見えない。どうやら、シイコさんの攻撃に混乱して足が止まっている様だ。絶好の機会だ。
いつもなら、こういう場合は、どうしても対処しなくてはならない程までに接近してきた敵には対処して、それ以外は、とにかく敵を引き離して、VOBの速度で翻弄し一撃離脱を数度しかけるというのが俺のセオリーだが、今回は面倒な幾つかの手順を省く事ができそうだ。
俺は盾の隙間からビームライフルを出すと "機体ごとザクへとビームライフルの砲口を向けて" 立て続けに発射する*6。ザク1機につき、3度発射し、どちらの機体も、最初の2度は射撃を外し、3度目の射撃でようやく命中させた。ビームライフルの直撃を受けたザクは爆散する。
接近していたザクを無力化すると、俺はVOBの出力を上げ、敵部隊へと再び突っ込んでいったのだった。
三十数分後。
「お疲れ様です。シイコさん」
『ええ、お疲れ様。久しぶりにこんなに動いたわ』
宇宙海賊は俺とシイコさんの手によってほぼ壊滅された。パブリク2、3機とMS十数機程度が散り々に逃げたが、それ以外はもはや完全に壊滅した為に依頼は達成と言っていいだろう。
俺とシイコさんは合流し、攻撃前に使った偵察機材を回収した後、戦域から離れた所でひと呼吸を付いていたのだった。
「ほんとに助かりました。俺一人だったらどうなっていたか分かりませんよ」
『謙遜ね。私が居なくても、この程度の相手なら、あなたなら時間はかかったでしょうけど、どうとでもなったでしょう?致命的な敵の攻撃も全て回避していたし』
「まぁ、確かに撃墜されない程度には……でも、シイコさん程ではありませんよ。本物のスティグマ戦術、感服しました」
『ただのワイヤーアクションよ』
「あんなの誰にでも真似できませんよ。それに、いつもの依頼なら、もっと撃ち漏らしています。ここまでの規模の相手で敵戦力をこれほど大幅に削るのは俺も含めてウチの部隊で出来た事はありませんよ」
『あなたのサポートあってこそよ。見たわ。あなた、私が堕としたムサイから分離して逃げようとしたコムサイを破壊したでしょ?あなたが、やってなかったら、逃げられていたかもしれないわ。そもそも、あなたが場を、かき混ぜたからこそ、私は思う存分暴れられた。この戦果は私だけじゃなくて、あなたが欠けていても出来ていない』
「まぁ、そういう事にしておきましょう」
『本気で言ってるのに……』
俺の今回の依頼での戦果は撃破確実がサラミス2隻、コムサイ(ムサイの大気圏突入カプセル)1隻、パブリク8機、MS6機で、対するシイコさんの戦果はムサイ1隻、パブリク7機、MS18機(なお、二人ともMSの撃墜数にはボールも含む)。
シイコさんの方が倍以上の戦果を挙げている。俺は精々、シイコさんの、おまけが良い所だろう。
それに後半は完全にシイコさんの独壇場だった。俺が後半にやった事はコムサイとパブリクを敵の攻撃を必死に避けつつ、つまちまと堕とした位でMSは1機も撃ち落せていない。
そもそも、戦闘効率が段違い過ぎる。俺はMS1機辺りに15発の装弾数しかないビームライフルを3射撃ぐらいやって、やっと堕としてしている。今日は調子が良かったが酷い時は5射しても1発も当たらないなんて事もたまにある。
つまりだが、シイコさんが突入したタイミングで俺は迫っていたザク2機をビームライフルで倒しているが、その時点で俺のビームライフルは対艦攻撃に使った分も含めて残り残弾は1発という有様だった。
一応、FAガンダムの使用している粒子兵器のエネルギーCAPは予備の弾倉的役割であるEパック仕様だから、交換すれば弾切れで撃てなくなる心配は少ないが、それでもかなり、無駄弾を撃っている事には変わりない。
だから、俺は常に残りの弾数を気にしている。これが1年戦争の頃だったら、Eパックがまだ開発されて無いから、俺は弾切れに悩まされて何度も補給の為に母艦に戻らなければならなかっただろう。
対して、シイコさんはというと、ほぼ一撃でMSを撃ち落している。無駄弾なんて撃っている気配は全くない。まさに完璧な射撃だ。
正規軍に比べて整備環境劣悪な犯罪組織のMSが相手とはいえ、ガンダムと同じくポンコツ兵器のジムをここまで巧みに操り、ここまでの戦果を叩き出すのは、もはや驚異的としか言いようがない。十中八九、現役の正規軍のエース級の相手とも充分に戦える技量だ(あのシイコさんなんだから、当たり前だが)。
その技量が犯罪組織程度の相手に向けられたのだから、この圧倒的な戦果は至極当然と言える。
『それじゃあ、ホワイトベースに戻りましょうか』
「ですね」
シイコさんのジムは出撃時と同じ様にFAガンダムの足首辺りを掴んだ。俺はそれを確認するとVOBを起動させ、急速に戦域を後にしホワイトベースへと帰投したのだった。
ホワイトベースに戻った後、俺とシイコさんは依頼の達成を報告し、今回の依頼は正式に終わった。サイド7への帰路の中、俺は自室のベットの上で強烈な脱力感と共に布団に身体を埋めてた。
今回の依頼は正直、かなり、きつい類の内容だった。敵のMS戦力が異常に多すぎた。
普段なら、この類の依頼で遭遇するMSの数は精々、十に満たない数なのが殆どだ。だが、今回は30機に迫る数だった。
俺は何故、こんなにも規模の大きい相手にMSだけで挑まされたのかを考えた。普通ならばコアブースターも投入される案件だ。実際、過去にこの数の敵を相手にした経験はあるにはある。コアブースター有りで。だから、コアブースターが投入されていれば、もっと楽に事を進められただろう。だが、今回は投入されず、僅かMS2機で事に当たらされた。
俺の脳裏にはブライトさんのミーテング時の "今回の依頼はスーパーユニカムと言われたシイコの合流によって我が隊の能力が何処まで向上したのかを確認する場でもある為、基本的にMS戦力のみで事に当たってもらう。" 言葉が過る。
いつもはこんな無謀な事はしない筈なのだが……(1年戦争の頃はガンダムタンクでラスベガスの地雷原に突っ込まされたりなど、無茶過ぎる事もさせられたが、戦後はかなり丸くなっている)。
もしかして、これは上層部から、シイコさんの技量を確かめさせる為に用意された場なのではなかろうか……。
なんて事を考えもしたが、考えるだけ無駄な事だと考えるのを止めた。答えなんて出ないからだ。この規模の数は前述の様に少ないが経験はあるし、必ずしも今回のが意図的とは言いきれない。上層部が仕組んだ場である可能性もあるにはあるだろうが、はっきり言って陰謀論の域で出ないだろう。
俺はそこで、陰謀論的思考回路を止め、別の思考に切り替える。
俺は今日のシイコさんの戦いぶりを思いだした。まさに鬼神の如くな戦いぶりだった。
アニメではない本物のシイコ・スガイという人物と、スティグマ戦術を垣間見た。ハッキリ言って感想は、すごいの一言だ。それ以上の感想は不要だろう。
だが、ここで、俺はシイコ・スガイという人物に関する考察も始めた。
シイコ・スガイ。
初出は機動戦士Gundam GQuuuuuuX。1年戦争中、連邦軍に所属し、ジオンから見て性能が劣るとも称される軽キャノンを操り、100キルを達成し、ラテン語で唯一を意味するユニカムに、スーパーを付けたスーパーユニカムの異名で呼ばれる女性エースパイロット。
冷静に考えると、なぜ、彼女がこの世界に存在しているのだろうか。この世界には正史と違い、存在すら不明な者も数多い。そんな中で彼女は存在している。
例えば、セイラさんは存在せず、代わりにサラ・ホリン少尉が居るが、全くの別人だし、それどころか、この世界のシャアに妹が居るのかも定かではない。さらには、結局、1年戦争が終わった今でもランバ・ラルが居たのかも結局分からない。
それどころかホワイトベースに目をより向けてると、ブライトさん、カイにリュウ以外に正史のキャラが一切存在していない。
恐らくは、もっと詳しく調べれば、消えている人物が他にも多く居る筈だ。
連邦が負けてジオン勝利のジークアクスルートに入ったからシイコさんは現れたのだろうか。
……直感だが、この線は結構、当たっている気がする。
俺の予想だが、シイコ・スガイという人物は、連邦軍が弱体化した時に出てくるバグみたいな存在なんじゃないだろうか。
と言うのも、シイコさんの戦い方はハッキリ言ってアクロバティックでトリッキー過ぎる。普通のちゃんとした良い性能のMSがあったら、余り生まれない技法だと思うのだ。
正史でシイコ・スガイの名は聞いた事がない。もしもシイコさんが正史でもトップエース級パイロットをやっていて100キル達成しているのなら、もっと知られていても良い筈だ。
少なくとも俺がこっちの世界に転生した時点においては、正史作品に登場したという話は見た事も聞いた事も無い(もっとも、もしかしたら、その後の作品ではジークアクスから輸入されて登場する作品が出てくるのかもしれないが、あいにく俺はそれを見る前に転生してしまった為、それは考察材料に入れる事ができない*7)。
つまりだが、俺的考察では、シイコさんは戦いにおける創意工夫の天才であり、ある意味、正史のジムに比べて性能が劣る軽キャノンがあった事で、創意工夫をして戦う必要性に迫られた為にスティグマ戦術を編み出し、エースパイロットとしての才能の芽が開いた存在なのではないだろうか。
この想像に基づけば、正史においてシイコさんは、エースだったとしても、それはトップ級ではなく100キル越えは達成しておらず、カイやリュウ並だったのかもしれないし、なんなら、最悪は極普通の一般パイロットであったという可能性もある。
そして肝心の、この世界にシイコさんがスーパーユニカムとして存在している理由だが、この世界にもジム(ポンコツ)と言う名のMSが登場した為にシイコさんの才能の芽が開いたのではないだろうか……。
正直、スティグマ戦術はこの世界の連邦製MS現状に極めて即している。スティグマの真骨頂は予測不能な軌道で敵を翻弄する事だが、それと同時に至近距離からビームスプレーガンやビームサーベルを叩き込める事にある。
この世界では至近距離で攻撃を叩き込めるという要素は極めて重要だ。何故ならば、この世界の連邦製MSはクソエイムなのだから。幾らクソエイムでも至近距離で撃ちこめばエイムなんて関係なく敵に直撃させる事ができるのだ。
だから、スティグマ戦術はこの世界の連邦製MS現状に極めて即した有効な戦術と言える。この地獄みたいな状況でも100キル越えを達成できるのは正直、納得だ。
と、ここまでシイコさんが何故この世界に存在しているのかについて、色々と考えを巡らせた上で俺は、これも先ほどと同じく、いくら考えても答えの出ない⸻いや、それ以上に考えても答えなんて恐らくは永遠に出ないであろう、無駄な事だと考えるのを止めた。
そう結論を出すと、ちょうどそのタイミングで今日の依頼の疲れがどっと押し寄せてくる。
俺は瞼が急速に重くなっていくのを感じ、それに抵抗する事なく静かに泥の様に眠りについたのだった……。
●RB-79 ボール
地球連邦軍が1年戦争中に開発したMS。人型では無い為、もっぱらジオン側ではMAやモビルポッドと呼ばれ、MS扱いされていない。正史において、ボールは地球連邦軍においても分類こそMSだが、その扱いの実態は殆どMS扱いはされていなかった。
ボールの性能は正史と殆ど変わりない性能を有している。
操縦方法も正史と同じ。
しかし、この世界においては、連邦軍のMSが軒並み産廃兵器過ぎた結果、相対的に見て正史と変わらぬ性能を持っているボールは非常に高く評価される事となり、連邦軍ではジム以上の高い評価を受けた成功兵器と見なされている。
その結果、この世界の連邦軍パイロットはボールを立派なMSとして扱っている。
なお、小さいのから大きいのまで、様々な大きさのボールが製造された。
●ブライト・ノア
ハンサムで非常に穏健、だけど超絶短気なホワイトベースの艦長。
表の姿はアブ・ル・ハウルPMCの社長。しかし、その裏の姿は連邦軍情報局の宇宙兵器開発部隊の現場指揮官。連邦軍情報局から物資や人件費の供給は定期的に受けているが、会社の経営はほぼ丸投げされている為、日々、慣れない会社経営に苦心している。
●サラ・ホリン
たぶんセイラ・マス枠のブロンドヘアの美人女性士官。
正史には一切登場せず、GUNDAM 0079 THE WAR FOR EARTHにしか登場していない。また、シャアの妹でも無い模様。たまにコア・ブースターに乗って出撃してくれる。
たぶん、ブライトさんとデキている。
●ライス・ポンペイオ
自分の髪型がガトースタイルでは無く完全にリトバスの棗鈴みたいな髪型なのに、それに気づかない位、頭の大切なネジが何本も抜け落ちてしまった悲しき主人公。
内面はともかく言動面はかなり普通を装う事が出来ている。
●シイコ・スガイ
連邦軍の残党がジオン製兵器を使っている事に怒り心頭な模様。
なお、シイコは本人が認めまいが、どうあがいてもNTである為、無意識に人の心を読んでいるが、ライスの心は殆ど読み取ろうとしていない。
無意識的にライスのヤバい状態の心を読み取ると自分の精神もヤバい事になりそうだと気づいている……。
あなたが連邦兵で以下の中から自由に乗れる機体を選べるなら、どれに乗る?(あ、61式戦車とボールは操縦訓練を受けてもらう事になっちゃうけど、MSは訓練必要無しで操縦知識が無くても大丈夫!最新の戦闘コンピュータ―が君の反応能力に合わせて全ての機能を最適化してくれるから安心!)
-
RX-78ガンダム
-
陸戦型ガンダム
-
ジム
-
61式戦車 or ボール