機動戦艦ナデシコ Lily of the valley 作:勿忘草
火星の後継者を名乗る者による武装決起、ボソンジャンプを用いた空間転移により各施設を直接強襲するというテロ事件から約二ヶ月後各地で点々と起こった残党との戦いもようやく事態が収拾し、連合宇宙軍も落ち着きを取り戻し始めた頃、それでもアキトさんは帰って来ませんでした、それなら追いかけるしかないですね、だって私の大切な人ですから・・・
ネルガル重工ビル:応接室
「というわけでイネスさん、ちゃっちゃと答えてください。貴方ならアキトさんの居場所を知っているハズです。」
イネス・フレサンジュ:ネルガルの科学者であり、過去の機動戦艦ナデシコの乗員となっていた時は科学及び医療クルーとなっていた
ボソンジャンプを自由に可能にするA級ジャンパーと呼ばれる特殊な人が誘拐される事件が相次ぎイネスさんは死を偽装して潜伏していました、戦艦ユーチャリスの単体ボゾンジャンプ等どう考えても裏で彼女が関わっていなければ不可能な事象、そしてユリカさんを取り戻すため無理をしていたアキトさんの体調を診れるのは情報流出防止という点で考えてもこの人だけでしょう
「いきなり失礼ね、でも言わないわよ」
「分かりました、【言えない】ではなく【言わない】何ですね・・・では時間がなさそうなので急ぎます、さようならイネスさん」
そう言って頭を下げるとホシノ・ルリはその場から走り去ってしまった
「ハァ、やっぱりルリちゃんにはバレちゃうわね、彼女は能天気に彼の帰りを待っているようだけど…諦めたのは失敗だったかな?」
想像していた中で最悪のパターンのようです、廊下を走りながら彼が行きそうな場所を考えます
アキトさんは火星の後継者に拉致されボソンジャンプ解明のため度重なる人体実験によりナノマシンの過剰投与に加え、火星の遺跡にあった演算装置へデータを伝える中継装置として機械と人を繋げらられるようにナノマシンを利用して脳とコンピュータをリンクさせるIFS(イメージフィードバックシステム)を利用して逆に脳にイメージを書き込む実験が行われ、アキトさんは様々な実験の後遺跡へ接続される前に救助されたようです。
ナノマシンの過剰投与で肉体的にダメージがあり、その後遺跡への情報伝達として機械から様々な情報を脳に入力され、弄られたせいで感情が高ぶると投与されたナノマシンが発光する症状が出ていました
だから恐らく、もうアキトさんの残りの命は・・・
火星:ユートピアコロニー跡地
暗闇の中に一人片足を引きずりながら崩落したユートピアコロニーのシェルターに近づく人影があった、ネルガル重工の会長、アカツキ・ナガレから貸与されていた戦艦ユーチャリスと遺伝子改造された少女ラピスを火星から月の秘密ドックに返した後、軍用シャトルに大型の追加ブースターを付けて再び火星へと戻ってきた人物である
「どうせ消えるなら、火星の皆と一緒に・・・」
侵略された火星の人々の安否と資源確認のための当時最新鋭の戦艦ナデシコを使ったスキャパレリプロジェクト、地下シェルターに避難していた火星の人々を見つけたは良いものの、敵艦隊の襲撃に遭い攻撃により崩落したシェルターだ、天河 明人(テンカワ・アキト)は最後の場所を探し求めて故郷にたどり着いた。
「やはりここでしたね、会えてよかった・・・」
瓦礫の影から立ち上がる人影、金色の瞳で自分を見つめる少女が居た
「ルリちゃん、どうしてここに…」
「会いたいからという理由だけでは駄目ですか?アキトさんを追いかけて来ました、私、乙女に成長しましたよ、どうですか?」
そう言ってその場でクルッと回転して成長した姿を見せてくれた、しかし次の瞬間引きずっていた方の足に視線が止まる
「体の方は既に足が動かせなくなっているようですね」
その一言でもう自分の身体の事がバレていると分かった、誘拐された後に救い出された後、必死のリハビリを行い日常生活程度なら何とかなるまで回復し、動きを補助出来る機械に身を纏いラピスという少女の力を借りて、ユリカを誘拐した北辰を倒した後、既にどうにもならないと知った自分は最後の時をみんなと会う事よりも消える場所を選んだがそれが見破られている
「皆は、ナデシコはどうしたんだ」
「ナデシコCは火星の後継者残党との戦いが終わった後、その能力から統合軍はともかく宇宙軍からも危険視されて凍結されました、オモイカネは何とか持ち出せましたが」
そう微笑み腰に付けたデータ端末を軽く叩く、まさかクリムゾングループが圧力をかけたのか、反ネルガル企業からすれば確かに一隻で戦局を変えられるナデシコは組織からしたら厄介な問題だが宇宙軍がそれを承認するなんて…
「バカな!話が違う…いや、結局また俺が利用されただけか…」
「そうですね、計画されたワンマンオペレーションプランはユーチャリスのデータを使い完成しました、そして実際に完成されたデータでナデシコCも作られて技術的な問題はクリアー済み、問題は操縦するオペレーターですがネルガルはラピスやハーリーくんというIFS強化体質の子を作る事が出来ました、おまけに単体でボソンジャンプ可能な兵器としてアルストロメリアも完成、全て量産可能なのでネルガル重工及び各企業としては色々知られている私は邪魔にしかなりません」
初めから緩やかに衰退していた宇宙軍を統合軍に組み込む予定で既に各企業は動いていた、今更予定を変更する事になると莫大な費用が無駄になり損失となってしまう、それに電子戦でルリちゃんにどうやっても勝てない状況でスタンドアローンによる情報封鎖をしようものなら経済が止まってしまう、火星の後継者による騒動が片付いたらナデシコが凍結されるのは宇宙軍でも初めから既定路線だったのだろう、皆自分達の地位を脅かす戦力を恐れたのだ。
「アキトさん手を出してください」色々考えていたらルリちゃんは右手を握りしめIFSの被膜を接触させるとナノマシンによる補助脳へ強引にリンクさせた
「ルリちゃん何をして!?」振りほどこうとしても、もうあまり力が入らなくなっている手は振りほどけなかった、そもそもルリちゃんからかなり強く握られて元の力があっても振りほどけそうになかったが、鈍くなっていた五感の感覚が徐々にはっきりしていく
「こうすれば駄目になった味覚も私が代わりになってラーメンが作れますね、言ってもらえたら何時でも出来ましたし喜んでやりましたよ・・・バカ」
そう言って強引にリンクし負荷がかかっているであろう制御しているナノマシンが発光してパターンが浮かび上がる
「フフッ、アキトさんとお揃いですね、あの時は無理にカッコよく振舞っていましたけど私はIFS強化体質なので能力をフルに使うと私もナノマシンが光るんですよ」
ルリちゃんが顔を近づけてくる、感情が昂っているので恐らく自分もナノマシンが発光しているだろう…ってちょっ
「ルリちゃん顔がちか…んっ!? はっ れるっ んむっ」
気づいた時には強引に大人のキスをされていた。
「んっ…はあっ…アキトさん好きです、大好きですナデシコに乗っていた頃から好きでした、でもこの気持ちが恋だって気づいた時にはもう遅くて、貴方の隣には既にユリカさんが居て…」
戦争を強制的に止めたナデシコはその後連合軍から駐留され艦から降りた時に皆で誰がルリちゃんを引き取るか争って最終的にユリカ、というかミスマル家が引き取る事になった、その後父親といざこざがあって反発したユリカはルリちゃんと一緒に俺の家に押しかけて来て喜んでいた、あれは自由になれたからじゃなく俺と居られるから…
「だから側に要られればそれで良かった、一緒にユリカさんを助ける為に来てくれと言われれば喜んでついていきました、この手を血に染めるのも構わなかった、元々ナデシコに乗っていた時にグラビティーブラストや相転移砲を発射していたのは私ですよ、余計な優しさは辛いだけなんですよ、乙女心が分からないアキトさん」
ルリちゃんの瞳から涙が流れている
「ごめんね、ルリちゃん」
そう自然と言葉が出る、女の子を泣かせてしまった
「まだ分かっていませんね、もう身体がボロボロで余り時間が残されて居ないことも分かっています…だから例えゼロに等しい確率でも可能性があるなら、私はそれに全て賭けますよ、貴方から貰ったモノのお返しに、私の全てを貴方にあげます」
繋いでいない反対側の手にボソンジャンプのキーとなるなチューリップクリスタルと呼ばれている宝石のような塊が握られているのが見えた
「ルリちゃん、まさか!?」
「今が駄目なら未来です、もしかしたらその身体を治せるくらい医療技術が発展しているかもしれませんから…」
チューリップクリスタルが輝き二人の体を光が包み込む
「駄目だ無理にこんなボソンジャンプをしたらどうなるか分からない、止めるんだ!」
自分と補助脳を無理にリンクしてA級ジャンパーである俺を介してはるか未来へ飛ぼうとしてる、だがそんな無茶な事をすれば、失敗して消えてしまう
「ふふ、キスするとこんなに元気が出るんですね、今なら何処にだって跳べそうです、もう一度、生まれ変わってあなたと会えたなら…今度は…」
クソ!、駄目だ止められない、俺はただ守りたいという一心でルリちゃんを精一杯抱きしめた
星の煌めきは人の思い
見えない宇宙の暗闇の中、目指す先を示す灯火の光
二つの願いは粒子へ分解され重なり合って未来へと託した思いは量子へと紡がれる
ファフナーが終わったので版権整理でナデシコがリメイクされないかなぁ・・・