機動戦艦ナデシコ Lily of the valley   作:勿忘草

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一話 「漢」らしく行こう

光が収まるとテンカワ・アキトは見たことがある場所に立っていた、辺りを見回して過去を思い出す

 

「ここは地球か、まさか初めて火星からボソンジャンプした後に来るなんて、いや初めてだからここに戻って来たのか…」

 

手を閉じたり開いたり体を動かして異常が無いか確認する、良かった体は問題なく治っている、そもそも体が過去の若い時だから無事なのか、いや自分の体の不調は体内にナノマシンを注入することで、脳とコンピュータをリンクさせる補助脳を形成して思考をそのままコンピューターに入力するIFS(イメージフィードバックシステム)に不具合が起きたせいだ、その不具合が同じようになってたらと危惧していたが大丈夫なようだ、そもそもあの不思議な空間でスノーフレークさんに治療して貰った後だから問題はない、しかし、過去に戻すならルリちゃんはともかく自分は最初から治療せずともよかったのではないか、もしかしてあれはどちらかと言えば治療より改造の方が目的だったのではないだろうか。

 

(やぁ、無事にたどり着いたかな?まあこれが聞けているという事は問題なく着いたという事だろう)

 

突然頭の中に声が聞こえてきた、この声はスノーフレークさんの声だ

 

(さぞ驚いている事だろう、しか~し、悪いがこれは録音データを再生しているだけで返事などは出来ない、ただ一方的に私が喋るだけだ、フフフ、私スノーフレーク、いま貴方の頭の中に居るの)

 

「そんな話聞いてないぞ!?」

 

大切な事以外は後で伝えられるから話がかなりいい加減だったのか、でもこれいつ終わるんだ、これから先もずっと頭の中で話をされると困るぞ

 

(アキトさん聞こえますか?)

 

ルリちゃんの声も頭の中に・・・返事をしたいがどうすればいいんだ

 

(IFSを使う要領で私とコミュニケーターで通話するイメージを補助脳に送って下さいそうすれば量子通信で私と会話出来るハズです。)

 

(こうかな、ルリちゃん聞こえてる?)

 

(はい、大丈夫です聞こえていますよ、アキトさんも無事なようで何よりです)

 

(良かった、あっそうだ、頭の中でスノーフレークさんの声が流れてるんだけど、どうすれば止められるか知ってる?)

 

(同じように一時停止するようにイメージすれば大丈夫なはずです、ただ最初の録音はそこまで長くないとの事だったので最後まで聞いてあげて下さい、彼女は私たちの記憶を見ているので時間と場所で色々なパターンを想定した録音を自動で流すようにしているそうです、基本的にはその場でのアドバイスを言われるので一つ一つはそこまで長い話ではないそうです)

 

(ルリルリとの相談は終わった頃かな?、望む結果を導きたいならこうやって相手の行動を読むことが大切だよ、今なら私の話を止める事は出来るが、優しい君は必死だった私を思い出して話くらいなら最後まで聞いてあげようと考えるハズさ、さて実はそこまで大した話しではないんだがアキトくんの補助脳に色々なアニメを入れておいた、その主人公が何を思って行動したのか、敵は何を考えて戦っているのかを考察した私の説明も一緒にしてあるから時間がある時に動画を見てくれ、ゲキガンガーを見る時のように再生するイメージで何時でも見れるし停止すれば何時でも続きから見れる、まあ脳内で見れる映画館みたいなものだよ、バッドエンドやビターエンドのアニメもあるが1回は最後まで見てほしい、君の思考の幅が広がるハズだ、話はこれだけだよ後はルリルリと一緒に頑張りな、今回はこれにて終了、バイバ~イ)

 

ああ、なるほどつまりゲキガンガーと同じように様々なアニメを見て今後何をするのか考えろという事か、そういえば昔にアカツキからも同じ事を言われた気がする、バッドエンドが嫌いならそれを見てどう動けばよかったか考えて対策をたてる、そういう事か

 

(今録音の再生が終わったよ、これからの事だけど一度直ぐにルリちゃんの所に向かった方がいいかな?)

 

(ありがとうございますアキトさんでも大丈夫ですよ、コックになる夢は諦める必要はありませんしそんな事させません、今は欲しい未来の為に色々やるべき事をやるべきですので私もスノーフレークさんに教えて貰った事で色々やっておかなければならない事がありますので、アキトさんは貴方の思うままに行動されて下さい。また一緒にナデシコに乗りましょうね)

 

(ああ、困ったことがあったら何時でも連絡していいからね、ひとまず俺は雪谷食堂で料理の腕を上げようと思う、いや前に教えてもらったからリハビリになるのかな)

 

(分かりました、私もナデシコが着任するまでオペレーターとして仕事があるので時間がある時にお伺いします、それではまた)

 

「ふぅ、一時はどうなるかと思ったけど、いざどうにかなりそうになると逆に落ち着くな、そうだよな、やるべき事なんて決まってる、ガイや白鳥九十九を助けて遺跡をヒサゴプランの手が届かない所まで跳ばす、考えたくは無かったけどナデシコに恐らく居たんだろうなスパイが、だからルリちゃんとだけ秘密の共有か…」

 

目覚めて短い間だったがスノーフレークさんが無理をしてでも伝えた理由が分かる、そもそもナデシコが基地から発進してミスマル提督の娘が艦長になって拿捕されるとは出来過ぎていた、あれは恐らく最初からネルガル内部にもスパイが居てそいつが情報を流していたのだろう、流石にあの時点でネルガルに敵対している企業のクリムゾングループが関与しているとは思えない

 

「今考えても仕方ないか、雪谷食堂のサイゾウさんに雇って貰えるように話に行こう」

 

俺は止めていた足を記憶にある雪谷食堂に向けて進めた

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

それから約1年後、月が木星蜥蜴に襲われ第1次月攻略戦は連合宇宙軍の完敗、ジョロやバッタと言った昆虫型小型無人兵器をいくらか破壊出来たものの、相手の戦艦が重力波を使ったバリアであるディストーションフィールドを戦艦の主砲であるビームやレーザーでは突破することが出来なかったが、第一次火星大戦からその事をある程度知っていた地球連合は地球防衛を優先的に定めており第一から第七までの防衛ラインを設立した、これによって敵の進行をある程度防げたが完全にとはならず地球では散発的な戦闘が起こっていた

 

「はい、野菜炒め定食お待ちどおさま」

 

アキトは無事に雪谷食堂に就職して、店主のサイゾウさんに指導され日々コックとして働いていた

 

「おう、最初の頃は動きが拙かったがなかなか筋がいいじゃねぇか、もう基本は覚えたから教える事はないな、後は料理と向き合っていくだけだな、今日採用担当の人が来るんだって?」

 

「はい、ありがとうございます、料理は小さい頃からやっていたので、それに火星でも店の手伝いで料理店の店長だった親戚の人に色々教わっていたんですよ」

 

あれから補助脳内に記録されていたアニメを見てスノーフレークさんの解説を聞いたり料理を習ったりでなんだかんだ忙しい日々を過ごしていた、しかし最後に見たアニメが自分を題材にしたアニメ、『機動戦艦ナデシコ』だったのは衝撃的だったな、あの時怒りで見落としていた事やもしかしてなんて存在しないが、そのもしがあったらこういう風になっていたのではないかの解説が丁寧にしてあった、どうしてスノーフレークさんは自分にここまでしてくれたのだろうか分からないがありがたい、結局逃げていても駄目だったという事だ、怯えて何もせず逃げ出しても事態は良くはならない、料理だって食材を丁寧に下準備してそれを調理してお客さんに出すまで頑張らないと完成せず食べられないのだから

 

そうして手際よくお客さんを捌いていると見覚えがあるお客さんがやってきた、来る前に連絡があったルリちゃんと隣にプロスペクターさんが居る

 

「こんにちは、席、空いていますか」

 

「ほう、ここがルリさんが来られている料理店ですか、お客さんも多くなかなか稼いでいるようで良さそうなお店ですな」

 

あれからルリちゃんは月に2~3回は店に料理を食べに来てくれていた、火星にあった遺跡のオーバーテクノロジーを使った新造戦艦ナデシコのノウハウが無い状態での立ち上げでオペレーターとして忙しい日々の中で何とか時間を作っていたようだ、ただ、そうは言ってもほぼ毎日量子通信による通話はしていて情報共有やこれからの事を色々決めていた、今回はルリちゃんの方から戦艦ナデシコに乗る人材を集めているプロスペクターさんにコックとして雇えないかと事情を伝えてくれて無茶をせずナデシコに乗る予定だ

 

「どうぞ、カウンター席二名様、空けてあります」

 

「こんにちは、わたくし、ネルガルのプロスペクターと申します、プロスとでもお呼びください、ルリさんからおおよそ話はしてあるとの事で、話より先にまずは食事から済ませてしまいましょうか」

 

そう言ってプロスさんがネルガル重工の名刺を渡して来たので受け取った、この人は変わらないなぁ。

名刺を受け取ったのを確認するとルリちゃんから注文をお願いされた、プロスさんは恐らく料理の腕を確かめてから話をするのだろう望むところだった、ルリちゃんは俺がテンカワという事を話してないのだろう下手に話してネルガルに伝わってしまう事を危惧したのかもしれない、プロスさんなら話しても大丈夫だがネルガルの場合何処から話が漏れるか分からないのだ、何せ前は社内秘が駄々洩れかのようにネルガルは襲撃を受けていた、内部にスパイが居たとしか思えない状況、そこでルリちゃんはプロスさんに美味しい料理店のコックを誘ったらOKを貰ったので雇ってほしいという辺りでお願いしたのだろう、ナデシコ食堂は女性ばかりだったので男の俺なら料理の腕に問題がなければ雇ってもらえるハズだ

 

「天津飯とチャーハン大盛りでお願いします」

 

「ふむ、では八宝菜を一つお願いしましょう」

 

「はい、天津飯一つ、チャーハン大盛り一つ、八宝菜を一つですね少々お待ちください」

 

注文を受けた俺は中華鍋を振るい料理を作っていく、慣れた手つきで捌く様子にプロスさんは目を光らせていた、若いこともあり真剣に料理の腕を吟味されている、ネルガルのボソンジャンプ技術の独占のため両親の殺害に関わってしまったテンカワに対しての負い目ではなく実力を見てくれているのはよかったと思う、色々考えながらも腕は動き料理が完成した

 

「お待ち同様です、天津飯、チャーハン、八宝菜です」

 

「いただきます」

 

ルリちゃんは黙々と料理を食べ始めた、やっぱり自分が作った料理で笑顔になってくれるのは嬉しい、だから俺はコックになろうと思ったのだ

 

「それでは私も、ハム、モグモグ、ほぉ、これは中々ですな」

 

プロスさんの舌も認めて貰えたようだ、この人はどういう経歴か分からないがネルガル重工の幹部でありその能力は確かだ、八宝菜を選んだのも多くの食材を使って作るので試すにはいい料理だからだろうか、こっちも笑顔になって見つめているとルリちゃんと目が合った、顔が赤くなっていくがそのまま食べ続けている、そういえば前もIFS強化体質のせいで大食いなので人前では恥ずかしく間食で誤魔化していた、今の自分も体内のナノマシンが増えた影響か食事の量が多くなった、しかし過去に戻ったのにナノマシンが増えているのは不思議だがスノーフレークさんは観測による事象の収束と言っていた、逆に言えばだからこそ俺とルリちゃんは過去を変える事が出来る事の証明だと、説明しても分からないだろうから体験すれば何となく分かるだろうと言っていた

 

「ごちそうさまでした」

 

「いやー、正直に申しますとお若いので腕の方はどうかと思っていましたが、これならお店も開けそうですな、それでは時間はお互い無駄に出来ない価値があるものですので早速契約のお話といきましょう」

 

良かった、どうやら認められたようだ、どの道プロスさんには多少の事は話す予定だ、もっとも前の時も特に隠すような事は無かったので正直に話をしたが、プロスさんは契約書類を取り出して確認をお願いしてきた、最後の行にある小さい文字で書かれた契約文もそのままで特に変わりはないようだ、そのまま軽く確認後、契約書にサインする

 

「おや、それはIFSのコネクターですか、パイロットだったのですか?」

 

右手に入れ墨のように出ているナノマシン接続用の皮膜コネクターが見えたのかプロスペクターさんが訪ねてきた、基本的に地球ではナノマシンが忌避されていてロボットを動かすため軍人が処置を受ける事がほとんどだ、操縦訓練をせずともイメージでロボットを動かせる為即戦力の軍隊として採用されている、火星ではテラフォーミングや開拓用の機械を動かす為に割と一般人にも浸透していたのだが地球だと勘違いされやすい

 

「いえ、俺は火星出身なので、向こうではIFS処置をしていた人は割と居たんですけど地球(ここ)では珍しいようで目立ちますね」

 

「火星出身…ですか?地球ではたしかに珍しいモノですね、では身分証明としてこちらを、少しチクッとしますよ」

 

登録されている身分証のデータをDNA解析で読み出す機械を取り出し、舌に針を刺すプロスさん

 

「貴方のお名前探しましょう♪」

 

機械から【ピピピ】という音がして解析がはじまる、少し待つと直ぐにデーターベースから検索されたデータが表示された

 

「お名前はテンカワ・アキト…ですか、出身は・・・全滅した火星のユートピアコロニーからどうやって地球へ?」

 

珍しいプロスさんの驚いた顔と共に驚愕している声で質問される

 

「それが、分からないんです、避難していた地下シェルターが木星蜥蜴に襲われて気が付いたら地球に居て、でもこんな事説明しても誰にも信じて貰えなくて」

 

恐らくテンカワという名前でボソンジャンプという可能性に気付いているかもしれない、それでもプロスさんなら…

 

「…ふむ、なるほど、分かりました、それでは書類も問題無いようですので、貴方はこれからナデシコのコックさんです、はい、美味しい食事をよろしくお願いしますよ」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします」

 

「それでは通信機であるコミュニケーターとIDケースをお渡しするので、荷物を纏められたら佐世保のネルガル施設までお越しを」

 

「アキトさん、ナデシコでお会いしましょう」

 

前より少し早い段階でナデシコに乗り込む事になった、前は無理矢理押しかけて乗り込むような形だったのでガイと相部屋だったが今回は個室を貰えるようだ、既にこうなる事が分かってたしなるべくナデシコを助けるために動くのでゲキガンガーのアニメやグッズを少々買って準備している、何かあった時に必要になるからだ、いや本当に何故かこれが平和へ繋がる可能性があるなんてあの時は思いもしなかったな、雪谷食堂を出る準備をしているとサイゾウさんがやってきた

 

「へぇ、顔つきが変わってるな、覚悟を持った目になってる、逃げるよりは良いと思うぞ」

 

「サイゾウさん今までお世話になりました、料理の手解きもありがとうございます」

 

「いいって、こんな世の中だ、美味い料理を作れるのはいくら居ても足りないからな、腹が減ってる人をちゃんと食わせて笑顔にさせられるならそれでいい」

 

そう言って手に持っていた給料を渡された

 

「今日までご苦労さん、なかなか筋が良かったからその分色を付けてある、新しい職場でも頑張りな」

 

「はい、また機会があったら料理の腕を見て下さい」

 

「ああ、それまで元気でな」

 

自転車に大き目のリュックとキャリーケース、料理道具を積み込み雪谷食堂を後にした

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「しかし、本当に改造人間みたいな体になったな、これだけの坂道を自転車で進んでるのに全然疲れないのはちょっと怖いぞ、モーターのアシスト機能もないのに軽く進める」

 

スノーフレークさんに改造された体は重い中華鍋を一日中振っても疲れないし、力も強くなった、前に思うように動かなくなった体のリハビリの為に鍛えた護身術も加減しないとそのまま相手を潰してしまいそうな勢いがあった、力が必要な理由も分かってるので感謝しているけど、俺とルリちゃんの秘密が漏れたらどの勢力からも襲われるからな、ただ燃費は悪くなっていて食事が大盛り前提でIFSを使った後は二人分は食べないとお腹が減るようになった、これなら確かにルリちゃんの食事が足りなかったのが体で分かる、彼女は特殊なIFS強化体質で前にナデシコで過ごしていた日々ではAIであるオモイカネのアップデートやシステム更新、バグのチェックなどオペレーター席に座って忙しくしていた、きっとこれはお前がお腹を空かしている時ルリちゃんも空かしているぞと言いたいのだろう

 

色々考えながら自転車を漕いでいると佐世保のドックに着いた、前は強行突破しようとして警備の人に捕まってしまったけ、自分の事ながら随分な無茶をしたな

 

「すみません、雇われたコックなのですが受付は何処ですか」

 

警備の人から見られながら質問する

 

「そこの機械にIDをかざして名前を言って下さい」

 

IDをかざすとピッっと音がした、警備の人がモニターを見つめているからそこに自分のデータが表示されているのだろう

 

「テンカワ・アキトです」

 

「はい、確認完了しました、そのまま中に進んで正面奥にある右手のエレベーターに乗って下さい、念のため確認しておきますがIDは常に身に着けて下さい、でないと機械が動かないので気を付けて」

 

「ありがとうございます、それでは失礼します」

 

正面ゲートと通ると直ぐに閉められた、ここまで警備が厳重なのにやっぱり襲撃されたのは変だな、エレベーターに乗り地下の秘密ドックまで今回は半年ほど前にスノーフレークさんが追加していたハッキング機能を使って素人の俺がある程度教わってバレない程度に集めた反ネルガル企業からネルガルに入り込んでいるスパイのデータを発信元が分からないようにしてネルガル会長であるアカツキにルリちゃんが送っている、さて、これでどうなる

 

考えているとエレベーターが到着して扉が開いた、正面すぐ横に別の警備員が立っていた、真正面に白く所々赤で塗装されている機動戦艦ナデシコがある

 

「やあ、君が連絡があった人だね、これが君が乗る事になる機動戦艦ナデシコだ、就航はまだ先だから今のうちに艦内を見学しておくといい、艦の内部図は貰ってると思うけど図で見るのと実際に見るのでは感覚が変わるからね」

 

「わぁ、大きい戦艦ですね、ありがとうございます」

 

見るのは初めてではない、だが驚かないと不自然なので形だけ驚いておく、乗艦して部屋で荷物整理しよう、今回はそこそこ荷物が多いしルリちゃんにお土産も買ってきた、料理店で会ってた頃はルリちゃんに護衛の人が付いていた手前下手に接触できなかったんだよな、ナデシコ艦内なら気兼ねなく会える

 

それから艦内を移動して用意された個室へと来た、荷物を解いて整理していると部屋がノックされた、艦長のユリカに押し入られた記憶が蘇るがユリカはまだ乗艦していないはずだ、誰だろう

 

「はーい、いま開けますよ」

 

ドアが開くとルリちゃんが居た

 

「はい、ルリです、ようやく直接話せますねアキトさん」

 

「お店では護衛の人も居たからお客さんとしてしか話せなかったからね、んー、ちょっと変かもしれないけど、ただいま?」

 

「はい、お帰りなさい」

 

そう言ってルリちゃんが抱き着いて来た、孤独を知らない時は気にならなかったけど感情が成長したまま戻ってきた彼女は寂しさに耐えられなくなっているのだろう、胸の辺りに顔を(うず)めて擦り付けていた、まるで猫みたいだ

 

「うん、じゃあ先に話をしようか、そういえば一応個室でプライベートルームだから記録は残らないと思うけど大丈夫かな?」

 

ルリちゃんが胸に埋めていた顔を離して話はじめる

 

「はい、大丈夫です、現在ナデシコのAIはオモイカネとは別のカーネルをベースにオモイカネをオーバーライドさせて偽装しています、後から改竄(かいざん)が可能ですし記録を読みだそうとしても二重に偽装された記録しか読みだせませんので何を話しても問題はありません」

 

「俺はそこまで特別な事はないんだけどね、料理が問題なく出来るようにリハビリをやって、スノーフレークさんがアレコレと解説してくるアニメを見て、戦闘訓練をやってた日々だったよ」

 

「私の方はナデシコ側のオペレーターと記録の偽装の為オモイカネと調整を行っていました、後は資金を稼ぐために、EOS(Easy Operation System)の特許登録と販売を行いました」

 

確かEOSはナノマシンを投与するIFS処理が忌避されて戦後に、クリムゾングループのロボットに搭載されていたシステムだ、IFSとは違い機械が動作を補助して動くシステムで動作の自由度は低いがそれでも戦闘は問題なく行えるレベルでの動作が可能になったことから軍に広がったシステムだったはず、それを今の段階から販売しているなんて

 

「あ、大丈夫ですよ、前のをコピーしてそのまま売っているわけではなく私が一から作り直しているため、プログラムは似てはいますが別物ですので、これでアキトさんに何かあっても私が養う事が出来るので気にしないで下さい」

 

「流石に大怪我はしないように頑張るけど、ルリちゃん…何かあった?」

 

「いえ、初めから丁寧に外堀を埋めていけとのアドバイスを貰いましたので、…質問があれば何でも聞いてください」

 

その言葉に頭を抱えてしまった、絶対スノーフレークさんだ、まさか自分とは別のアドバイスを彼女にしているとは、そういえばルリルリと呼んでいた時点で気づくべきだったのかもしれない、多分俺よりルリちゃんを気に入って色々手を貸しているのだろう、どうも伝えられている情報が違いすぎる

 

「それとスノーフレークさんに貰った設計図から製造した3隻の戦艦は既に完成しています、出力完了後にボソンジャンプとは違い次元空間相転移、一種のワームホールによる宇宙航行技術を使いワープ移動後にステルス航行で既に土星周辺まで来ているので私たちが火星に着く頃には姿を隠したまま並行して航行させる事が出来ます」

 

「ちょっと待って、3隻だって!?、俺はナデシコGという名前しか聞いてないけど」

 

「Gの名称は第7世代級の能力だからかと思いましたがゲキガンガーのGである可能性がありますね、ナデシコが(のち)に無理矢理Yユニットと合体したのを見て思いついたのかもしれません、強襲用双胴型戦艦ユーランマグノリア、及び救難救助艦ユーチャリス、機動戦艦ナデシコ、この3隻が合体してナデシコGとなっています、ナデシコはデータの関係か中身や性能はまるっきり別物ですが外観はナデシコCに似てますね」

 

ナデシコGのスペックは聞いたけどこれは聞いてない、銀河を航行出来るから最悪の事態になってもリバースエンジニアリングでボソンジャンプに頼らない宇宙開拓時代を築けるから火星にある演算装置をどうにかした後にルリちゃんに頼んでデータをばら撒いてしまえって教えられたけど、ただアイちゃんが遺跡にボソンジャンプして過去に送られるまでは遺跡の回収などやると世界が劇的に変わるほどの改変が行われるから止めておいた方がいいと言われた、俺とルリちゃんの行動は過去改変が出来る力があるので下手したらナデシコが完成せずにいきなり荒廃した世界になることもあるそうだ、イネスさんがどれだけ世界に影響を与えていたかで変わるらしい

 

「強襲と付いてるからユーランマグノリアの方は武装が多い攻撃艦なのは分かるけどユーチャリスはどういうことなんだ、あれはナデシコCを作る為の試作艦だったはずだが」

 

「はい、名前は同じですが完全に別物です、新型の相転移エンジンを4機搭載しており、事故で推進器が全て故障し宇宙を漂うしかできないような艦を救助するための艦のようです、X字に展開しそのまま救助要請した艦を挟み込む形で固定、重力制御や予備電源の伝達などを全てユーチャリス側で可能なためそのまま簡単な修理や大推力を使って故障艦ごとドックまで移動が可能な艦のようです、しかしワイドレンジのグラビティブラストなど武装はあるようですね」

 

「救助艦なのに…、本当にゲキガンガーを見て作ったんだろうな、恐らく俺たちの価値観に合った戦艦を作るために記憶にある戦艦を参考にして設計してくれたんだろうね」

 

「私もそう思います」

 

火星到着までに間に合うなら最悪の事態は防げるだろう、何もできずに逃げるだけだったあの時とは違って何かを変える事が出来るはずだ

 

「取り合えず俺はエステバリスを動かしても不自然では…流石に今の技量では無理か、言い訳が出来るように今のうちにVR訓練をしておこうと思う」

 

恐らくこれからナデシコに乗るだけではなく戦いの中で特殊兵器である人型のロボットのエステバリスに乗って戦う必要があるだろう、そもそもいくらパイロットが貴重とは言え4人はいくらなんでも少なすぎる、右手のIFSコネクターを見られる以上遅かれ早かれ臨時パイロットにはなるはずだ

 

「分かりました、私も全力でサポートしますのでこれからよろしくお願いします」

 

「ああ、改めてまたよろしくね、ルリちゃん」

 

右手を出して握手する

 

「それではオペレーター業務に戻ります、まだ出航前の各種チェックが残っていますので」

 

そう言って彼女は部屋から出て行った、うん、ルリちゃんも元気な様で良かった、この頃はまだ表情の変化が無かったような記憶があるけど今なら慣れれば表情を読める程度には変わっている、操舵手のミナトさんがいつも気遣ってくれていたが今のルリちゃんならナデシコの人達とのコミュニケーションも大丈夫だろう

 

それから俺はVR訓練所でエステバリスの操縦訓練を行ったりナデシコの食堂にて料理長のホウメイさんに挨拶したりして食堂の本格的な活動前に自動調理器による自販機での食事に飽きていた人に賄い料理を作ったりして過ごしていた

 

「ウリバタケさん、注文の弁当ここに置いておきますね、容器はいつも通り食堂に返しておいてください」

 

ウリバタケ・セイヤ、町工場を経営していたが改造屋としての腕をネルガルに買われエンジニアとしてナデシコにスカウトされた人だ、腕はかなりのもので人格がまともではないと言われているナデシコで趣味で脱線する以外では比較的にまともで整備班班長をやっている

 

「おう、テンカワか、すまんな小間使いみたいな真似させて、整備班は機械のマニュアル習得と整備のためのノウハウを学習するために早い段階で乗船していたからな、流石に秘密施設で外から出前とるわけにもいかんし自販機の食事ばかりだとどうも味気なくてな、助かるよ」

 

「いえ、どの道ナデシコの就航まで食堂は暇なんで大丈夫ですよ、流石に艦内食堂が運営を始めたら余程注文が無いときじゃないと無理ですけど」

 

「まっ、ある程度整備機材についても整備班の連中が動かし方を身につけたからな、体が動きを覚えたらこっちのもんよ、ひと段落ついたしこれからは時間が出来るから食事の時は食堂にお邪魔させてもらうぜ」

 

「はい、お待ちしてます」

 

「フフフ、それにしてもやはり男子たるものメカに興味を惹かれるか、たまに覗いていたのは知ってるぜ、見よ!この全高6mの人型機動兵器を!局地戦対応でコクピットブロックを各種あるフレームに換装することで地上だろうが空だろうが宇宙だろうが対応を可能にした汎用性!機体からジェネレーターを外したことで小型で機動性抜群!これなら木星蜥蜴の素早い動きに対応できて戦える!さらに今後の新フレームの開発とエンジニアの腕次第で無限の発展性があるのだハッハッハ!」

 

ウリバタケさんはマッドエンジニアと言われたほど機械いじりに対する情熱と愛情があるため説明に熱が入っていた、逆に言えばこれほどの情熱があるからこそ日々オモイカネに何度もアクセスして頭脳と技術力を鍛え上げナデシコを助ける数々の発明を行えたのだろう、ただナデシコのクルーだけあって色々やらかしてしまっていたが

 

「ええ、男心をくすぐられるのは否定できないですね、俺は火星出身でIFS処置を受けているので動かそうと思えば動かせますし…ってなんかマゼンタ色のロボットが動いてますけど」

 

(ルリちゃん、ガ…いや、山田がエステバリスに乗ったから危なくなったら頼むね)

 

(はい、任せて下さい、ここで負傷しなければこの後が楽になるのでこちらで対処します)

 

ルリちゃんにお願いしてガイへの対応を頼んだ、前は調子に乗って動かしたことで今は一人しか居ないパイロットが骨折という割と洒落になってない事態になったからな

 

「行くぜレッツゴー!ゲキガンガー!」

 

「なんだ、なんだ!?誰が動かしてるんだ、そもそもゲキガンガーじゃなくてエステバリスだろうが」

 

「ゲキガンガーは昔あったゲキ・ガンガー3っていうロボットアニメですね、三体のメカが合体して人型ロボットで戦うというやつでした、まあエステバリスと大きさが全然違いますけど」

 

「すみませんウリバタケ班長、なんかパイロットの人が勝手に乗って動かし始めました」

 

その間も乗ってるパイロットのガイは技名を叫びながらエステバリスを動かしている、呆れたウリバタケさんは拡声器を手に大声で話しかけた

 

「ちょっと、ちょっと、あんた何なんだよ、パイロットは三日後に乗艦だろ!」

 

「いやー本物のロボットに乗れるって聞いて、一足先に来ちまいました、それでは諸君らだけにこのダイゴウジ・ガイの必殺技をお見せしよう、必殺ゲキガン…アレ?動かなくなちまった、…まさか整備不良か!?」

 

「てめぇ、勝手に動かしておいて言うに事欠いて整備のせいにするとは、ふざけるなよ!」

 

すると空中モニターが表示されルリちゃんの顔が映る

 

「パイロットの山田さん、格納庫で暴れないで下さい、ロボットの操縦訓練ならVR訓練施設があるのでそちらでお願いします、エステバリスはこちら側で緊急停止させました」

 

「なんだこのちんちくりんの子供は!?俺の必殺技のお披露目を邪魔して」

 

「ホシノ・ルリ、機動戦艦ナデシコのオペレーターです、それと子供ではありません乙女です」

 

動かなくなったエステバリスのコックピットを開けて中にいたガイにウリバタケさんと整備班の一人が話しかけた

 

「俺たちゃ今まさに整備の邪魔をされてるんだがねぇ、というかちゃんと搭乗許可は取ってあるのか?、いくらパイロットといえど兵器である以上は勝手に乗るのは駄目なはずなんだがな」

 

「あっ、すんません、ついロボットを動かせると聞いて嬉しくて、でも手があって足もあって思い通りに動かせてスゲェよな」

 

「最新のイメージフィードバックだからさ、IFS搭載だからこのIFSさえあれば子供でも動かせるけどね」

 

「俺はパイロットのダイゴウジ・ガイだ、ガイって呼んでくれ」

 

だが心当たりが無かったのかウリバタケさんはデータを検索できる小型端末を取り出してパイロットのデータを開いた

 

「顔は同じだな、あぁ?、名前は山田二郎(やまだ じろう)ってなってるけど」

 

「それは仮の名前、ダイゴウジ・ガイは魂の名前、真実の名前なのさ」

 

「あー、ハイハイじゃあこっちもまだ進水式前の仕事があるんだからさっさと出て行ってくれ、オペレーターの子が言ってたVR訓練ならいくらでも動かしてていいからさ」

 

「クッ、まあたしかに整備を邪魔して不完全な状態で戦って負けたら戦士とは呼ばれないからな、それじゃ俺はVR施設の方に行って特訓してくるぜ!」

 

そう言ってガイはコクピットからゲキガンガーの人形を取り出し去っていった

 

「また妙なのが来たな、まっ、俺も人のことは言えないがね。せっかくだからこれを自動搬入プログラムでハンガーに戻した後にオートチェックで問題ないかの簡易チェックのテストをやるぞ、最初はマニュアルを見ながらでいいから確実にやれ!」

 

「うっす、分かりましたぁ」

 

返事と共に整備班の人は外部から手に持っている機械にケーブルを繋ぎエステバリスを元の位置に戻して作業を始めた、そろそろ木星蜥蜴の無人兵器がこのドックに攻撃を仕掛けてくる頃だが、っと思ってたら量子通信の方でルリちゃんから連絡が入った

 

(アキトさん、レーダーに敵反応あり、襲撃を防ぐことは無理だったようです、現状排除出来ていない社長派の中にネルガルに入り込んだスパイが居ると思われるので会長がどう頑張ってもナデシコの情報漏洩してしまうのは分かっていましたが)

 

ルリちゃんの辛辣な報告と共に振動が発生して艦内に警報がなり響く

 

「現在、敵機動兵器と地上軍が交戦中、ブリッジ要員は直ちに戦闘艦橋に集合、繰り返す、ブリッジ要員は(ただ)ちに戦闘艦橋に集合せよ」

 

(俺は心配だから念のためこのままエステバリスの格納庫に待機してる事にするよ、多分すぐにガイが来ると思うけど)

 

(分かりました、補助脳を使ったこの量子通信なら秘匿性も高いため、何かあれば私がブリッジからサポートします、それでは皆さん集まったみたいなので一旦通信を切ります)

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

その後すぐにブリッジにて緊急会議が始まった

 

「皆集まったな、戦闘指揮を担当しているゴートだ、現在敵の攻撃は我々の頭上にある基地に集中している」

 

ゴート・ホーリー:ネルガル重工からの出向者で、主に戦闘指揮を行う、従軍経験がありその腕を買われて抜擢された、現在ブリーフィングを執り行っている

 

「敵の目的はナデシコか」

 

「そうと分かれば反撃よ、ナデシコの対空砲を地上に向けて焼き払うのよ」

 

連合宇宙軍より乗船していたフクベ提督は敵の目的を見抜き、ムネタケ提督は敵を殲滅するための策を発言する

 

「ちょっと、それ地上の軍人さんたちも一緒に吹っ飛ばすわけ?」

 

「それって非人道的っていいません」

 

操舵士のミナトさんと通信士のメグミさんはそんな滅茶苦茶な作戦を提案したムネタケ提督に苦言を呈しています

 

「どっ、どうせ全滅してるわよ」

 

「艦長は何か意見があるかね」

 

ミスマル・ユリカ:連合大学時代では戦略シミュレーションで無敗を誇り、才色兼備の逸材とされネルガル重工にスカウトされた機動戦艦ナデシコの艦長です

 

「海底ゲートを抜けて一旦海中へ、そのあと浮上して敵を背後より殲滅します!」

 

という作戦立案がされました、まあそれしか残ってないとも言えます、後は時間との闘いですね

 

「くぅ~、そこで俺の出番さぁ!俺様のロボットが地上に出て囮となって敵を引き付ける、その間にナデシコは発進、燃えるシチュエーションだぁ!博士、ゲキガンガーの出撃準備を頼んだ!」

 

パイロットの山田さんは一人盛り上がってますね、前は足を骨折して何もできませんでしたが今回は役に立って欲しいところです

 

「博士ってなんだよ、あとゲキガンガーじゃなくてエステバリスな、既に一通りメンテナンスとチェックは既に終わらせてる、ハンガーにあるエステバリスに搭乗して格納庫から地上へ資材搬入用のエレベーターで上がってくれ」

 

ウリバタケさんはなんだかんだと言いながら仕事は出来る方なので、不満があれども適格にアドバイスをされています

 

「作戦は決まったな、では各自行動を」

 

ゴートさんがそう言うと各自持ち場に動きます、まあ私は最初からオペレーター席に座っていましたけど、それからすぐに山田さんがエステバリスに乗り込み地上へ出発しました、私はその間にドック内への注水準備を進めます

 

「エレベーター地上へ到達」

 

「よっしゃあ、行くぜ!初めての戦いだぁ、ゲキガンガー発進!」

 

山田さんが乗り込んでいるエステバリス内にウリバタケの顔が映ったウィンドウが開かれ大声で怒鳴られた

 

「バカ!?お前それ空戦フレームだろうが、今ナデシコは地下のドックに居るから遮蔽物の下だ、だから重力波ビームによるエネルギー供給は受けられない飛行しながらディストーションフィールドを張り続けたらすぐにバッテリーが無くなるぞ!あと空戦フレームは飛行のため軽量化してるから固定武装がミサイルポッドしかないぞ!コンテナ内に入ってるライフルを持っていけってちゃんと言っただろ!」

 

「通信アンテナが二本あってカッコ良かったからな、フフフ、指揮官用のアサルトピットだと書いてあったし、これを俺の専用機にする」

 

ウリバタケさんが怒鳴る横でアキトさんがため息を吐いた、ブリッジよりゴートさんから作戦内容が伝えられる

 

「作戦はナデシコ発進のため10分間時間を稼ぐこと、無理に戦わなくていいからとにかく敵を引き付けろ、健闘を祈る」

 

(アキトさん囮が役に立たなさそうなのですぐにエレベーターを戻します、準備のほうをよろしくお願いします)

 

(あいつ人の話聞かなかったからなぁ、了解、エレベーターが戻って来るのと同時にすぐに俺も地上へ出る)

 

「ウリバタケさん流石にこのままだと攻撃手段が無くてやられるかもしれないので俺がライフル持っていきます」

 

「だが敵のど真ん中に出るんだぞ、いくらIFSがあるとは言えお前コックだろ、大丈夫なのか?」

 

そこに通信ウィンドウが開いてルリちゃんの顔が映った

 

「問題ありません、私がサポートします」

 

「オペレーターの子か、分かった、それじゃすぐに準備する、『おーい、三番コンテナから予備マガジンを…』」

 

一方その頃地上では・・・

 

「うぉぉぉ、食らえぇぇ!ゲキガン・ランチャー」

 

エステバリスに搭載された誘導ミサイルが発射され数体の無人機が撃破された

 

「どうだ木星蜥蜴どもめ、今日という日から人類の反撃が始まるのだ」

 

爆煙の煙が晴れると無数の敵無人機の目のセンサーが光った、数が多いため全てを倒しきれるはずもなくすぐに囲まれ攻撃されたが空に飛んで攻撃を回避しながら防御障壁であるディストーションフィールドを張りながら無人機に突撃していく

 

「どうだ!これがゲキガンガーの力だ!…なに!?くそぉ、一気にバッテリーがなくなった、これじゃ時間稼ぎが出来んぞ」

 

ダイゴウジ・ガイは数十体の無人兵器に襲われて劣勢になり空戦フレームなのに地上を足の裏にあるローラーダッシュで走りながら敵の小型ミサイルの雨の中を避けるという事態に追い込まれていた

 

「畜生!俺の人生もここまでか」

 

「流石に数が多すぎる…ナデシコの発進はまだですか?」

 

ガイ機のコクピットにルリの顔が映ったウィンドウが開く

 

「山田さーん、もうすぐ援護のエステバリスが来るので頑張って下さい」

 

「なんだと!?パイロットは俺だけのはずだ、いったい誰が…」

 

「テンカワ機、地上へ出ます」

 

地上に出ると同時にアキトが乗ってるエステバリスがスラスターを使った跳躍から着地後直ぐにローラーダッシュを行い向かってくる最低限の敵無人機をライフルで迎撃しながら、攻撃を回避しているヤマダ機に追いつくと通信を繋いだ

 

「おーいガイ、ライフル持ってきたぞ、お前ゲキガンガー好きなら博士、いや、ウリバタケさんの話も聞けよ」

 

「お前、たしかロボットの格納庫に居たやつ、助かったぜ!いよっしゃぁ、これで形勢逆転だ」

 

その光景を外部カメラの映像を通してブリッジクルーの皆さんが見ています、ライフルを二丁持ちしたエステバリスが敵を撃破しつつヤマダ機に近づいて行き片方のライフルを渡していく、一年ほどブランクはありますが流石ですね、手際よく進んでいて明らかに素人には見えません、アキトさんはこのまま前と同じように臨時パイロットにされてしまうでしょう、前回も素人とはいえアキトさんが居なければナデシコが沈められていた場面が何回もあったのでこれは仕方ありませんね、まだ沈められるわけにはいかないですから

 

「えっ?、何あれ、パイロットはもう居ないはずじゃあ、いったい誰が…、ブリッジから通信を繋いで下さい」

 

フクベ提督の顔がアキト機コクピットの空中投影ウィンドウに表示される

 

「誰だね君は、パイロットか?」

 

「いえ、テンカワ・アキト、コックです」

 

「「「「「「コックぅぅぅ?」」」」」」」

 

ブリッジに居た皆さんはその言葉に驚いていた、いいじゃないですかコックさん、アキトさんが作る料理は美味しいですよ

 

「テンカワ…天河…、アキト、あっ!、アキトだ!懐かしい、久しぶり!私だよユリカだよ、

 

「ユリカ…ああ!火星でお隣だったユリカか!、お前そんな所で何やってるんだ、軍人だった筈だろ?」

 

「今はナデシコの艦長なんだぞ、エッヘン」

 

艦長がアキトさんに気付いて呼びかけます、火星で家がお隣だったためいわゆる幼馴染という関係ですねそしてそのユリカさんに惹かれて軍のエリートだったのにナデシコについてきたジュンさんが彼女を問い詰めています、そう言えばこの時点ではまだ彼は家が決めた許嫁でしたね

 

「ちょっと、ユリカ、彼とどんな関係なんだい」

 

「うん、アキトはね、私の王子様なの」

 

「王子様だって!?、ユリカそれってどういう事、ちょっと君テンカワと言ったな…」

 

「ちょっと待てよ、今敵と戦ってるの見てるだろ!?後にしてくれ!通信切るぞ!」

 

驚いたフリを自然と話せてますね、アキトさんの心の中ではユリカさんを守れなかった後悔が大きかったようですが、言葉に詰まるような事が無くて一安心です、なんだかんだと言い争いをやっている間に発信準備が完了しましたね

 

「ドック内注水完了、水中ゲート開きます」

 

「エンジンもOK、何時でも行けるわよ」

 

「ナデシコ直ちに発進してください」

 

「ナデシコ発進」

 

核パルスエンジンが唸り機動戦艦ナデシコが地下にある水中ゲートを進んで行く、一方その頃地上では…

 

「必殺!ガァイ!スーパー・アッパー!」

 

ガイはライフルの弾が切れたため、すぐに拳を使った格闘戦に移行していた

 

「流石に数が多すぎる、こっちも弾切れだ、予備のカートリッジはもうないぞ、仕方ないワイヤードフィスト」

 

ワイヤーでつながった腕部が重力波推進によりロケットのように飛んでいき敵を掴んだ、隣で一緒に戦っている熱血溢れる漢がそれに食いつく

 

「ゲキガンパンチか!?畜生俺も地上用で出撃しておけばよかったぜ・・・空戦フレームにも付けてもらえるように博士に頼んでみるか」

 

こっちを狙って撃たれたマイクロミサイルに掴んだ敵機を投げつけて被弾を防ぐ、ガイが逃げずに戦ってるからか想定より敵の密集度が高い

 

(アキトさん、間もなく浮上します、海までのルートを出します)

 

「ガイ!重力波ビームが届いた、ナデシコが来てる、海に向かって飛べ!」

 

「お前を置いて行けるかよ、陸戦フレームは飛べないから俺が何とかしてやる!テンカワ全力で海へ向かって跳べ!俺がキャッチする、名付けてガンガークロス・ダッシュだ」

 

背面の重力波推進を吹かして海へ向かって全力で跳んだ、だが俺の乗ってるエステバリスは陸戦フレームのため推力が足りずに徐々に高度が落ちていくがその瞬間ガイのエステバリスが腕を掴んだ

 

「よっしゃ!捕まえたぞ、いっけぇー!」

 

ガイが空戦フレームのジェットエンジンを吹かして俺のエステバリスごと空を飛んでいる、流石に重いのでスピードが落ちて無人兵器に追いつかれ始めた、だがちょうどその時、海中からナデシコが浮上してきた

 

「アキト、お待たせ~」

 

「敵残存兵器有効射程内にほとんど入ってる」

 

「目標、敵まとめてぜーんぶ、発射!」

 

「了解、グラビティブラスト、発射します」

 

戦艦の主砲から光が放たれて何十機と残っていた敵機をまとめて薙ぎ払っていった

 

「うひゃー、すげぇ」

 

「これが機動戦艦ナデシコか」

 

ナデシコの主砲グラビティブラストにより無人兵器撃破後すぐにフクベ提督より状況報告を行う指示が出た

 

「被害状況を報告」

 

「敵兵器呼称バッタ、及びジョロ残存ゼロ、地上施設の被害は甚大ですが戦死者数はゼロ」

 

そのことに手柄を上げられなかったムネタケ提督が批判する

 

「偶然よ、こんなの偶然だわ」

 

「偶然でも結果は本物だ、認めざるをえまい、よくやった艦長」

 

「えへへ、アキトはまたユリカを助けに来てくれた、ユリカ感激ぃ」

 

「いや、だから俺はコックとしてナデシコに乗ってるだけで別に助けに来たわけじゃ…」

 

「テンカワくん君はユリカの何なんだ!」

 

「だから火星で家がお隣だった関係でそれ以上の事は何も」

 

「エステバリスの動きはなかなかのモノだった、IFS処置もしているようだし軍人だったのか?」

 

「だから、そもそも俺はコックだって」

 

「キィー!!そもそもあんた勝手にエステバリスに乗ってるんじゃないわよ、誰の許可を取ったの、命令無視よ命令無視!」

 

「ナデシコは軍じゃないだろ、そもそも何の命令だ」

 

「アキトは私の事が好きだから、ピンチの時にはいつも助けてくれるの」

 

だから違うって、だぁぁぁぁぁぁぁもぉぉ人の話を聞けぇぇぇぇぇぇぇえ!

 

フフッ、そうですこれがナデシコです

 

「ホント、バカばっか」




第一話はアキトが地球に跳んでからその後のパートは1年ほど時間が経っています、冒頭の火星から月そして地球に木星蜥蜴の無人兵器が侵略して来ており、その間にナデシコの人材確保の為にプロスペクターとゴートが人集めをしていました、なので人材探しの時に無人兵器によって破壊された民家が描かれています、アキトは初めは雪谷食堂で働いていたが木星蜥蜴との戦闘が激しくなっていった地球でトラウマにより満足に料理が出来なくなっていったという流れ
つまり1話でアニメの内では1年の時が進んでいます
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