巨大兵器同士の戦いって新鮮でした。
《ッオオォォォォオオオオオオオオオ!!》
新たなる極神の産声が響き渡る。己の存在を世界に示すかのように。
三対六枚の翼が展開され、天地開闢すら超越するほどに莫大な『
それは、次元が裂けるほどの爆発的エネルギー。
次元と時空を超えた先に在る《同格の存在》たちが
だがそんなもの、今はどうでもいい。
ただ、目の前に立つ好敵手との決着をつけるために、己はここに在るのだから!
爆音を響かせ、黄金の巨神が降り立つ。
現れた敵の脅威を本能で感じ取ったのだろう。獰猛な唸り声と共に、
突き出された豪腕にがっぷりと組み合い、
拮抗する力。たった一手、それだけでパワー勝負では埒が明かないと理解したが故に、両者は鏡合わせのように翼を羽ばたかせ、天高く飛翔する。
大気を切り裂いた衝撃で発生した真空の刃を振りまき、《黄金龍皇神》と『鬼械竜戦士』の戦場は天空へと移り変わる。
「すげぇ……」
天空に描かれる閃光の演舞を地上から見上げていた花梨の耳に、感嘆と羨望が混じった声が届く。
視線を横へ向ければ、自分と同じように天を仰ぎ見ていた雪菜が悔しげに、それでいて憧れる様な表情を浮かべていた。
胸の内から湧き上がる疼きで拳が震え、全身に纏った蒼炎が心の昂りに呼応して勢いを増していく。
彼の眼には姿も映らぬ超高速の死闘を繰り広げている神々の戦いに自分も混ざりたいという強い願望が宿っている。
常人あらば思考を停止するだろう。自らの理解を遥かに超えた領域に在る者共だと、自身と住む世界が違うのだと割り切って。
強者ならば心折れるだろう。どれほどの鍛錬を重ねようとも、決してたどり着くことが出来ない頂きを見せつけられて。
しかし、
「流石はアラヤに選ばれた英雄ってワケね。まったく、これだから男は」
呆れたように肩を竦め、けれど口元は楽しげに微笑みながら感想を抱く。
自分も
……花梨は気付いていない。
動きの初速ですら亜光速に達し、最大加速時には光速の数十倍というバカげた速力を叩き出している巨神の死闘を、並列思考を最大稼働しているとはいえ“見えている”という異常に。
死竜王との死闘、そして『対となる存在の覚醒』が引き金となって更なる高みへ自分自身が至りつつあると言う事実に。
――◇◆◇――
阻むものの居ない天空の舞踏場で、新世を統べる機神と鬼械仕掛けの生体兵器が激突する。
大気を踏みつけ、展開された翼から
光速をも凌駕する超光速の機動は、虚空に残光を描きながら華麗にして苛烈な死闘を彩る。
幾度目かの激闘を経て、後方へと弾け飛んだ両者の間合いが開かれる。
瞬間、双方の瞳に光が燈る。
《集束されたマイクロブラックホールは、時空を蝕む特殊点を産み出す》
綴られる詠唱が進む毎に、掲げられた両手の間で発生した黒紫の雷光が輝きの度合いを増していく。
装甲の各部に装着された宝珠から【ジュエルシード】より空間を捻じ曲げるほどの次元エネルギーが球体状となって抽出、雷光が生み出す重力フィールド内部で混ざり合いながら、極大の暗黒魔力球を生成していく。
《黄金龍皇神》の手の内で生成されたのは時空を歪める超重力力場。
事象の地平線へ万物を落とす重力の特異点……それ即ち、超新星爆発の末に誕生するスーパーブラックホール……!
【胸部
頭上に掲げた両手の中で巨大化していく重力場に対して、『鬼械竜戦士』の一手もまた同種のもの。
詠唱が紡がれ、双方の胸元に掲げられた両腕の間に漆黒の重力球を生成。集束の準備工程を省略し、風船を膨らませるような勢いで肥大化していく重力球に左手を掲げ、いまだ集束を完了出来ていない敵を見据え、先手を取って重力衝撃波を撃ち放った。
それは《黄金龍皇神》が常時展開している障壁によって阻まれたためダメージこそ与えられなかったものの、着弾と同時に拡散し、荒れ狂う重力嵐に拘束されて身動きが取れない隙を突き、自身と同等クラスにまで肥大化した重力球を解き放った。
「【
迫り来る破壊の具現。
射出と同時に圧縮を開始したそれに込められた威力を理解しつつも冷静さを失わず、重力球を掴んだ右腕を突き出し……撃ち放つ。
《事情の彼方へ消え去れ……! 【
撃ち放たれたのは鏡写しの黒。
超重力の結晶たるマイクロブラックホールが両者の中央でぶつかり、互いを喰らいあっていく。
万物を吸い込み、高次空間に取り込んで分解・破壊・完全消滅させるエネルギーが均衡し合い……対消滅を起こす。
雲どころか大気すら消失した真空状態を作り出しながら、マイクロブラックホールは跡形も無く消え去っていった。
「威力だけじゃなく、
【承知じゃ!
両肩の
魔力の燐光を散らせながら咢が開かれていく。そこに集束するのは『
全身の
双砲塔に内包されたエネルギー量を感じ取り、《黄金龍皇神》が動揺を露にする。
だが、それも一瞬。
即座に最優の反応を見せる。
《重力波解放!》
左右に開いた両掌の中に重力粒子が圧縮、それを握りつぶすことで大嵐を彷彿させる重力嵐を発現させた。
【
《黄金龍皇神》が生み出した、唸り、渦巻き、荒れ狂う激流の如き重力の波が射撃体勢をとっていた
だが、極地戦闘も考慮して設計された戦闘兵器は伊達ではなく、数千Gにも達する重力力場に捕らわれながらも上半身を起こし、砲口の狙いをつけようとする。
されど、そんな努力をあざ笑うかのように《黄金龍皇神》が翼を展開し、最大加速で急上昇。
コンマ数秒で成層圏を離脱し、惑星を見下ろしながら背面に装着された兵装を起動させていく。
《背部ドライバーキャノン展開!》
バックパックの上部が開かれ、内から音叉にも見える砲身が現れた。
機体各部に搭載されている放熱板から排出された過剰魔力を再吸収・集束させることでエネルギーとし、星の地表を吹き飛ばすほどの破壊エネルギーを砲弾として形成する。
《穿て! 【
たった一撃で大都市を灰燼と化す威力の砲撃を、超重圧力場の真上から叩き込まれたのだ。並大抵の兵器であれば、撃破して余りある過剰攻撃。
しかし、直撃を受けたはずの
さらに、地響きと共に歩を進め、重力場を引き千切る様に【メガ・グラビトンウェーブ】から抜け出そうとしているではないか。
《超重力の牢獄から容易く抜け出せると思うな!》
ダークネスが叫び、《黄金龍皇神》が星々へ降り注ぐ流星の如き勢いで地上目掛けて急降下。
大気との摩擦で超高熱に包まれることなどものともせずに、
――あれほど巨大な砲身を展開しているのなら、機動力の低下は否めないはず。
未だ射撃体勢を解いていない
しかし、その予測は覆されることとなった。半壊していた両翼の
それは、時空間切断機能を持つ刃【
封時結界すら容易く切り裂ける刃が振るわれる。弧月を描いてばら撒かれた次元斬撃は重力の牢獄を紙布のように切り裂き、霧散し、消滅させた。
《チィ!? このタイミングでは……!》
自由を取り戻した
半壊状態での使用が祟ったのか、崩壊していく【
彼我の距離はおよそ数百メートル。超光速の反射速度を有する両者においては在ってないような距離。しかし、今この瞬間において言えば……戦いの明暗を分ける決定的な間合いとなる。
「エネルギー充填120%! 【
解放されるのは天地開闢に匹敵する絶対破壊のエネルギー。
星を呑み込み、世界を灰燼と化すほどの熱量を内包した暴虐の波動が、怒濤の奔流となって穢れ無き黄金の神へと襲い掛かった。
ビームと呼ぶにはあまりにも巨大すぎるエネルギーの接近に頬が引き攣るのを自覚しながら、それでも《黄金龍皇神》は前に進む。
両腕を交叉させるように腰へ伸ばし、抜刀するように振り抜く。
瞬間、両手に顕現する黄金神の象徴たる“光の剣”。
柄を接続させ、ハルバートモードへ変形した剣を旋回させるように前方に掲げ、超絶破壊エネルギーの光へと突撃する。
「はい? 漫画じゃあるまいし、そんなんで凌げるわけないじゃんか」
失望したと言わんばかりのルビーの声。
事実、形振り構わないダークネスの行動は無意味そのものだと彼女の頭脳が導き出していた。
なぜなら、己が放ったのは超新星爆発にすら匹敵……あるいは凌駕しうる破壊力を秘めた
たとえ相手が《神》であろうとも殲滅できうる兵器をコンセプトに彼女の持ちうる叡智を全て注ぎ込んで完成させたこの兵器に、破壊出来ないものなど存在するはずがないのだ。
「所詮は君も有象無象の同類だったって事なのかな……つまんない幕引きだね」
侮蔑を隠そうともせず、吐き捨てる。
やがて、センサー類をフリーズさせるほどの光熱が終息へと向かっていく。
超弩級の砲撃で撃ち出されたエネルギーの残光が舞い散る中、回復した魔力探知レーダーで探索を行う。
跡形もなく消滅した可能性が高いけれど、念には念を入れるというやつだ。
【ふむ、ようやく終わりおったか……なかなかどうして、最後はあっけないもの……よ……?】
ふと、魔導書の声が震えた。
驚愕、戦慄、畏怖……いくつもの感情が混ざり合い、うまく言葉に出せないような……そんな声を耳にして、首を傾げながらルビーがメインモニターへ視線を向けた――瞬間、
「……ほえ?」
らしくない、呆けた声が出てしまった。
ぽかん、と表現するのが最も適切なほどの間抜け顔。
両目は限界まで見開かれ、半開きになった口は餌をねだる魚のようにパクパクと開閉を繰り返すのみ。
思考は渦を巻いたように停滞し、目の前の現実を理解することが出来ない。
「きゃっ!?」
【ぬぉ!?】
襲い来る衝撃。機体が揺らされたショックで出た驚愕の言葉は、やはり彼女らしくない年相応の声色。
そこまで自分を見失ってしまうほどに、予想外だったのだろう。
翼を失い、砕け散った装甲の亀裂から流れ落ちる“
《轟哭!》
《黄金龍皇神》の両肩にある
《混沌に堕ちろ!》
刹那、
《亨笑!》
奈落へと堕ちていく
漆黒の液体に包み込まれ、超高熱と重力の猛威に曝されながらも落下を続ける
そこは闇に包まれた世界。閉じられ、封鎖された暗黒の宇宙。暗黒物質が凝固した結晶体に閉じ込められた
《無限にして混沌なる破滅の闇……そのチカラを、ここに解放する……!》
周囲に満ちる闇の気配を堪能するかのように背を反らし、数言囁いたダークネスの義眼に、絶対なる破滅を予感させる輝きが灯る。
弧を描く口元には万物を嘲笑する破壊者の笑み。振り上げた片腕を結晶体へ突き刺し、闇を纏って巨大化させたソレで
《
斬り裂きながら
【
その名が示す通り、神へと挑んだ『英雄を喰らう』破滅の王の一撃。
宇宙創造の
爆発の閃光を背に、闇が晴れた現実世界に帰還を果たしたスペリオルダークネスが再び黄金の機神と融合を果たす。
巨神の双眸に光が戻り、状況を把握すべく辺りを見渡す。
……そこには地獄が顕現していた。
破壊され尽くした建築物。僅かに霧散する瓦礫の欠片が、かつてここに都市部が存在していたことを示している。
超常の力のぶつかり合いが空間を軋ませ、残留する魔力によって生成された稲妻が雷雲を呼び、大地に降り注ぐ。
大地は砕け、顕わになった地殻から吹き出す紅蓮のマグマで視界が真っ赤に染まる。
現実世界と隔絶された《黄昏の世界》が発動していなければ、ミッドチルダが幾度崩壊していたかもわからない。
まさしく、世界の終焉もかくやと言う惨状を引き起こした《黄金龍皇神》は周囲の有様など興味はないと言わんばかりに、未だ相対したままの“敵”を睨み付けた。
「やってくれたねぇ……ダーちゃんッ!」
そこには、立ち上がろうとする機体各部を崩壊させつつも人型としての原型を留めている
そして、額から流れ落ちる鮮血で真っ赤に染めた狂笑を浮かべ、瞳を爛々と輝かせたルビーがいた。
いまだ戦意を失わぬ彼女に素直な称賛を抱きながら、《黄金龍皇神》も軋みを上げる四肢に鞭打ち、構えを取っていく。
翼を失い、大地へ堕ちようとも立ち上がる対極の巨神たち。
黄金の巨神は、無事な右の拳を引き絞る。
鬼械仕掛けの兵器は再び【
ひび割れ、今にも崩壊しそうな両肩の竜頭が大砲のように前方へ伸び、凶悪な顎が開かれた。
顎の奥で怪しく輝く砲口に魔力が集束されていく。ここまでのダメージを受けた状態でアレを放つのは自殺行為以外の何物でもない。そんな当たり前の事実は当然ルビーも、ドライも気づいている。
だが、ここで引くことは出来ない。
なぜならば、それこそがルビー本人の、創造主の願いだから。
『
故に、止まらない。勝利以外の目的が存在しないから。
機体越しに彼女たちの覚悟を感じ取り、ダークネスもまた『決断』する。
《それがお前たちの『決断』か……ならば俺も、俺
二心一体となった相棒の鼓舞を背に、ダークネスが、《黄金龍皇神》が疾走する。
巨神の双眸から残光が奔り、黄金に輝く炎となった魔力が右腕を包み込んでいく。
手刀を作った拳に、『炎の剣』の幻影が重なり合う。
《【クライシス――エンド】ォォォオオオオッ!!》
邪悪のみを断ち切る神剣へと至った〈ダークネスの剣〉が、万物を切り裂かんばかりの勢いでルビーへ迫る。
「ギリッギリだけど……こっちの
紅く輝く炎を纏った神剣が届く寸前、双竜の咢から純然たる破壊のエネルギーが解き放たれた。
その名が示すとおり、万物を滅する破壊の奔流が《黄金龍皇神》を呑みこみ――砲身が限界を迎えて自壊した。
爆散する竜頭の欠片に視界を奪われ、一瞬だけ《黄金龍皇神》の姿を見失う。
アレの直撃を受けて無事でいられる筈が無い……と理性では理解しているのに、心が、本能が
――ゾクリ。
ルビーの身体が悪寒に震える。
と同時に視界がクリアとなり、眼前に迫り来る傷だらけの《黄金龍皇神》に両目が限界まで見開かれた。
《おおおおおおおおおおおおっ!!》
咆哮と共に振るわれた神剣が、
鬼械仕掛けの竜戦士の上半身が宙を舞い、轟音と共に大地へ堕ちていく。
下半身に残されたむき出しの操縦席で風に煽られながらも、ルビーは勝利を諦めていなかった。
「まだ……終わってないよ!」
役立たずになった操縦桿から手を離し、火花を散らす計器に向けて【ディザスター・ロード】の糸を飛ばす。
魔力回路を伝って残された下肢総てに糸を張り巡らせ、人形のように直接操作する。
これこそがルビーの奥の手『
無機物有機物問わず、あらゆる存在を糸でからめ捕り、己が人形として操作する概念魔法だ。
元々は超重量機動兵器である『
しかし、半身を消失したために総ての容量を残されたパーツに注ぎ込むことで、半壊状態の
竜尾がしなり、《黄金龍皇神》の右腕を巻き込むように腹部へ巻きついた。動きを拘束すると、尾端が蛇のように《黄金龍皇神》の首へと昇り、先端にある竜の咢で噛み付いた。
黄金の装甲に亀裂が走り、鮮血のように真っ赤な魔力が噴き出す。
最後の足掻きを見せたルビーに文字通りの意味で噛み付かれ苦悶の声を上げた《黄金龍皇神》の瞳に力が篭る。
しかし、ルビーの口元に浮かぶ笑みを消すには至らない。
残された右腕は拘束され、バルカンなどの火器も搭載されていない《黄金龍皇神》に出来ることはないのだと確信を得ているから。
だが、板金を力ずくで捻じ切るような異音が聞こえた瞬間、ルビーの頬が驚愕で引きつることとなった。
《黄金龍皇神》口元を覆うバイザーが引き千切られながら開かれ、スペリオルダークネスが飛び出した。
金色の残光を煌かせながらルビーへ向けて一直線に飛翔し、龍槍剣エクスレイカーを装着した右拳に限界まで圧縮させた『
顕現した聖槍を装填し、戦いを終わらせるべく《新世黄金神》が”理操る人形遣い”へと迫る……!
「こいつで終わりだぁぁああああっ!」
「負けるもんかぁぁああああああっ!」
『
”両断”の概念が込められた、最高最強の『神代魔法』。
次の刹那、ダークネスの首はあっけなく宙を舞い、地に落ちるイメージをルビーは抱く。
だが、ダークネスは彼女の予測を再び超えた。
ルビーが放った全身全霊の一撃を左手で
腕を引く反動すら拳を突き出す勢いに上乗せし、呆けた表情を浮かべたルビーの胸元へ全力の『想い』を叩き込む!
「『
黄金の
世界の理……絶対不変の概念すらも破壊する《新世黄金神》の一撃が、戦いの終焉を告げる鐘を打ち鳴らした――……!
「あ~あ、負けちゃったかぁ……」
胸部を撃ち抜くダークネスの腕を感傷深げに見下ろしながら、ルビーが寂しげに呟いた。
彼女の顔は、楽しい時間の終わりが寂しくて、悲しくて、涙を堪える少女のそれ。
それは、生まれて初めて全力で勝ちを掴み取ろうと力を振り絞った人形遣いのみせた、素の表情だったのかもしれない。
「悔しいなぁ。でも、ダーちゃんと出会えたからこんな想いを知ることが出来たんだから、良しとするべきなのかな~」
「満足したか?」
足元から輝く粒子になって霧散していくルビーに、ダークネスが問いかけた。
声色は、とても優しい。
「ん……どう、かな。すごく楽しかったのはホントだよ? でもさ……なんていうか、さ。ちょっぴり、こうも思っちゃうんだ。〈もし私とダーちゃんが味方だったらどんな関係になってたのかな?〉 ってさ。ま、いまさらどうにもならないんだけどね~」
ダークネスとルビー。
両者とも、己の望むままに生き、戦い、想いを貫いた者同士。
今回は偶々重なり合わなかった彼らの人生がもし重なり合ったとしたら……はたして、彼らの関係はどのように変わっていたのだろう?
イメージすることは出来る。想像し、空想することは出来る。でも……総ては終わってしまった。
ルビーは敗北し、この世界から消える。それは絶対不変の真理であり、揺るぎようの無い現実だ。
……だけど。
「ん~、そろそろ時間、かな。」
腰下まで消滅した己の身体に苦笑を浮かべつつ、最後に自分を降した相手の顔を見つめながら逝こうとルビーの視線が上を向く。
けれど、ダークネスが意地の悪そうな表情を浮かべていることに気づき、アレ? と首を傾げてしまった。
「そうだな。
疑問に答えず、言葉を綴る。
ルビーの頭をクシャリと撫で、意地悪な笑みを浮かべたまま断言する。
「
それを聞いたルビーは何を言われたのか理解できずに首をかしげ、やや間を空けて込められた意味を理解して、彼と同じ意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「
「ああ、
プッ! と小さく噴き出して笑い合いながら、ルビーの身体が魔力粒子へと変わっていく。
最後のときまで笑みを浮かべながら、ルビーは闘争の舞台から降りていった。
最強と最凶。
異なる頂の存在と呼ばれた者たちの決着が――ここに成った。
残ったのは最強たる黄金色の龍神。
降した人形遣いの想いをも背負い、《新世黄金神》は更なる高みを目指す。
しかし――ルビーは気づいているだろうか?
彼女の存在が、《新世黄金神》を完成させたことに。
《黄金神》の『魂』を後継し、『器』である守護龍をも継承した。
最後の鍵である『武具』……それこそが伝説を継ぐ勇者のみが装備することができるという”三種の神器”。
ソレを纏うために必要なもの……それは勇者の在りよう。
邪悪な
粒子となって霧散していくルビーの行く末を見届けるダークネスの鎧。腹部に装着された宝珠に彼女の魔力光を彷彿させる紫の輝きが宿ったことに、黄金の守護龍だけが気づいていた。
――◇◆◇――
ここではないどこか。次元を隔てた先にある宇宙から神へと至らんとする者たちの戦いを見つめる存在があった。
《なるほど。貴方が隠居しようとする理由がようやくわかりましたよ。彼がそうなのですね?》
《その通り、彼が私の後継者だ。……それと、私は別に隠居するつもりはないぞ。別次元の世界を見守るために《黄金神》の座を継承させるだけだ》
《はいはい、仕事熱心なことで。ワーカーホリックで胃炎にならないよーに》
《誰がなるか》
白亜の宮殿の一室、この
その当人はといえば、寝巻きのまま浮遊する眠具から身を乗り出して、魔法使いが生み出した水晶玉に映し出されている映像を食い入るように見つめていた。
『こちら側』の地球で心を満たす戦いをし、満ち足りたまま眠りに入っていたはずの《
己や彼と同じ、神々の頂に立つ存在……《極神》。その一角を担う《破壊の神》のわかりやすい反応を横目に、黄金に騎士は教え子の成長を喜ぶ先達者として歓迎と賞賛の言葉を送る。
《ようこそ、我らの
かつて純白の世界で彼と邂逅した光の存在は、後継の覚醒に頬を綻ばせながら祝福する。
《なるほどねぇ……まだまだヒヨッコみたいだけど、見所はあるかな》
《ニヤニヤ笑いながら言ってもカッコつきませんよ》
尊大な言い草とは裏腹に、好敵手の覚醒に破壊の神は堪えようのない愉悦に心躍らせる。
従者にして師匠でもある魔法使いは、惰眠を貪るばかりだった破壊神の珍しい姿にツッコミながら、新しい楽しみができたことに満足げに頷いていた。
ここは次元の壁にへだてられた十二の平行宇宙のひとつ”第七次元世界”。異世界を統べる《破壊の神》に興味をもたれてしまった事実に、
そして、《破壊の神》のみならず、同胞の誕生を察したその他の次元世界の《極神》たちからも戦いの一部始終を鑑賞されていることを、ダークネスたちは知る由もなかった。
神々が見守る中、彼らの好奇心を擽るほどの戦いは【ゆりかご】内部へと移り変わっていく。
ダークさんの技がボス匂まみれで香ばしい件。
破滅の王さんはやりすぎたかな~とも思いますが、リスペクトということで。
グランゾン、バラン=シュナイル、ファートゥムと続いて、最後はマトリョーシカアタックモドキのフィニッシュ!
この流れは、合身をイメージした時点で構想していたので、書き切れて満足でした。
次はR版の更新か、それとも【ゆりかご】の突入組か。