それは、忘れ去られた全てのモノを受け入れると伝えられた———美しく、残酷な、もう一つの世界。
相変わらず、この人里はいつも通り賑やかだ。
里の住人達の賑わいの声がわんやわんやと飛び交い、騒がしいのなんのという雰囲気。
右を向けば、珍しい魚と通常より大きい魚を獲ったということで直ぐに売り出す
左を向けば、どんな体の不調や不自由さを完全に治すと言われる信憑性が皆無の薬を売る
他にも目新しいお酒が最近入荷されたと噂の
そこには、小さい秘書さんがいるとかいないとか・・・・・?
賑わい高い空気が流れる人里だったのだが、近頃外の世界から"複数人の来訪"があったと異例の現象が観測された。
一人二人の幻想入りならともかく、複数人による幻想入りは今までにない出来事だ。
さすがの博麗の巫女様も、この異例の出来事に調査せざる負えなかった。
そして、この噂は1日で人里に限らず幻想郷全体に一気に広まった。
そのおかげと言ってよいのか、妖怪たちはいつも以上に姿をくらましてしまったのだ。
無理もないことだ。彼らは人間以上、動物以上に警戒心が飛び抜けるほど高い。
この現象に一番に気付いたのは幻想郷の賢者であり、創造者であり–––––。
そして、大妖怪である『
彼女曰く、この現象は未だに治る
幻想郷の賢者たる者、流石の彼女でも対処の仕方はわからなく、スキマの中で幻想郷への被害を見守りながら、原因を探り、解決策を模索しているところ–––––とか。
なにせこの現象は
幻想郷の賢者様の次に気が付いたのは、幻想郷中で誰もが耳に聞いている代々続く家系『
彼女曰く、先ほど言ったようにこの現象は幻想郷が誕生した頃から今にかけて、一度も起きたことがないため対処の仕様がなく様子見となった。
この現象に気付いた彼女は、すぐさま鈴奈庵や
忘れ去られた存在、迷い込んだ者のみが幻想郷に訪れることを『幻想入り』を指す。
彼女も他の人間たちもわかっている。本来は幻想郷に訪れることは不可能なのだ。
しかし、不可能なはずなのに、今この現象が起きているのを見るに平然と簡単に幻想郷への侵入を許していると言っても過言ではないことが起きている。
しばらくの間は里の人達には外出は必要な時のみ、必要な時以外は家で待機することを、使用人を通じて里全域に自宅待機の命を下した。
最後に、二人の次に気が付いたのは『迷いの竹林』周辺の前に建っている真寺子屋で妖怪と妖精、人間問わず
彼女は寺子屋の教師をする傍ら、歴史を綴る者として歴史書記をしている。
この現象が起こる以前から彼女の身の回りで不可解な出来事が起きていたらしい。
彼女が歴史を書き記すのに使っている巻き紙に、見ない間に何者かによって歴史が書き加えられていたのだ。そこには『外 天 下 多 人 来 月 暗 災 厄 者 訪』と漢字一文字が並んで書き加えられていた。初めは誰かのいたずらかと思い、いたずら好きで身に覚えのある一人にその事聞いたが本人は全く身に覚えのない表情をしていたようで、その子ではないとわかった。
後日、寺子屋でのご教授を終えた彼女は家に戻り、歴史の記述が途中の巻き物を開こうとした———その時だ。
突然、文字が走り書き始めた。次の分、次の文、次の文と落ち着くことなく、休み知らずに次々と文字が書き記されていき、目の前の出来事に怖気付き、巻き物を手から落とし、その場から離れた。幽霊や妖怪によるいたずらにしては、出来過ぎている。気配もなく、しかも巻き物に文字を書き記すとなれば、持ち手と逆の方から記していることになるが———この幻想郷の住む幽霊や妖怪、妖精たちにそんな高度で難しい器用な真似が出来る者が存在しているのか?
しかしこれが幽霊や妖怪の類のちょっかいであったとしてもやり過ぎている。
あくまで彼女は、巻き紙に歴史を書き記し、歴史の記録として永久的に保管することを一つの使命としている。使命の為に使う道具とはいえ、後々に見る者に宛て、歴史を綴る者への侮辱ではないだろうか。
そして、彼女は教え子であった博麗神社の巫女
寺子屋を暫くの間、今の異変を機に長期間の休みとした。
今も書き加えられた文章の解読をしているところだが、完全に解読が終わるのはまだまだ先になるようだ。
さて、ここまで広がった複数人による幻想入りという異例すぎる異変に人里内ではいつも以上に混乱の波紋が広がっていく。
この現象について、三人の証言では今後も幻想入りする者がやってくるかもしれない
———とのこと。
この複数人の幻想入りは、一体何が原因なのか。
その答えが出るのは、いつになることやら。
そして、この複数の幻想入りした外の世界からの来訪者は———
《幻想郷に災厄をもたらす悪なのか》
《可憐で儚く散る春の花を咲かす善なのか》
それは———後々、綴られる話を
この話は、ただの記録に過ぎない。
なぜなら、ただの