魔法少女リリカルなのは 『神造遊戯』   作:カゲロー

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ようやく黒幕的存在が本格参戦。
この調子だと、100話は番外編になりそうな予感。


明かされる真実

スナイパーライフルを構えたヴァイスが護衛し、アルトが操縦する機動ヘリに乗り込んで【ゆりかご】へ向かっていたフォワード陣が見上げる中、機能停止に陥った【ゆりかご】が緩やかな落下を開始した。

巨大建造物が生み出す風圧に呷られて脱出口まで近づけない中、空戦適性を持たないフォワード陣が悔しげにした唇を噛みしめる。

 

「アルト! せめて、もうちょっと近づけないの!? せっかく脱出手段を用意したってのに、このままじゃ宝の持ち腐れよ!」

 

思わずと言った風にティアナの叱責が飛ぶ。ヘリのコンテナには二台のバイクが搭載されており、AMF領域内でも能力を発揮できるナカジマ姉妹とティアナ、治療によって復帰したヴァイスが【ゆりかご】内部に閉じ込められてしまった隊長陣の救出プランを立てていたのだ。

しかし、ヴィータの援護に向かったはやての開けた大穴(脱出口)までかなりの距離があり、しかも強力なAMFが展開されたままのため【ウイングロード】も発動できない。飛び移るにはあまりにも距離が離れすぎている。このままでは手を拱いて【ゆりかご】の落下を見送るしかないのかという不安が胸中に湧き上がってしまう。

 

「無茶言わないで! 防御機能がまだ生きてるみたいなんだから、これ以上近づいたら迎撃されちゃう! それに、パイロットである私には皆の命を守る義務があるの!」

 

だが、アルトとて思いは同じ。

出来る事なら強引に突貫なりして救援に向かいたい。

だが、帰りの脚になるヘリを破損してしまえば目も当てられない。

複数の命を預かるヘリパイロットして、突入組の救援と同じくらい、乗客の身の安全に責任を持たねばならないのだ。

それを知っているからこそ、ヴァイスはティアナやスバルを宥めつつ、六課襲撃の際に受けた負傷のせいで操縦桿を握れない自分の代役を果たしてくれている後輩を擁護する。

 

「落ち着けお前ら。俺の言えた義理じゃないが、部隊長たちを甘く見過ぎだぜ。あのエース集団がこのくらいのピンチでくたばるもんかよ」

「む……そう、ですよね。ここで私たちが騒いだところで、どうしようもないですもんね」

 

内心の不安を感じさせない明るい口調に幾分か落ち着きを取り戻したのか、数回深呼吸して心を落ち着かせたティアナが不敵な微笑を浮かべながら肩に乗せられていたヴァイスの手を払い落とす。

 

「あ、あれ? 俺今すごく先輩らしいこと言ったよな? なのになんでこんな扱い?」

 

虫を掃うかのようなぞんざいな扱いに頬を引きつらせるヴァイス。

いつもの冷静さを完全に取り戻したティアナは、肩にかかったツインテールの髪を掻き上げながら侮蔑を込めた冷ややかな視線を返す。

 

「後輩の彼女と乳繰りあいながら軽々しく触れないで貰えます? 汚らわしい」

「汚らわしい!? って、ひどくね!? 怪我してたのに頑張って救助に駆けつけた先輩にその言いぐさは!?」

「何いってんですか。私たちがひーこら言いながらバイク乗せてた時、「先輩……無理しないでくださいね?」「おいおい、心配すんなっての。そう簡単にくたばる様なタマじゃねえよ」「でも……」「安心しろ。お前を残してくたばったりしねぇから。……一人になんてさせねぇよ」「先輩……!」 て、どこのメロドラマだよとつっこみどころ満載な『あま~い』やり取りかましてたじゃないですか」

【高画質録画、及び、フォワード陣営の【デバイス】との情報共有は完了済みです】

「完璧よ【クロスミラージュ】」

【お褒めに預かり光栄です、マイマスター】

「何やってくれてんの!? 味方へ精神攻撃するとか正気か!?」

「てか、人の事言えないでしょ、ティアナっ!? 貴方だって蒼意君といちゃいちゃしてたじゃない!」

「あらら。つまり、裏を返せば、私たちの知らない間にアルトとグランセニック陸曹(・・)も『いちゃいちゃ』していた、と」

「ものすごい他人行儀!?」

「ていうか、皆の命を背負って頑張ってる私に、精神攻撃しないでくれる!?」

 

ティアナの悪ふざけにギンガが乗っかり、ヘリパリの先任後任カップルの顔が朱色に染まる。

純粋な眼で「うわ~、おめでとうございます~」とか言ってくるスバルとエリオのピュアコンビの眼差しが、物凄くいたたまれない。

何とも言えぬゆるーい空気がヘリ内に蔓延していく。

もしこの場に、救護班の指揮を執っているシャマルや、気絶したキャロを後方へ送り届けに行ったザフィーラやアギトがいれば、真面目にやれと怒号が響いていたことだろう。

だが、場違いな空気は大気を震わせる轟音と共に霧散することとなった。

ヘリが大きく揺さぶられ、中腰になっていたヴァイスやスバルが盛大に転ぶ。

壁に凭れかかりながら状況確認するギンガとティアナに応じる様に、アルトが手元のパネルを操作して外の様子をモニターに映す。

ヘリ内の全員が食い入るようにモニターへ視線を向けると、不規則な残閃を描きながら激しくぶつかり合うスペリオルダークネスと高町 花梨、蒼意 雪菜の姿が映し出されていた。

さらに、地上では、黄金の三首龍が、頭部に高町 宗助を乗せて同サイズにまで巨大化した巨狼とせめぎ合っており、美しいクラナガンの街並みが瓦礫の山へと上書きし続けている。

手出しができないのか、禁じられているのか。教会騎士の大半を捕縛した管理局の魔導師たちが防御陣形を取りながら、かなり遠方で戦いの行く末を見守っている。

落下する【ゆりかご】に目もくれず、自分たちの戦いを続ける“参加者”への怒りが湧き上がり、ヴァイスの表情が憎々しいものへ変わった。

 

「アイツら……」

「落ち着いてください軍曹。元々、私たちの方から雪菜たちの戦いに関わったんです。文句を言える立場じゃありませんよ」

「わかってるんだよそんな事は! でもよぉ……悔しいじゃないか! 俺たちは仲間の危機に何もできない小物だってのに、連中はそんなものどうでもいいってナリでよぉ。これじゃあ俺たちなんて、いてもいなくても変わらない存在だって言われてるようなもんじゃないか」

「違います!」

 

暗い劣等感に苛まれかけたヴァイスに反論したのはエリオ。

仲間として、師として、友として。花梨や雪菜、宗助と触れ合ってきた少年だからこそ断言できる。

 

「花梨さんたちはフェイトさんたちを信じてるんです! 自分が手を出さなくても大丈夫だって……だから、やるべきことをやっているんだと思います!」

「やるべき事ねぇ……やっぱり、最後に立ち塞がるのは『あの人』って事よね」

「《新世黄金神》……世界最強のバケモノ」

「《神》の頂に最も近い人……そして」

「僕たちの未来の行く末を決めるかもしれない人ですか……!」

 

声が自然と硬くなる。

儀式の“参加者”で存命なのは四人。

内、三人は彼女たちも良く知る身近な人物。

善良な性格の持ち主であることは知っているため、彼女たちの誰かが勝利者……《神》となっても問題ないと思える。

だが、最後のひとりには不安と警戒の念しか抱けない。

数度接触したことがあると言え、逆にあちら側のデタラメっぷりを見せつけられて恐怖を抱く結果になってしまった。

しかも、危険なのは当人だけでなく、周囲に魔女、天女、姫君、守護龍とエースクラスの危険人物ばかり侍らせている。

思想もかなり危険なものだということは周知の事実。これで不安になるなという方がおかしい。

……とは言え。

 

「ねえ……あれ、何やってるんだと思う?」

 

頬を引きつらせたティアナの質問に答える者はいない。

何せ、つっこみたくてしょうがないとばかりにプルプル震える彼女以外の全員が、なんとも言えない表情をしていたのだから。

そんな中、リカバリーを果たしたギンガが事実を確かめるよう口に出しながら答える。

 

「え、えーっと、雪菜君の斬撃を躱した《黄金神》さんがACSで突撃してきた花梨さんと激突して……その、威力を逃がそうと身体を捻ったらなんやかんやあって……えと、お姫様抱っこしちゃった……かな?」

 

モニターには、何故かダークネスに横抱きされた花梨が真っ赤な顔で怒鳴っている姿が。

魔法使えば? と声なきツッコミが聞えていないのか、ダークネスの力強い腕の中で恥ずかしげに身を捩る様は、積極的な彼氏の行為を恥ずかしがる乙女の図に見えなくもない。

現に、ダークネスの頬を引っ張りながら口論する花梨の様子を見た雪菜の顔が物凄い呆れ顔になってるし、地上の宗助もなにやら葛藤するように頭を抱えている。

もしかしたら、ダークネスを義父と呼ばねばならないのか? と悩んでいるのかもしれない。

空気を読んで戦闘を中断し、『待て』の体勢で睨み合う三つ首龍と神狼が何ともシュールだ。

 

「……アルト、会話拾えるか?」

「えーっと、やってみます……?」

 

何故か疑問符で返しながら再びパネルを操作してみる。

すると、雪菜の【フランベルシュ】が中継しているらしい会話を拾う事が出来た。

音声出力をONにして会話を流す。

 

『~~っ! てか、そろそろ降ろしなさいよバカ! お尻触ってないでっ!』

『え、尻? ……腰じゃなかったのか』

『おい、こら。それはどういう意味だ? 私のウエストが尻肉の如き肉厚だと言いたいのかコラァ!?』

『あー……すまん。アリシアもシュテルも、なんというか細っこくてな……つい』

『他の女と比べてんじゃないわよっ!?』

『ふむ? それはつまり、私だけを見てよっ! というジェラシー的な発言と受け取っても?』

『な……が……!? そ、そんにゃわけにゃいじゃない!? アンタの事なんて別に好きでもなんでもないんだからっ!』

『む、それはちょっとショックだな。俺はお前の事、嫌いじゃないぞ? むしろ好きな部類に入るかな。ま、一番はアリシュヴィ三人娘(あいつら)だが』

『にゃわ!? な、ななななな……!?』

『お、赤くなった。そうか、こういう直球なのが弱点なのか……メモメモ』

『どこからともなく取り出したメモ帳に書き込むなぁあああああっ!? てかマジでどこから取り出したのよ!?』

『ふ……。実はこれこそが俺の“能力”なんだよ。例えて言うなら……『ありとあらゆる願いを叶える程度の能力』と言ったところか』

『無駄に万能ね!? てか、そんなすごい能力をくだらないことに使うなっ!?』

『えー』

『えー、じゃないわよっ!』

 

「「「「「……何、このラブコメ」」」」」

 

聞き逃してはいけない重要な発言があったような気がするのに、真面目に考察するのが馬鹿馬鹿しく思えるというか……場違いなほどに“あま~い会話”。

こんなんが《神》サマ候補ってどうなの? と不条理な世の中を恨む一同。

激しくブラックコーヒーが飲みたい今日この頃。

 

「……はっ!? というか【ゆりかご】はどうなりましたかっ!?」

「「「「「あ」」」」」

 

お子様故に回復が早かったエリオの指摘に一同が【ゆりかご】に視線を戻す。

すると……、

 

『あははははーっ! アリシア、参上! なんだよっ!』

『シュテル、見参……です』

『ヴィヴィオ! 降~臨ッ! なのですっ!』

 

何故か三枚に下ろされた【ゆりかご】から決めポーズと共に脱出したアリシュヴィトリオが高笑いしながら【ゆりかご】の残骸を斬って、砕いて、破壊しまくる様と、

 

『うわーお、【ゆりかご】を生身で破壊とか……どんだけ~』

『なあなあ、はやて。私、死力を尽くして動力炉を破壊したんだけど意味あったのかな?』

『ええか、ヴィータ。アレは規格外っちゅうか常識の外の住人やから基準にしたらあかんよ。スルーするのが一番なんよ。主に私らの心の平穏を守るために』

『スミマセン、スミマセン。我が家のトラブルメイカーたちが本当にすみません……』

『……ぐすっ……えぐっ』

『ふぇ、フェイトちゃん? いい加減戻ってこようね? リニスさんに怒られたことがそんなにショックだったんだね……ああ、うん。滝のように涙流しながら無理に説明しようとしなくていいからね? 人様には見せられないすごい事になってるから』

 

自制しない三人娘が暴れ回ったお蔭でAMFが解除されて脱出できた管理局一行+αのお姿が、モニターに映し出された。

バインドで簀巻きにされたスカリエッティ一味を括り付けられた【レイジングハート・ファンネルビット】を従えたなのはを先頭に、疲労困憊だが魔力切れで消耗したヴィータを抱き抱えたはやて(ユニゾンVer.)、肌を出し過ぎですとお説教されて涙ぐみ、なのはに抱き着いたフェイト、何度も頭を下げながらドサクサまぎれに回収しておいたディアーチェとレヴィのコアを抱えたリニス。

そして、

 

『これでトドメーっ! 秘義! 【マスタースパァァアアアアク】ッ!』

『おやすみ【ゆりかご】……ちぇりぉーー!』

 

アリシアの掌から撃ち放った極大の魔導砲が【ゆりかご】を圧倒的火力で蹂躙し、唯一原型を留めていた中枢部ユニットをヴィヴィオの“龍神華刃(なんちゃってクライシスエンド)”が粉砕する。

古代ベルカの超兵器にして遺産である弩級兵器【ゆりかご】を永遠の眠りにつかせ、いい汗かいたと額を拭うアリシア&ヴィヴィオ。

シュテルも思う存分砲撃出来た事で満足顔で頬をツヤツヤさせているように見えるし、【クリス】に至ってはまだまだいけると言わんばかりにシャドーする始末。

彼女たちは一体どこへ向かっているのだろうか……?

 

「……心配するだけ無駄だったわね」

 

今日一番の疲労からくる深い溜息を零すティアナをフォローできる者は、この場に存在しなかった。

地上へ降りていく彼女たちに続く様に、何とも言えない空気を纏ったヘリも地上へ降下していくのだった。

 

 

――◇◆◇――

 

 

『ご苦労だったな、皆。小競り合いレベルの戦闘は散発的に継続しているようだが、大局は決した。戦争は管理局側の勝利、戦闘に参加した聖王教会の騎士は捕縛し、各地の教会支部も随時制圧されている。非戦闘員は一時的に隔離ということになるが、暴動が起こる気配も無いから戦いは終結したと考えていいだろう』

 

ウィンドウに映し出されたクロノ総司令官の言葉に、集合した六課一同の表情が緩む。

各地への鎮圧任務に当たる魔導師について、雪菜やはやてが危惧していた非戦闘員への暴行行為も起こらなかったらしい。

この辺りは、次元の番人を名乗る管理局の教育が成せる技というところか。

ガジェットの残骸と崩壊した建物の瓦礫で埋め尽くされたクラナガンの広場に集結した六課メンバーは、捕縛したスカリエッティ一味の輸送車が到着するまでの間、情報共有を行っていた。

 

「ほんで、クロノ総司令官。カリムとローラの捕縛はどうなっとるん?」

『そちらも捕縛部隊を派遣済みだ。まだ現場に到着したという連絡は受けていないが、もう間もなく身柄の確保が出来るはずだ。しかし、本当に言葉で説き伏せるとはね。君の強さを見誤っていたよ』

「あはは、褒め言葉と受け取っときますよ~」

 

ヒラヒラと手を振りながら軽く流す。

だが、魔法という暴力で押し通すのでなく、言葉と想いで説き伏せることに成功したはやてを見るクロノは眩しいものを見る様に目を細める。

次元航行艦の提督として、管理局の総司令官として臨んだ今回の戦いは、最悪の場合どちらかの組織が完全に瓦解するまで終わらないかもしれないと覚悟していた。

だが、現実は聖王教会のトップ、最も危険な次元犯罪者を捕縛することに成功し、人的被害も最小限に留めることが出来た。

戦争期間も極めて短く済み、これなら次元世界で管理局に敵対意志を持つ組織が台頭してくることを防ぐ事も出来るかもしれない。

これからの事について考えを巡らせるクロノに、数名から質問が飛ぶ。先陣をきるのはティアナだ。

 

「ハラオウン司令官、音信不通になっていた本局の方はどうなったのでしょうか?」

『ああ、そちらも連絡がついたよ。やはり大量のガジェットと竜の群れが転移魔法で送り込まれていたようだ。ルシエと言ったかな? 彼女が使役する竜の身体に何体ものガジェットを縛り付けて一気に転移させていたんだ。おまけに戦闘機人のスパイも潜り込んでいたらしくてね。内部から通信器具の破壊工作や命令系統の遮断など二手、三手先をとられていた様なんだ』

 

ナンバーズNo.2 『ドゥーエ』

外見を変化させる変装能力の保有者にして、討論会の混乱に乗じて管理局最高評議会を始末した暗殺者。

どうやら彼女は、管理局の魔道師に偽装して本局に乗り込み、手出しができないよう内部工作を取っていたらしい。

 

「おいおい、クロノ。まさか敵とはいえ、レディに乱暴なことしてないだろうね?」

『簀巻きにされながら余裕だなヴェロッサ……まったく、そのふてぶてしさは時々うらやましくなる』

「良い男は、何があってもレディを気遣うものなのサ♪ ――で、どうなんだい? まさかと思うけど……」

『安心しろ。モンディアル陸士がルシエ嬢を撃破した瞬間、竜軍は送還。残ったガジェットも残留部隊が殲滅し、戦闘機人も無傷で捕縛されたよ。どうやら、あくまで時間稼ぎが目的だったらしくてね。正体を見破られて包囲されたら、即座に武装解除して投降したらしい』

 

潜入工作を得意とするドゥーエは、戦闘能力が低い。命を賭して任務を果たす……という武人気質の性格でもないので、不利を悟って捕縛されることを選択したようだ。

クロノ説明を受けて、「あらあら、ドゥーエお姉さまったら強かさん♪」と薄笑いを零すクアットロがいる一方で、「まったく、最後まで足掻こうとする気概は無いのか!」 と憤慨するトーレがいたりと、姉妹仲良く簀巻きにされながらも無駄に元気なナンバーズになのはは管理局員として何とも言いがたい表情を見せる――が、

 

「おい、『なのは』」

「にゃわわっ!? は、ひゃいっ!?」

 

突然の不意打ちに素っ頓狂な叫び声を上げてしまい、敵味方入り混じりの視線を集めてしまう。

羞恥の涙を拭う事も出来ないまま、勢いよく振り返る。

 

「にゃ、にゃんれしょうか『だーくひゃん』!?」

 

(((((噛んじゃったよ……)))))

 

内なる声がシンクロする。

口元を抑えてもじもじ体を攀じるという初心な反応を見せるエースに、優しい仲間たちは聞かなかったことにしてあげた。

思いやりは大切なのである。

 

……だがしかし。

いじめっこ体質なイジワルドラゴンさんが面白ネタをスルーするはずもなく、空気を読めないフリを敢行する!

 

「噛んだな」

(((((言っちゃった!?)))))

「わかってるならツッコまないでください!」

「だが断る。まあ、それは置いといて」

 

置いとくんだ……という視線は当然の如く、無視。

自分を睨みつけながらも、段々恥ずかしげに視線を彷徨わせ始めたエースオブエースに、ヴィヴィオを肩車したダークネスはド直球の質問を投げつける。

 

「戦いの最中に、何故か『なのは(おまえ)』と『フェイト』を名前で呼ばないといけない気がするようになったんだが……なにか心当たりあるか?」

「……にゃ?」

 

どうやらなのはとフェイトに起こった因果律の流入の影響が、ダークネスの方にもあったらしい。

彼女たちのとの違いは、詳しい記憶が流れ込んだと言う訳でなく、『何となく』というちょっと引っ掛かるというレベルの違和感を感じるだけというもの。

だが、この質問はいただけない。彼は説明を求めている。

親しい相手でなければ名前で呼ばないと言う自分の線引きを自覚している故に、疑問を感じたのだろう。

けれど、事情を説明すると言う事は自分たちに起こった事象と記憶の内容を口に出して説明しなければならない。

 

……こんな所で?

 

……友人や同僚、敵までもいる真っただ中で?

 

……温泉で交わったなどという情事を事細かく説明しろというのか?

 

「――無理ッ!」

 

腕でバッテンを作りながら、全力で拒絶する。見れば、リニスと会話していたフェイトも全力で頭を上下に振っている。

だが、それで引かないのがダークネスクオリティ。一歩分詰め寄り、逃げ出そうとするなのはの手を摑まえて問い詰めていく。

 

「逃げるな、コラ。それでもエースか情けない」

「関係ないよねソレ!?」

「ほほう? つまり、魔導師とか管理局とはかかわりあいの無い別要因があるということだな? 気にならざるをえないな。――吐け」

「言える訳ないでしょ!? てか、お願いだから放して――」

「嫌だ。きちんと説明してもらえるまで放さんぞ」

 

完全に腰が引けているなのはを逃がさないよう、彼女の左腕を掴んだまま引き寄せ、逆の手を細い腰に回して抱き寄せる。

すると必然的にダークネスの胸になのはが飛び込む様な状態になってしまう。

ちなみにダークネスは戦闘状態を解除しており、普段着の黒い服になっている。

そんな彼に抱き寄せられてしまえば、戦いの余韻で火照った体温とか汗の臭いとか布越しに感じる胸板の逞しさとか……とにかく、乙女な少女には強すぎる刺激が立て続けに襲いかかってくる。

生々しい記憶が蘇り、なのはの体温が急上昇。

 

「あ、あわ、あわわわわ……!」

 

ぐるぐる眼になって危険域に達しつつある、隊長の大ピンチ。しかし、親愛なる部下であるはずのスバルたちは部隊長や副隊長すら巻き込んだスクラムを形成して、ひそひそと。

 

「……どう思う、アレ? ウチ的には、もうヤッちゃったんやないかと思うんやけど」

「ですが、いつの間に? もしや海鳴の出張任務の時ですかね?」

「うーん、言われてみれば確かに。なのはさんもフェイトさんも、あの頃からお化粧とか洋服に興味持たれてたような」

「スバルにしては良い着眼点ね。でも、あの時にそんな余裕があったかしら?」

「てか、そもそも大事な事を見落としてるぜ、ティア。――初体験直後のレディが、足腰立って戦闘をこなせる筈が指の関節が逆方向に曲げられるかのように痛いぃいいいっ!?」

 

宗助、エリオのお子様コンビがいる中、真顔でセクハラ発言をかました雪菜は左右を固めたナカジマ姉妹の制裁を受けて悲鳴を上げる。自業自得なので、恋人のフォローも当然皆無。

 

「ふむ……言われてみればウーノもそうだったようながぶっ!?」

「ドクター、セクハラです」

 

簀巻き状態のスカリエッティの顔面に、有能な秘書の踵落としが直撃する。

そっぽを向いた顔がほんのり赤くなっているのは仲良く並んで転がっているナンバーズだけがの秘密。

その後ろでは、セクハラ発言に乗っかろうとしたヴェロッサが、シャッハのヘッドバットを受けて悶絶している。機先を制されたらしい。

アホなやり取りを交わす正義の味方&悪者がいる一方で、可愛い妻嫁娘がいながら余所の女に現を抜かす旦那様に折檻が。

 

ドゲシッ! × 5

 

「ぐは!?」

 

鈍器で殴られた様な痛みの五重奏。

思わずなのはを放して悶絶するダークネスに、頬を膨らませた家族から叱咤が飛ぶ。

 

「もう、ダークちゃんてばどうしてそうなのかな!? そういうのは私たちだけにしてくれればいんだよっ」

「まったく、また女を増やすおつもりですか。今度は何です? 愛人? 妾? それとも愛玩動物ですか? 昂った野性を解放されるのですね? 薄い本のように! もしくはR18なゲームのようにっ!!」

「ズルいよ、ダークパパ! 頑張ったヴィヴィオも『ぎゅっ♡』てして欲しいかもっ!」

 

ぶーぶー文句を言うアリシュヴィトリオ。

傍らでは、

 

「ふぇ、フェイト? なんで貴方まで――ハッ!? ま、まさか……!?」

「ち、違うんだよ、リニスっ!? 今のはちょっとむかむかしただけで……その、私は別にっ!?」

「あ、ありがとうお姉ちゃん……あの、なんで怒ってるのでしょうか?」

「え? 何言ってるのかしらなのはってば。私はいつだって平常、冷静、平穏そのものよ? だからね? ちょっとオハナシしましょうか?」

「にゃぁあああっ!? 何でぇ!?」

 

と実に愉快な修羅場が形成中だ。

 

(((((こ、こいつら……)))))

 

唯一、アホ空間に呑まれずに済んだクロノがウィンドウ越しに頬を引きつらせる。

確かに儀式の今後の事を考え、友好を深めるのは決して悪い事ではないのだが……これは違うような気がする。

筆舌しがたい“ゆる~い”空気が蔓延し、いよいよ収集がつかなくなってきたとクロノが遠い目をし始めた……瞬間、

 

 

 

 

《くふっ……っぷ! アハハハハハハッ! イイ! 君ら、本当に見ていて飽きないよォ!》

 

哄笑とも嘲笑ともとれる耳障りな笑い声が聞えた。

緩みきっていた空気は一瞬で張りつめ、動ける者は各々の【デバイス】を構え、そうで無い者は鋭い眼差しを声元へ向ける。

強者しかいない一同の視線を一身に集め、見えない椅子に腰掛けているように中空に浮かぶ少年が愉悦に染まった眼で見下ろしていた。

外見はエリオと同世代くらいか。チェックの入った上着と半ズボン。ベレー帽に似た帽子を被り、露出した肌の至る所に入れ墨のような刻印が刻まれている。歪んだ眼は暗く輝く金色。

あまりにも禍々しい双眸に射抜かれ、突然の乱入者に振り返った魔導師たちの背筋が凍りつく。

呻きにも似た呟きを漏らしたのは果たして誰だったのか。

ただの少年にしか見えない存在は、ただの視線で実力者揃いの場を完全に支配して見せた。

 

「その声……!」

 

足元から闇が這いずってくるような不気味さを感じながら、花梨の記憶に少年の声が引っ掛かる。

こちらを見下した、忘れようのない声。聞き覚えがある。どこか引っ掛かりを覚えた。

花梨の疑問に答えたのは、震える娘を抱きしめたダークネス。

射殺すような眼光を放ちつつ、確信に満ちた言葉を投げつける。

 

「俺たちに言葉だけを送り届けた《神》だな?」

《だぁ~いせぇ~かい! ぱちぱちぱち~♪ うんうん、覚えててくれてうれしい限りサ。商品はァ……ス・マ・イ・ル・☆ ドヤァ♪》

 

腹立たしい上に、ムカついてしょうがない。

表情を憎々しいものへ変えたダークネスだが、人間のソレを上回る嗅覚がある物を感じとった。

 

「……お前、どうやって現界した?」

《お? いきなり核心を突くねぇ~? でも、最初からネタバレは面白くないでしょ。だ・か・ら・ァ……チキチキ! スペシャル《(ゴッド)》クーイズ! どんどんぱふぱふー》

 

何もない空間から突如現れた太鼓やラッパが独りでに音を奏で、未知の魔法と考えた魔導師たちの警戒レベルがさらに引き上げられる。

だが、口を噤んだ花梨や雪菜、宗助とフェンリルは目の前にいる“ナニカ”の正体を薄らと感じ取り、いつでも戦闘を始められるよう身構えた。

それに気づいていながら、あえて見逃した“ナニカ”は、バレエダンサーのようにクルクルと回っていた体勢から、首から上だけギュルンと振り返り、己を睨み付けてくるダークネスを見る。

“ナニカ”の顔に貼りついているのは……嘲笑だ。

 

《問題その①ィ~。この世界の存在でないボクが実態を持つためにとった手段は一体なんでしょ~か! はい、“Ⅰ”君!》

「……くたばっていたカリム・グラシア、もしくは奴の身近な誰かの肉体を触媒にすることで〈この世界の存在〉として自己を確立させた、か?」

「「え?」」

 

呟きは、はやてとシャッハのもの。

ヴェロッサはある程度心構えが出来ていたのか、歯を食いしばって耐えている。

彼らの葛藤や疑問を無慈悲に流して、“ナニカ”の愉悦は深さを増す。

 

《せぇいか~い! 答えはァ、〈マリアの肉体を媒介にして肉体を構成、“ⅩⅢ”の“因子”を取り込むことでボク自身の肉体に極めて近いポテンシャルを持った器を造り出した〉……でした♪》

「な、何を言って……? マリアちゃんを触媒とか、カリムを殺したとか――」

「事実だ」

 

動揺に震えるはやてに応える様に、自分の考えを言葉に出して事実を再確認するかの様に、ダークネスは言葉を続ける。

 

「龍喰者を始末した俺が教会に戻った時、カリム・グラシアはすでに事切れていた。もちろん、奴の側近も同じようにな。だが、違和感を感じた。室内には二人分の亡骸が残されていたが、血の匂いは三人分感じられたこと。イレギュラーであるといえ、“参加者”である奴の亡骸がそこに残っていたこと。そして――」

 

ニヤニヤ笑いを続ける“ナニカ”に指を突きつけながら、

 

「三人目の血の匂いが、貴様からプンプン臭うということ」

 

そう断言した。

 

《お見事! いや~、流石はメインキャスト(・・・・・・・)の片割れ。見事な観察眼だねェ》

メインキャスト(・・・・・・・)?」

《おやおや? 気づいていなかったとは言わせないよ。君たちが繰り広げてきた《神》を産む儀式の真相にね》

 

ダークネスの言葉が途切れる。“ナニカ”から発せられるのは、神経を逆なでる耳障りな台詞。

誰もが、ギリ、と歯を食いしばって憎悪を浮かべた表情になった彼と“ナニカ”の間で交互に視線を彷徨わせ――

 

「……なるほど、そう言う事か」

 

最初に真実へたどり着いたらしい、スカリエッティがか細く呟いた。

説明を求める周囲の視線に応えるように、導き出した真実を語る。

それはとても残酷で冷酷な……現実。

 

「少年、君は闘争儀式『神造遊戯(ゲーム)』を統括するゲームマスター……あるいは監視者として送り込まれた存在なのではないかね?」

「監視者……! 私たちが探し続けてきた儀式の『ルール』を変えられる存在っ」

 

花梨の発した驚きの声を皮切りに、困惑と動揺が広まっていく。

だが、雪菜は儀式を終わらせることができる鍵が現れたと言う事実だけを受け止め、捕縛しようと鞘に収まった剣の柄に手を伸ばす。

だが。

 

《あ、君の役目はもう終わったから。ごくろ~さん♪》

「は? ――ぇ」

 

雪菜の覚悟を斬り捨てる様に、皆の希望を吐き捨てるかのような軽い口調で“ナニカ”が言葉を呟く。

それが力ある言葉……“祝詞”だと理解した瞬間、雪菜の身体から力が抜けた。

まるで意志と肉体を切り分けられたかのように、自身の中にある相棒の意志すら感じられなくなった雪菜が受け身もとれずに崩れ落ちる。

 

「!? アンちゃ……っぁ?」

《相棒! ――っくあ! き、貴様ァ……!》

 

駆け寄ろうとした宗助だが、彼もまた雪菜の巻き戻しのように四肢から力が抜けて、倒れ伏す。

愛槍の物質化も維持できなくなり、宝具も光の粒子となって霧散していく。

同じ現象がフェンリルにも襲いかかっているらしく、何か得体のしれない力に抗うように震える四肢を意思の力でねじ伏せ、宗助を庇うように身構える。

だが、とても戦える状態でない事は一目瞭然だ。

瞬く間に“参加者”二人が無力化された事実に動揺を顕わにする花梨が哄笑をあげ続ける“ナニカ”を睨みつけ――異変に気づく。

 

「なのは? フェイト? ……え、ちょ、ちょっと皆!? いったい、どうしたの!?」

 

妙に静かな辺りを見渡せば、皆、石像になったかのように硬直し、身じろぎどころか瞬きすらしていない。

まさか時間を止められたのかと戦慄を覚えるが、次にダークネスから発せられた言葉に思考が停止した。

 

「世界の外側に在る者共……上位存在の絶対支配権というところか。は、流石は儀式の統制官というところか。それとも……仕掛け人と呼んだ方がいいのか? なあ……俺を、俺たち“参加者”全員(・・)を転生させてくれた《神》サマよ?」

「な……っ!?」

 

花梨は、絶対の確信を以て告げられた言葉が理解できず、戸惑いに瞳を揺らしながら立ち尽くす。

動揺で定まらない思考を懸命に動かし、先の言葉の意味を分析する。

ダークネスは目の前にいる“ナニカ”こそが、自分たちを転生させた《神》と呼んだ。

だが、おかしい。“参加者”は異なる《神》によって異なる能力と新たな肉体を授けられた存在のはず。

事実、如月 葉月(No.“Ⅶ”)と情報共有した際、互いの知る《神》は口調や声色が全く異なるという話で落ち着いているし、女神に乞われてこちら側へ来た雪菜の話とも矛盾が生じる。

花梨の疑問に感づいたのか、ダークネスは話を続けていく。

 

「きっかけは花梨との会話だった。境界の世界で受けた説明では“参加者”は《神》を目指す旨を了承する人材を選別するはずだ。だが、コイツのように儀式そのものに否定的な奴、平凡な日常を謳歌することや復讐に走ることなど明らかに《神》を目的に動いていない“参加者”が複数存在した。何かに成るためには、ソレを目指す強固な意志が絶対条件。なのに、全員の目指す目標がバラバラなのはおかしいと思うようになった。まあ、これはルビーも気づいてたようだがな」

 

だからこそ、【Strikers】開始前にカマをかけたのだ。自分たちは矛盾に気づいているのだという風体を顕わにすることで、《神》側の反応を観察するために。

 

「次は先代との出会いだな。あの人と出会った時、俺は言葉を交わす前に『この存在は《神》だ』と理解した。切っ掛けがあったとか本質を見抜いたとかそう言う理屈じゃない。問答無用で、《神》としか言いようのない存在なのだと魂で理解させられた。だがな。転生時に接触し、その後も何度か言葉を交わした《神》には、大きな存在感と言うものは感じたが確信には至らなかった。……それに近いものは感じていたがな」

 

ダークネスが初めて《神》を名乗る存在と接触したとき、そう言うものだと理解しながらも僅かに疑念を抱いた。

それ故、「貴方は《神》なのだろう?」 と質問を投げかけたのだ。

 

だが、先代の《黄金神》は違う。

彼の存在と触れた瞬間、否応なしに彼は《神》だと理解した。

常識や理論を調節した、そういうモノなのだと。

と同時に、己が知っている《神》へ疑念を抱いたのだ。

力の強弱とはまた別の違い……隔絶したナニカが両者の間に在る様な感覚を覚えたから。

 

「最後はそこで転がってる連中とカリム・グラシアの能力だ」

《ん? そこは別におかしくないと思うけど?》

「蒼意 雪菜はアラヤに選ばれた英霊、すなわち人間という存在の危機に立ち向かう執行者にして正義の味方。高町 宗助は神殺しの伝承を伝えられるオリジナルの神狼と契約を交わした騎士。カリム・グラシアは脆弱な人間を儀式の舞台に昇ることすら可能とする異能の持ち主。――おかしいだろう? どいつもこいつも、人を害する化け物や強大な力を秘めた《神》を殺す力を“能力”として身に付けているなんてな」

 

化け物や邪悪な《神》を撃ち滅ぼしてきたのは、いつだって太陽の如き眩い信念を秘めた人間たち。

英雄、神殺し、人の意志をひとつに纏められる能力……いずれも《神》を殺すチカラに特化し過ぎている。

もちろん、儀式後半に至り、そういう“能力”を望んで与えられたと考えることもできる。

だが、基本的に自ら望む“能力”は本人の願望を具現化するもの。

主義も主張も異なる彼らが、近しい“能力”を発現するというのはいささか出来過ぎではないか?

しかも、反儀式主張を掲げながら監視者の探索に消極的であり、結果的にダークネス(じぶん)へ牙を剝いたというのは、少し納得できない。

一部を除き、参加者のほぼ全員と立ち会った経験を持つからこそ気づいた違和感。

これらの考察からダークネスが導き出した答え。

それは〈“ⅩⅠ”~“ⅩⅢ”は己を始末するために《神》を殺せる能力を意図的に与えられて、あるいはそう言う特性を持つ人物を選別して送り込まれてきたのではないか?〉 というもの。

儀式の破壊を目指していた筈の雪菜が、ダークネスを倒すために訓練を優先していたように。

宗助が敵対関係にある花梨の養子となることで、もしダークネスが母を傷つけたら絶対に許さないという思いを自然な流れで抱くようになったように。

人間として生を受けたからこそ、《神》に最も近いと言われたダークネスを敵視し、協力関係を結ぼうと言う考えに思い至らなかったように。

彼らは皆、ダークネスを……《神》に近づいた者を始末するために用意された駒だと話を締めくくった。

反論したくてもうまく言葉が纏まらず、口をパクパクさせるだけの花梨に真剣な眼差しを向けながら、最後に付け加える。

 

「その考えに思い至った瞬間、俺の中で恐ろしい推論が構築されてしまった。――“儀式”そのものに、何らかの害意を以て干渉している存在がいる可能性にな。どうなんだ、監視者。この考えは大きな間違いだと言うのなら素直に謝罪しよう。だが、俺たちを弄んでいたのだとしたら――」

《え? 別に間違ってないよ?》

 

許さない、と続けようとしたダークネスの台詞を遮って、あっさりと認める“ナニカ”。

あまりにも軽い返しに、固まるダークネス。

いや、彼だけでなく身動きを封じられたここにいる全員が同じように惚けた表情を見せていた。

 

《ん~、そろそろネタバレにもいい頃合いだねェ。よっし! それじゃあ大々的に発表してみようか!》

 

“ナニカ”が声高々に宣言すると同時、空やビルの側壁に大小さまざまなウィンドウモニターが展開され、ありとあらゆる映像機器の画面にノイズが走り、共通する映像が映し出された。

それはミッドチルダのみに留まらず、次元世界総ての世界で同時に発生した異常事態。

事態を理解できる者は無く、動揺と混乱、好奇と不信を以てモニターに視線を向ける。

映し出されているのはダークネスたちと“ナニカ”の対峙する姿。

そう、今現在の対話一部始終が映像として次元世界全域に配信されているのだ。

事情を知る者は呆然と、知らぬ者は他人事。ただ共通している事は、誰も彼もが観客でしかなく、黒子にすらなれぬ有象無象であり、主演になりえないその他大勢でしかないということ。

事実、彼らの位場へ駆けつけんと魔導師たちが近づいてきているが、何故かたどり着くことが出来ないでいる。

まるで、見えない迷路に迷い込んでしまったかのように。

『この場所へ通じる道筋』という『概念』を書き換えられているのだから、ある意味当然だ。

 

最早この場所は、誰でも眺めることはできれども、誰一人として介入できない幻想の闘技場へと変貌した。

 

《さあさあ、盛り上がって参りましょオー! テンションアゲアゲでご放送~♪ 番組提供、及び、司会はワタクシ、《原初邪悪神》アザトース様でお送りしむぁ~っす! さて、皆さまゴミクズは「コレ、なんじゃらほい?」 と疑問符一杯浮かべてると思いますがァ……説明はメンドイからパスで》

「手抜きか、おい」

《無駄を省くのは大人のやり口だよ~? ま、観客にしてもらっただけでめっけものと咽び泣けばいいのSA♪ てなわけでどんどんいきまっしょい! まずはメインキャストのお二人のご紹介から! 新郎スペダー君と新婦花梨ちゃんで~す♪》

 

ウィンドウの映像が横方向に流れ、バリアジャケットを展開していなものの殺意と闘気を溢れさせているダークネスと、身動きが取れない仲間を護る様に身構えた花梨の姿が映し出される。

 

《皆、新郎新婦ってどーゆーこと? って首コテンだよね~? さて、それじゃあ順を追って説明してあげましょう! まずはおさらいから。君らが済むこの世界は《神》が造り出した箱庭のようなもの、実験場みたいなのをイメージすればいいよ。で、行われている実験というのが《神》を造り出す儀式。カリムちゃんが暴露しちゃったアレだよアレ。眉唾物とか自分には無関係~って思ってるバカも大勢いると思うんだけどさぁ……世界が終る云々の部分って、ほとんど事実だから。ここはあくまで世界を模した箱庭でしかなく、儀式を続けているからこそ存在出来ている砂上の楼閣なのさ。儀式が終われば、用済みに廃棄されるのは当たり前だよね~》

 

ケラケラと腹を抱えながらアザトースが嗤う。

足元を這いずる虫を潰して遊ぶ幼子のように純粋で冷酷な笑みを浮かべながら。

 

《質問も反論も受け付けないよ~。だって、事実だもん。お前らが信じなくても別に構わないし。どうせ、全員消滅するって決まってるんだから》

 

騒ぐ人々を白けた顔つきで眺めながら、吐き捨てる。

お前らの命などなんの価値も無いのだと。

アザトースを名乗る存在は、心の底から彼ら人類を〈どうでもいい〉と見下しているという事実を、人々は否応なしに理解させられた。

 

「で? そんなわかりきったことなど、どうでもいい(・・・・・・)。俺たちをメインキャストと呼んだ理由を言え」

 

《神》……いや、アザトースがここにいない人々に存在価値を感じていないことなど言葉の節々から理解できる。

そんなわかりきった事を問い質すよりも、儀式の真相とやらについて情報を引き出す方がよっぽど有意義だ。

そう判断したダークネスに話の続きを促され、元のニヤケ顔に戻ったアザトースは説明を再開する。

 

《くふふ。ごめんごめん、ボクって見た目通り少年の心を保ったままのピュアなボーイだからさァ。ついつい話が脱線しちゃうんだ♪ さて、どこまで話したっけ……ああ、そうだ。儀式が終われば世界も消滅する、これは揺るぎ無い事実であり真実。もちろん、ボクの異能や観察者権限を使ってもどうしようもないよ? だからさ、花梨ちゃん。ボクを捕まえて儀式を止めようっていう君たちの推理は的外れだったんだよ》

「そんな……!? それじゃあ、どうすれば儀式を止められるって言うのよ!?」

《いやいやいや、止める必要なんてもう無いんだよ。だって、もう儀式は終わっている(・・・・・・・・・)んだから》

 

……意味が解らない。

儀式が終わっているとは、どういう意味だ?

”参加者”が最後のひとりになることが、儀式終了の絶対条件ではなかったのか?

力を封じられているといえ、宗助も雪菜も存命だぞ?

湧き上がる疑問に気概を逸らされた花梨を横目に、ダークネスは踏み込んだ問いを投げる。

 

「それは、俺と花梨が生き残っていることに何か関係があるのか?」

《そうだよ♪ そもそも、儀式の目的は新しい《神》を造り出すこと。ならさ、存命の”参加者”が複数残っていても勝利条件を満たした者が誕生したならそれもまた儀式終了の理由になるよね? ――そう、君だよ、スペダー君。黄金の龍神の後継者、『因子(ジーン)』を真の意味で覚醒させた君が《神》へ至ったことで儀式終了のお知らせとなったのさ》

 

ルビーとの決戦でダークネスの『因子(ジーン)』はさらなる成長を果たした。

元々『因子(ジーン)』は、他の『因子(ジーン)』を吸収することで成長し、《神》の核へと成長する。

先代の黄金神との邂逅や守護龍の継承などを経て、遂に新なる神《黄金龍皇神》への合神を成功するに至った。

ルビーの『因子(ジーン)』を吸収することで存在は確立し、新たな《神》として覚醒を果たしていたのだ。

 

《そして花梨ちゃん。君も、スペダー君の伴侶(つがい)として十二分に成長してくれた。まさに、《極神》連中が望むとおりに、ね》

「は? 伴侶(つがい)って……何よそれ!?」

 

花梨の質問に答えず、大仰に両手を広げながら声高々に叫ぶアザトース。

 

《パンパカパ~ン! 今ここで明らかになる衝撃の事実ゥ~♪ なんとぉ、儀式本来の【ルール》はボクの手によって捻じ曲げられて改竄されていたのでしたぁ~! 驚いた? ねえ、驚いた? ――実はね? 《神》を造るって儀式の目的やバトルロワイヤル形式の戦闘って【ルール】は変わらないんだけどさァ~、予め主役が決まってたんだよね》

「主役ですって……まさか」

《そう、そのMA・SA・KA! 新しい《神》になる候補者は最初から唯一人……スペダー君だって決まっていたんだよ♪ 『因子(ジーン)』を宿すモノって言ってもね、やっぱり才能というか資質的なものがあるんだよ。で、今回選ばれた君ら”参加者”の中に、《神》へ至る資質を持つのは彼だけ(・・)。英雄や救世主には成れるだろうけど、《神》の領域に本当の意味で踏み込めるのは彼しかいなかったんだ。まあ、もう一人の予備(・・)が彼を倒していたら、その資質が譲渡されていたかもしれないけど……ま、今となっては意味の無い事さ。――つまり、最初から出来レースだった訳だね。当人にもこの事実は失せておいて、生き残るため真剣に戦うよう仕向けていたってワケ》

 

散々規格外だのバケモノだの言われ続けてきたダークネス。

だが、それはある意味で当然の事だったと言う事なのだろう。

だが、それは違うと花梨は反論する。

彼が、どんな想いを賭してこの戦いを生き抜いたのかを知っているから。

 

「こいつが『ここにいる』のは自分の信念を貫き通したからよ! 決められた運命のレールをなぞったからじゃない!」

「花梨……」

《おー、流石は予備であり『《神》の妻』に成るべくして生まれてきた娘だね~。優しい心の持ち主だ~》

「え?」

《ふふふ、さっきも言っただろ? わからないかね? 君はスペダー君のお嫁さんになってもらうために選ばれていたもう一人の《神》候補だったんだよ。資質で言えば彼に匹敵する高レベル。つまりね、主義主張の異なる障害(てき)を倒すゲームの中で主役(ダークネス)と競い合う好敵手(ライバル)であり、優勝賞品でもあるご褒美(お嫁さん)――それが君に与えられた役割だったのさ》

 

ダークネスと花梨の主義は対極に位置する。

だが、正反対であるが故に共鳴するように惹かれあい、共に影響を施しながら成長してきた。

他を拒絶していたダークネスは、誰かのために力を尽くす花梨の姿を見て、人を愛する心を思い出し。

独善的な考えにこり固まっていた花梨は、どこまでも自分勝手に生きるダークネスの姿に、異なる価値観を拒絶するのではなく受け入れることが必要だと知った。

戦乙女(花梨)を知ったから龍神(ダークネス)は優しさという力を取り戻し、龍神(ダークネス)を知ったから戦乙女(花梨)は想いを貫く強さを得た。

まるで、儀式そのものが彼らを成長させるかのように。

それが総て――、

 

《そう! すべては定められた運命に記されていたことなのさ! ま、途中まではわからなかったんだけどね~。スペダー君が《神》になれば花梨ちゃんがお嫁さんに。逆に、花梨ちゃんが《神》になれば、スペダー君がお婿さんになってただけの話さ。「いちいちこんな儀式用意しなくてもさ~、《神》になれる男女を番にして子どもこさえさせたほうが手っ取り早いんじゃね~ですか?」 って部下の意見を伝えてみたら、そのまま採用しちゃったらしいんだよね~》

 

あまりにも自分勝手な理屈。

これが事実なのだとしたら、倒れていった同胞たちがあまりにも――。

 

《ま、これはあくまで元にした儀式のお話なんだけどね~。実際は、ボクが面白愉快に弄り回させていただきましたがぁ……ソレがなにか?》

「ふん? じゃあ、俺たちが参加……いや、巻き込まれている”この儀式”は貴様に弄られたVer.のだと言う事だな?」

《オフコース! やっぱりさぁ、戦いは平等じゃなくちゃいけないでしょオ? 強すぎる君への対抗策としてェ、英雄さんとかワンちゃんのお友達とかを投入してみましたァ♪ んっ、あーあー……テステス。――『英霊様、どうか私の願いをお聞き届けくださいませ』ってな感じでね》

「な……こ、声が……俺を送り込んだ女神のと同じ……!?」

 

絶句する雪菜。

声だけではない。

言葉を発した瞬間、アザトースから感じる気配やオーラまでもが、神聖さしか感じられない全く別人のソレに変化したのだ。

音声変換というチャチなシロモノなんかじゃあ……ない!

存在の根本すら変化させた、人間の理解の範疇を超えた超常なる現象そのもの……。

 

《でも、予想外だったのはスペダー君が予想以上の成長を見せたってことかな。金ぴか龍の介入は、まあ予想できてたけど、それを差し引いても君の成長……いや、進化は異常だよ。ボクの予測じゃあ、君は八神さん家の坊やを仕留めたあの戦いで敗退するはずだったんだ。《極神》に気づかれないよう能力制限を掛けていたとはいえ、まがりなりにも英雄と神狼の騎士にもう一人の《神》候補を加えた三人がかり。さすがに終わるだろうと思ってたんだけどね……まさか生き抜くとは。ビックリだよ――ま、そんな訳で、お前ら“駒”は役に立たないってわかったからもういらないんだ。その代わり、終わりに近づいた儀式の仕上げをボクが直接済ませようと思ってこうして現れたワケなんだよね》

 

雪菜と宗助に侮蔑を隠さない視線を向け、アザトースが鼻で笑う。

《神》の末席に連なるはずの駒が、まるで役に立たなかったと言う事実を嘲笑っているのだ。

憤慨を覚える花梨の機先を制し、ダークネスが最後の疑問について問う。

 

「それで、用件はなんだ? 親切丁寧にネタバラシしてくれたということは、儀式は終了と考えても?」

《うん♪》

 

簡潔。

近くのコンビニへお使いを頼まれた子どものように無邪気な笑顔を浮かべるアザトース。

だが、細められた双眸の奥から暗い闇が覗いていることに気づき、ダークネスの拳が握り締められ、花梨が待機状態の【デバイス】を起動させる。

 

《儀式は終了。勝者はキミと花梨ちゃん、そこで転がっている役立たずは置いとくとして……後は仕上げを御覧じろってね》

「ふーん? 仕上げとは何か聞いても?」

 

淑やかな唇が禍々しい三日月を描き、刃の如き犬歯が危険な輝きを放つ。

 

《うん、いいよ♡ だからさァ――ちょっち消滅(きえ)てちょうだいな♪》

 

またもや軽い口調で言い切ると同時に、突き付けられた指先から紫電の閃光が迸り、身動きの取れないなのはたち『人間』を狙い穿つ。

 

「ちっ!」

 

攻撃の起意を感じとったダークネスが、瞬時に《新世黄金神》へ進化し、放たれた閃光を叩き落す。

警戒こそしていたが、まさかここまであけすけな行動に移るとは流石に予想外。

事態が呑み込めない諸々を意識の外に追いやり、目に見えるオーラという形で悪意と敵意を放ち始めたアザトースを睨む。

背後にいる、護るべき少女たちの無事を確認しながら。

 

「何をしている――!」

《あらら。場違いな観戦者を掃除しようとしただけなのに庇っちゃうんだ? 意外だね。君はもうちょっと冷酷な性格だと思ってたよ》

「ふざけるな。貴様……アリシアたちごとコイツラを薙ぎ払おうとしやがったな?」

《うん。だって厄介な領域(レベル)に達しつつあるみたいだしね、君の女共。《神》しか動けない筈の“ここ”で、普通に身じろぎしているんだから。流石は龍神の寵愛を受けた存在なだけはあるよ。けど、そーゆーのは要らないんだ。だって、今回()儀式は勝者無しで終わってくれなきゃ困るんだから》

「困る……だと? どういうことだ、お前は儀式を滞りなく進めるために介入した訳でないと? あくまで“参加者”全員公平に勝利条件を満たせるようバランスを保つため【ルール】を改善した訳じゃないのか?」

《思ってもいないことを真顔で言っちゃうんだ? そんなに僕の口から真実を語らせたいの? うっわ、なかなかのドSですな!》

 

ケラケラと耳触りな笑い声を立てるアザトース。

万物を睥睨するかのような不遜な態度と裏腹に、放たれるオーラと威圧感はごくごく当たり前のように膝を折り、額を地面に擦りつける様に平伏しなければならないと思わせる神聖さを宿す。

あまりにも歪……否、もしかしたら彼の姿こそが《神》として正しい姿なのかもしれない。

超常の存在であるが故に。下界に生きるモノを須らく平等にムシケラと断じる資格を持つ絶対的上位存在――故に、《神》。

アザトースの在り様は、まさに傲慢なる絶対強者そのものではないか――……!

 

《う~ん、まあいいか。それじゃあ改めて――遂に明らかになる衝撃の真実ゥ~パートⅡ! なんとなんとォ、監視者であり管理者でもあるボクには別の目的があったので~す♪ ヒントは儀式の名前! さあ、わかるかなァ?》

「は? 『神造遊戯(ゲーム)』って名前がどうしたってんだ!」

 

フェンリルに寄り添われながら、宗助が吼える。

だが、花梨は自分の中で認めたくない真実(こたえ)を思い浮かべてしまい、蒼白に顔を染める。

小刻みに震える彼女の肩を抱きしめる様に支えながら、憤怒の激情を双眸に宿したダークネスが口を開く。

 

()()った遊戯(・・)場――俺たち“駒”が命を掛けて懸命に戦う姿を娯楽として鑑賞するために書き換えられたお遊び……故の、“ゲーム”。神を造る儀式を雛型に、術式の根本から仕組みを書き換えやがったか……っ!」

《いぐざくとりぃ! 素晴らしい! こんぐらっちれーしょん♪ 《神》を産み出す儀式? そんな古臭い魔法を真面目に監察するなんて面白くないでしょ? こういうのは、美味しい餌をぶら下げて虫けらが潰し合う様を眺めてワイングラスを傾ける……そんでもって、最後の最後で絶望に落とす! そーゆーのが愉しいんじゃないか!》

 

あひゃひゃひゃはァと哄笑。

もはや誰も言葉を出すことが出来ず、呆然と悪神を見上げることしか出来ないでいた。

 

《この世界も! 儀式も! 邪悪神(ボク)が造った遊戯盤でしかないのさ! 面白おかしく、ボクを楽しませるためだけに存在する遊具! 君たちは必死に生きて、足掻いて、努力して……ぷちっと無残に踏みつぶされるために存在しているんだよ! さあ、聞かせておくれ! 理不尽な現実に対する悲鳴を! 何もできない己を呪う怨嗟の声を! 超越者たるボクへ遜り、助けてくださいと滑稽に懇願する祈りを! 数多総てを踏み潰したボクが、えも言えぬ快感に身を浸らせるために! 君たちの存在理由なんて、それしか無いんだからさァ! あひゃひゃひゃひゃはははははははははははははァ!》

 

絶望が世界に蔓延する。

運命を書き換える絶対上位者としての自分に酔う《神》の哄笑が、世界へと響き渡った。




遂に登場、儀式の監察官であり監視者であり諸悪の権現《原初邪悪神》アザトース。
スぺドラやビルス様と同格の『極神十二柱』が一角、最高位の《邪神》サマです。
容姿は、『ノーゲーム・ノーライフ』のテトを真っ黒にした姿をイメージしていただければ。
ただし、クトゥルフ神話にあるように、出現した瞬間、宇宙が滅ぶような能力はありません。
ただ、見る者すべてに吐き気を催す悪意の奔流を叩きつける程度なのです。

・『神造遊戯(ゲーム)』について
(1)改変前のオリジナル版ルール
①因子保有者の中で、《神》と成れる資質を持つ者(候補者)と(つがい)になる者を選別。
②候補者を成長させるため、敵対関係をとるであろう因子保有者を競争相手として用意。
③候補者が”儀式”を勝ち残り、神化に必要な因子を集めて《神》に至った時点で儀式終了。
④生存しているであろう(つがい)候補と共に神界へ招く(もし(つがい)が敗退していた場合、存命している参加者の中から適性のあるものを選ぶ。理由は、”儀式”を生き抜いたという結果が十分資格足りえるから)。
⑤”儀式”の舞台となった世界の未来は、勝者である新たな《神》に一任。

(2)改変後”儀式”の裏設定
①あらかじめ《極神》によって定められていた候補者(ダークネス)候補(花梨)を除いた参加者は、アザトースがダークネスをつぶすために選別した。
②つまり、参加者は個別の《神》によって転生させたと思われていたが、実はアザトースの一人芝居。
③たとえ最後の勝者が誕生した場合でも、《神》へと神化できずに自己消滅するよう仕組まれていた(作中のダークネスが自力で神化したのは、アザトースも予想外)
④花梨が儀式のルールを知らないまま転生したこと、No.”0”のようにダークネスの敵になるイレギュラーを複数用意したこと、暴走するであろうカリムの異常を意図的に仕組んだことなども、すべてアザトースの策略だった。理由はもがき苦しむ様を眺めて愉しむため。
⑤彼の目的は、《神》という分かりやすいご褒美目指して争う姿を眺めて愉しむこと。
そして、とある理由からくる敵意の原因であるダークネスが、志半ばで倒れる様を見物するため(理由は次話で)。
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