さて、なぜ更新が遅れてしまったかと言うと……
――大体一か月前。
上司「おい、カゲロー。お前さん、来週から○○への転勤きまったから」
カゲロー「∑( ̄ロ ̄|||)なんですとっ!? 初耳なのですがっ!?」
上司「だから今週中に引っ越し終わらせてね♪」
カゲロー「いやいやいや、週の半ばでなんという無茶ぶりっ!? 時間足りないよっ!?」
上司「ガンバ♪」 ←
カゲロー「き、汚い! それが大人のやることかァアアアアッ!?」
上司「ふっ……これが権力をもつという事なのだよ。 ( ̄ー+ ̄)ドヤァ」
カゲロー「……チックショォオオ! こうなったら、やってやらー!」
……とまあこんな感じでドタバタ。デフォってますが、大体似たようなやり取りをして引っ越ししたカゲローです。
なんとか見つけた新居も、ネット無しで工事完了までネットに繋げず。
今朝、ようやく工事が終わったので、書き溜めておいた分を投稿。
週一更新のキープ目指して頑張ります!
「解せんな」
不意にダークネスが呟く。
視線は高層ビルの向こう側で向かい合っているルビーと花梨を捉えたままで。
「家族を大切にする愛妻家たるこの俺が、何故に修羅場の真っただ中にいなければならないのか」 ← 妻妾同衾もとい妻嫁同衾+血の繋がらない義理の娘+愛人候補×たくさんな鬼畜ドラゴンサマ。
腕を組んで何やら考え込む様な仕草をとりつつ、脳天へと振り下ろされた斬撃を紙一重で躱す。
認識を超えた速度で振るわれる刃であっても、彼を捉えきることは出来ない。
「それを言えば俺だってそうだっての。まったく、俺はティア一筋だと言うのに」 ← 10代にしてただれた性活を送っているリア充(訓練校時代は多数告白された経験あり)。
刹那が上段からの振り下ろしを交わされた勢いを利用して身体を翻すと、横凪の回転斬りへとシフト。
米神を狙ったそれを、魔力炎を纏った手のひらで受け止め、刀身の破壊を狙う。
「子どもの前で何やってんだよ母さん……まったく嘆かわしいぜ」 ← 銀髪清純美少女+紫髪強気美少女という両手に花状態+学校ではファンクラブまであるアニキ(
ダークネスの動きが硬直した瞬間、鎧の繋ぎ目を狙いすました黒燐槍の刺突が繰り出される。
それを察知し、咄嗟に炎剣を手放してバックステップを取って、いなす。
小柄な体躯で取り扱うにはあまりにも長大な獲物故に、攻撃を外してしまうと大きな隙を生んでしまう。
槍の勢いに引っ張られたらしく足元が安定していない宗助の背後へと一瞬でまわりこむと、数多の敵を屠ってきた魔剣を構える。
【クライシス・エンド】
炎のように揺らめく魔力炎を纏った手刀。単純故に強力無比な破壊力を実現したダークネス必殺の一手。
無防備となった宗助の背中へ躊躇なく振り下ろされる魔剣。
だが直撃する瞬間、突如攻撃をキャンセルすると、足裏で魔力を爆発させてその場を離脱した。
身体が軋むほどの急激な横方向へのGに眉を顰めながら、先ほどまで自分がいた場所に突き刺さっている“爪”を憎々しげに睨む。
「……どの口がほざくか、リア充どもめ」←ものすごく冷ややかな目の神狼さん。
“爪”の正体は、神を喰らう狼が放った援護攻撃だった。
大地に振り下ろされた鋭爪は舗装された道路を削り取った。相当の強度があるはずのコンクリートを粉砕した腕を引き抜くと、振り返った主が乗りやすい様にしゃがみ込む。
巨大な体躯へと変身した相棒の背中に飛び乗った『神狼の騎士』が軽々と槍を振り回し、切っ先を《新世黄金神》へと向ける。
その隣には、燃え盛る炎の双剣を携えた救世騎が並んだ。
「なんだ、そんなボロボロで俺とやり合うつもりか?」
『
コウタを仕留める事が出来たとはいえ、“
これでは、ただの無駄骨だ。
しかも面倒なのは現在相対している刹那たちの状態だ。
確かに先ほどまでの戦いでそれなりの手傷は負わせている。しかし、致命傷と呼べるモノは皆無であり、余力も残っていると見ていいだろう。
中途半端に追いつめられた
そして刹那も宗助も、立派な
空間結界が解除されて、そう時間をかけないで現実世界へ回帰することを鑑みれば、これ以上ここに留まって戦闘を続けることは相手側の戦力増強――底力の覚醒や援軍の到着など――を招いてしまう可能性が高い。
――撒くべきか、仕留めておくべきか。さて、どうするかな?
仲間を倒されたことを怒り、戦意を滾らせる救世騎と神狼の騎士を向かい合いながら、黄金色の龍神も拳を構えた。
――◇◆◇――
挨拶代りの一撃として振り下ろされた一撃が大地を穿ち、凄まじい衝撃波を放つ。
着弾地点には巨大なクレーターが誕生し、大量の土砂が舞い上がる。
距離が離れていたダークネスたちですら、おもわず目を閉じてしまうほどの強風が吹き荒れ、解除されつつある黄昏の空間を激しく揺らす。
ルビーが纏った鋼の巨人の一撃は、まさに無双の武勇を誇ったとされる雷神の鉄槌を彷彿させる。
戦いの気を感じとった刹那は強風に煽られてしまった宗助の小柄な身体を抱きとめると、吹き荒れる大気のうねりをいなしつつ距離をとる。
「よ……っと!」
舞い上がる瓦礫の破片を足場に体勢を建て直し、着地を決める。
数瞬の間を開けて、フェンリルが刹那の横に降り立った。
彼の視線は呼吸が止まる程に激しい嵐の如き戦いを繰り広げている花梨とルビーへと向けられていた。
「っはぁぁあああああああっ!」
『どぉりやぁああああああっ!』
『神成るモノ』へと変身を遂げた花梨と直立する竜を模した鋼の巨人を駆るルビー。
ルビーが放つ攻撃は、その総てが天災クラス。
拳を振り下ろせば大地を穿ち、刃の如く鋭い鉤爪がコンクリートをバターのように斬り裂いていく。
大きいと言う純粋な、されどそれ故に大きなアドバンテージとなる絶対的な体格差を活かし、小手先の技術などすべて取っ払った純粋なる暴力がそこにあった。
常人ならば、あまりの絶望的戦力差に心を砕かれていたことだろう。
しかし、人智を超えた鋼の巨神に相対する彼女もまた、人の理を超えた領域に身を置く存在なのだ。
荒れ狂う風を意にも返さず、まるで舞うかのような華麗な身のこなしで飛翔するのは、全てを護ると誓った守護者。
鋭槍を彷彿させる形状へと変形させたデバイスをタクトのように振るい、空の全てを埋め尽くすほどの魔力弾を生成し、撃ち放っている。
【アクセルシューター】
彼女の妹と同じ遠隔操作型射撃魔法だが、驚愕すべきはその数とコントロール性であろうか。
驚くべきことに、花梨は数百にも上る誘導弾を完全に制御しているのだ。
巨人の攻撃に対し、側面から魔力弾をぶつける事で軌道を逸らし、死角になった後方へと旋回させた別の魔力弾をぶつける。
かと思えば、地面に狙いを定めて飛ばして足場を崩そうと狙う傍ら、複数の魔力弾を連結させて魔力槍へと生成し、分厚い敵装甲の破壊を試みる。
さらにはかく乱を狙って目の前に無数の魔力弾を飛びかわらせる。
これら攻撃・牽制・かく乱といったプロセスを同時に行いつつ、自身も絶えず動き続けることで狙いを定めさせないようにしている。
マルチタスクの一言では理解できない異常な計算速度。
これこそが『神成るモノ』への覚醒に伴い、花梨が修得した新たなるスキルのひとつ、『
花梨は
『ちっ、メンドくさ……! いい加減潰れとけよ、オマエ!』
――こんだけの魔力弾を完全な制御下においてるってことは……演算系の“能力”? それとも別の……。
「は、誰がアンタなんかの思い通りになるもんですかってーの!」
――以外に俊敏ね。護りも硬いし、見かけ倒しじゃないってワケか。
汚い言葉の応酬を交わしながら、両者は相手の戦力を見極め、対策を練らんと思考をこらす。
嫌悪感はいまだ消えず、隙あれば相手を屠ってやろうという考えもある。
『戦いを止めたいとかヌカしといてバリバリに戦ってんじゃんか。なにさオマエ、結局は《神》の座がほしくなっちゃったワケ?』
花梨という戦いから目をそらそうとする偽善者は、ルビーには不快感しか感じられず。
「あぁ? それマジで言ってるんじゃないでしょうね。 私の想いは今も昔も変わっていないわよ。ただ、アンタみたいな絶対悪にまで手を指し出すほど愉快な頭をしていないだけよ」
ルビーという他者の心を弄ることに愉悦を感じる犯罪者は、花梨には仲間として手を指し出すことが出来ない。
「《神》の座になんか興味は無いわ。私には護りたい人たちがいる。かけがいの無い居場所がある。この世界で叶えたい願いがある……だから、
『……ハァ? な~にを熱血しちゃってるワケさ? キモいんですけど』
鋼の巨人が両足を踏みならし、足場を固める。肩の装甲が展開し、内部から砲塔らしき機構が現れた。
『キモくてウザい奴は死ね』
砲塔を包み込んだ連環型魔法陣によって増幅された魔力の奔流がただ一点に集束し、眩い閃光となって撃ち放たれた。
砲撃魔導師が全力で放つ集束砲すら霞んでしまうほどの破壊力が籠められた一撃を前に、花梨は回避では無く防御を選択した。
デバイスを正面に突きだし、杖先を起点とした防御魔法陣を展開させる。
発動された術式は【ラウンドシールド】。面に対する防御力こそ優秀な魔法ではあるが、巨人の攻撃に相対するにはあまりにも……脆弱!
ルビーは巨人のコックピットで花梨の下した愚かな選択を嘲笑い、ほくそ笑む。
目障りな“敵”を始末できると言う暗い喜びに胸を躍らせながら。
ルビーの脳裏には、魔導砲に呑み込まれて肉片すら残せずに消滅した花梨の姿が浮かび上がっている。
しかし、彼女の描いた未来図は容易く崩れてしまう事になった。
「ばーか」
魔導砲の閃光に障壁ごと呑み込まれた筈の花梨の声が機械越しにルビーへと届く。
『な……っ!? 翼!?』
街を薙ぎ払っていく魔導砲の光を斬り裂いて現れたのは真紅に輝く魔力で構成された一対の翼だった。
神々しくもどこか恐ろしいような……そんな印象を感じずにはいられない。
輝く双翼をはためかせて閃光の中から飛び出した花梨からお返しとばかりに【ルミナスバスター】を放つ。
まったくの無傷という花梨に驚きつつも、ルビーは“能力”によって自分の身体のように操ることが出来る巨人を操作して片手を振り上げる。
正面から受け止めようと言うのか、迫りくる砲撃の前に手をかざし――数秒も持たずに肘まで消滅させられることとなった。
『……っ!? なんっ、だってんだよ!?』
今度こそ驚愕に限界まで眼を見開いたルビーの声に焦りの感情が混じり始めた。
だが、それも当然の事だろう。
対魔力多重複合障壁装甲で覆われた鋼の巨人の防御力は人智を超え、計算上はダークネスの神代魔法ですら防ぎきるほどの性能を誇る。
だと言うのに、花梨が放ったノーチャージの抜き打ち砲撃程度が、装甲をへこませるどころか片腕を消し去ってしまったのだ。
物理的な破壊ではなく――完全なる消滅。
まるで、始めから無かったかのように綺麗な曲線を描いて、巨人の腕が半ばから完全に消失していた。
――
なにか
それを見極めるべく、ルビーは巨人へ指令を下し、更なる攻撃を仕掛けていく。
左腕を真横へと突出すと空間に波紋が浮かび、手首辺りまでが沈み込む。
それを勢いよく引き抜いて、長大な槍のようにも見える大砲を取り出した。
装甲を展開し、魔力の充填を完了させていた巨砲【リンドブルム】の砲口を向け、躊躇なく引き金を引いた。
――だが。
「無駄だっていってんでしょーが!」
大きく翼をはためかせて一瞬で最高速度へと加速した花梨が正面から砲撃の中へと飛び込んでいく。
一見すると自殺行為以外の何物でもない愚かな行為だったが、彼女にとっては全く違う意味を持つ。
吹き荒れる魔力の暴風の中をまるで何事も無かったかのように突き進みながら巨人の懐まで迫る。
巨体故の小回りの利かなさを突いた死中に活を見出す戦法だ。
「ま、肉を斬らせる必要もないんだけど――ねっ!」
デバイスを持たない左手で巨人の胸部を殴りつける。
身体強化の魔法をかけているとはいえ、人間がが鋼を超える強度の鉄塊へ殴りかかれば腕を痛め、最悪は骨折してしまうだろう。
しかし、花梨の放った魔力を纏った拳は、分厚い胸部装甲を粘土のように容易く抉り、削り取って見せた。
すかさずデバイスを突き刺して魔力を集束、ルビーが反応するよりも早く、砲撃を撃ち放った。
放たれた閃光は巨人を容易く打ち抜き、生物でいう心臓部分に当たる動力器官を正確に撃ち貫いて見せた。
ビクン! と一度だけ全身を震わせた巨人のカメラアイからゆっくりと輝きが消失していき、身体が傾いていく。
花梨が離脱したのとほぼ同時に、猛威を振るっていた鋼の巨人は大地へと崩れ落ちる事となった。
「うっわ~、宗助のおふくろさん、相変わらず凶悪な“能力”だなオイ」
「『
戦いに巻き込まれないように離れていた宗助がぽつりと呟く。
「なんで母さんにあんなチカラが宿ったんだ……。あんな、誰かを傷つけるだけの危険すぎる力なんて望んじゃいないのに」
戦いを止める道を探し続けている母の姿を知る息子として、納得できないのだろう。
(『
ダークネスは眼前の敵に対する臨戦態勢を維持しながら、己が“能力”で解析した花梨のチカラについて考えを巡らせる。
花梨が目覚めた『
しかし、先ほどまでの戦いにおいて、常時“能力”を発動させていた形跡はない。
もしそうだとすれば、戦闘開始直後の段階でケリがついていたはずだからだ。
そうならなかったと言うことは、みだりに乱発出来ない理由が存在すると言う事に他ならない。
(発動のために何らかの
『
それが彼女の“能力”に所以する理由なのかはわからないが、厄介な事に変わりはない。
こと強大な存在へと上り詰めたダークネスだからこそ、自身すら消滅せしうる可能性を秘めた花梨の危険性を、誰よりも理解していた。
故に、今やるべきは救世騎と神狼の騎士を相手取る事ではなく、
「見せてもらうぞ花梨……真に『神成るモノ』として覚醒したお前のチカラを」
――◇◆◇――
「あらあら、さっきまで威勢はどこへ行ったのかしら? それとももうネタ切れなの?」
「ふん――ほざけよ。ちょっと面倒な“能力”に目覚めたくらいでチョーシに乗ってんじゃない」
鋼の巨人で相手取るには不利と察したのだろう。胸部の装甲を展開させてむき出しとなったコックピットから降り立ったルビーが花梨と相対する。
だが、その表情は変わらず不敵。強大なチカラを手に入れた花梨を恐れる素振りを微塵も感じさせぬ自然体そのもの。
「にしてもあれだねー。オマエ、随分とダーちゃんに入れ込んでんじゃんか。ナニ、いっぺん抱かれて世界観変わっちゃったワケ?」
「――ハ。知ったかぶってんじゃないわよ」
「あ、何余裕ぶってんの? ひょっとしてアレ? だーちゃんはお前のオトコだって言いたいの?」
「まさか。私の好みは一途な人よ。あの鬼畜エロバカドラゴンみたいな節操なしじゃないわ」
「ふーん? じゃあボクがダーちゃん貰っても何とも思わないってコト?」
「そうね、節操なしな女たらし野郎はどうぞお好きに。――ただし、アンタが手を出す前に私が
「……それってつまり、ダーちゃんをお前色に染めてやる! ってヤツ?」
「ま、そうとも言うわ。あのバカには、きっちりと責任を取らせないといけないし」
先程まで闘争を繰り広げていたとは思えぬ、まるで道端で出会った顔見知りのように、呑気な言葉を交わす。
話題にあげられた某ドラゴンが背筋が凍るかのような悪寒を感じて震えていることを除けば、ごくごく自然な恋バナ(?) 的な会話に聞こえなくも無い。
だが、言葉と行動は『イコール』とならない。
「だから、余計な茶々を入れないでほしいのよね。具体的には……
抜き打ちで放たれた魔力弾がルビーへと殺到する。
『消滅』のチカラが籠められた真紅のスフィアが変則的な機動を描いて襲いかかる。
先程までと同様、人智を超えた演算能力によって実現した数百にも上る全方位魔力弾包囲網。
兵器と言う名の鎧を脱ぎ捨てた人形遣いにトドメを指すべく、守護者たる姫宮が非常なる宣告を下す。
「そいつは無理なご相談だねー」
視界を埋め尽くす
「な……!?」
たったそれだけ。
たったそれだけで、四桁にも匹敵する数の魔力弾がひとつ残らず斬り裂かれ、
後に残るのは愁然とたたずむ人形遣い。その身は愚か、纏ったドレスにも傷らしい跡がいったい見受けられない完全なる無傷の姿で。
「ははっ、この程度でボクをどうにかできるとでも本気で考えちゃってたのかにゃー?」
己の方が一枚上手だと言わんばかりの笑みを浮かべるルビー。
全てを消滅させるデタラメなチカラすらものともしない異常。人間の理では説明できぬ奇跡を起こす“能力”を持つが故の、絶対的な自信を抱いたものの姿がそこにあった。
「どうして……!?」
必勝を疑わなかった花梨の顔に動揺の色が浮かぶ。
かつて、この“能力”に目覚めた直後に行った六課隊長陣との一対多数の戦闘において、彼女らのあらゆる魔法を正面から滅ぼして完封したという事実。
そこから来ていた自信を揺さぶられる現象を前にして、花梨は明らかに混乱していた。
だから失念してしまったのだ。
《神》のチカラの一端が具現化した“能力”とは、予想だに出来ない奇跡を起こすことができるということを。
「確かにオマエのチカラは強大だよ。でもさ、いかに強力なチカラであってもやり様はいくらでもあるし、対策をとることも出来るんだよ。そうだねぇ……例えばボクなら『同じ『消滅』という概念を付与させたチカラをぶつけて相殺させる』とかね」
そう言って、手を掲げてみせる。
目をこらすと、ルビーの指に装着された指輪型デバイス【ディザスターロード】から花梨と同じ真紅の魔力を纏い、揺らめく光の線が見て取れた。
『
人形師と言う二つ名が示すこの“能力”の特性は“全てを操る”。そしてルビーの手元には、自身の魔力光とは異なる色に発光する魔力糸。
即ち、ルビーは先程の戦闘の中で花梨の“能力”を見抜き、全く同じ現象を起こす事が出来る糸を作り上げて、それをぶつけたのだ。
同じ特性を持つ物同士がぶつかりあえば、対消滅が発生する。
それを利用して、逃げ場のない包囲網を内側から破って見せた訳だ。
「そうか……! アンタの“能力”は!」
その事実に行きついたのだろう、花梨が驚愕顕わにルビーを睨む。
予想以上の汎用性と戦術演算能力に驚愕を隠せないようだ。
「そーゆーこと。僕にかかっちゃぁ、消滅
「厄介すぎんでしょうが……! それだけの万能性、魔力消費だって相当なもののはずよ! 人間に扱いきれるワケが無いわ!」
「お生憎様~♪ ボクはとっくの昔に『神成るモノ』へ覚醒しているんですぅ。だからガス欠とは無縁なのさ~。超野菜人1フルパワーの修行と同じ理屈だね~」
兄である“無限の欲望”と同じく、彼女自身も未知なる物への大きな興味と好奇心を宿して誕生した。
そのあくなき好奇心と渇きが、己の真実を暴いたのだ。
そもそものきっかけは、生物学や機械工学といった『人間の分野』において我欲を満たそうとしていた兄の背中を見て育ったことだ。
彼女自身も、飢えにも似た知識欲を満たそうとあらゆる分野へ手を伸ばした。
しかし、先達者たる兄の存在がネックとなり、どうしても彼の二番煎じになってしまう。
未知の可能性を暴くことが出来たと思っても、実は兄がすでにその理論を暴き、ひとつのカタチにしていたことが多々あった。
それが彼女に、この上ない苦しみを与えてしまったのだ。
もっと知りたい。誰一人として知りえることの無い、極上の叡智を。胸に渦巻く無限の欲望を満たすことができるナニカを!
そう願った彼女が
“
《神》
“特典”
“能力”
そして……参加者。
《神》と呼ばれる超常存在によって齎された奇跡のシステム。
これを追及すること意外に、己の欲望を満たしてくれる事象があるだろうか? ……いや、無い!
この世界での創造主への対応を兄に放り投げ、自分自身という存在の解明に持てる叡智を全て費やして研究を進めた。
結果、彼女は転生直後の参加者たちが至る高み……『神成るモノ』の存在にいち早くたどり着き、そこへ至って見せたのだ。
そう……彼女が纏っている雰囲気や“無印”の頃から変わらない衣装。
それらは全て、『神成るモノ』へと至り、その状態を維持し続けていたからに他ならない。
それはダークネスが日常生活を送るために状況に応じて姿を変えるのとは異なり、日常と非日常の切り分けを微塵も考慮する意思の無いルビーだから可能だった手段。
常時『神成るモノ』の姿を維持出来たからこそ、“能力”の緻密なコントロールや消費魔力を最小限に抑えることを可能としたのだ。
普段の本心を感じさせない笑みの奥に浮かぶ確かな愉悦を露わにしながら、ルビーが嗤う。
それを見た瞬間沸点を振り切ったのか、憤怒に染まった花梨が全力の魔力砲撃を放つ。
しかし、怒りで視野が狭まった者の攻撃を受けるほどルビーは甘くない。
指輪から伸ばされた魔力糸を自在に操り、砲撃を絡み取るように糸を巻き付けていく。
最後の仕上げとばかりに立てた人差し指を手前に曲げると、幾重にも重なりあった魔力糸の繭に包み込まれ、全てを消滅させるはずの砲撃が跡形も無く消え去っていった。
やはりルビーもまた、『消滅』という概念を操ることができるらしい。
「ちっ……! でも
「そいつはどうかにゃ~? ボクをそこら辺にいる雑魚と同格に見てんじゃ痛い目見るカモよ~」
「やってみないとわからないでしょうが!」
「あははっ! いくらやっても無駄無駄無駄ぁ~♪ ってか、街中でそんなモンぶっ放すなんて、お前も随分無茶するねぇ~?」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべながら、ルビーは結界が解除されて元に戻ったクラナガンの街並みを見渡しながら言う。
現実世界に回帰した彼女らは、事情を知らない街の住人たちからすれば突然現れた以外の何物でもなく。
あの空間結界が封時結界とは根源的なシステムが異なっていることも、事情を理解できずに混乱を加速させる要因となっていた。
「ね、ねぇ、あの人って高町教導官じゃない?」
「え。マジ? じゃあ向かい合ってる女性はいったい誰だ? 何かの撮影とか?」
「おいおいおい、嘘だろ……!? 向こうにいるのって機動六課メンバーの葵じゃないか?」
「一緒にいるのって……まさか黄金色の龍神!?」
ざわめきは瞬く間に人々の間を伝染し、それが更なる注目を集めていく。
少なくない野次馬たちがカメラや携帯端末を向けていることから見ても、管理局が駆けつけてくるのも時間の問題だろう。
「ホラホラ、どうするぅ~? ボクはこのままやり合っても全然構わないよ~? け・ど♪ 次は避けるつもりだけどねぇ~♪」
「くっ……!?」
花梨の“能力”は破壊力という点で見れば最上級のシロモノ。
しかし、その強大な破壊力故に集団戦では十二分に力を発揮することが出来ないのだ。
無関係の人々を巻き込んでしまいかねない行為をとることを、花梨に選択することなど出来ようはずもない。
歯噛みする花梨と、サディスティックな表情を浮かべつつ鼻を鳴らすルビーの様子に、人々は奇異の視線を送り続けていた。
「ん? この気配は……もしかして、あいつらもやり合っているのか?」
奇妙な停滞が続く中、彼女らと同じように大量の視線に晒されていたダークネスが不意に視線を上げる。
わずかに遅れて気づいたのか、肩眉を顰めた刹那と匂いを感じとったらしいフェンリルも同じ方向へと目線が動いた。
青い空に複雑な軌跡を描きながら交差する輝く閃光。
紫の雷が迸り、漆黒の闇と相対する。
真紅の炎が大気を焦がしながら直進し、青い雷光が真正面から迎え撃つ。
虹色の光が天空を奔り、世界を呑み込む破壊の魔光をぶつかり合う。
どちらも引かない一進一退の激闘は封時結界が崩壊したことにも気づかない。
唯人が足を踏み入れる事も出来ない最上級魔導師たちによる輪舞曲は終わる時を迎えぬまま、いっそう激しさを増していく。
「すっげぇ……」
天空を往く戦姫たちのダンスに気づいた宗助が、感嘆の声を零す。
“ヒト”の範疇にある少女たちによる美しくも激しい舞は、見る者に神秘的な美しさすら抱かせる。
「ずいぶんと派手にやり合っているな――うん?」
遥か遠方、位置的には廃棄都市跡あたりだろうか。
不意に膨れ上がった魔力反応は彼も良く知る白い魔導師のもの。
何故か以前に海鳴市で出会った頃に比べて感じられる魔力量が格段に上がっているのが気になるが、特に理由は思い浮かばないので軽く流す。
だが、ダークネスが反応したのは
「ヴィヴィオ……?」
何故か娘の顔が脳裏に浮かんだ。
魔力が爆発的に膨れ上がったあの瞬間、確かに感じたのだ。
己が娘である少女と同じ……それでいて正反対とも言える波動のような――異質としか言えない魔力の高まりを。
●作中に登場した魔法、魔導兵器解説
・プロトA ver.2
製作者:ルビー
アグスタでダークネスに破壊された1号機の問題点を解消した有人操作型の機体。
全身表面装甲が追加され、外観的には機械の竜人といったところ。
ただし、本機は有人操作のデータ収集用であるため、内臓武器の大半は未搭載。
基本的に肉弾戦オンリーなのはそのため。
・『
使用者:高町 花梨
花梨が覚醒した『神なるモノ』としての真なる”能力”。
自身の魔力に『消滅』と言う概念を付与することで、いかなる存在であろうとも”無”に還すことが出来る。このチカラの根源にあるのは、ふざけた儀式を始めた『《神々》を消し去りたい』という想いそのもの。本人ですら気づいていない強烈な感情が、《神》を消すチカラとして具現化したものがこの”能力”の正体である。
概念魔法の一種であるためにいかなる防御も不可能であるが、唯一の例外として術者本人だけは『消滅』の影響を受けない。
・『
使用者:高町 花梨
魔導師が使うマルチタスクを超えた超神速の演算能力。
戦闘の中で見て・感じて・理解した要素を解析・組み合わせることで未来予知や心眼とも呼べる論理思考を実現する。