もしもミリオンの種族がいる世界があったなら   作:VA

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第一話 ミリオンタウンへようこそ

俺はありもしない物が書かれた本。例えば神話や怪物が書かれた本を読むのが好きだ。

 

でも、人はそんな物はあり得ないと決めつけている。だがもしも、人間だけじゃない、人間以外の種族がいる世界があったら。

 

例えば日本にいるといわれた妖怪、欧州の方にいると言われた吸血鬼(きゅうけつき)、人々が(あが)める神、悪魔、天使など種族は大量にいる。

 

これらの全ての種族が存在している世界。その世界はどんな感じなのだろう。互いに共存し合っているかもしれない。はたまた種族の生き残りをかけて戦争を引き起こしているかもしれない。こんなつまらない世界にいて死ぬよりは有りもしない世界に行ってみたい。

 

「今日も退屈だったなぁ。…時間も時間だし帰るか」

 

教室で荷物をまとめると毎朝昇り降りしている階段をゆっくりと降りる。そこで俺は奇怪なものを目撃してしまった。

 

「七色に輝く…穴? 何でこんなところにこんなものが」

 

階段を降りたところに七色に輝くマンホール大の穴が広がっていた。時計回りに渦を巻く穴は不気味で俺を(いざな)っているみたいな感じがした。

 

「……」

 

次の瞬間、気味悪い穴に俺は右手を伸ばしていた。理由は分らなかった。ただ、その穴から何か新しい事が始まりそうだとそんな予感がした。

 

穴に触れると表面はプリンのようにグニャグニャとしていた。そのままプリンの表面に指を突っ込んだ。

 

「うわぁ」

 

突然何かに指を掴まれ引っ張られた。詳しくは分からないが何かが穴の向こう側から俺の手を掴んで引っ張っている。しかもものすごい怪力だ。これは男だ。絶対に。穴の向こう側の男が俺を引っ張っている。もしかして俺を餌にするつもりか、それとも向こう側の世界とかがあって奴隷として扱うつもりか。無理無理無理無理。絶対無理。なんとしても右手を返してもらわねば。

 

「ぐぬぬぬぬぬぬ」

 

右手の手の甲まで引き込まれている腕を左手で引っこ抜けたらいいのだが、中々そうもいかない。向こうは筋肉質の男なのかますます力が強くなっていく。

 

「ぬおおおおおおおお」

 

力の限り左手で右手を引っ張る。大きなカブのおじいさんもこのくらい苦労したのだろうか。俺もおばあさん、孫娘、犬、猫、ねずみに助けてもらいたいよ。

 

「このクソ○×△□@#%&$~!!」

 

言葉になっていない言葉を吐き出しながら力を込める。いい加減諦めろよな。そろそろ限界が来るだろっ!

 

「えっ!?」

 

遂にグイッと引っ張られ俺の体が穴の中に引きずり込まれ―

 

「ん!?」

 

穴の中では周りの景色が右から左ではなく、下から上に移動していた。つまり落下しているということだ。落下…そう落下、落ちているのだ。

 

「のわあああああああ」

 

 

「ん、ん…何だあれ。掲示板?」

 

覚ました虚ろな目に一番最初に目に入ったのは空に浮かぶ巨大な電光掲示板だった。それが何を意味しているのかは分からなかったがとにかく大きかった。日本の電光掲示板など軽く凌駕するほどの大きさでどこからでもそれが確認できるようだ。

 

体を起こすとそこが地球ではないことがすぐにわかった。電光掲示板が浮いていることがもうすでに地球ではないことを表してはいるが、俺がいる場所が芝生、天然芝だろうもので覆われており、伝説上の生物ドラゴンが(くう)を舞っていた。地球ではこんなこと有り得ない。

 

「お待ちしておりました。朝比奈護(あさひなまもる)様」

 

ドラゴンに目を奪われていると自分の名前を呼ばれた。振り返ると猫耳を生やしたメイドが立っていた。猫耳メイドは俺と目が合うと一礼した。それに習って俺も一礼した。

 

「申し遅れました。私はチャット。見ての通りメイドです。ふふ」

 

可愛い。や、やばい一発で惚れた。一目惚れってやつか。

 

「俺は朝比奈護…あ、えっと高校生です」

 

 とりあえず自分の名前を言っておいた。ファーストインプレッションは大事だからな。ファーストインプレッションと言うのは第一印象という意味だぞ。

 

「存じておりますよ。ふふ」

 

どうやら彼女は俺の名前を知っているらしい。最初も名前を言われたけどどこで入手したのか不思議を感じた。知り合って間もないのに。

 

「さっ、行きましょうか」

 

そう言って俺の手を握ってくる。俺より小さな手だった。

 

「え、行くってどこに?」

 

「まぁ、ついて来てください」

 

有無を言わさず手を引いてくれた。右も左も分からない俺をどこかへ連れて行ってくれるらしい。

 

「あのどこへ行くんですか」

 

とりあえず手を引かれついていくも行けども行けども街なんかは見当たらない。視界に映るのは山、山、山。一体、俺をどこへ連れて行こうというんだ。

 

「もう少しの辛抱ですよ。今日は雲一つないスッキリ爽やかな日ですね」

 

フフと微笑み、はぐらかせてしまう。言えないのか、言いたくないのかどうなんだろうか。そんな疑問を抱きながらも歩みは止まることはなく道を下っていく。

 

そうして歩くこと十五分。遂に一つの建物が見えた。しかし、周りには建物は一件もない。その建物を中心に何かが入るのを防ぐかの如く柵が張り巡らされていた。柵の中に入るにはポツンと建つ建物の入り口からしか入れないようだった。

 

「さっ、着きましたよ、護様」

 

入口にはミリオン首都管理局と記されていた。ここから首都へと入るらしい。俺、パスポートとか持ってないけど大丈夫なのか?

 

「ここで首都入国審査を受けてください。くれぐれも言っておきますけど嘘はつかないでくださいね。それとパスポートです。これは担当者の人に見せてくださいね」

 

 嘘はつくなとはどういう事なのだろう。まぁ嘘はつかないとは思うけど。

 

管理局に入ると驚きでいっぱいだった。まずは管理局にいた人たち。人間ではなく、獣耳を生やした獣人、吸血鬼、白い羽と輝く輪っかを持った天使、コウモリのような羽を持った悪魔、さらには真昼間からデカデカと酒と書かれた大甕(おおがめ)をガブ呑みしている人。よく見ると頭に角が生えている。そう確か…酒呑童子だ。酒呑童子って結構イケメンだったのね。

 

「朝比奈護様~朝比奈護様。四番ゲートまでお越し下さい」

 

 四番ゲートってどこだ。管理局全体のゲートが十三。今いるところが七番ゲートだから…時計回りに行けば遠回りか、だったら左からだな。

 

六、五、四ここだな。

 

「すいません、朝比奈護なんですけど」

 

四番ゲートの窓口行くとゴツイ身体の男が立っていた。

 

「あ~ん、おめぇが朝比奈護か。遅ぇぞ何分待ったと思っていやがる」

 

何だこいつ。感じ悪いな。名前見てやろう。

 

「え~と何々…閻魔…エンマ?」

 

エンマと言えばあのエンマか。閻魔大王、地獄の責任者であり、一番最初に死んだ人間と言われている。

これは確かに嘘は言えないな。舌を引っこ抜かれかねん。

 

「何だ小僧。俺の名前に何か用か?」

 

キリッと目を光らせて睨みを利かせてきた。

 

おいおい、あのエンマが管理局で入国審査をやっているってのかよ。

 

「いえ、何か、かっこいい名前だなって思っちゃって」

 

「ふん…」

 

やば、嘘がバレたか。

 

「そうだろそうだろ。俺もな、このエンマっていう響きが好きなのな。てか小僧…え~と朝比奈護か。護は何しにここへ?」

 

あれ? エンマってこんなキャラなの? もっと「お前の嘘は見抜いておるわ」とか「地獄行きじゃあ」とかいう怖い人かと思ったのに案外人あたりが良さそうな人だ。

 

「…観光?」

 

「ふむ、観光か…この街はいいところだ。思う存分観光するが良い」

 

ポンとチャットから貰ったパスポートに印鑑を押され難なく首都入国審査を通過した。チャットの説明によるとこれから電車に乗って市街地に向かうという。電車に乗って首都まではたった十分らしい。

 

「護様、ご覧下さい。これがこの国の首都ミリオンタウンです」

 

 十分後、電車の窓から建物が見え始めた。その建物群の中にひときわ目立つ建物があった。時計塔だ。

どこからでも見えるように四方に設置されている。イギリスのビッグベン、今はエリザベスタワーだったか。それに似た感じだ。

 

「綺麗なところだね」

 

「そうですね。自慢の街です」

 

「あっ、そうだ。ずっと気になってたんだけど。この世界って地球じゃないよね」

 

「はい、ここはミリオン・ザ・ワールド。地球などは存在しません」

 

「そうか、ここは完全な別世界ってことか。そうか別世界…中々楽しめそうじゃん」

 

『間もなく~ミリオンタウン~ミリオンタウン』

 

電車を降りると駅前まで人集りと盛り上がりが出来ていた。

 

「うわっ、これ何? 人多い! マジかよ」

 

様々な種族がいるが俺は一括りに人と言うことにした。了承して欲しい。

 

「ようこそミリオンタウンへ護様、色々と街を見たいのは承知してますが時間がおしているもので、早速ですが、次はこれに参加してください」

 

チャットが人集りの奥のステージを指差す。微かだが薄青い壁がステージを囲っている。

 

「これって?」

 

「ミリオンゲームです」

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