マシュより先に合流したけどマシュより弱いセイバーさん(実質嫁) 作:セイバーさん
逆鱗と勲章って奴の所為です。
「んー……」
「何かお困りごとですか、主」
ダ・ヴィンチ殿からの頼み事の後、少々対応がぎこちなかった主だが、今日は何やら真剣に悩んでおられるご様子。
「……あっ、セイバーさん」
「お邪魔をしてしまい申し訳ありません、作業に難航していらしたみたいですので、つい声を」
「大丈夫だよ」
そう言って、不慣れな笑みをお浮かべになる。
……誤魔化しはあまり得意ではないでしょうに、気を使わせてしまいましたか。
「私でよろしければ、サポート程度ならば可能だと存じますが」
「ううん」
「……左様で」
「これは俺がやらなきゃいけないことだから」
主が眺められているのは、何かしらの本や、端末の類。
……ふむ、過度な詮索は主の邪魔になるみたいですね。
「でしたら、私はこれで」
「ありがとう、セイバーさん」
「お礼を言われる様なことは何も。ああ、それと……」
「?」
「私のことはお気になさらずとも、主は当然の疑問を解消されただけのことですよ」
「……ごめんね」
「謝られる必要はないのですが……まあ、主はそういうお人です。それでは」
「何あんた達、喧嘩でもしてるの?」
「はい?」
食堂にて唐突に話しかけて来られたのはエリザベート殿、そして後ろには清姫殿もおられますね。
エリザベート殿は壮絶な逸話と歌声をお持ちの御仁で、尚且つカルデアのサーヴァントでも古参側になる。
……あっ、ちなみに今はランサークラスでございますよ。
「……喧嘩、と言う様なことは何も」
「ふーん。……じゃ、
「私は主と
「知ってるわよ、冗談に決まってるじゃないの」
「冗談というものは適した場所で使うからこそ場が和むのですエリザベート殿……」
「……」
清姫殿の沈黙と笑みがどうにも恐ろしい。
私は妖術の類の技をどうにかする術を持ち合わせておりませんので!
「じゃあ何であんなギクシャクしてんのよ」
「それは……」
どう言い表しましょうか……?
「その、少々。主と価値観の相違で拗れた、と言いますか」
「なーんだ、喧嘩してるんじゃない」
「いえ別に、言い争いをしている訳ではございません」
「でもその所為でギクシャクしてるんでしょ?」
「ええと……」
喧嘩、言葉や暴力による争い。
それとは若干違う様な気がしなくもないのですが。
「……これは、喧嘩と呼ぶのでしょうか?」
「みたいなものよ。……まああんたって喧嘩とかはしたこと無さそうなお嬢様だし? わからなくても仕方ないんじゃない?」
「……」
主と私は喧嘩しているのですか。
「お嬢様……それほど、
「ふーん。でもま、裕福でふっつーに幸せな人生送ってるんなら
「それは……そうかもしれませんね」
戦うことというのは、現代の常識的には幸せではないそうですからね。
全く、
「で? 何して喧嘩してんのよ」
「う……」
「誤魔化されると思った? 残念だったわね」
「そういう時だけ賢くなるのはお辞めください」
「いやそれどういう意味よ!」
「ふふっ」
「あんたはあんたで今笑ったわよね!?」
申し訳ありませんつい心にもない言葉が。
……いえ、まあ清姫殿が反応していない時点で本音であることは隠せないのですが。
「……ったくもうっ! 誤魔化し方が
「
「その気がない方がタチ悪いわよ!」
「うぐ」
「嘘発見器代わりに清姫連れて来た甲斐はあったみたいだけど」
「えっその為の清姫殿だったのですか?」
「らしいです、不服ですがあれだけ真正面から頼まれてしまうと……」
押しの強い清姫殿を押し切ったと……?
「そこまでして、どうして私に?」
「決まってるでしょ?」
「?」
いつもの如く、勝ち気な笑みをお浮かべになるエリザベート殿。
「あんたとマスターが落ち込んでるとこなんて見たくない、それだけ」
「成程、マスターの為と」
「そういうことよ」
「……」
それだけにしては、清姫殿が微笑ましそうな顔でエリザベート殿を見ていらっしゃいます。
まあ、他意はなさそうということも判断できるのですが。
「本当に些細なものですよ」
「どんな些細なことなのよ」
「……アヴェンジャークラスの私について、少々」
「へぇ」
意外でもない、と言った反応をされるエリザベート殿。
いえ、貴女は確かに別側面のことなんて意外でも何でもないのでしょうけれど!
「
「色々と事情がありまして……」
「……ま、それだったらそう深い問題でも無さそうね」
「ずっとそうだと申しておりますよ」
「アンタみたいなのはね、良い顔して内側にドロドロしたもの溜め続けるって相場が決まってるのよ、信用できないわ」
「どの様な相場なのですかそれは」
エリザベート殿、もしかしなくとも最近漫画などをお読まれになられたのでしょうか?
とんでもない相場を出されても困ります。
「じゃ、アンタ今すぐマスターのとこに行って来なさい」
「……えっ?」
「あんたらいっつもお互いに遠慮し合ってるから、意見の食い違いなんかですぐに拗れるのよ」
「……」
うぐ。
そこに関しては返す言葉もないのですが……。
「だから、喧嘩の時くらい本音でぶん殴り合えばいいのよ」
「……はぁ、左様で」
「ピンと来てないって感じね」
「いつも主には本心をお伝えしておりますので」
「こんっの天然……! 差し支えない程度で、って感じでしょうアンタは! その所為で若干言葉が足りて無さげってのがわかんない!?」
「過不足なく伝えておりますよ」
伝達に
「はぁもう……アンタの情報が入ってないって言ってんの」
「私のですか?」
「アンタは基本的に客観的な意見ばっかりで個人の意見を出さないし。普段ならそれが正解なんでしょうけど、喧嘩になると致命的よ」
「と、言いますと」
「内容的に、マスターはアンタの本心が知りたいんじゃないの?」
……確かに、後悔についてなどは聞かれましたが。
「それに対して自分はどうとも思ってない〜とか、納得してる〜とか、生真面目に答えたんでしょ」
「ええ、まあ。そう思っておりますので」
「それで、その後マスターは?」
「……どこか悲しげに『そうなんだね』と」
「やっぱり! それであんな……」
「?」
あんな、とは。
直前の主は確か、調べ物をなさっていましたが。
「何でもない。まあとにかくこれでやることは見えたわね」
「え?」
「アンタがマスターのところに行って、マスターと内容について本音100%で話し合う、これでしょ」
「本心で全て話せ、と申されましても……」
今は主の部屋に向かっている所。
しかしこれでは主の邪魔にならないでしょうかね……?
「……見られている感じも致しますし……」
私では誰がどこで、ということまでは把握できませんが。
ちゃんと私が主のところに向かうか見張っている、という事なのでしょうか。
「主、おられますか?」
主の部屋の扉を叩く。
しかし反応はない、不在でしょうか?
「……扉は開いておりますね」
と、言うことは
「主、入りますよ」
部屋に入って、己の予想が外れていたことに安堵する。
「……」
「……どうやら、寝ておられるだけのご様子」
ならば、
荒事に巻き込まれでもしていたら大変ですからね。
「しかしこれでは風邪をひいてしまわれますよ、主」
軽く声をかけるが、起きる気配はない。
……毛布は確か、あちらに。
「ん……」
「主?」
主が、私の服の袖を掴む。
……
「セイ、バー……さん」
「……はい、ここに」
「うーん……」
主に風邪を引かれても困るのですが。
どうしたものか、と言ったところ。
「主、主」
「ううん……」
……いっそのこと、主を持ち上げてそのまま
「……やってみましょうか」
主を起こさない様に手を回して……えいっ。
「んっ……マシュ殿の様にはなりませんね」
膂力も下から数える方が早いですからね、妙なことはせずに手早く主を運んでしまいましょう。
「……」
一歩目、そして二歩目を行こうとしたその時。
足に、何かが引っ掛かる様な感覚が
「えっ?」
私の前には主の
……このまま
「っ!」
片方の手から主を離し、その手で
「……ほぅ、主を押し潰す、などと言う事態は避けられましたか」
足元の不注意でした、もっともっと精進せねばなりませんね。
……しかし何が引っ掛かったのでしょうか?
「ああそうでした、早く退かねばなり、ま……」
ふと思い出して、主の方を見てみると。
その先には、主の青い瞳が映って、おいでで……!?
「……セイバー、さん?」
「あ、主……?」
「えっと……その、これは……」
非常にまずいです。
この体勢は、主に不快な気持ちをさせてしまいます。
「す、すぐ退きますのでっ」
セイバーさんのステータスチラ見せ
筋力:D-