魔法少女リリカルなのは 『神造遊戯』   作:カゲロー

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今回は決戦前のインターバルにあたります。
のほほんな空気の中ですが、ようやく主要人物関連の仕込みが完了。
戦闘&シリアス展開は次回からということでひとつ。



迫る『刻限』

『公開意見陳述会』

 

地上本部を会場として開催される時空管理局の海と陸のトップに加え、同盟関係にある聖王教会からも相応の位を持つ重要人物が参加するという一大イベントだ。年に一度開催されるこれの目的は、同じ組織であると言うのに意見が食い違い、対立関係にある海と陸の関係を最悪の事態へと落とさないためのもの。

要は、腹の内に抱え込んだ主義や主張はもちろん、口には出せない不平・不満を吐き出させることにある。つまり、ガス抜きである。

会議の様子は映像機器を通して次元世界全域に放送されており、組織のトップに立つ者の考えを民間人たちも知ることができる数少ない機会でもある。

内面の恥を晒すような愚行に聞こえるかもしれないが、意外なことに民衆からの受けは良い。と言うのも、自分たちや次元世界を護ると宣言している管理局の舵取りが抱く想いをリアルに感じ取れるからだ。

海と陸の仲の悪さは周知の事実。

だからこそ人々は、自分たちを守ってくれる存在が本当に守り人として相応しい主張を掲げているのかを知りたいと考える。

公開意見陳述会は、そういった彼らの要望によって虜個綯われるようになったと言っても過言ではない。

 

「――で、なんで俺らは朝露塗れになってまで地上本部(こんなトコ)いなくちゃならないんだろ?」

「え、今更!? って、ああそうか。そういやカエデ(おまえ)はヴィレオの足元に逆転ドルフィンダイブを仕掛けて、ギンガさんに盛大に人中(人体急所のひとつ)を踏み抜かれて気絶してたんだったか」

「親友の俺への扱いが酷い件について物申したいんですが?」

「めんどくさいから却下で」

「ひでぇぜ、切やん!? あの日の夜に交わした誓いを忘れたって言うのか!?」

「何のこった?」

「わ、忘れちまったのか……!? 思い出せよ! 訓練校最後の年、立ち昇る朝日に照らされた水辺で、お互いのジュニアをスタンダーップ! させ合いつつ、永遠の友情を誓い合ったじゃないか!?」

 

ズザザザ――ッ!!

 

「してねえよ、なに大ボラ吹いてんだよ!? 違うからな!? 俺は至ってノーマルだからな!? お願いだから地上部隊の皆さま方の前で変態発言しないでくれる!? ほら、皆さんドン引きしてんだけど!?」

「ふ……俺と切やんのYou-Jouの前に、恐れ(おのの)いてしまったということか」

「いい加減に黙れや!」

「おうふ!?」

 

キリッ! とニヒルな笑みを決めて見せたカエデの後頭部をわし掴みにすると、容赦なくコンクリート製の床へ叩き付ける。

なのはの教導で――というか、事あるごとにセクハラ発言をしてはぶっ飛ばされると言うお約束を続けたため――耐久力が異常にパワーアップしたカエデは、めり込んだ顔を引き抜こうと地面に腕をついてもがき始めた。

滑稽な恰好を晒す親友を冷たい目で見下ろしながら、刹那は周囲への弁解をしようと一歩踏み出し――、

 

『……』

 

足を踏み出したのと全く同じタイミングで、一歩分後ずさられた。この場にいる全員に。

こっちくんなという無言の圧力の前に、英雄と呼ばれた剣士の精神ポイントがゴリゴリと削り取られていく。

釈明すら許されない空気にさらされ、刹那はほろほろと涙を流すことしか出来なかった。

ちなみに、先のカエデの発言については、本当にあった事だったりする。

ただし、真実は卒業を控えた訓練校最上級生であった刹那たちがクラス総出で年越しパーティを行ったというものだが。

教官の許可を得た上で、何をトチ狂ったのか思い出作りに室内プールで水着パーティを開催したのだ。

無論、いかがわしい行為など一切存在しない、健全なノンアルコールでのパーティだ。

しかし、徹夜で騒いだ翌日の早朝……つまり、窓から朝の陽光が降り注ぐと言うシチュエーションの中で誰よりも早く目を覚ましたのが刹那とカエデであった。

この時二人は、一緒に立派な管理局員になろうと友情を確かめ合う誓いを立てたのだった。

しかし、刹那はとある重要な事実を失念してしまっていた。

水着姿のままプールサイドで爆睡してしまったために、自分たちがいまだに水着姿であるということを。

そして――男性の寝起きに発生する、堪えようのない“生理現象”のことを。

まあ、つまりは――『おっき』くなってしまっていた訳だ……水着で。

思春期真っ只中な少年が二人、水着の下でジュニアがハッスル状態な恰好で、友情を確かめ合う握手を交わす。

何ともシュールな光景であったことは言うまでもない。

 

閑話休題

 

何度か弁明を試みたものの、追いかければ逃げられるお約束な反応しか返してくれない周囲の反応に誤解を解くことを諦めてしまった刹那は、目尻を抑えながら壁にもたれかかった。

カエデとの付き合いの中で培われた強靭なる精神力で、ホモ疑惑を抱いているであろう冷たい……一部、熱っぽい視線を意識の外へと追いやる。

 

「我慢、我慢しろ、俺……! もうちょっとで、ティアスバと交代の時間だ……! それまでの辛抱だ、がんばれ俺」

 

入り口横の壁に背を預けながらブツブツと呟いていたが、掌越しに陽光が照り始めたことを感じとる。

薄い霧の向こうから覗く朝日の光に目を細める。

辺りにはいまだ顔面が埋まったまま騒ぎ立てるカエデ以外にも、警護に当たっている局員の姿が確認できる――二人から必要以上に距離を離している事がなんとも言えない微妙な感じではあるが。

何故二人が朝早くから地上本部にいるのかと言えば、公開意見陳述会の警護任務担当に選ばれた機動六課の第一陣、明朝から朝方にかけての時間帯の担当として刹那とカエデが任命されたからだ。

会議が行われるのは三日後の正午過ぎを予定しているものの、組織のトップが一同に会する状況を好機と見て、襲撃を仕掛けてくるテロリストへの対策として派遣が決定した。

さらに、前線部隊が警護任務の未経験者ばかりと言う事情もあり、こうして予行練習も兼ねた早朝警護任務を命じられたのだ。

ようやく夜空に蒼が差し始めたとは言っても、まだまだ肌寒さを感じずにはいられない気温だ。

暖かいモーニングコーヒーと厚手のコートが恋しくてたまらない。

しかし――、

 

「……ついにこの時が来た、ってか」

 

“知識”の中では物語のキーポイントとなった事件。

事態が急展開を見せる始まりとなった『公開意見陳述会襲撃事件』

スカリエッティ一派の襲撃を受けて、法の塔……すなわち地上本部が壊滅的な打撃を受ける大事件だ。

管理局のお偉い方が多数参加する会議をぶち壊し、自身が持つ技術力と戦力を大々的にアピールすることが目的とされる。ただし……あくまでも“知識”の中では。

 

「No.“Ⅱ”がいる時点で、何らかの乖離が起こることは明確か」

 

懸念すべきはスカリエッティ一味のみならず。

未だ正体が不明なNo.“ⅩⅢ”(ナンバー・サーティーン)や黒装束の一団に加えて、行動の予測がつかないダークネス一行への警戒も忘れてはならない。

特に刹那が警戒しているのがダークネスたち。

四人+αという少人数でありながら、個々の戦闘力が飛びぬけている面子で構成されている。

もし会議の当日、終結した自分たちを一網打尽にせんと襲撃を仕掛けてきたと仮定すれば、苦戦は免れない。

彼我の戦力を分析すれば、確かに六課の戦力を総動員することが出来ればダークネスたちを倒す、或いは捕縛することは不可能ではないだろう。

ダークネスを花梨か刹那、フェンリル込みの宗助のいずれかが相対すれば渡り合えるだろう。

無論、相応の犠牲は止むなしと言う相討ち覚悟で挑めば……の、話になるが。

 

(勝ち目があるとしたら、俺か姉御(かりん)位……宗の奴は……無理、か。相討ちに持ち込めればいいトコか)

 

脳裏に『切り札』を切った自身たちの姿を連想しつつ、冷徹な戦士としての思考で分析を続ける。

以前、三人がかりで敗北した際は不意打ちの影響で全力が出せず、手負いの状態だった。

しかし、今回は万全の態勢で迎え撃つことができる。同じ轍を踏むつもりも無く、当日は施設周辺に強力な結界を幾重にも展開させる予定だ。

超長距離からの広域殲滅魔法を防ぎきることができる護りの前では、いかに空間破壊能力を有する彼らとて、そう容易く突き破る事は不可能だろう。

さらに言えば、ダークネスさえ押さえる事が出来たなら、他の三人に戦闘停止を呼び掛けられる。

中核に立つ彼さえ押さえる事が出来れば、智謀にも優れたアリシアとシュテルなら、“力”ではなく“知”で状況を打破しようとするはずだからだ。

 

「ま、今回、連中は動きを見せないとは思うけどな」

 

今までの彼らの行動から推察するに、確実に成果を得られる状況に至ってから行動に移すのが彼らのやり方だ。

ならば、不確定要素の多い討論会というイベントは『見』に徹し、情報収集を優先するだろう。

であれば、自分たちが警戒すべき存在は、スカリエッティ一派や“ⅩⅢ”。

“知識”より抽出した敵勢力の主力『戦闘機人』やガジェットを仮想襲撃犯として想定しておくべきだ。

部隊長はやてとハラウオン両提督が行った当日の方針を決定する会談の結果、そう結論づけられた。

圧倒的な数を不利な状況下で相手取るために、少人数での連携力をより強固にする。

現在の刹那とカエデがコンビで警護任務を任されているのは、そう言った意図も含まれている。

 

「奴らへの対策は練った。体調も万全で、ティアたちの仕上がりも上々。隊長たちの手札にもとっておきの『切り札(ジョーカー)』が加わった。まさにこれ以上ないっていうくらい万全の布陣だってのに……」

 

海と空の境界線から立ち昇る太陽の輝きに目を細める。柔らかな夜明けを告げるはずのそれが、何故だろう、胸の奥に潜む不安を燻るように感じるのは。

 

「いったい、なんだってんだよ……チクショウが」

 

『公開意見陳述会』開催まで、およそ七十時間――……。

 

闘争(たたかい)の開演を告げる鐘の音が静かに、されど、確実に近づいてきていた――――。

 

 

――◇◆◇――

 

 

同日、機動六課にて――

 

六課の職員がかならず利用する施設と言えば、まず食堂が上げられる。

社員割引と言うわけではないが、六課に所属するメンバーは基本無料で好きな料理を楽しむことができる。

これは料理に相応のこだわりを持つ部隊長の発した鶴の一声で決定した理でもある。

曰く――『美味しいご飯は人間の活力や!』 とのことらしい。

一部、「ん?」 と首を傾げないでもないお言葉ではあるが、そのお蔭で大食……もとい、まだまだ成長期な機械的犬っ娘姉妹やピリピリ(・・・・)少年(ちなみに『ビリビリ』は保護責任者を指す)は、毎日笑顔でお腹いっぱいに食事を堪能できているのだが。

そんな憩の場でもある食堂が、今日に限って普段と違いを見せていた。

具体的には、嗅ぎ慣れない香りが漂っていた。

厳選された香辛料とハーブが奏でる絶妙のハーモニー。胃袋をほど良く刺激するスパイシーな香りが、食欲を否応なしに高めていく。

レトルトやインスタントでは絶対に実現できない……本物の手料理だからこそ出すことができる香りだ。

 

「ンまそ~な匂いが~……」

「こら、おバカ宗助! おとなしくまってなさいって言ってんでしょ!」

「そー君、もうちょっとでできますから、我慢してくださいね」

「うえぇ~……こんなの拷問だぜ~……」

『相棒……わかる。すっごくわかるぜ、その気持ち!』

「だろ!? だろ!? ホレ見ろ、フェンもこう言ってんじゃねェか!」

 

右手にスプーンを握り締め、首元にナプキンを装備した宗助が、匂いにやられて床に突っ伏した仔犬サイズな神狼も同じ気持ちだとアピールするが、

 

「うっさいわよ、お馬鹿。フェンの声はアンタにしか聞こえないんでしょうが! いいから、“待て”、よ!」

「俺らを犬扱いすんな!」

『そうだ、そうだ! 言ってやれ、相棒! このペチャパイめ! ――と!』

「このペチャパイめ! ――はっ!?」

 

慌てて口元を抑えるがもう遅い。

しばし無音の後、カウンターの向こうから『ズリ……ズリ……』と何かが這いずるかのような音が聞こえ。

カチャカチャ、と金属同士がこすれ合うような甲高い音が耳に届き。

厨房へと通じる手押しドアが『ギギィ~~っ……』と、恐怖を煽る様にゆっくりと開かれてゆき――

 

「――――…………サア、ゾウモツヲブチマケロ……!」

「さっ、貞子様ァアアアアアアッ!?」

 

顔を覆い隠す紫の髪の隙間から、爛々と危険な輝きを放つ真紅の眼光が宗助を射抜く。

ずる……ずる……、と床の上を四つん這いになって距離を詰めてくる貞子様(仮)。

その周囲を火の玉……もとい、調理場から拝借した銀色の光輝く包丁を抱き抱えた虫たちが浮遊する。

彼らは女王の怒りをかった愚かなる贄を取りかこむように、素早く宗助(えもの)の包囲を完遂させる。

 

「ひいいいいいい……!」

 

あまりの恐怖で泡を吹いて気絶した相棒を抱きしめ、ガクガクと情けなく震え上げる事しか出来ない宗助。

やがて、宗助(えもの)を射程距離に捕えた貞子様(仮)の指先が少年の首筋へと伸ばされ――

 

「ルーちゃん、ステイッ!」

 

ぺちっ、という可愛らしい打撃音と、

 

「あうっ!?」

 

チャームポイントのおでこを抑えつつ尻餅をついた少女の声が上がった。

 

「もうっ! ルーちゃんもそー君も騒ぎすぎですっ。メッ! ですよ」

 

デフォルメされたドラゴンが刺繍されたエプロンを纏った白銀の妖精リヒト嬢の「めっ!」 が炸裂!

 

こうかがばつぐんすぎる!

 

人さし指を立てながら「めっ!」 という萌え動作に、ハートを撃ち抜かれた職員たちが食堂の入り口で崩れ落ちる中(一番下に部隊長がいるのはお約束)、仲良く正座させられた宗助と貞子様(仮)こと、ルーテシア嬢がお説教タイムに突入してしまう。

怒れるリヒト嬢には誰も逆らえないのは世の理なのである。

 

「ふふっ、本当に仲良しさんですね♪ ちょっとだけ妬けちゃいます」

 

ガミガミお説教されているちみっこトリオの様子を厨房の中から眺めつつ、ピンク色のフリルがついたエプロン姿のヴィレオが懐かしそうに目を細める。

その様子が気になったのか、彼女の隣で鍋を掻き交ぜていた花梨が問いを投げた。

 

「なんだか懐かしそうな顔してるわよ?」

「えっ、ホントですか?」

 

ふにふにと柔らかそうな頬をつまんで首を傾げるヴィレオに苦笑が浮かぶ。

 

「う~ん、何と言いますか……昔の私にもいたんですよ。彼らみたいに……笑い合える親友とでも呼ぶべきヒトが」

「それって聖王の記憶……ってやつ?」

 

ヴィレオはオリジナルの記憶をほとんど引き継いでいないヴィヴィオと異なり、ほぼ完全な状態での記憶の引継ぎを果たしている。

一〇〇%完全な、とは言えないまでも、限りなくオリジナルに近い存在であると言える。

 

「『クラウス・イングヴァルト』……覇王と称された武術の天才で、私の親友とも呼べる存在。リヒトちゃんたちを見ていると、ずっと昔、王となる前に彼と共に過ごしていた頃を思い出してしまうんです」

「覇王ねぇ……ナニ? ひょっとして彼氏だったりする?」

 

少しだけワクワクしながら聞いてみるが、当のヴィレオはきょとん、と首を傾げて、

 

「え? ただのお友達ですよ?」

 

そう切って捨てた。

同時刻、ミッドのどこかで、記憶の中にいるご先祖様がハートブレイクされたかのごとき痛みが奔り『はうあっ!?』 と胸を押さえながら崩れ落ちる少女がいたらしいが、残念な事に彼女らにそこまでの感知能力は無いのでサラリとスルー。哀れな覇王っ娘の扱いに、彼女の監視を行っていた“影”が無言で黙禱を捧げたとかなんとか。

 

 

閑話休題(それはともかく)

 

 

愛情たっぷりの特製カレーを作り上げていたのは、花梨先生監修、ヴィレオ&リヒト&ルーテシアという部外者(?) カルテットであった。

『公開意見陳述会』本番に備え、今日からシフトでの警備を任される前線部隊への選別として、せめて美味しいご飯を用意してあげたいという想いによるものだ。

そして現在、料理全般の指導を万能の天才である母から受けた花梨先生のフォローもあり、大鍋三つ分に相当するカレーが見事完成した。

味はもちろん絶品。

深夜の勤務で疲れた胃腸を考慮して、小さく刻まれた野菜のうまみが、ぎゅうっ、と凝縮されたコクのあるカレースープが醸し出す香りのなんと香ばしい事か。

味見役を任された宗助&フェンリルが、堪えきれずに悪態をついてしまうのも頷ける。

 

 

 

 

「うっま……!? なんだコレ、超ウメェ!」

 

ようやくお説教から解放された宗助は、よそわれたカレーを貪るかのような勢いで平らげていく。

足元には、フェンリル専用に玉ねぎなどの一部具材を省かれたフェン&ザッフィー用のカレーをがっついていた。

念話をする暇も無く、尻尾が千切れんばかりに振り回されている。

もはや完全にカレーの虜となってしまったようだ。

食堂のそこかしこでも、カレーにありつけた職員たちが感嘆の声を上げている。

はやてなどは、娘がこれほどまでに美味しい料理が出来るようになったんやね、と涙まで拭っている。

もっとも、当の本人は恥ずかしそうに俯き、エプロンの裾を握り締めてしまっているが。

親馬鹿全開な部隊長に、娘としては恥ずかしくて仕方がないようだ。

 

「“カレーで皆を笑顔にしちゃいましょう”作戦は大成功でしたね」

「幸せの第一歩は美味しいご飯から……これが我が高町家の家訓よ♪」

「わわっ、素敵な格言ですね♪」

 

お玉などの料理器具を洗い、片付けを行いながら、ヴィレオは満足そうに微笑みを浮かべた。

花梨も、教えがいのある生徒につられて、クスリ、と笑う。

 

「ねえ、ヴィレオちゃん」

「はい? どうしました、花梨さん?」

 

声に含まれた真剣身を感じとり、タオルで手を拭きながら振り向くヴィレオ。

彼女と向かい合いながら、花梨はずっと抱いていた疑問を口にする。

 

「あなた……不安だったりしない? 聖王様の生まれ変わりとかいろいろ言われてるけど……本当はイヤだったりしない?」

「優しいんですね、花梨さんは。けど、大丈夫ですよ。私は今、すごく楽しいんです」

 

純粋に己の身を案じてくれていることを感じとり、ヴィレオの表情が柔らかみを増す。

 

「人造魔導師とか聖王の再来とは言われていますけれど、正直に言えばそれほど重く考えていないんです。だって……私は信じていますから」

「信じる?」

「はい。今の時代、今の世界に生きる人々の……争いを望まない、平和を願う想いを。かつてのように争いばかり繰り返していた時代は終わり、お互いに手を取り合って共に生きていける。そんな優しい世界がこの世界なんだって」

 

終わり見えぬ争いの日々は遥か遠く、平和を謳歌する穏やかな日々が続いていく現代に蘇った己と言う存在。

戦いしか知らなかった己が再び生を得られたと言う事実。

それは、平和が訪れた時代の中、新しい幸福を謳歌すればよいのだと誰かに言われた様な……不思議な感覚。

 

「争いの無い世界……それこそ、私たちが望んでいた未来そのもの。ならば、何を不安に思う必要がありますか」

「――強いね、ヴィレオちゃんは」

 

見知らぬ世界へ一人で放り出された様なものだと言うのに、気丈な態度を崩さない。

そのバイタリティに、花梨は純粋な称賛を抱く。

 

「私も負けてられない、か。いつまでも宙ぶらりんなのはダメだよね」

 

――そうでしょう? ……ダーク。

 

閉じた瞼の裏側に浮かび上がるのは不敵な笑みを浮かべた男の姿。

彼は、相容れない思想を持つ強大なる敵。

と同時に、胸の奥で燻るどうしようもない想いを抱く切っ掛けを作った特別な存在(ヒト)……。

自分は彼をどうしたいのだろう? それとも、自分は彼にどうかされたいのだろうか?

 

(自分の心がわからない、なぁ……)

 

厄介な悩みに答えは出せず、花梨は深々と溜息を吐いた。

近い将来、己の下す『決断』がセカイの運命を大きく左右させるターニングポイントとなることを、彼女はまだ知らない。

 

 

――◇◆◇――

 

 

同日、聖王教会の執務室にて――

 

「ねえ、ローラ。『陰陽五根』って言葉を知ってる?」

「ん? どっかで聞いたような気がしないでもなくなくないなり?」

「いや、どっちなのよ」

 

明日に予定されているミサへの出席を希望する信徒たちからの要望書を処理していたローラは、自身と同じく現在進行形で書類と格闘しているカリムからの問いに首を傾げた。相変わらず言い回しがおかしい親友に丁寧なツッコミを入れつつ、サインの記入続きで痺れ始めた指先を揉みほぐす。

ふと、カリムの視界に机の脇へよけておいた一通の手紙が留まる。

最近では珍しい手書きの便箋に納められたそれは、三日後に予定されている『公開意見陳述会』への参加を依頼する招待状であった。

次期教皇との呼び声が高いローラ、由緒正しい身分にあるカリムに招待状が送られてくるのは、ある意味で当然の結果であると言える。

美しき造形を彷彿させるしなやかな指先でそれを摘み上げて目の前にかざしながら、頭の上に茶色い毛並みの丸い耳とふっくら尻尾が似合いそうな友人の顔を思い浮かべる。

 

「いえね、この間、『閣下』を迎えに来たはやてと少し話す時間があってね? その時に教えてもらったのよ。『世界は“陰”と“陽”の二つの事象で構成されていて、一方が存在するからこそもう一方も存在できているんや。まるで時空管理局(あたしら)聖王教会(カリムたち)の関係みたいやって思わん?』 ……ってね」

 

原初の世界は混沌、全てが入り混じるカオスの状態であり、その中から光に満ちた澄んだ気……“陽”と、暗く濁った闇を孕んだ“陰”の気が誕生した。

この二つの間を“命”と言うエネルギーが循環することによって世界に変化が生まれ、現在の形になった……と、これが『陰陽五根』の思想である。

僅か百年足らずという短い期間で次元世界に変革と秩序を齎した時空管理局。

古きベルカの思想と伝統を受け継ぎ、大地に住まう人々の心の受け皿とならんとする聖王教会。

管理局が外の世界……即ち、『天』へと飛び立つものとすれば、聖王教会は己が故郷である『地』を護るために尽力するもの。

この在り様はまさに、陰陽論に通じるものがあるのでは。

そう軽い気持ちではやてが語った言葉で、胸を打つ衝撃を感じたとカリムは錯覚した。

勧善懲悪ではない。絶対正義は存在せず、絶対なる悪もまた存在しない。

相反する存在が、互いのバランスをとることで世界は成り立っている。

まさに、自分にも戦うための手段(チカラ)があるのだと。己が欲しかった言葉そのものではないか。

 

「私、ずっと悩んでいた……、ううん、迷っていた……んだと思う。私は弱いから……ローラやはやてみたいに戦う力を持たない脆弱な小娘でしかないから」

 

力の無い弱者だと吐き捨て、口惜しげに表情を曇らせる。

噛みしめた歯で切れたのだろう、口元から鮮血の雫が流れ落ちる。

主の自己嫌悪じみた自虐行為に、隣の机でサポートを行っていたシャッハがハンカチを取り出しつつ、慌てて駆け寄っていく。

 

「予知能力とは聞こえは良いけど、結局は少し命中度の高い占い程度しかないわ。それ以外に、私に価値ってあるの? 本当に大切な時に、誰かを護る事も出来ない私なんかに……」

「自分を蔑ろにするのは感心せんね。お前さんには、人望も、志も、権力だってあるであろうに。血統ってのも、立派な強さだと思うなりよ?」

「……けれど、戦うための“チカラ”を持っていないわ」

 

手の平を見つめる。

シミ一つ浮かばぬ陶磁器のような指先。連日のように書類作業をこなしている者の手とは思えない美しさだ。

ペンダコの後すら垣間見ることが出来ない己が指に視線を這わせつつ、心配そうな表情で肩に手をかけてきたシャッハの手を取る。

女性的な丸みを帯びつつも、武器を振るう事によって硬みを帯びた武人の手だ。

 

「私はいつも守られてばかりね……。自分では戦わず、希少な能力の持ち主だからと荒事から遠ざかされて……『候補者』に選ばれたっていうのに、傷つくのはいつだって私の大切な人たちばかり……」

 

わかっている。こんな事を言ったところで、どうしようもない、代えられない事柄なのだと言うことは。

ローラやシャッハの困ったような顔。

『刻限』が迫る中、どうしようもなく堪えられない不安を抱いてしまうカリムを理解してくれる友人たちの優しさからくる表情なのだと非凡な頭脳で理解できてしまい……それがまた、申し訳なさを増させてしまう。

予言能力を持つカリムは戦いを生業とする立場にない。だからこそ、戦う術を持ったローラが教会の守護者でもある教皇の時期最有力候補と呼ばれているのだし、シャッハと言う優秀な騎士が補佐として宛がわれているのだ。

それでも、自分に戦うための術があれば……と思わない日は無い。

大切な友人たちが傷つくかもしれない戦場へ赴く姿を、ただ見送るしか出来ない無力な自分が情けなくて。

 

「それは違いますよ」

 

自己嫌悪に陥る優しい主の心を救うべく、シャッハの両手がカリムのそれを包み込む。

 

「シャッハ……?」

「カリム、私が武人としての道を選んだのは私自身が望んだ事。私の下した『選択』が、貴方を護る盾となり矛となれる。それはこの上ない誉れなんです」

 

一部では心優しき聖女様と崇められるカリムを、時に護衛として護りぬき、時に友人としてふれあい、笑い合う。

そんな少しだけ普通じゃない日常が、シャッハにとってどうしようもない幸福な時間なのだ。

 

「適材適所、とはまた違いますが……カリム、貴方には貴方にしかできない事をやってください。それが、私たちを守ってくれる大きなチカラとなるはずです」

「私にしか出来ないこと……?」

「お前さんに戦う力が無いのとおんなじさね。私らに出来ないことを、アンタは当たり前のようにやっちょりおるよ」

 

武力を以て、先陣に立つローラ。彼女の雄々しき後ろ姿に、人々は聖王教会の教えが自分たちを護ってくれていると感じる。

優しき微笑みで人々の心を癒すマリア。彼女の飾らない、ありのままの優しさが、戦で弱った大衆の心を癒す。

そして……カリムは『導き手』。

聖王教会を頼り、幾重にも重なりあった想いといううねりを纏め上げ、ひとつの意志として統括する。

カリスマ、仁徳、担い手……カリム・グラシアには、人々の上に立つ器が宿っている。

故に、彼女は駕籠の鳥ではなく教会の未来を担う騎士としての役目を与えられているのだ。

マリアが集め、ローラが守る『想い』を束ねる存在として成長して欲しいと、現教皇たち上層部が願っているから。

 

「……うん、ありがとう。そうね……そうよね。いつまでも引き摺ってないで、まずは自分に出来ることを精一杯頑張らないとね」

「まったく、『刻限』はもう目の前にきちょるっちゅうのに、ウジウジと女々しい奴ね。そんな調子で物語(うんめい)をぶっ壊すなんて出来るなり?」

「わっ、私は女の子です! 女々しくて当たり前でしょ!?」

「子ぉ? ――ハッ!」

「鼻で笑ったわね? 右斜め上四十五度を見上げながら、身の程知らずな愚者を睥睨するかのような冷たい視線をくれましたね!? え、なに、もしかしなくても喧嘩売られてるの、私!?」

「え、なにをいっているのですか? わたくしにはなんのことやらさっぱりわかりませんわよ? おほほほほ」

「棒読みにも程があるわよ!」

 

すかこーん! と軽快な音がローラの額から鳴り響く。真っ赤な顔のカリムが投擲した判子(どこぞの玉璽を彷彿させる純金製の重い奴)がジャストミート。

一撃で未来の教皇が椅子から転げ落ちる。

 

「あだっ!? な、なんちゅうことすっとね!? 判子は投げるもんじゃありゃしませんのよ!」

 

額にグラシア家の家紋がペイントされてしまったローラが憤慨顕わに詰め寄っていく。

う~っ! と数秒睨み合い、ふしゃーっ! と威嚇音を上げながらキャットファイトへと移行する。

いつも通りのじゃれ合いと言う名の喧嘩を呈してきた未来の教会代表たちの姿に、シャッハは微笑ましそうな笑みを送る。

『刻限』が訪れた時、失うことになるであろう『関係』の件でネガティブになっていたカリムも、この調子なら大丈夫だろう。

 

「シスター・マリア。お二方がじゃれ合っている間にティータイムといたしませんか? 本日のデザートはザッハトルテですよ」

「うにゅ――……ふえっ!? ほ、ホントっ!?」

 

一人静かにソファーの上でうたた寝していたマリアがデザートの名前で飛び起きる。

その様子に苦笑を浮かべるしか出来ない。

 

「あらら、眠り姫は王子様じゃなくて、ケーキのキスがお望みでしたか」

「えへへ~♪ ――あれ? あーちゃんは?」

「うっ……!? く、こ、この程度、私は……っ!」

「しーちゃん?」

「な、なんでもありません!? えっと、なんでしたっけ……っと、ああ、あの娘ですか? 彼女なら、ほら……」

 

うたた寝する前にはいたはずの、ローラの従者である『彼女』の姿が見えない事に、マリアは不思議そうな表情で首を傾げる。

小動物を思わせるリアクションに、鼻孔の奥の方から込み上げてくる熱いナニカを鍛え上げた首筋で堪えつつ、窓の外を指差す。

 

「お~♪ デートちゅうだ~♪」

 

マリアの視線の先、中庭にあるひときわ高い木の麓で佇む二つの影。

シャッハと同じ聖王教会所属のシスター服を纏った小柄な少女。

フードを外しているのだろう、彼女自慢の燃え盛る様な赤い髪が風にたゆたい、靡いている。

木の幹に背を預ける様な体勢で腰を落とし、正座をとる彼女の膝の上で微睡むのは、マリアたちも良く知る蒼き毛並みの雄々しき獣。

微睡んでいるのだろう、鋭利な牙がな立ち並ぶ咢を恋人(・・)である少女の膝に乗せつつ、無防備な姿を曝け出している。

少女も同じで、触れ合い、感じ合える愛しい男の温もりに身を委ねているのだろう。

瞳を閉じ、優しい風の音に耳を傾けながら、愛しげな手つきで獣を撫でている。

人と獣、一見すると異質なカップリングにしか見えない二人だが、彼らを良く知る人々からすると微笑ましい光景にしか見えない。

何故ならあの二人、見た目通りの存在ではないからだ。だが、そんな事は些細な事情にしかすぎない。

そんな、ちょっとだけ普通じゃない恋人たちの逢瀬を邪魔しちゃ悪いねと窓から覗き込んでいたマリアが身を引っ込める。

恋人たちの時間を邪魔する者は、聖王様の天罰が下ってしまう。

ついこの間、聖王様が再誕されたばかりなのだから、無粋な真似はお叱りの対象となってしまう。

私は空気が読める子なんだから~、とニコニコ笑みを浮かべつつ、シャッハがケーキを並べていくテーブルへと近づいていく。

決して、彼女の代わりに自分がもうひとつケーキを食べられる……なんて俗物的な考えがあったからではない。

口元に溢れ出す神聖なる雫(ヨダレ)は目の錯覚なのである。

 

「ふふっ、シスター・マリアはったら、しょうがない方ですね。それじゃあ、カップを並べるのを手伝っていただけますか? ご褒美にあの娘の分のケーキを進呈いたしますよ」

「いえっさ~♪」

 

寝ている間も手放さなかったのだろう、表紙に少し皺が入っている書物をテーブルの上に置きながら、シャッハの元へと向かっていく。

程なくして、気心が知れた者同士の楽しげな喧騒と甘味に舌を打つ少女たちの声が執務室に木霊する。

 

穏やかで賑やかな空気。

 

そんな中にあって唯一、異彩を放つのは、テーブルの上に放り出された一冊の書物。

何度も読み返したのだろう、羊皮の表紙は所々痛んでおり、紙片の端も擦り切れているところが見える。

しかし、そんな程度でソレの価値が低下することなどありえない。

 

何故ならば――……、

 

ソレが宿すのは異常にして異質なる物語。

 

元来、“この世界”にあるはずの無い(・・・・・・・)モノ。

 

『もし、この世界に彼ら(・・)がいなかったとしたら』……そんな、仮想の未来を、ifの物語を描いたモノ。

 

表紙に画かれているのは凛々しくも美しい少女たちの立ち姿。

少女から大人の女性へと成長を果たし、未来を担う少年少女たちと共に困難へと立ち向かう『不屈の心』のお話。

中央に描かれた白い服を纏い、金色の杖を構える栗色の髪の女性と、彼女が紡いだ絆の仲間たちの物語。

表題には、古代ベルカ文字でこう描かれていた。

 

 

『魔法少女 リリカルなのはStrikers』――……と。

 

 

――◇◆◇――

 

 

同日、純白の世界にて――

 

距離と言う概念が存在しない異空間。

見渡す限りの範囲に物質と呼べる物は一つとして存在せず、どこか空虚すら感じさせる。

そんな《神》の住まう世界に限りなく近い異空間で向かい合う二つの存在があった。

一方は、強大にして苛烈なる力を内包し、人の器に収まり切らぬほどの存在へと至りつつある『うつろうもの』――ダークネス。

もう一方は、大きな頭部と機械的な身体が特徴である白き存在――《純白の神》 サンボーン。

 

《『ソーラレイカー』という言葉の意味を知っているかい?》

「“太陽を護るもの”、ですか?」

《正解とも言えるし、間違いとも言えるね。太陽をどういった意味合いで捉えるのかがキーポイントだよ》

「はぁ……」

 

またもや純白の神に拉致と言う名の呼び出しを受けたダークネスは、再会早々、こんな問いを投げかけられていた。

黄金の巨神は不在らしく、純白の神の独断で呼び出しを受けたようだった。

前触れも無い強制的な干渉なので抗う事も出来ない。

家族四人で仲良く床についていたと言うのにと、不満を抱いてしまうのも仕方がない事だろう。

 

「君は変わりつつある。それは喜ばしいようでもあるし、反対に危うい物でもある。君は今の自分を、EX(エクセリオン)という存在をどういった物だと捉えているんだい?」

「どう、とは?」

「質問を質問で返すのはいただけないね。それに、答えは君の中にあるはずだよ」

「俺の中に? それはどういう――っ!? なん、だ……?」

 

言われ、胸元に手を押し当てながら意識を集中させる。

この空間は《神》のチカラで満ち溢れているからか、普段では感じ取れないほどに微量な鼓動(・・)を感じとる事が出来た。

己の心臓が奏でる鼓動ではない。ダークネスの物ではない、全く別の『ダレカ』の想いが脈動を繰り返してる事を理解し、ダークネス表情に驚愕の色が浮かぶ。

 

「こいつは、“因子(ジーン)”、か……!?」

 

No.“Ⅲ”(アルク・スクライア)No.“Ⅴ”(バサラ・ストレイター)No.“Ⅹ”(ディーノ)

かつて、彼が降し、屠ってきた好敵手(ライバル)たちより簒奪した“因子(ジーン)”が、まるで何かを訴えるかのように囁きかけてきている。

鼓動のように感じたのは、“因子(ジーン)”が放つ信号のようなものだったのだ。

己の内で起こっている異常な事態に戸惑いを隠せないダークネスへ、サンボーンが優しい声色で諭すように告げる。

 

「君はかつてこう言ったね。『踏み越えた敗北者たちが抱いていた如何なる想いも呑み込み、受け入れ、その上で己が我を通す』と。それは正しい。異なる主義・思想が相対してしまったなら、お互いの想いをぶつけ合い、意志を貫くことでしか未来を掴む事は出来ない。けれど、受け入れるだけじゃあ駄目なんだ。ほら、耳を傾けて御覧よ。聞こえるはずさ、“因子(ジーン)”に印された彼らの想いを」

「……」

 

穏やかな声に誘われるまま、深く、深く意識を沈み込ませていく。

まるで底の見えない深海へと堕ちていくような感覚。

けれど、恐れは感じない。

ダークネスの心は恐怖を抱くことなく、どこか懐かしい錯覚すら覚える。

 

(こいつはたしか……No.“Ⅰ”(おれ)が『新世黄金神(おれ)』に目覚めたあの時と同じ――……)

 

《さあ、彼らから受け取った『想い』を理解し、解放するんだ。今の君(EX)は気高き魂たちと一体になることで(かのうせい)を開いた。しかし、次のステージへと至るためには他者の魂(ジーン)ではなく、君自身の(ジーン)をさらに昇華させる必要があるのさ。その果てに手を伸ばした時、君は覚醒する。――……“太陽を護るもの(ソーラレイカー)”へと》

 

穢れ無き宣告が黄金の魂を更なるステージへと導いていく。

因子(ジーン)”が眩く輝き、想いの宝石(ジュエルシード)が優しく照らす。

世界が『白』から『蒼』へ。そして『黄金』へとうつろい変わる。

 

受け継ぎし守護竜の真なる奏者へ至るべく、《新世黄金神》が新たなる進化を果たそうとしていた――……。

 




常時『神なるモノ』形態&真名解放状態でいられるようになった刹那君の考察、仲良しさんなヴィレオたち六課保護連盟、なにやら覚悟を決めたらしいカリム嬢、そしていよいよ”あの姿”への進化が秒読みになってきたダークさん。
乱発してきた伏線を回収できるよう、しっかりお話を纏めなければなりませんな!
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