マシュより先に合流したけどマシュより弱いセイバーさん(実質嫁) 作:セイバーさん
「ねえ、セイバーさん」
「どうかされましたか、主」
帰りの道中にて。
程よい静寂に、主の靴の音が響く空間、不意に主が口を開いた。
「セイバーさんは、聖杯にかける願いはないの?」
「……いきなり何を聞くのかと思えば」
聖杯とは、あらゆる願いを叶える万能の
カルデアの中で流通しているもの……という認識もあるが、それとはまた一線を画すものを示しているのだろうか。
「前にもお話ししたと思いますが」
「そうだっけ」
「ええ、確かに。……まあ、雑事を話すには
「うん」
頷いた主からは、どことなく真面目な雰囲気を感じる。
……どういう意図なのでしょう?
「私が聖杯に望むことはありません。
「それは願いじゃないと思う」
「と、申されましても……源氏方への復讐など願うものでは無し、平家の再興も……正直、重要とは思えません」
「本当にないの?」
「えぇと……」
主に問われ更に深く考える。
受肉という手段もあるらしいが、私としてはあまり褒められた行為ではないと思っている。
2度目の生などで今を生きる者達を害するべきではない。
では、特異点での方々が
結論、ないですね。
「本当に、ありませんよ」
「……」
「どうかされたのですか?」
「いや……ごめんね、変なこと聞いちゃって」
「主の為であれば、いつでもお聞き下さい」
「ありがとう」
険しい顔をして唸っている主、本当にどうなされたので?
もしかして、体調を崩されたりしていらっしゃるのでしょうか。
「少々、失礼しますね」
「……」
主の額に手を添える……熱は、なさそう?
試しに己の額へもう片方の手を添える。
「……
「……」
主からの反応はない、余程何かに意識を割かれているご様子。
私の手では検温にならないでしょうか?
「主、主?」
「……」
反応は無い。
しかし意識はありますね、目の焦点もしっかりしておられます。
と言うことはレイシフトに巻き込まれたと言う訳では無い。
「……もう少し、失礼しますね」
私の手のひらの感覚の間違いか、余程の考え事か。
前者であったら困る為、今度は額合わせで熱を測る。
「ん……やはり熱は無いみたいですね」
「冷たい……ってえっ、え?」
「おや、お気付きになられましたか、主」
「セイバーさ……ん?」
「はい、どうかされましたか?」
「ち、近い! 近いからっ!」
主が中々の速度で飛び退いた、
……顔が赤い? 熱はなかった筈ですが。
「?」
「セイバーさんって時々距離が近くなるよね……」
「はあ、しかし熱を測る為に必要な措置でしたので」
「手で測れば……」
「それをしても尚、原因がわかりませんでした
「顔の偏差値の暴力だ……!」
何を仰ってらっしゃるので。
私より見目の優れた方など、それこそ主は大勢見てきたでしょうに。
「やっぱりあの2人夫婦の距離感してるわよね……」
「額合わせてヒロインが目ぇ瞑って体温測るってどんなラブコメだよっ!」
「リアルガチ恋距離って奴ですな、拙者知っておりますぞ、デュフフ」
「おや、お三方」
通路の角にて、こちらを覗いておられるのはメイヴ殿、刑部姫殿、黒髭殿。
……いや、何をしてらっしゃるので?
「どうかなされましたか」
「平常運転ですなぁ敦盛殿は!」
「不調を起こしてはなりませんから。ところで刑部姫殿は珍しいですね、外に出ていらっしゃるなんて」
「ネタが思い付かなくってさー……まあ目の前でネタ供給されたんだケド……なんか複雑だー……」
「あら、貴女も混ざれば良いじゃ無いの」
「うぇっ、まーちゃんあーちゃんの前でそれ言うのっ!?」
「中々珍しい組み合わせだね?」
確かに、この3人が揃っていると言うのも中々。
共通点らしき物に心当たりはありますが。
「創作に関するお話でもされていたのですか?」
「いいえ、偶然出会っただけよ!」
「そこでお二方のアレを目撃しましてな」
「仲良く眺めてたってワケー……うー……」
「成程」
アレと言っても、マスターの健康調査をしていただけなのですが。
「いやまぁ最初から目撃してた身としてはああなるとは思っておりましたが、流石にスッ……と行き過ぎなのでは?」
「そんなことより今できる最善を尽くすことが大切でしょう」
「そうとは言えそこに躊躇いも恥じらいも混ざってないのが怖えんですぞ!?」
「私は主の刀ですので」
「凄いわねこの子」
「これ相手? でもまーちゃんだもんね……」
主とマシュ殿ならともかく、私ですよ? 最弱レベルで弱い私。
あらゆる手を尽くして尚、他のサーヴァントの貢献度には及びません。
「それが拍車をかけてんでしょーが気付きなさいよ敦盛殿ぉっ!」
「純粋さって時に罪になるものなのね」
「この嫁力全開チート、まーちゃんは渡さないぞー……な、なんて」
黒髭殿が声を張り、メイヴ殿が何かを悟った風であり、刑部姫殿が主のお側で何かぼそりと呟いている、私は聖徳太子殿ではないのですが。
「……では、主はお任せしますね」
「え? この流れで任せるっての? マジで言ってんのかアンタ」
「私では、今日の主の悩み事を増やしてしまうみたいですからね」
そう言い残しその場を去る、刑部姫殿は主を好かれている様ですし、黒髭殿もメイヴ殿も面倒見が
「私の刀ですか? 構いませんが……」
「おう、態々悪いな」
別の日、村正殿と出会った私は、村正殿に己の刀を見せていた。
「何の変哲もない
「
「よくもまあこんな
「呼ばれた当初はもう少し
「そうなのか?」
「霊基再臨なるものなのですが、私は出力を高めれば高める程能や舞の一面……特に有名な、死に様の場面に近付いて行くことになりまして……」
「ああ、合点がいった。身綺麗なのに刃が拙いのは演者に近くなっていくからってことかい」
「そうなります、私より
どう解釈され、演じられたのかは存じませんが、おそらく奇襲ののちの連戦にて刃こぼれした状態が反映されているのがその刀……なのでしょう。
服装が比較的綺麗であるのは、実際の戦場ではなく演目としての再現衣装に近付いているということになるかと。
「難儀な体質だな」
「サーヴァントである以上仕方のないことです、受け入れますとも」