機動戦艦ナデシコ Lily of the valley 作:勿忘草
連合軍によるナデシコ拿捕事件の後、軍からの追っ手を逃れ各地で人員と資材の回収を行っているナデシコはあくまでも軍とは別のネルガル企業が保有する戦艦として火星に行くことが決まりましたが、連合軍との仲は更に悪くなり問題は山積み、特に地球への木星兵器の侵入を防いでいる核融合炉を使ったバリア衛星によるシステムを使った第一防衛ライン、地球全体を覆っているビッグバリアを突破しなければ火星に行けないというわけになっていて、この先が思いやられていた
総司令部内大会議場
「ナデシコを許す訳にはいかない、国家対国家の紛争が終わった今、地球人類は一致団結して木星蜥蜴と戦う時だ、しかしナデシコは火星に向かうという、こんな勝手を許していては地球はどうなる!」
総司令が演説していた横で慌ただしくしていた通信士がその演説を遮って報告を行った
「総司令、緊急通信が…その…ナデシコからです、サー」
「What!?」
「明けましておめでとうございまーす」
舞台正面の大型ウィンドウに振袖を着たナデシコ艦長ミスマル・ユリカの姿が映ると会議場の人々がざわめいた
『ou!kimono』「fuziyama」【kawaii】
敵対しているナデシコが堂々と連絡して来た事に啞然とした総司令は落ち着きを取り戻すと議会の進行を行う
「静粛に、んんっ、君はまず国際的なマナーを学ぶべきだな」
「あら、ご丁寧なごあいさつどうも、それでは時間も無いのでこちらからのお願いをお伝えします、これからナデシコは三時間後に地球を出たいんですけどぉ、このままだとビックバリアにナデシコがぶつかっちゃうから悪いけど一時的に開放してくれると、ユリカ感謝、感激ぃ!」
「ビッグバリアを開放しろだと?盗人に追い銭か、ふざけるな!」
「じゃあ無理矢理にでも通っちゃうもんね~」
「これでハッキリしたな、ナデシコは地球連合軍の敵だ!」
「火星に置き去りにされた人を助けに行くだけなのに?…そうですか、ではお手柔らかに」
プツンと音をたててウィンドウが閉じると怒りで額に青筋を浮かべている総司令は全軍に命令を発した
「事はもはや極東方面軍だけの問題ではない、全軍あげてナデシコを撃沈せねば秩序はない!」
そこに極東司令が待ったをかける
「しかし、あれを撃沈すれば最新鋭の戦艦を失う事にミスマル提督、貴方からもなにか」
「そうですな、総司令はまるでナデシコを火星に行かせたくないかのように見えます、既にあの最新鋭の戦艦を作ったネルガルに話は通してあり、木星トカゲに対抗可能な連合宇宙軍の戦艦を製造依頼の為、交渉中となっております・・・それにしてもとんでもない話だ」
「「「とんでもない?」」」
「我が娘ながら振袖姿に色気がありすぎる…ンフフフ、フハハハハ」
「「「「ハァ…」」」」
ミスマル提督の親バカは今に始まった事では無く極東方面軍の各提督は溜息を吐いた、その後は特に事態が変わることなく、それから直ぐにナデシコ撃沈の為、総司令部より太平洋沿岸部の連合宇宙軍へ攻撃指示が出た、各基地から戦艦および戦闘機がスクランブル発進を行い宇宙を目指すナデシコを追う
「よし、成層圏を抜ける前には補足出来るな」
「いえ、それが…纏まった軍事行動は久しぶりのため木星トカゲの無人兵器が刺激され各地でバッタなどとの激しい戦闘を開始したため各艦隊によるナデシコの追跡が困難になっています」
自らの命令で招いた結果なのだが、認められない総司令は目標達成の為に次の指示を出した
「ナデシコめ、絶対に許さん!第三防衛ラインを呼べ!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃、地球離脱のためナデシコのブリッジでは作戦会議が行われていた、進行を戦術指揮担当であるゴート・ホーリが行っている
「現在地球は7段階の防衛ラインで守られている、我々はそれを逆に一つずつ突破していかなければならない」
「とは言え、最終防衛ラインの戦闘機並びにその前段階のスクラムジェットエンジンを搭載している戦闘機の最高高度は突破、艦隊もバッタとの交戦で動けなくなっていますので事実上この三つは無力化していますから現在は地上からのミサイル攻撃、つまり第四防衛ラインを突破している最中ですな、はい」
通信士のメグミがこのブリーフィングを聞いて疑問に思った事を、隣に居る操舵士のミナトに話しかけた
「めんどくさいね、一気にビューンと宇宙まで出られないの?」
「それが出来ないんだなぁ」
その疑問に操舵士としてナデシコの特性を知るミナトは無理だと答える、そして、それを横で聞いていたルリが補足説明を行う
「説明します、地球脱出速度は秒速11.2km、そのためにはナデシコのメイン動力である相転移エンジンを臨海までもっていかないとそれだけの脱出速度は得られません、でも相転移エンジンは真空をより低位の真空と入れ替えることでエネルギーを得る機関だからより真空に近い高度じゃないと臨界点まで出力が上がらないわけです」
その話を聞いていた艦長のユリカは丁度いいとそのまま説明の続きからブリーフィングを進める
「相転移エンジンの臨界点は高度2万km、だけどその前に第三、第二防衛ラインを突破しなければいけないから『ドォン』きゃ!」
「またディストーションフィールドの出力が一時的にだが落ちたな」
「元々このナデシコは木星トカゲとの戦闘を目的としているため物理的な衝撃にはある程度のダメージがありますからねぇ、逆に言えば連合軍もミサイル防衛網を敷いているので木星トカゲにある程度の対抗出来てはいるのですが…、いやはや、これだけのミサイルがナデシコを落とそうとするためだけに使われるとなると不経済ですな」
地上からのミサイル攻撃による余波で船体が振動を受けユリカさんがコケてしまいました、その服装では踏ん張りが利かないでしょうね、あと男性陣が目のやり場に困って目を逸らしながら話しています
「艦長、振袖を着てるからですよ、着替えてこられたらどうです?」
まだ第三防衛ラインまでには時間があるのでそう提案しましたがそもそもユリカさんがこの振袖を着た目的は…
「はーい、でもその前に」
艦長がそのままブリッジから出て行ってしまいました、恐らくアキトさんの所でしょう、たしか今の時間帯は食堂に居るはずですね
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ナデシコ食堂、カウンター席の前でユリカは振袖を着たままくるりと一回転してその姿を厨房に居る男に見せていた
「ほら、アキト見て見て、振袖姿のユリカだよ」
「ハイハイ、綺麗だね、これでいいか?お前俺が仕事してるの見えてるだろう、まだ人が少ないからいいけど仕事の邪魔は止めてくれよ」
「うぅー、アキトが冷たい、でも褒めてもらえて嬉しい」
「あのなぁ…、俺だって時と場所を選べばここまで言わないぞ、これでもお前に配慮してるからな、仕込みだから余裕があって話をしてるが忙しいときに来てたら無視してたぞ、というかこんな話よりたまに艦が揺れてるけど俺やガイが迎撃に出なくて大丈夫なのか?」
「うん、地上からのミサイルはディストーションフィールドで防げるから…アキトと山田さんに出てもらうのは第三防衛ラインからだよ」
「そっか、あと30分もしたら戦闘配置か」
「うん、パイロットをお願い、ナデシコをアキトに守ってもらうからね」
「まあ頑張ってやれるだけやってみるけどな、第三防衛ラインは連合軍の機動兵器、デルフィニウムによる迎撃だったか、ガイのやつ『ロボットはやっぱりロボットとロボットの肉弾戦だ!』とか言って張り切ってたが大丈夫かなぁ」
「大丈夫、大丈夫、アキトはユリカの為に頑張ってね」
「俺はお前だけじゃなくて、この艦の皆を守るために戦うからな」
アキトとユリカが話をしていると厨房の奥から料理長のホウメイさんが姿を見せた
「おや、艦長かい、立派な着物だねぇ、いま厨房は火を入れられないからね、テンカワには雑用を任せてるよ」
「あっ、ホウメイさん、そうですねもうすぐ第二種から第一種戦闘配置に切り替わるのでよろしくお願いします」
ユリカがホウメイさんと話始めた、しかしユリカは気づいていたのだろうか、連合軍の総司令から出た「盗人に追い銭」という言葉はまるで初めからナデシコは連合軍のモノだと言う物言いに、いくら連合軍がネルガルと癒着して密接な関係とは言え作った戦艦を武力で接収するような真似はそもそも企業として商売が成り立たなくなる、だから本来はあり得ない話なのだが今まであったナデシコの出航から今に至るまで偶然では片づけられない襲撃と連合軍による騒動、これは恐らくネルガルの社長派が会長派を主流に進めているナデシコを疎ましく思い連合軍に情報を売ったのだろう、コレなら買った連合軍がナデシコが手に入らずに盗人呼ばわりするのも分かる話になる、だからナデシコはこれからもネルガル内部の派閥争いに巻き込まれる事になるのだ…
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
第三防衛ライン、宇宙ステーションさくら内ではミスマル提督とナデシコと交渉の際に置いて行かれたアオイ・ジュンが医療用ベッドに寝かされ口論していた
「やめたまえアオイくん、君は士官候補生なんだぞ」
「ナデシコを止めるのは僕の使命です!」
「ネルガルにはEOSを搭載した機動兵器の開発をお願いしてあるからIFS処置をしなくても動かせるようになる、ナノマシン処理は一度行うと二度と元に戻せないのだよ、もう一度考え直さないか、私はユリカのことはスッパリ諦めた、だから…」
「これがなければIFSを動かせません、パイロットなら誰でもやっている事です」
ジュンの決意は固い様子だが、それでも処置医はナノマシンの投与を止めようとした、これは誰でも簡単にIFSを搭載した機械を動かせるという利便性から食い詰めた者が利用して労働に使用しているという現状があり、教育を受けられない人が使うものという社会的な風潮があるためで、またナノマシンの投与が世間では忌避されているという二重の意味でIFS処置が嫌われているからという実情があった
「そうですよ、もうすぐEOS対応の兵器に置き換わっていく予定です貴方がこれを行う必要は…」
「いいからそれをかせ!」
そう言ってアオイ・ジュンはナノマシン注入用の機器を医師から奪い取り自分の首筋に押し込んだ
「くぁっ、ユリカ…」
そしてナノマシンが適応するために幻覚症状等の副作用が出る場合があるため、抑制措置を取られたジュンはそのまま眠るように目を閉じた・・・
その後、少しの時間が過ぎると総司令からナデシコの撃沈命令が入り、宇宙ステーションさくらのハンガーに格納されている第三防衛ラインの要である機動兵器デルフィニウムが戦闘態勢に入る、このデルフィニウムは連合軍の機動兵器で巨大なロケットの先端に人間の上半身を付けたようなロボットである、武装は腕のマニピュレーターを使った格闘だがメインとなる武器は下半身となっているロケットの胴体部分に搭載しているミサイル・ポッドである
そのデルフィニウムに搭乗している人物がいた、IFS処置の適応が済んだアオイ・ジュンである
「中尉、このデルフィニウムは基本思った通りに動きます、増槽も付けていますので1時間は確実に飛べます、戻ってきて下さいよ」
「ありがとう、じゃあ行ってくる、総員出撃!『目標、機動戦艦ナデシコ!』」
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ナデシコは地球から上昇を続け、第三防衛ラインに近づくと戦闘態勢が変わりエステバリス隊の発進準備が始まる、山田…ダイゴウジ・ガイは待っていましたとばかりに一番初めに発進準備を進めていった
「いよっしゃー、行くぜーオラオラオラァ、ゲキガンガー発進準備!、夢が明日を呼んでいる~♪」
そこに整備班であり管制官も兼任しているウリバタケと戦術指揮を担当しているゴートからの通信が同時に入った
「いいか、ナデシコは地球圏から脱出してないからエンジンが臨界に達していない、何度も言うようだが今はエンジンの出力が低いから仕様上の交戦距離の半分しか送信範囲になってないからな、ナデシコから離れすぎると重力波ビームが届かなくなるから最低限の距離を保って戦えよ、ビームが届かない範囲でそのまま動かすと直ぐに動かなくなっちまうぞ、って聞いてんのかオイ!」
「通信状況は最悪だが通信機の出力は最大にまで上げておけ、お互いの通信を中継する事である程度の通信環境を改善できるハズだ、またパイロット同士なら問題なく通信が可能だろう、では健闘を祈る」
ゲキガンガーを歌いながら勝手に発進シークエンスを進めていくガイ
「おーい、博士、研究所の扉を開けてくれ」
「ちょっと待てよガイ、お前武器はどうした、空戦フレームは少量のミサイルしか積んでないってウリバタケさんからあれほど言われただろ」
「大丈夫だ!作戦がある!よく見ておけよ俺様が活躍するシーンを、行くぜレッツ!ゲキガイン!」
ウリバタケさんが管制官室からこちらを呆れて見ていたが、山田機はさっさと重力カタパルトで射出されて出て行ってしまった、カタパルトのハッチ解放後に発進タイミングをエステバリス側に移行していた事で特に止められることなく行ってしまったのだっだ
「俺は臨時パイロットの筈なのになぁ、ウリバタケさん今回もラピットライフル二丁で出ます」
「ああ、一応山田の機体にも予備の
床が自動で移動して重力カタパルトへエステバリスが移動されていくと後部にあるエアーハッチが閉まり射出用のロックが解除された、発進可能のなったのでIFSからカタパルトの制御を操作する
「テンカワ機、エステバリス出ます」
ナデシコから重力カタパルトで機体が射出され宇宙を漂う、地球はまだ足元に大きく見えていた・・・
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ナデシコのブリッジ内では第三防衛ラインから射出されたデルフィニウム部隊をレーダーが捉えていた
「第三防衛ラインよりデルフィニウム10機接近中、プラス60°距離1万2000」
「相転移エンジンの臨界ポイントまで後どれくらいですか?」
「あと、1万9750kmです」
「艦長、どうしますか?」
「行きましょう」
ブリッジと通信が繋がっていたガイがその言葉を聞いてやる気を見せる
「そう来なくっちゃな、ヒーローの戦い方たっぷり見せてやるぜ!どおりゃーーーー!」
デルフィニウム部隊に向かって加速していく山田機
「各機、オープン・ファイヤー敵の機動兵器は撃ち落として構わない」
それに向かってジュンの指示によりデルフィニウムに搭載されたミサイルが発射されるが急速制動をかけ垂直方向に加速して避ける、ナデシコのクルーは性格に難はあれど技量は一流を揃えていると言われているのは伊達ではない
「いよっしゃー回避成功!そして相手は付いて来てるな、今だウリバタケ、スペースガンガー重武装タイプを射出しろ!」
だがミサイルの一部はそのままナデシコに向かっていく、ナデシコの強力な重力波によるディストーションフィールドはその程度では破れないが爆発の衝撃は伝わり、また流石に大量の攻撃を受けると負荷によりフィールドが消失するため、無視するのは得策ではない
「ガイ、ナデシコにはディストーションフィールドがあるけどもうちょっと考えろよな」
テンカワ機はそのままナデシコとミサイルの間に入り、向かってくるミサイルをライフルで撃ち落としていった
その頃ガイからの指示を管制室で受け取っていたウリバタケとスタッフの間では山田の意図が分からず何も動いていなかった
「山田さんなんか言ってますよ」
「ほっとけ、ほっとけ人の話聞きゃしないんだからよ」
「スペースなんたらは分かりませんがB-1の重武装タイプの事じゃないですか?」
素直にそう言えば良かったのだが、ゲキガンガーバカのダイゴウジ・ガイには譲れなかったのだろう、しばらくのやり取りをした後に我が意を得たりと騒ぐ
「そう、それだぁ!」
「ったく、分かったよ、そっちに向かって落とすからしっかり受け取れよ」
それから嫌々ながらも、仕事はしっかりとこなすタイプのウリバタケは重武装タイプのフレームをカタパルトに乗せて管制室から制御を行い山田機の方向に向けて射出した
「そーら、そっちに向かって打ち出したぞ後はそっちで何とかしろよ」
こちらに向かってスペースガンガー重武装タイプが射出されたこと確認したガイがコクピットでほほ笑む
「ンフフフ、これこそ必殺の作戦、ガンガークロスオペレーション、敵は俺が武器を持っていないと思い込んでいる、そこで射出されたスペースガンガー重武装と空中で合体、そして一気に敵を殲滅だ!」
そして射出された重武装タイプのフレームは合体どころか山田機に近づく前にあっけなくデルフィニウムのミサイルに撃ち落された
「なにーーー!?」
重武装フレームの爆発を確認したブリッジから山田機に通信が入る
「あのーもしかして作戦失敗ですか?」
「突出してたらデルフィニウム部隊の方が先に接触するので当たり前じゃないですか、なんでテンカワさんに援護を頼まなかったんです?」
「パイロットの人命優先ではありますが、エステバリスと言えど安くはありませんからなぁ、フレームを使い捨てにする戦法は経済的にはハイリスク、ローリターンとなりあまり流行って欲しくない戦法ですな、ハイ」
散々な言われようだが仕方ない、ガイは今回、自分が活躍する為になるべくアキトに頼らず戦っていたため実質1VS10の戦いをしているようなものだからだ、それでもテンカワ機とナデシコに4機が攻撃を仕掛けているため負担は減っている
「なんの!根性でなんとかする、ガイ!スーパーアッパー!」
そして反転した山田機が格闘戦に移るとデルフィニウムを一機撃破した、なお爆発の瞬間デルフィニウムのコクピットブロックはオートで緊急射出されるためパイロットは無事である
「見ろ!何とかなっただろ、ダーハハハ、このまま行くぜ!ってあれ?」
オペレーターのルリちゃんからブリッジとテンカワ機に報告が入る
「山田機完全に囲まれました、ナデシコから離れ過ぎているため重力波ビームを受けられず動けなくなっています」
それを聞いたアキトは直ぐにスラスターを噴射してナデシコの重力波ビームが届くギリギリまで前進した
「もぉ、しょうがないなぁ」
右手のライフルでナデシコに撃たれたミサイルを迎撃しつつ、もう片方のライフルで山田機を囲んでいるデルフィニウム部隊のブースターを狙い撃ち撃破していく、二機目を撃墜した時一機のデルフィニウムより通信が入る
「僕と戦え!テンカワ・アキト、そうすればデルフィニウム部隊は撤退させる」
「え?ジュンくん、何でデルフィニウムに乗ってるの?」
置いていった張本人であるユリカが分かっていなかった
「君の行動は契約違反だ」
ゴートは冷静にまだネルガルとの契約は生きているとの旨を話す、厳つい顔の彼に似合わないが彼なりにクルーを気に掛けており、それは遠回しではあるがまだナデシコに戻ることが出来るという大人の話であった
「あのなぁ、何で俺がお前と戦わなくちゃいけないんだ、この前まで仲間だったし戦う理由がないぞ」
「ユリカの為だ!このままナデシコが地球から離脱すれば彼女の居場所が無くなる、さぁ、一対一で勝負しろ!」
「じゃあ俺が勝ったらお前はナデシコに戻れよな、そっちが条件を出すならこっちも条件も受け入れろよ」
「っく、いいだろう、勝負だ」
アオイは地球でのユリカの幼馴染だったから変な幻想を見ているんじゃないだかろうか、連合軍に居場所が無くなったからってユリカはそこで止まるような女じゃないぞ
「そうか、じゃあいくぞ」
ライフルを背中のウェポンラックに仕舞って、拳を構えて一気に突っ込んでいく、機体が交差する瞬間、突き出している右手ではなく左手側の拳で上半身と下半身の接続部に抜き打ちを繰りだした
「なに!?早い!」
自動で脱出装置が作動しコクピットブロックが射出されたため追いかけて捕まえる
「はい、これで終わりだな、デルフィニウム部隊を撤退させてくれ、あとお前はナデシコに戻るぞ、それでいいかガイ」
「男の勝負に水を差しちゃ男が廃るからな、俺もナデシコに戻るぜ」
この戦いの間に上昇して来て高度が上がったナデシコの相転移エンジンが臨界に達し、エンジンの出力が100%に上がった
「ディストーションフィールド出力安定、第二防衛ラインよりミサイル衛星による高高度ミサイル攻撃がありますが今の安定しているフィールド出力なら十分防げます」
「このまま最大戦速で第一防衛ラインを突破します、エステバリス隊とジュン君を回収後最大船速」
「了解、出力最大を維持しつつ進路そのまま」
そして今回の為にハッキングを行い入手したとあるコードを使い以前とは違う結果を掴む為に動く人物がいた
(それではこれから第一防衛ラインの緊急停止信号を流して一時的にビッグバリアを停止させます、これで連合軍内部と地球に住む人達からのナデシコに対する敵意はかなり抑えられる筈です)
(頼んだよルリちゃん)
「そのままビッグバリアに突撃してください、壊しちゃって構いません」
「了解、後250秒でビッグバリアに突入よ」
その頃、総司令部では
「バリア突破を許すな!、核融合炉が壊れても構わん、最大出力でバリアを張れ」
「これは!?、総司令、緊急停止コードが入力されました!、ビッグバリア緊急停止します!」
「ふざけるな!誰がやった!?直ぐに再起動しろ、ナデシコを火星へ行かせるな!」
「緊急停止の為、システムをリブートする必要があります、再起動に10分必要な為、間に合いません!」
「クソッ、これでは連合軍の秩序が…」
と司令部の現場では混乱していたが、そこは知らぬ存ぜぬとルリはナデシコのブリッジで報告を上げる
「艦長、ビッグバリアが一時的に解除されました、このまま抜けられます」
「やったー、あの司令官の人にユリカの話が通じたのね、念のためディストーションフィールドはそのままでバリア衛星区間を抜けて下さい」
「おや?、話は通して無かったと思いましたが都合はいいですな」
そして解除されたビッグバリアを無事に通過したその頃、エステバリス格納庫ではテンカワ機と山田機、そしてアオイ・ジュンを乗せたデリフィニウムの脱出装置である人型部分が収容されていた
「僕は連合軍が地球を守る正義をなせる場所だと思っていた、だからユリカを守る為に…」
「そんな事まだ分かんないだろ?、ユリカの隣のナイト役はまだ空いてるんだぜ、連合軍なら出来ない事でもナデシコなら自由に出来るさ、それにナデシコの人達はいい人ばかりだぞ」
「何を言っている俺は生まれた時から正義だぜ、つまり俺が居る場所が正義って事だ、フッフン、今回は六機も敵機を落としたからな、俺様の活躍がナデシコを救ったと言ってもいいだろう、後で機体に撃墜数と同じ数のゲキガンシール貼っておかないとな」
「な、自由だろ?」
「ナデシコなら…っか」
「ユリカの為を思うなら後から連合軍に戻るにしても一度はナデシコに居た方がいいぞ、あいつ火星の頃から事故を起こしても怒られなかったからな、ナデシコの艦長をやってる今の方が自由なんだよ、連合軍だと周りが気を使って失敗なんて無い事にされてるからな、お前も幼馴染なら気が付いたことあるだろ」
「そうか、だからユリカが『自分のまま居られる場所』だって…」
「ユリカは名誉や誇りとか関係ないからな、あいつにとって連合軍があまり魅力的じゃないんだよ、火星の頃はあんな感じだったけど地球では違ったんだろうな」
それからいくつか火星にいた頃のユリカの話をジュンに話すと三人でエステバリスの格納庫からブリッジへ移動していった、戻ってきたアオイ・ジュンと話し合いナデシコに復帰する事で話が進んでいた
ルリ:「というわけで」
プロスペクター:「あのまま壊してしまえば経済的に無駄な損失になりますからな、連合軍にも分かっておられる方がおられて大変結構な事です、最優先で生産している防衛設備とは言え、修理費用もバカになりませんからな実に合理的な判断です、ハイ」
「ユリカ、ごめん」
「謝ることなんて無いよ、ジュン君は友達として私の事心配してくれたんでしょ、ね?、ありがとうアキト、私の友達を助けてくれて」
「そりゃ仲間だから助けるけど、ってちょっとまて、ジュンはお前の許嫁って話じゃ無かったか?」
「えぇ?お父様が許嫁って言ってただけで私はジュン君を友達だと思ってるよ、これからもよろしくね、ジュン君」
「ユリカぁ…」
「まぁまぁ、取り合えず生きてればいいこともあるって、あと頼むから俺より目立つ死に方するなよな」
何はともあれ、これからこのメンバーで火星を目指すことになる
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
地球を離脱してしばらく時間が経った後、ナデシコはパイロットの補充と宇宙用のエステバリスである0Gフレームを受け取りに、資源採掘用に掘られた岩塊を利用して作られたコロニー、サツキミドリ二号へ向けて進んでいく
その後ナデシコでは第一種戦闘配置が解除され、通常運行に戻り穏やかな日々を過ごしていた
アキトの部屋ではいつものようにルリちゃんが来て食堂での仕事を終えたアキトと話していた
「オモイカネのデータがあるおかげで昔行っていた新しく必要になるプログラム作成や出来たプログラムのバグチェックなど、そこそこ忙しかったナデシコでの私の業務はかなり楽になり自由な時間が増えました、おかげでアキトさんと色々な事を話せます」
ムフーと鼻息を出して喜んでいる
「でも大丈夫なの?、ここ最近俺の部屋に居ることが多い気がするけど」
「駄目……ですか?」
「いや、全然駄目じゃないよ、ルリちゃんが問題なければそれでいい、好きなように居てくれて構わないよ」
心配しただけなんだが言葉を選ばないといけないな、そんな悲しそうな表情をされると悪いことをしているような気になってしまう、そう言えばラピスも一緒について来るのを止めた時に同じ顔をしていたような…
「はい、ありがとうございます、それと今日は大切な話をしに来ました、今向かっているサツキミドリ二号が木星トカゲの襲撃により破壊された件です、あの事件は不可解な点が多く調べていましたが、近くにチューリップが無く木星の無人機が月を奪取しているいま、L2のコロニーなど襲っても戦略的にも意味がないはずです、しかしナデシコと接触する直前に破壊された、あの時私は周辺を監視していましたが特に異常は見当たりませんでした」
「そうか、そうだよな、ナデシコからの最大望遠で見えていたのにレーダーに何も反応が無かったという事はやっぱり…」
ルリちゃんも頷いて俺の考えに同意する
「はい、サツキミドリ二号は内部から破壊されました」
アニメだとデルフィニウムは9機と言ってるのにレーダーだと10機確認できるので恐らくジュンくんが乗ってるデルフィニウムが忘れられています、悲しいなぁ…
火星までほぼ焼き直しのような内容になってしまう問題…