マシュより先に合流したけどマシュより弱いセイバーさん(実質嫁) 作:セイバーさん
暗き澱み、ここに満ち足りてに候。
「 ?」
我らはここに留まりし、停滞すべき澱み也。
我らは罪ある者、我らは永劫裁かれる者。
「これは……」
「アツモリ様?」
汝に燃ゆる炎は、そこに在りてここに無く。
其は思い出すことこそ罪なれば!
「……」
それでも汝、己を
「……そうせねば、我が主の為にならないというのであれば、私は閻魔の針山であっても踏み越えましょう」
見事也その覚悟、ならば示されよ、ならば覚悟せよ!
辺りに漂う漆黒が、集まって形を成そうとしている。
『我ら
「……」
「なんと……!?」
『
驚くべきことに、それは言葉を発していた。
……黒い、私の姿をして。
「
『然り、然り、然り!』
「アツモリ様、心当たりはございますか」
「いいえ全く。……しかし、
それにしても……いやはや、私の姿形をしておられますが。
「中々どうして、私よりも強そうに感じられますね?」
「落ち着いておられる場合ですか!」
「ふふ、戦場でこそ落ち着かねばならないのですよ。ジョヴァンニ殿」
弱いので苦戦を強いられますし、苦戦するが故に必死にはなりますけど。
無謀にはならない様、常に心掛けてはおりますよ。
『いざ、いざ! 参られよ参られよ!
「では、参りましょうか」
「……最善は尽くしますが、期待はしないで下さいね!」
「オ、オオオォ……ッ」
「……何とか、なるものですね」
「非常に厳しいものではありましたが……」
黒い私の身体が霧散していく。
中身は全くの別人であると言えど、己の死に際を眺めると言うのは中々複雑なものですね。
「……
「何でしょう」
「汝……
死に体ながら、影に問われる。
……異な事を尋ねられますね。
「お主は……もっと……」
「ご冗談を」
「忠義こそ私が在る最大の理由でございましょう、皆様方」
「……嗚呼、罪深き哉我らが所業……無念也……!」
わかりきっていたことでは在るのですが。
人間、面と向かって相手に悔やまれると少々複雑になるものですね?
「アツモリ様、これは……」
「……簡単な
「ええ、それだけです」
「……左様ですか」
……影法師を倒したからでしょうか。
幾分か、曖昧だった色々な部分が鮮明になった。
「先へ進みましょう。そう長くは居られない様ですからね」
「?」
「巌窟王殿の気配が薄まっておられます」
「……」
巌窟王殿は、私にどの様なことを思い出させたいのかは未だに判断できませんが。
あの方の仰った、清算というものはおそらく……。
「アツモリ様……?」
「 そして、何度か私の形をした影法師を斬ったり、色々ありまして。そうした後に主と合流することと相成りました」
「そうなんだ……」
「肝心な時に、お力になれず申し訳ありません、主」
聞いたところ、相当な経験であったと。
そういう時にこそ、主の露払いをすべきだというのに……。
「ううん、あの時もセイバーさんは助けてくれたよ」
「はい?」
「こっちの話」
「……左様でございますか」
……こちらに戻ってからというもの、主がこちらを眺められる時間が増えた気がするのですが。
あの、何か?
「何でもないよ、セイバーさんの顔を見てただけ」
「は」
「?」
「い、いえ。何でもございません」
あの、主。
その様な発言は私の退去が早まってしまいますのでお控え頂けるとありがたいのですが……?
「……」
「満面の笑みでございますね……うぅむ」
困りましたね、この表情をされている主は非常に手強い。
主の人柄は承知しておりますから、他意はないのでしょうけれども。
「……一先ず、冷めてしまいましたのでお茶を淹れ直しますね」
「ありがとう」
「お気になさらず」
あの時のことは長話になると踏んでお茶をお淹れしたのですが……途中からお茶が本筋になっておりませんでしたか、主。
お喜び頂けるのというのはこちらとしても本望なのですが。
「セイバーさん」
「? はい」
「いつも、寄り添ってくれてありがとう」
「……主のサーヴァントとして、当然のことをしたまでです」
「それでも」
「主」
今日の主は、積極的であらせられる。
しかし、それをそのまま受け取る訳には参りません。
「私は主の刀です」
「……」
「道具に、必要以上の感謝は必要ありません」
私は主の為に動きますが、主が私ごときの為に動くことがあってはならない。
何せ弱いですからね、私は。
「セイバーさん」
「はい」
「俺はセイバーさんのことを、大切な人だって思ってる」
「 」
「だから、自分のことをそんなに卑下しないで」
「……困りましたね」
ええ、本当に。
そこまで真っ直ぐきっちりと念押しされてしまうと、誤魔化し様がないというもの。
「承知しました。……相変わらず主はお優しいですね」
「今は、それでいいよ」
「……」