二年以上に渡るおつきあい、ありがとうございましたっ。
……日常編の更新はまだありますよ? 具体的にはあとがきの予告的な感じで。
スペリオルダークネスと高町 花梨。
互いに“儀式”を戦い抜き、異なる可能性を掴み取ってヒトならざる者へと神化した者共の放つ覇気に支配され、決戦の場に選ばれた訓練場が静寂で満たされる。
誰もが口を噤み、固唾を呑んで見守る中、放出される魔力が輝く燐光となって広場に満ちていく。
人間の領分を超えた高みに至った龍神と戦乙女が決戦の場で選択した初手は、『相手への接近』だった。
「――『
先手をとるのはダークネス。
左足を半歩前にやり、前のめりに倒した体重を足の指先に乗せる。その刹那、黄金の龍神の姿が世界から掻き消える。
否、消失したのではない。目視はおろか認識すら出来ぬ超光速の踏み込みによって、駆け出したにすぎない。
距離という概念すら置き去りにする超速機動は《新世黄金神》の十八番。
初動が後の後になろうとも、相手の反応を封殺し、先をとれる理不尽なまでの速さ。
それこそが、ダークネスが最強と呼ばれる所以のひとつなのだから。
しかし、彼の速さを熟知している花梨が何ら対策を興じていない筈がない。
「御神流 歩法の奥義――神速」
父より学んだ御神流奥義の歩法。
魔導師として当たり前の技術になった
これにより、瞳で認識できたすべての事象がスローモーションに捉えることができ、自身の行動を通常時とは隔絶した速さで処理することを可能とする。
要するに『火事場の馬鹿力』を、自分の意志で強引に引き出すようなもの。
ただの人間が使用した場合、肉体面で大きな負担がかかってしまう諸刃の剣であるが、人間でない存在として確立してしまった花梨には、何ら問題にならない。
限界を超えて強化された花梨の視界に、空間を歪曲させるほどの速さで迫りくるダークネスの姿がハッキリと捕えられた。
必殺の魔剣を撃ち放つべく構えようとする彼の機先を制するように、左腰のバインダーに納められた【バラム・レヴァンティン】を引き抜き、鞘走りによる加速を得た斬撃を撃ち放つ。
『御神流 虎切』
間合いの一歩外で振り抜かれた斬撃は空間を跳躍したかのような不可解な現象を起こし、【クライシスエンド】発動前のダークネスへ襲いかかった。
「ちい!?」
舌打ちと共に技をキャンセルし、地面が爆発するかのような踏み込みで真横へ跳躍。
その刹那、紅蓮の炎を纏わせた片刃の大剣がダークネスのいた空間を断ち斬り、弧月の斬閃を刻み付ける。
「おいおい……護身術程度で済ましてたんじゃなかったか?」
地面を足の裏で削り落としながら体勢を建て直し、離脱に成功したダークネスが軽口を飛ばす。
それに対し、身の丈に迫る剣を鞘であるバインダーに納めていた花梨が不敵に笑う。
「甘いわよ、ダーク。世の中には『こんなこともあろうかと』っていう便利な単語が存在しているの知らない?」
「そうかい。だったら俺も、『こんなこともあろうかと』習得しておいた技を見せてやろう」
五指を開いた左掌を花梨に向け、意識を集中させる。
すると、掌に集束されていく魔力が真紅の輝きを放ち、眩いスパークを迸らせながら花梨に向けて撃ち放たれた。
「【ドラゴンショット・ディストレイク】」
速射砲の如き集束魔導砲の連弾が、抜刀の体勢で硬直した花梨に殺到。
掌から扇状に拡散するよう放たれる魔力砲の嵐に、神速を解除した花梨は自立機動兵装を頂点にする立体防御障壁を形成することで対抗する。
「ちょ、意外と重いっ!?」
「ま、物量で押し込む力技だからな。ちなみに、こんなのもあるぞ?」
手甲の護拳部分に存在した龍爪のような刃が分離し、四つの刃からなる手裏剣のような形状に変化した。
まるで自らの意志を持つかのように自立浮遊した左右合わせて四基の手裏剣が勢いよく飛び出し、旋回するように弧を描きながら花梨の背後へまわり込んでいく。
高速回転で円刃と化した龍爪は不規則な機動を描きながら身動きの取れない花梨へ……正確には、障壁を形成している自立機動兵装へと襲い掛かった。
兵装自体も防御機能を有しているとはいえ、切断力に特化した刃に抗うことは叶わず、十二機の内、最初の奇襲を受けた四基が一撃で破壊され、ブーメランのように舞い戻ってきた返す刃でさらに四基が撃ち落とされてしまう。
これにより障壁が強制解除され、放たれ続けていた集束魔導砲が花梨に着弾する。
標的から外れた魔力砲が地面を吹き飛ばし、木々を焼き焦がしていく。
巻き上がる魔力煙に周囲が覆われ、真紅の魔力光に呑み込まれた花梨の姿が掻き消える。
「手ごたえあり、だ」
ダークネスは勝利を確信し、拳を握る。
好敵手と定め、十年に渡って争い、競い合ってきた花梨から確かな勝利をもぎ取れたことが思った以上の喜びとなって胸の内を駆け巡っている。
意気揚々と昂揚した心の赴くままに勝利宣言を上げるため、口を開こうとした――瞬間、
「――次にアンタは『終わったな……花梨』って言うわ」
「終わったな……花梨――ハッ!?」
ジョセフられた事に驚くダークネスの目の前で、魔力煙を振り払いながら無傷の花梨が姿を現した。
土埃すら付着していない様は、魔力砲の嵐を無傷でいなしたことをハッキリと表している。
「お前……どうやってアレを凌いだ?」
「ふふふ……。“消滅”の魔力を薄い膜状にして纏っていただけよ」
「おいおい。無茶するな、お前も」
「誰かさんのお蔭かしらね?」
制御を誤れば自身の肉体を消し飛ばしてしまいかねない危険な手段を講じていた花梨に、思わずと言った風にダークネスからツッコミが入る。
だが、自分の魔力制御に自信があるのか、どこ吹く風と言った様子の花梨は悪びれる様子が欠片も見受けられない。
表情に呆れを滲ませるダークネスだったが、すぐに肉食獣の如きギラつく眼光を放つ狂笑へと変わる。
ゾクゾクと背筋を駆け昇る戦慄と興奮。
胸中に渦巻くのは、己と同じ領域にまで達した好敵手の成長に対する歓喜の激情。
いまや受け止めてくれるモノが希少となった、己の総てをぶつけても構わない敵の存在を再確認したことで、闘争本能に火が灯ったのだ。
武者震いに震える四肢の先まで魔力を流し込み、大地を、大気を引き裂くほどの踏み込みで再び強襲を行う。
左右に残像すら残さぬ不規則軌道のステップを組み合わせることでかく乱し、幾度目かのフェイントを経て花梨の視線を振り切ることに成功する。
その瞬間、狙いすましたかのように短距離空間転移を発動させることで花梨の後方へまわり込み、振り返ろうとする彼女の横腹目掛けて手刀を叩き込む。
戦慄と驚愕で双眸を限界まで見開く花梨の反応に、高速戦闘を得意とする一部観客が、こんどこそ勝負ありだと叫ぶ。
だが、黒き炎を纏わせた魔剣は戦乙女の清浄なる肉体を傷つける凶器になるには役不足だった。
何故なら、彼女の守護者たる三機の『多目的盾』が重ねあう様に魔剣と戦乙女の間に割り込み、その身を挺して主を護り抜いてみせたのだから。
小型が魔炎を、中型が付与されていた身体強化魔法を、大型が攻撃の衝撃そのものを受け止め、無力化する。
三機連結による鋼鉄の防壁が、人間の英知が生み出した産物が、超越者たる龍神の一撃を完全に防いた瞬間だった。
歓声を上げる技術者の声援を受け、ようやく振り返った花梨が、片腕を押さえられたダークネスを見据えながら術式を発動させる。
繰り出すのは妹より後輩へ、そして己へと受け継がれた必殺の砲撃魔法。
【デバイス】を腰裏にマウントさせて無手となり、円を描く様に回した両手の中に生成される魔力球。
極限まで収縮させた魔力粒子が質量を持つ程に密度を増し、荒れ狂う暴風雨の如き魔力が激しいスパークを巻き起こす。
「ちょ、おま……」
魔力
慌てて離脱を図ろうとするが、右腕で串刺しにしてしまった『多目的盾』は未だ機能が生きているらしく、ブースターを吹かして彼の離脱を阻んできた。
しかも、無事だった自立機動兵装までもが追撃とばかりに彼の周りを旋回しつつ紐状の拘束魔法【ストラグルバインド】を発動し、四肢を縛り上げてきた。
瞬間的にだがその場に張り付けられたものの、ダークネスから放出される過剰魔力波動によって術式は瞬く間に崩壊し、効力を失っていく。
しかし、ダークネスはごくごく当たり前のように己の敗北を悟る。
雁字搦めのように張り巡らせた拘束魔法から抜け出すのに、一秒とかからないだろう。
右腕で貫いた鉄屑モドキを粉砕しつつ腕を引き抜くのも同様だ。
しかし――この戦いは『試合』なのだ。『殺し合い』じゃあない。
つまりは……そういうこと。
星を砕き、世界を薙ぎ払う超火力の体現たる『神代魔法』が使用禁止なルールでは、全力を出せても本気を出すことはできない。
世界新生の儀式を前に、星を砕くような大魔法の使用はご法度なのだ。
下手に『神代魔法』など放とうものなら、世界崩壊のカウントダウン開始のお知らせがテロップ付きで舞い降りてくる事だろう。
まさか、ここまで見越して決着の時を今日まで引き延ばしていたのだろうか?
全力を出したくても出せない状況で、“花梨にはダークネスを諌めるだけの力がある』ことを証明するために。
「……ずっこいぞ、花梨」
「あら、戦略も実力の内って言うじゃない。大体、私のと違って手加減が出来ない『神代魔法』しか使えないくせに、試合形式でも私に勝てると油断していたアンタの自業自得でしょ」
環状魔法陣を纏わせた左腕を振り被り、まるで少女のように破顔した花梨に苦笑を返す事しかできない。
彼女はすでに、自分が勝利するという確信を得ていた。
今回の決闘における勝利条件は“相手に一撃入れること”。
障壁やバリアジャケットで無力化できる攻撃は無効扱いだが、有効打を一発だけ入れればよい。
つまり、四肢を縛られ、常時展開している障壁以外の防御手段を持っていない“顔面”へのゼロ距離砲撃+拳による打撃を防ぐ手立ては存在しないのだ。
まったくもってその通りなご指摘を受け、最強の龍神は“今日の”敗北を受け入れるように目蓋を閉じた。
「まったく……ホント、大した奴だよお前は」
「ありがと♪ んじゃ、今日のところはこれで終わりってことにしときましょ。……【ディバイン――バスタァアアアアアア】ッ!!」
密着状態からの砲撃魔法で障壁を剥ぎ取られ、剥き出しにされた頬に花梨の拳が突き刺さる。
踏み込み、重心移動、筋肉のひねりによって生まれる運動エネルギーを魔力で強化しつつ拳という一点に集束させたフック気味の左拳が、反対側へ衝撃が突き抜けるほどの威力を以て新世の《神》と成った龍神を盛大に吹き飛ばした。
――この瞬間、『神造遊戯』真の勝利者が決定し、黄金の龍神の抑止力として《星詠みの戦乙女》の名が世に示された。
……と、同時に、愛人一号(暫定)を隊長とする〈龍神サマを尻に敷き隊〉が結成されるきっかけとなることを、この時はまだ誰一人として知る由も無いのであった。
「やりぃ、私の勝ち~♪」
「ぬぅ……」
「あははっ。もう、ダークちゃんってば、そんなに膨れないの」
不満げに唸るダークネスの頭部を背後から抱きしめたのはアリシア。
地面に胡坐をかいて座り込み、してやられた結果を受けとめる様に苦々しい表情を見せる彼に誰よりも速く駆け寄った彼女は、幼子をあやすように胸の谷間に収まった愛し人を優しく撫でる。
最後の最後で敗北者になってしまったダークネスはされるがままに身を委ね、おとなしく撫でられ続ける。
誰よりも強く、深い絆で結ばれた二人の間に言葉は要らない。
当たり前のように寄り添い、触れ合うだけでお互いの想いを共有できるから。
絶対的な信頼関係を感じさせるやり取りに、少しだけ羨まし気に苦笑を作ったシュテル。
だが、すぐに(身内限定で)いつも通りの柔らかい微笑を浮かべながら、ヴィヴィオの手を引いて駆け寄っていく。
「負けちゃいましたね。まさか、ダーク様が一手とられるとは予想外でした。いえ、この場合は彼女の成長と戦略を称賛すべきですね」
「ん~……だな。まあ、“次は”負けないさ」
「そうなのです! うっかり敗けちゃったら、次にフルボッコしてやればいいのです! 敗北を洗い流してやるのですっ。最強なダークパパに同じ小細工は通用しないんですからっ」
「そう、だな。――よし、ネガティブはここまでだ」
愛娘から絶対的信頼を向けられたのだ。
いつまでも敗北を引きずっていては父親の名が廃る。
ヴィヴィオの両脇に手を差し入れて軽々と持ち上げ、「うにゃにゃ~♪」 と笑う愛娘に誓いを立てる。
「ヴィヴィオ、次は勝利したかっこいい
「うんっ! なのです♪」
「あははっ。ホントに負けず嫌いなんだからっ、私たちの旦那様は♪」
「あらあら♪」
《神》であろうと、普通の人間でなかろうと関係ない。
当たり前のように自然で、温かな家族の姿がそこに在った。
こうあるべきことが当然なのだと、これから先も変わらない不変の理のようなものだと世界そのものへ見せつけるかのように堂々と。
一方で、腰に両手を当てて得意気に鼻を鳴らした花梨に最強と渡り合った事を称賛する声が掛けられる。
湧き上がる歓声と共に駆け寄ってきた仲間たちとひとりひとり手を繋いで喜びを共有しながら、改めて自分がこの世界で生きる人々が大好きなんだと再確認する。
――うん、決めた。新しい世界は……やっぱり皆が笑い合える場所になって欲しい。
ようやく導き出せた答えを胸に抱き、覚悟を決めた眼差しを以て空を見上げる。
青々と広がる蒼天、浮雲の浮かぶ広大な天蓋に思い出となって記憶に残る同胞たちの顔を幻視して。
やがて、人の輪からゆっくりと離れた花梨が、家族との会話を楽しんでいたダークネスの元へ近づいていく。
彼もまた、家族を下がらせつつ、これからの未来について『決断』した表情で花梨を迎える。
「花梨」
「うん」
問答はもはや必要ない。お互いに何をすべきか、おのずとわかっているから。
残り数歩という距離まで近づいた彼らの足元が光った瞬間、幾何学的な呪文と符号によって構築された魔法陣が描かれた。
『創世魔法』発動の前兆だと理解したスペリオルダークネスと花梨は、魔法陣の中心に歩を進め、手を繋ぎながら意識を集中させる。
「……それじゃあ、そろそろ始めましょうか」
「ああ――新たな世界を創世し、希望に満ちる神話を新生させるために」
繋がった手に込められる力が強くなる。
重なり合った想いに呼応して、魔法陣より溢れ出した光が大地に、空に、世界に広がっていく。
総ての想いを魔力に込めて、誰もが笑うことのできる幸福な未来を求めて。
悲しき闘争に傷ついた世界を、ありふれた幸せで満ちる世界へ創りかえるために。
人々が平穏なる日々をこれからも送ることが出来る様にするために。
龍神と戦乙女が手を取り合い、その“
世界を崩壊する前の状態に戻すのではなく、術者の願う形で再構築する奇跡の体現。
それこそが、《創造神》が授ける創世の秘術――
「「――『
光が爆散した。
人を、大地を、空を、星を、宇宙を――世界を輝きで満たす黄金の閃光。
優しき未来を創世する始まりの魔法が、新たなる神話を紡ぐ世界を産み出した――……。
『エピローグ』
・高町 なのは
『神造遊戯』事件の功績から 三等空佐に昇進。
打診された当初は、前線で戦い続けたいという思いから昇進を返上しようとするものの、“とある理由”から前線に立つ機会を減らすことを決断。
教導官として後任の育成に力を注ぐ。
「それじゃあ皆。今日も張り切っていくよー!」
『はいっ!!』
……尚、機動六課解散後に新たな命を宿していたことが判明。
父親が誰なのか公にされていないためたびたび議論の火種となるが、当人は至って平然としたもの。
『天から授かった』と語る彼女は、蒼みがかった黒髪を持つ息子と共に幸福な人生を歩んだと言う。
――ちなみに、息子の授業参観などのイベント時には、彼女の傍らに眼帯を着けた男性の姿があったという目撃証言があるが、映像としての記録が現存していないため、真偽は明らかになっていない。
晩年、若々しい美貌を維持し続ける彼女の背中に、天使のような輝く翼が生えたという噂も残されているが、真相は闇の中である。
――◇◆◇――
・フェイト・T・ハラオウン
執務官補佐になったティアナと雪菜をパートナーに、最高レベルの執務官として次元犯罪に挑む。
母親や姉の件による固執が一応の解決を迎えたことで余裕が出来たのか、どことなく影のある表情を見せていた以前に比べて、自然な笑顔を浮かべるようになったとはシャリオの談。
同居している親友の愛息子を溺愛しているらしく、舌ったらすな口調で『フェイトママ』と呼ばれた日にゃあ、やる気が200%増。
幸せそうな満面の笑みで犯罪者を刈り取る様から、“微笑む死神”という二つ名が最近加わったとのこと。
「時空管理局執務官 フェイト・T・ハラオウンです。違法【デバイス】の販売容疑で、あなた方を拘束します! ……って、雪菜!? 問答無用で突っ込んじゃダメだってば!?」
「何やってんのよ、バカセナ! もうちょっと自制しなさい!」
「だが断る! 汚物は加熱消毒だぜ、ひゃっはー!」
「どこのモヒカンだ、アンタはぁあああああっ!? アンタ、マジでバカエデに似てきてるわよ!?」
信者たちに懇願され、聖王教会筆頭騎士の立場に就任したカリムの部下になった元暗殺者、兼、現バカとの交流が続いている英雄な恋人の将来をわりかし本気で危惧する執務官補佐。
問題児の癖に検挙率だけはずば抜けて高い部下に振り回されながら、彼女たちもそれなりに楽しくやっているらしい。
――ちなみに、定期的に休暇を申請しては、親友共々ミッドからいなくなることが増えたとか。
何をしているのか誰も知らないものの、休み明けには二人仲良く肌をつやつやさせて出勤してくるので、まあ……そう言うコトなのだろう。
――◇◆◇――
・八神 はやて
二等陸佐に昇進すると共に、新たな独立遊撃部隊の部隊長に就任。
部隊発足に伴う、新メンバーのスカウトに慌ただしい日々を送る。
最高評議会が暗殺されて混乱する管理局の立て直しに召集されたグレアムや三提督の教えを受け、レジアスの愛の鞭に「むきょーっ!」 と奇声をあげながらも地上、如いては次元世界の平和のために力を尽くした。
一連の騒乱を収束に導いた英雄のひとりとしてのイメージが強まったため、ロストロギア保有者であり元犯罪者という風評は鳴りを潜め、若いながらも正義のために身を捧げる高潔さに憧れる若手が増えてきたとのこと。
居酒屋で行ったオフ会では、親友二人の肩を全力で引っ叩きながら『私の時代が来たで! 見とれよ
…
…で、後日。
醜態の一部始終をゴシップにしょっぴられて呼び出しを喰らった、ショボンな仔狸さんのお姿が。
「まったく、貴様という奴は! 世間の目を気にするという、当たり前の事も出来んのかバカモン!」
「ううう……返す言葉もございません……」
地上本部名物、古狸と仔狸が織りなす師弟コンビの解散は、まだまだ先の話になりそうだ。
…………
……
…
「……だだいま、皆」
荒廃した廃村。
あの頃のままの故郷へ帰還を果たした青年は、黄昏る様に儚げに微笑みながら墓標に花を添えていく。
「ん? ――ああ、アンタか」
しゃがみ込んで墓標の掃除をしていた彼に、ふと、影が差した。
振り返れば、花束を抱いたセミショートの女性が青年を見つめていた。
「私も……花を添えさせてもろてええですか?」
「……ああ。皆はもう解放されてるからな。――あの人のお蔭で」
空を見上げ、感傷深げに呟く。あの蒼い空の向こうで照れくさそうにそっぽを向いているであろう龍神さまを幻視して、どちらともなく吹き出してしまう。
風のせせらぎしか聞こえない中、二人分の忍び笑いが木霊する。
「ふふっ……なあ、
用意した花束を墓標に捧げた女性……八神 はやてが、20代前半まで成長したディーノに問いかける。
ダークネスと花梨は、世界新生の際、存在が“消滅”していた“参加者”たちを《新生したこの世界ので生きる人間》として再生させた。
『神成るモノ』としての特異能力を失った彼らは、黄金の加護を受けた新たな世界で、人間としての生を歩むことになったのだ。
とは言え、元々危険思考を有していた新藤 荒貴などは復活直後に騒動を引き起こし、スカリエッティと同じ留置所に叩きこまれることになったが。
嘗ての復讐心を浄化させたディーノが何を想って故郷に戻ってきたのかを知りたいがために、はやてはこの地に足を踏み入れた。
罵倒されるかもしれない。
憎悪を叩きつけられるかもしれない。
それでも……眼を背ける事だけはしたくないから。
それが、かつて
「…………」
ディーノは何も言わず、ただその姿を目に焼き付ける。
何も分かろうともしないまま、殺戮者を家族として受け入れるなどとほざいていた無知な少女はもういない。
ここにいるのは、確かな覚悟を以て
「故郷の再興、かな。結構な田舎だから観光客とかもまず来ないだろうけど……それでも、大切な思い出がたくさん残ってる生まれ故郷だからね」
失った思い出を愛しむ様に目を細めながら、ディーノが呟いた。
「そうですか……じゃあ、私にもお手伝いさせて貰えませんか?」
はやてが頬にかかった髪を後ろへ払いながら言った。
思わずと言った表情のディーノが振り返る。
「八神……?」
「私も、見てみたいんです。復興した貴方の故郷を。――だめ、ですか?」
不安げに表情を曇らせるはやてに感じるものがあったのか、ディーノは固まっていた表情を緩めながら手を差し伸べる。
立ち止まらず、前に進もうとする彼女の眩しさに羨望を感じながら。
「いいや、そんな事は無いさ。これからよろしく、やが……
「ぁ……はいっ! よろしくや、
紡がれた手を優しく包み込む様に、穏やかな風が吹き抜けていく。
いつか、彼らによって復興を果たすであろう思い出の場所に恋い焦がれる様に。
どこまで優しい
――◇◆◇――
「み、見つけた……! ついに、
古代ベルカ時代の遺産、超文明の残滓が未だ漂う遺跡の最奥の調査を行っていた青年は、両腕に抱いた『宝物』に熱い眼差しを注ぎながら高らかに笑う。
『何故か』、新生した世界でも“十年前に自分と夜天の弟が『ちゅっちゅ』したシーンの激写画像”が残されており、スクライアの仲間――主に淑女な皆様方――から熱に侵されたかのような視線を向けられ続けること早数か月。
臀部の辺りがムズムズするいや~な目線に耐え続けた今日までの苦労が報われる日がようやく来たのだ。
親友ユーノが長年にわたって解読を続けてきた古代の石碑。それに記されていた『死者の王』の眠る場所。
それこそが、現在アルクが他探索を終えた遺跡の正体であり、彼の腕に抱かれた少女という『宝物』を保管していた宝物庫なのだ。
穏やかに寝息を零す少女を柔らかなタオルで包みこみながら、ようやく叶った理想の成就に向けて、頬の緩みを抑えることが出来ない。
「くっくっく……! 遂にこの時が来た。俺が、ロリバカの愛人呼ばわりされて後ろ指刺されまくった我が生涯の転機の刻がっ! これで俺もリア充の仲間入りだァあああああ――っ!」
全裸にタオルというあられもない格好をした年端も無い幼子を抱き抱え、血涙を流しながら人気のない遺跡の中で声高々に叫ぶトレジャーハンター。
傍目には、とっても犯罪臭の漂う危ない光景だ。
・トレジャーハンター アルク・スクライア
『アッー!』な噂話を否定するためだけに『死者の王』と呼ばれし古の少女を発見・保護して見せた彼の手腕は、情報屋、兼、無限図書館の副管理人を務める如月 葉月によって面白おかしく着色されてから世間に開示されることになる。
おまけに、発見・保護した少女……イクスヴェリアの保護観察役に任命された葉月の手腕によって、(世間体的な意味で)人生の墓場へまっしぐらな事態に巻き込まれてしまう。
「葉月さンンンンン――!? なんか男色から薄幸系ロリに鞍替えして、幼女の秘密を解き明かそうとする(性的な意味での)ハンター
だって噂が広まってんですけど!? イクスヴェリアの保護を依頼した聖王教会で、武装シスター軍団に『ロリコン殲滅!』 って襲いかかられたんだけど!?」
「人間とは、容易く世論に流されてしまう悲しい生き物なのですわねぇ……」
「噂広めた元凶の癖に、頬に手を当てながら愁いを帯びた遠い目してんじゃねえよ!? いぢめか!?」
「貴女で遊んでいるだけですけど? ……それが何か?」
「ちょっとは悪びれろよ!」
管理局に努める友人……陸士訓練校の教官に正式就任したコウタや、旧アースラメンバーと後輩たちで結成された機動六課の後継部署に配属したアッシュに追いかけられる羽目になった元凶に恨めしそうな視線を向けるものの、当の本人は何食わぬ顔で午後のティータイムを満喫中だ。
どうやら、
そんな中、憤慨を顕わにするハンター(笑)に寄り添う少女は、はにかみながら恩人にして想い人たる彼を見つめていた。
「大丈夫ですよ、アルク様」
「イクス……?」
「私を永久の眠りから……覚めぬ悪夢から救い出してくださった貴方はかけがいの無い大切な人。貴方を護るためならば、私は禁忌を侵し、
「何故だろう……信頼がめっちゃ重てぇ……!」
「お父様とお母様も、アルク様なら私を任せられるっておっしゃってくれていますし」
ふわりと微笑むイクスヴェリアの背後には、浮遊する鬼火の中に浮かび上がる半透明のがしゃどくろが二体、顎をカタカタさせながら手に持ったホワイトボードに文字を描き示すお姿が。
『娘をヨロシクDeath♡』
「怖ぇえよ! つか、リアルご両親を背後霊に使役するとかありなん!? オカルトの領分でしょ、ソレ!?」
「葉月お姉さまにご指導いただけて……呪われた異能を制御する術を発見したんです♪」
「あああ……それじゃあまさか、葉月お嬢ン家の使用人の数増えた気がしてたのは……」
「便利ですよね、マリア―ジュ。人件費とか考慮する必要なくて」
「屍兵器を平和利用とか聞こえはいいのに、なんだこのやるせなさは……」
屍を利用した生体兵器を小間使いにする葉月さん。
オカルト系の魔法に関して、相変わらずのチートっぷりを披露してくれるお嬢様に、ご両親の了承を得てしまったアルクは、“おこじょさんフォーム”で力無く項垂れるしかできない。
殴り込んできた直後にアルク専用【オシオキ魔法】で迎撃されてしまって“鳥籠の中のおこじょさん”になったアルクを封殺し、優雅に紅茶を嗜む葉月嬢。
顔にいくつもの縦線を刻んだ想い人を優しげな眼差しで見守るイクスは、古代ベルカ時代に得られなかった家族の温もりと幸福に胸を満たす。
想い人を追いかけるため、ヒトならざるモノへ進化する秘術の開発に勤しむ葉月と、弄られ残念系アルクの日常はこうして続いていくのだった。
――◇◆◇――
「くふふふふ……! ついに、遂に完成したよ、眷属システムが! 流石は私! 遂に私は、おにぃを超えたァ! ふはははははーっ!」
自分用に宛がわれた……と言うか、無理やり乗り込んだ挙句に自分用の研究室に魔改造した自室で高笑いするルビー。
メカ猫耳も上機嫌を表すようにピコピコと揺れている。
そんな、傍目には痛々しい女に見えなくも無い主を優しく見守り、ルビーが散らかした機材を手慣れた動きで片付けていくのは、金と銀の少女たち。
侍女の冠、ヘッドドレスを装着し、たすき掛けしたメイド服姿の彼女たちの姿、まさに地上へ舞い降りてきた妖精さんの如し。
三徹から来るハイテンションで頭のネジがぶっ飛んだらしい主をやんわりと窘め、さりげなく清掃を開始するメイドさん……ユーリとリリィ。
息の合った連係を見せる様は、パートナーというよりも気心の知れた姉妹のよう。
ルビーの手伝いをさせられた反動で眠りこけているディアーチェとレヴィを部屋の隅っこに運び、ついでに「私が、私こそが真なる天才だァ!」 とか叫び始めた主を
「さて、リリィちゃん。静かになったことですし、お掃除を済ませちゃいましょうか」
「はい。ユーリおねぇちゃん」
慣れない呼び方にもにょもにょ言いよどむ“妹”を“もふぎゅーっ!” と抱きしめながら、器用に箒とチリトリを摘まんだ魄翼で掃除を継続する万能メイドユーリたん。
とある《龍神》の自宅に押し掛けた、〈愉快なスカリエッティさん
マッドを拗らせた妹の成長に、留置所の中に置いて行かれたお兄さんも泣いて喜んでいるに違いない(レヴィ談)。
――◇◆◇――
・高町 花梨
翠屋ミッド支店の初代オーナーとして敏腕を振るい、両親譲りの才能を開花させた彼女の作りだすスイーツは、ミッドに生きる乙女たちのハートを撃ち抜くほどのシロモノともっぱらの噂。
最近はお手伝いとして息子や可愛い幼馴染たちも、ちっさな店員さんとして手伝う姿がたびたび目撃されており、店の将来も安泰だと囁かれている。
時折、突拍子もなく休業になる時があるものの、その時に彼女が何をしているのかを知る者は少ない。
「んじゃ、行ってきやーす!」
「リヒトちゃんたちに迷惑かけるんじゃないわよ~、宗助」
「母さん! 俺はもう、ガキじゃないし!」
「あれ、そうなの? じゃ改めて――美人の女教師に見惚れて、学業を疎かにするんじゃないわよ~」
「「ほう……ちょっと校舎裏でオハナシしようか?」」
「うげえっ!? リヒトにルシア、いつの間にィ!?」
ゴガガンッ! ぎゃーす!? と幼馴染に引き摺られていく息子を微笑ましそうに見送りつつ、朝食の食器を手早く片付けていく。
喫茶店を独りで運営する者として、すみやかに店の準備に取り掛からなければならないのだ。
最近は結構なリピーターさんも訪れてくれるようになったので、店の経営が軌道に乗って大満足だ。
「っと、そろそろプリンが出来た頃合いかな~?」
パタパタ足音を立てながら冷蔵庫の様子を覗き、出来上がり具合を確かめる。
最近は、しょっちゅう遊びに来る《猫神》様がリクエストしまくるものだから、店で出せる余裕がなくなってきているのは悩みどころ。
まあ、《神》サマを満足させられる出来栄えというフレーズもなかなか心を擽るものがあるのでまんざらではないが。
完成したプリンを梱包するのはプロとしての矜持。すぐに食べられてしまうと言え、こういう気配りは大切なのだ。
「よし、準備万端。本日休業日の管板も出し終わったし……行きますか。【ルミナスハート】、転移門発動ヨロシク」
【承りました~♪ 座標軸固定、多次元転移システム起動! 目標――神界・龍皇天空城! 転移……開始ィ!】
「じゃんぷ♪」
花梨を中心に空間がシャボン玉のように膨張し、臨海まで達したソレがはじけ飛んだ瞬間、彼女は白亜の巨城の一室に転移を果たしていた。
転移補助の魔法陣が床一面に刻まれた部屋を抜け出し、荘厳な意匠の施された廊下を進んでいくと、もはやお約束になった衝撃と破壊音が響いてきた。
「来たわよ~」
テラスに通じる巨大な扉を押し開きながら軽く片手を振り上げる。
青空の見えるオープンテラスでティータイムと洒落込んでいた四人組の視線が花梨に……正確には、彼女の持ち上げた手にぶら下がっているプリンの箱へと向けられる。
「やっほー、花梨ちゃん。」
「今日はいつもよりも早いですね? なにかあったのですか?」
「うんにゃ。宗助が日直だからいつもより早く学校に行ったから手暇になっちゃってさ」
ドレスのように絢爛な衣装に身を包んだアリシアとシュテルに軽く返しながら、空いていた席に腰を下ろす。
プリンの箱を青白い肌と奇抜な服が目を惹く青年に手渡しながら、呆れたように空を仰ぐ。
「で? 今日の喧嘩の理由はなんなの?」
「ほっほっほ。喧嘩だなんて物騒な。アレはただのじゃれ合いですよ」
「よく言うわ……。もしここが地上だったら、宇宙の2、3個はぶっ飛んでるわよ」
輝く軌跡を描きながら激しくぶつかり合う黄金と紫の閃光に呆れを多分に含めた眼差しを向けていると、スカートを引っ張られる感覚を覚え、視線をそちらに向けてみる。
「ン? どしたの
「美味しそうな匂いがする……我、お腹すいた」
「あはは~。おーちゃんったら、シュテルママお手製の朝ご飯を食べた後なのに」
「ん。スゥイーツは別腹。コレ、女の子の真理」
キュルク~と可愛らしいお腹の叫びを下げながら、物欲しそうにプリンの箱をガン視する幼女。
親友のヴィヴィオと仲良く手を繋ぎながら、人差し指を加える仕草はとっても可愛らしい。
おもわず、きゅん♪ と胸が鳴ってしまうくらいに。
これで最強クラスのドラゴンなのだから、侮れない。
「そうね……。向こうはまだ決着がつきそうにな『ドガンッ!』――ついたみたいね」
巨大な水柱を上げながら海中に叩き落された敗者を余所に、勝者である《猫神》様が辛抱溜まらんと言った顔で駆け寄ってくる。
「フンフンフン……むむ! この香り……貴様、持っているなっ!?」
「はいはい、御所望のプリンを用意いたしましたよ~。食べたかったら、ちゃんと手を洗ってきてくださいね
「よし、わかったっ! ウィス! 僕が戻ってくるまで食べちゃ駄目だからね!」
「はいはい。ちゃーんと、うがいも済ませてくださいねー」
「僕は子どもかっ!」
「私にとっては、子どものようなものですよ」
第三宇宙速度もビックリな速さで城の中に駆け込んだ破壊神を一同が見送っていると、全身ずぶ濡れになった龍神がようやく這いあがってきた。
泥のようなものが肌にへばり付いているのを見るに、叩き落された衝撃で海底にめり込んでいたらしい。
海草らしきものの残骸が髪に絡まっているのが、何ともシュール。
「お帰りなさい、ダークちゃん。また、負けちゃったね~」
「……ふん。今だけだ。あのバカ猫は、いつか絶対ブッ飛ばす」
「戦績はどんなもんだっけ? 【ルミナスハート】、アンタ確か記録してたわよね?」
【はいは~い。御所望とあらば即実行! 空気の読めるデバイスとは私の事です~♪ てなわけで、御開帳~】
ノリの良い【ルミナスハート】が表示させたモニターに映し出された《新世黄金神》と《破壊神》の模擬戦結果は、5:10でビルスの勝ちが先行している。
《極神》という位こそ同格だが、成りたての《新米龍神》と数万年に渡って最強に君臨し続けている《破壊神》では、やはり経験やら自力やらの差が顕著になるらしい。
それでも、三回に一回は勝利をもぎ取っているのは流石と言うべきか。
まあ、あくまで模擬戦止まりなので、広域破壊攻撃や完成版《
もし全力の二人がぶつかりでもしたら根源宇宙そのものが崩壊してしまう恐れが非常に高いので、全力模擬戦は《創造神》から禁止されてしまったのだ。
流石の《破壊神》様も、強大な力を有する眷属を多数従え、神々の中で最強の
指を弾き、浄化の光で汚れを落としたスペリオルダークネスが、鎧を解除しながらテーブルにつく。
シュテルの焼いたクッキーを啄みながら負けたことをあからさまに悔しがっている彼の頬をつついて遊びつつ、ふと大切な事を思い出す花梨。
「あ、ダーク。こないだルビーのバカが作るって息巻いてた例のアレ……どうするか決めた?」
問いかけながら、隣でプリンを頬張って無表情の中に確かな歓喜を感じさせる程度には感情を身に付けつつある無限少女の頭を撫でつつ、「もし眷属を作るんならこの娘も仲間入りするんだろ~な~」と確信じみた未来図を脳裏に描く。
某覇王っ娘を差し置いて聖王姫の親友ポジションに収まり、ちょくちょく遊びに来るようになった少女を放り出すなんてマネ、なんだかんだでお人よしな彼らが出来る訳ないと確信しているから。
「アレ? ……あーアレな。正直どうしようか迷ってる。まあ、焦るような物でもないし、ゆっくりと考えていくさ。――時間はたっぷりあるんだからな」
「そっか。私たちの日常はまだまだこれからなのよね」
「ああ……そう言う事だ」
《新世黄金神》 スペリオルダークネスSR
新生した世界を加えた第十二根源世界の《極神》となり、神界と呼ばれる異空間で、家族や眷属たちと賑やかな日々を謳歌する。
だが、なぜか他の《極神》から面倒事を持ちかけられる事が多く、神々の便利屋扱いされているのが悩みの種。
《神》を支える直属の高位存在……『守護天使』として覚醒を果たしたアリシア、シュテル、ヴィヴィオ。
戦乙女として神化し、神界と地上を行き来する花梨。
ドサクサまぎれについてきたルビーたち。
気まぐれで遊びに来る《破壊神》や無限の龍神……時々、
神を目指し、儀式という闘争を経てたどり着いた平穏なる日々。
しかし、彼らの人生……いや、『神生』はここから始まるのだ。
愛する妻と嫁による『あーん』を受け、花梨お手製のプリンを味わいながらこれからの未来へ想いを馳せる。
背負うものが出来た。やらねばならぬ責任を背負った。
しかしそれでも……今胸を満たす幸福があるかぎり、己はあの邪神と同じ轍は踏まぬと断言できる。
そう、これから歩む黄金の光に包まれた未来は、きっと楽しい出来事で満ち満ちている筈だから。
確信じみた予感を抱き、黄金の龍神は眩い陽光に目を細めた。
《新世黄金神》たちの騒がしすぎる日常は、まだまだ始まったばかりだ――――……。
魔法少女リリカルなのは 『神造遊戯』 ―― fin
花梨嬢、大金星なエピローグ。
試合形式+大技禁止のコンボで封殺。主人公(+ラスボス)の敗北で〆とは珍しいのではないでしょうか?
けど、負けを経験しかたからこそ、神サマ街道でより一層のパワーアップが果たせるのです!
後はまあ……ダークさん一家の抑止力になって欲しかったというのもありますが。
ひとまず、これにて『神造遊戯』本編は完結です。
次回からは日常編。神サマになったダークさん一味と抑止力な花梨嬢の
とりあえず次はオリのR版を更新せねば。六割くらい進んでいるので、明日中には更新したいものです。ではでは~。
●おまけという名の日常編予告
総てはこの一言から始まった。
「ダーちゃん、ダーちゃん! 例のアレ――眷属システムが遂に完成したんだよ!」
天災が生み出した契約型魔法兵装【アルカナフォース】。
二十一の称号が刻印されたこのカードは、選ばれし者をマスターカード……No.“ⅩⅩⅠ”『世界』の契約者の眷属とする術式が刻み込まれていた。
「そう言えば、《神》サマって
「そう言われてみれば確かに。こんなに広い世界に私たちだけというのもなんだか味気ない気がしていたんですよ。ダーク様、やはりここはひとつ、新しい下僕を作ってみてはいかがです?」
意外と乗り気な妻嫁コンビに促され、《新世黄金神》の眷属探しの幕が上がる。
冥府煉獄の底へ赴き、異なる位相の先に在る並行世界からスカウトするのは、ひと癖もふた癖もある色々と濃い者共。
「国を失い、同族に憎まれ……王としての役目を果たせなかった私に何のようだい?」
「あ、過去話とかどうでもいいんで。つべこべ言わず、バカドラゴン抑えるの手伝って」
「え? いやね、私これでも王様だったんだが……」
「それが? 死人が過去の栄光に浸ってどうすんの。いろいろ変な連中が集まりそうだから、常識人サイドの戦力が欲しいんだって言ってんでしょが。つべこべ言わずに、ついてきなさい!」
「ぷっ、くくく……! そうか、それじゃあ手を貸さねばならないかな」
“夜の国”最後の王たる『薔薇』の吸血鬼は、戦乙女によって光満ちる世界へ連れ出され、
「ほぉ? こんなところに客人とは珍しいな。何用だ、ガキ」
「ガキじゃないですっ! おじさんとそっちのおじいさんにお願いがあってきたのです」
「……やるべきことを成せなかった老いぼれに何を求める? 幼き天使よ」
「ほえ? おじーちゃんは千年生きた死神さんなんですよね~? だったらこんなとこでウジウジしてないで、世界とダークパパのために強力して欲しいですっ。強いんでしょ?」
「くっ……ははははは! 大言壮語も甚だしいな、小娘! だが、思うままに生きる様は見ていて気持ちが良くもある。過去を悔いてばかりだったバカ弟子に見習わせたいくらいだ。――面白い、陸の黒船と呼ばれた御剣の殺人剣術、もう一華咲かせるのも一興か。御老人、アンタはどうする?」
「……ふん。惰性を貪るのも飽いた。護廷の守り人として生きたこの儂を顎で使おうとする小童の性根を叩き直すくらいはしてやろうかのぅ」
「素直じゃないな……。娘、俺も手を貸してやってもいいぞ。ただし、美味い酒を用意しろよ」
『獄炎』の死神と『御剣』の継承者。
剣士最強と呼ばれし侍たちが、聖王姫の懇願に腰を上げ、
「メルトダウンの末に辿り着いた冥府の底でもなお、闘争に身を捧げるとは……さすが黒き破壊神と呼ばれた獣と呼ぶべきか。どうだ、俺と来ないか? 貴様の抱く無限の破壊衝動を満たせる強者との戦場を用意できるぞ?」
『……!』
怪なる獣の屍の山を産み落とした『破壊神』たる獣の王が、《新世黄金神》に導かれる。
「ふんふん……にゃるほどぉ~。これがバラルシステムの概要かぁ。地球を結界で覆い隠し、外敵をシャットアウトするとか引き籠りの極みでしょ。でも、こいつは修理すれば使えそうだな~。神鋼で創造された四神の長と併せて修復してみようかな♪」
天災によって復元されるのは、星を護る『超機人』の頂に座したモノと忠実なる僕。
新たなる主を得て、鋼の咆哮が神成る世界に響き渡る。
「……その話、本当なのかしら?」
「うん、間違いないって断言できるよ。で、どうカナ?」
「私たちがあなた方に協力したとしてぇ……そちらにどのようなメリットがあるんですのォ?」
「抑止力、かな? 私たちはいろいろと常識はずれな異能を持ってるから、もし間違った方に進みかけた時に止めてくれる同士が欲しいんだよ。だからこその契約だね。貴方たちは基本、自分の世界で生活してもらって、呼び出した時に手を貸してくれればいいんだよ」
「眷属という扱いも副職、所謂アルバイト的な感覚で頂いて構いません。お互いを利用し合う……嫌いじゃないでしょう? そういうの」
「見透かされているようで癇に障るけど……まあ、良しとしましょう。あの子――『円卓の理』を抑え込む魔法の維持に手を貸してくれると言うのなら是非も無いわ。ただし、不要と判断すれば即座に契約破棄させてもらうのだけれど」
「くふふ♪ ワタクシも同意見ですわァ。こちらの欲する『時間』を提供して頂けるのなら、傭兵……という形でご協力してもヨロシクてよォ♪」
円卓を簒奪せし『悪魔』に堕ちた魔法少女と、時を貪る狂気を宿せし『精霊』が、魔女と天女と契約を結び、
「《神》、か……
「そうか? むしろ必然のような気もするがな。……で、返答やいかに? 叶う事なら、寿命を全うしたアンタの家族――薬師と森の母である娘たち共々、加わって欲しいんだが」
「っ! ……そう、か……もう一度、あの娘たちに出会えるのなら……それも一興か」
「ふ……歓迎するよ、
白亜の『皇』が龍神と縁を結び、
「よう、
「やっほ~。助けに来たよ……おーちゃんっ♪」
無幻と無限までもが加入して、理不尽の権化たるバカ集団が爆誕する!
そして――……、
紡がれた縁は、不幸な生贄さん方のSAN値をゴリュゴリュ削り落とす劇薬と化す!
「せっかくチームっぽいメンバーになったんだから、対戦とかしてみたいよね! ってなわけで、おーちゃんの世界でレーティングゲームって試合が開催されてるそうなんで、飛び入り参加してみましょー!」
無垢なお姫様の願いにより、理不尽な暴力に曝される聖書の三大勢力!
若手悪魔のトーナメントに乱入した大人げなさ過ぎる《
「頑張ろうね、おーちゃんっ!」
「ん。我、頑張る。全力まっくす、すぷらっしゅはーと」
「――――!!」
「ぬ、
「同意」←《
『すんません、マジ勘弁してください!?』 ← 聖書三大勢力一同
果たして神話勢力に明日はあるのか!?
そして、気まぐれで並行世界移動を可能とする『さいきょ~一家』の次なる犠牲者やいかに!?
次回から、『神造遊戯』第二幕、兼、日常編開始予定!
……嘘予告じゃないですよ?