魔法少女リリカルなのは 『神造遊戯』   作:カゲロー

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もう一人の主人公登場!

読みやすいように、試しで一話あたりの文字量を少なめに纏めてみました。


平穏なる日々

うららかな春の日差しという言葉がピッタリな四月初頭。

日本という国では四季というものがはっきりとしており、その内で最も過ごしやすい季節であろう春の代名詞、桜の木が立ち並ぶ並木道をやや足早に駆け抜ける。

ここ海鳴市は、その名の通り海が程近い、それなりに知名度のある――ごく一部では非常に有名なのだが――私が生まれ育った街だ。

ゴミも見当たらない綺麗な街道を眺める余裕も無く、私は必死になって両足を動かす。

足を踏み出すたびに、聖祥小学校指定制服のスカートがふわり、と踊り、実に走りにくい。

双子の妹ほどには運動神経が切れていない訳だが、逆に体育の授業でヒーローになるには程遠い、いたって平凡なレベルに留まっているこの身では、全力で駆けていようともたいした速度は出せない。

 

『ならもう諦めて、普通に歩いちゃえば?』と心の中の小悪魔(なぜか友人の一人と同じ金髪美少女の姿をとっていた。ただし悪魔のような蝙蝠の羽と先端がハートマークな尻尾、バックに燃え盛る炎――通称“バーニング”を背負っていたが) の囁きに思わず膝を折ってしまいそうになるが、同じく脳内に現れた天使(これまた友人の一人、紫の髪が特徴のぽわぽわお嬢様が天使の羽とドレスを身に纏ったお姿) でバーニングな小悪魔を嗜めるように言葉を紡ぎ――

 

『うん。アリサちゃんの言うとおりだよ。もう休んでもいいんだよ?』

 

おもっくそ肯定してくれやがりました。つか、名前言うなや! と声を大にして言いたい。

あれれーー!? 何で我が天使さままで悪魔のささやきを――ハッ!? よく視たらあれ、天使じゃない!? なんか白い羽毛の中から真っ黒で蝙蝠チックな羽が見えてるんだけど!? あと、なんか目が真っ赤に輝いておられていらっしゃるーーー!?

 

『だって私、吸血鬼だもん♪』

 

全く持ってその通り。

ぐうの音も言えませぬ。つーか、ネタバレには早すぎるとお姉さん思うのですけれども!? そこんとこらへん、如何でしょうか!?

 

『んー、でもこの私は花梨ちゃんの想像の産物な訳でして……まあ、良いんじゃないかな♪』

『そーそー、大体妄想の中身まで、突っ込みしてんじゃないわよ?』

 

ヤな言い方しないで!?

 

『ま、もう手遅れみたいだけどね~~』

 

へ? いったい何が……?

 

キーンコーン、カーンコーン――

 

と、私が気をそらした瞬間、無常にも授業開始を告げるチャイムの音が鳴り響いてきた。

今私が居るのは下駄箱で、息を整えながら上履きに指先をかけたところだ。

まだ、教室まで走っても数分は掛かってしまう位置にある。

私達の担任の先生は几帳面で、チャイムと同時に教室に到着し、すぐさま出欠を取る。つまりこれは、

 

「タイム……アップ!?」

『『残念でした! Let’s バツゲーム♪』』

 

絶望に染まる私の脳内では、変わらず友人の姿をした小悪魔と天使……の皮を被った吸血鬼が某決闘漫画の初代主人公な王様よろしく、楽しそうに私に向けて指先を突きつけていたのだった。

 

高町花梨 九才

聖祥小学校三年生

家族構成:父(士郎) 、母(桃子) 、兄(恭也) 、姉(美由紀) 、妹(なのは)

双子故に妹と瓜二つの容姿で、髪はポニーテールに纏めている。

大き目のリボンがチャームポイント。

 

この日、転生者No.“Ⅵ”(ナンバー・シックス)の称号を与えられた少女は、前世を含めて初めて廊下に立たされるという経験を積み、ちょっぴり大人の階段を上ったのだった。

 

「いや、そんなの全くもって嬉しくないから!?」

 

一時間目が終わった直後の短い休憩時間。

五十分ほどの授業の間、ずっと廊下に立たされ続けた事が原因でプルプルしてきた両足をだらしなく投げ出した、はしたない格好の高町花梨こと“Ⅵ”は虚空に向かって突っ込みを入れる。

その突然の奇行に驚いたのは、彼女のそばに集まってきた仲良し三人組なお友達だった。

 

「ちょっ……!? いきなり大声上げないでくれる!?」

「い、いきなりどうしたの、花梨ちゃん? ひょっとして具合でも悪いんじゃ……?」

「お姉ちゃん!? 大丈夫!?」

「あ、うん? ゴメン、つい妙な電波が」

「「「電波っ!?」」」

 

花梨の言葉を聴いた仲良し三人組……アリサ・バニングス、月村すずか、高町なのはは一瞬でスクラムを組むや否やおでこを引っ付けて作戦会議。

 

「(ヒソヒソ……) ど、どうしよう!? 花梨お姉ちゃんの頭が大変なことに!?」

「(ヒソヒソ……) 落ち着いて、なのはちゃん。花梨ちゃんの言動がちょっとあれなのは別に最近の話じゃないし、大丈夫だよ?」

「(ヒソヒソ……) すずか……アンタも言うわね……。てか、最後の方、疑問系じゃなかった?」

「おーい、しっかりと聞こえてますからね? 内緒話はせめて本人の居ないところでお願い……あと、すずか? ちょっと二人でオハナシしようか?」

 

にじり寄る花梨と、彼女から距離をとる笑顔を浮かべたままのすずか。

にらみ合う様は、まさに一触即発。

 

「にゃっ!?」

 

突然、何も無いところでなのはが転び、それが引き金になって両者の間で激しい攻防が繰り広げられる。

 

「銅鑼銅鑼銅鑼銅鑼銅鑼銅鑼……!!」

「ナリナリナリナリナリナリナリ……!!」

 

年齢一桁のはずの美少女二人が、教室内なのに顔に影が掛かった、通称『劇画タッチ』顔で目にも留まらぬ拳撃の応酬を繰り広げる。

交差した拳圧の余波が荒ぶる竜の如く周囲へと襲いかかる。

倒れる机。ひび割れる窓。『ぶげらっ!?』とか、『ひでぶぅ!?』とか叫びながら吹き飛ぶクラスメート達多数。

あわれ、少年少女たちが笑顔で過ごすはずの学び舎が、一瞬で某覇王様が闊歩する世紀末な有様へと変わり果ててしまった。

巻き込まれないように机の下に身を潜めたアリサが慌てて叫び声を上げる。

 

「止めなさい!? アンタたち、キャラが壊れまくってるわよ!? つーか、なんでマリグナントバリエーション!?」

 

○ョ○ョに非ず!

アレを始めてみたときのインパクト、決して忘れられません。

詳しく知りたい人は、yah○oで検索をかけるとよろし!

またはy○utubeでも可!

 

いい感じに混沌と化したこの騒動は、騒ぎを聞きつけて飛び込んできた理科の鈴鹿野先生によって鎮圧されることとなる。

ちなみに本日の決め技は某王朝(ダイナスティ)で有名な必殺技タワーブリッジでした。

 

時は過ぎて、昼休み。

ポカポカ陽気を全身で感じられる屋上でお弁当を広げての食事タイム。

花梨、なのは、アリサ、すずかの四人で屋上の床に敷いたシートの上に陣取って、各々のお弁当を啄ばむ。

時折、おかずの交換をしたり、食べさせあったりと実に微笑ましい光景だった。

……若干二名ほど、しきりに首元を撫でていたが。

 

「うう、まだ痛いんだけど……、っていうかあの先生、小学生に超人技仕掛けるなんて正気なのかしら……?」

「ねえ、アリサちゃん? 痣になったりしてないかな?」

「どっちも自業自得でしょうが。まったくもう……」

「にゃはは……」

 

朝の件は、元凶と判断された花梨とすずかが先生の手によりノックダウンされ、勝利の雄たけびを上げる鈴鹿野先生は鎮圧直後に駆けつけてきた学生主任に首根っこを引きずられていくことで、一応の収束を見ることとなった。

その後、花梨とすずかの二人はダメージが残っていたのか、四時間目終了まで机に突っ伏して、そのまま起き上がってこられなかった。

その様子に、アリサとなのはは後でノートを貸してあげようと、しっかり授業に集中していたが。

 

微妙な空気になりかけていたところで、空気を換えようとしたのか突如アリサが『そうだ!』と声を上げる。

「ねえ? 三人とも、将来の夢って何か考えてる?」

「将来の夢? それって何になりたいか、とか?」

 

唐突な質問に、問われた三人が三人とも『うーん』と首を傾げ思案顔を浮かべる中、確認するようになのはが尋ねる。

 

「アリサちゃんはやっぱりお父さんのお仕事を継ぐんでしょ?」

「うん、まあね。すずかはもそうでしょ?」

「う~ん……そうかも。機械弄りとか好きだし、多分工学系に進むんじゃないかなって思うよ。花梨ちゃんは?」

「私? 私は料理とかお菓子作りとか好きだし、多分お母さんに弟子入りして翠屋を継ぐと思う」

「そっかぁ、お姉ちゃんたちは皆、決めてるんだ……私は、なんだろ?」

「なのははアレでしょ? 翠屋のマスコット。栗毛ツインテールな女の子の被り物して、道行く人々相手に笑顔を振りまくという営業活動を……」

「それ、被り物する必要ないからね!? 栗毛ツインテールって、まんま私だからね!? そもそも、何で被り物着ける事が前提なの!?」

「「「え?」」」

「何で、皆そこで不思議そうな顔するのーーーー!? 可笑しいよね!? 私間違ったこと言ってないでしょ!?」

「「「またまた~~」」」

「それ、どういう意味!? 私に向けられる優しげな視線はいったいぜんたいどういう意味があったりするの!?」

 

にゃーにゃー荒れ狂う子猫を愛でながら、花梨は内心でこれからについて思考を巡らせる。ついでに、『一体全体』という言葉の意味こそ知るが漢字に直すことができない妹の国語力について、姉として少々、思わないでもないが……まあ、今は良しとする。九歳児だし。

 

(今のところこの世界は私の知る原作通りに進んでいる。つまりなのはは、やっぱり魔導師としての道に進むことになるのかな……。“神造遊戯(ゲーム)”開始まであと僅か……他の転生者も何人か見つけたし、これからどう立ち回るべきかしら?)

 

私、高町花梨には家族にも秘密にしていることがあるの。

実は私、転生者よ。

私をこの世界に送り込んだ神が言うには、何でも神様たちがこれから行う悪趣味な儀式に参加させるために私を選んだらしい。

その言葉を聞いた瞬間、それは大声で叫んだもんだわ。

だってそうでしょう?

世界一安全な国なんて言われてる日本生まれのこの私に、ついさっきまで平凡な、けれど充実していた日常から一転、いきなり殺し合いをやるために違う世界に行けなんてふざけてるとしか思えないわ。

まあ、いい年こいて半引きこもりの上、毎日ネットやアニメにのめり込んでいた訳なんだけれども。

少しだけ『罰が当っちゃった?』なんて思ったのは私だけの秘密。

その後、転生先が私の好きなアニメ“リリカルなのは”の世界だったこと。そして物語の主人公、高町なのはの双子の姉として転生させてくれるという条件に心を動かされてしまった私は、こうして転生する流れとなった。

与えられた特典は、原作キャラの身内として生まれるというのがそのまま“出自”として計算されたらしくて、特典の総容量の半分以上を摂られてしまった。だから“武器”としてなのはのレイジングハートの姉妹機のようなデバイスと、なのはと同等クラスの魔法の才能を選択した。

こうして『高町花梨』として転生した私は、原作知識というある程度の未来の記憶を使い、未来を少しでも良くしようとした。

お父さんが怪我をして入院したときも、なのはがひとりぼっちにならないよう傍についていた。

寂しい想いをさせない様に、家族との間にしこりを作らせないようにいろいろやった結果、なのはは塞ぎ込むことは無かった。

でも、良い子でいよう、他の人に迷惑をかけないでいようとする、いい子でいようとする所は治すことができなかった。

もしかしたら、これが世界の修正力って奴かもしれないわね……。

ああ、それと嬉しい誤算だったのが、今までに出会えた他の転生者たちは、皆良い人ばかりだったってことだ。

原作を寄り良い方向に進ませるために、皆を幸せに出来るように協力し合おうって同盟を結べたことね。

神造遊戯(ゲーム)”についてはまだ良い考えが浮かんでこないけれど、こうやって皆で協力し合えていけばきっと上手くいく筈!

 

 

――そう、私は信じて疑わなかった。

――何とかなる。この世界の未来も、私達が殺しあう“神造遊戯(ゲーム)”についても、きっと何とかする良い方法がある。皆となら、絶対見つけられる。

――そんな楽観的な未来の姿を。

 

――――あの日、時の庭園で邂逅することになる魔神(カレ)と出会うまでは。

 




今回、末尾の中間報告は無しです。

2012.11.14 微修正
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