マシュより先に合流したけどマシュより弱いセイバーさん(実質嫁) 作:セイバーさん
間話:ばれんたいんなる催しにて、モノノフは微笑む
「おや、主」
「セイバーさん」
シュミレーション室での訓練を終えた帰り道にて、どこかへと行かれる主と出会う。
「ちょうど良かった、これ……あれ?」
……?
「……」
「……」
「ええと、どうかされましたか?」
「い、いやちょっと……またね!」
様子のおかしい主が、早足で駆けて行ってしまわれた。
……どことなく落ち着きのないというか、何というか……はて。
「セイバーさん」
「主」
それから少しして。
今度は主の方から私の方へと駆けて来られる。
「どうかなされましたか、主」
「えっと……その、これ」
そう言って手渡されたのは……花の装飾が為された包装がされたもの。
これは……。
「プレゼント、今日はバレンタインだからさ」
「……左様ですね」
バレンタイン、親しい方々へ日頃の感謝や気持ちを伝える為に贈り物をする日。
その為か今日は、いつにも増してサーヴァントの方々が騒がしいのです。
「ありがとうございます、主」
「ううん、ありがとうはこっちのセリフだよ」
真っ直ぐな瞳で、こちらを見据える主。
……ああ、本当にこの方は。
「いつも、本当にありがとう、セイバーさん」
「……」
……うぅむ、困りましたね。
「えぇと……」
「?」
「ああいえ、その。私の目論見が外れてしまったなというだけでございます」
「目論見?」
「はい」
この日の主は、引く手多数で忙しくなるだろうということは概ね予想ができましたし、できる限りご迷惑にならない様にしたいと考えていた。
……まあ、こうして崩れ去った訳なのですが。
「申し訳ありません主、少々私に時間を割いて頂いてもよろしいですか」
「いいけど、どうしたの?」
「お連れしたい場所がありまして」
主に贈るものは当然用意してあるのだが、残念ながら今持ち合わせていない。
とは言え、こんな場所でお待たせする訳にも行かないのも事実。
「どこへ?」
「私の部屋にございます」
「……えっ」
「申し訳ありません、特に何かある訳ではないのですが」
「う、うん……」
さて贈り物……の、前に。
主にお茶をお淹れしなければ。
「お茶をお淹れしますので、少々お待ちください」
「……」
……?
なんだか、主のご様子がおかしい気がしなくもない。
落ち着きがないと申しますか……。
お疲れなのでしょうか?
「お待たせしました、主」
「ま、待ってないよ!」
「?」
お茶と菓子類を主の前に置く。
「そして、こちらを」
「?」
そうして、主に手渡したのは。
「笛……?」
「最初は、チョコレートなる南蛮の菓子類をお渡ししようと思っておりましたが、他の皆様からも送られておりますでしょうし、別のものが良いかと思いまして」
その他となると、私が持ち合わせているものだとこの程度しかないというのもあるのですが。
「ガラテア殿や村正殿にお尋ねして作ったものになります」
「わぁ……!」
木製の笛、私の持つ青葉の笛を参考にして彫った拙いもの。
私の笛の音はお気に召していただけた様でしたので、お守りにでもなればと。
「素人の拙い作品になりますので、お気に召さない様でしたら捨てて頂いても構いません」
「全然! すっごく嬉しいよ!」
「ならば私としても何よりでございます、主」
……良かった、喜んで頂けた。
いえ、主ですので無碍に扱う様なことはしないと思ってはおりましたが、それでも手作りというのは、中々怖いところがあるのです。
「良い匂いだね」
「アセビなる丈夫な樹木を、村正殿にお薦めされまして。『
「そうなんだ」
「はい」
中々強くおすすめされたのですが、この木はそれほど笛を作ることに適したものなのでしょうか。
「ふむ」
「?」
「とにかく、喜んでいただけたのであれば、私としても本当に嬉しい限りです。……正直、ほっとしている私がいます」
「セイバーさんの作ったものなら、なんでも嬉しい」
「ふふ、お戯れを」
主の一言一句が、私の心をざわめかせる。
……ああ、本当に。
「……あなたは、本当に眩しいお方です」
「え?」
「なんでもありませんよ、主」
おじさま。
私は、おじさまにも負けないくらい素晴らしいお方に巡り合うことができました。