機動戦艦ナデシコ Lily of the valley 作:勿忘草
ルリちゃんとの話し合いでこれから向かうコロニー、サツキミドリ二号は内側から破壊されたと推察した、だがこの考察が当たっているとするなら、ナデシコが早くたどり着いても、到着前にエステバリスで出撃したとしても何も出来ずにコロニーが爆破される可能性がある
「あの時コロニーが襲撃された際に見つかったのは小型のバッタ、コバッタのみでした、そして補給予定だった0Gフレームのアサルトピットのコンピューターを乗っ取り戦闘になりましたが、小型と言ってもそれなりのサイズはありますのでナデシコ側からでも十分レーダーに反応する大きさです、あの時はサツキミドリの方でもナデシコを探知出来ていたため、レーダーの故障という事も考えられず、サツキミドリがその襲撃に気が付かなかったのは不自然です」
「やっぱりそうか、あの時俺はガイが死んで塞ぎこんでいたから気がつかなかったけど状況証拠だけ見ても不自然だった、そもそも月面を制圧した後で、L2のラグランジュ点、地球の裏側にあるコロニーに攻撃する理由が見当たらない、地球人類を根絶やしにするなら考えられなくもないが、そういう事では無かったからね」
「今の時点で既にネルガル内でも相手が相転移エンジンを乗せた戦艦であることは判明しています、ナデシコ単機での火星奪還はほぼ不可能だと分かっているためこの第一次スキャパレリプロジェクトの目的はイネスさん及び火星の人達の救出によるネルガルの連合軍に対するアドバンテージ確保のため、また、火星に残されている資材やデータの回収が主な目的と考えられます、既にナデシコの威力を見た連合軍はすぐにネルガルへ相転移エンジンを搭載した戦艦の発注をかけていましたので軍との関係改善は既定路線だったのでしょう」
「つまり今回起きる事件は、ネルガル内での派閥争いの可能性が高くてナデシコの火星行きを止めるために情報を売った可能性があると…」
今更ながら昔から陰謀渦巻く真っ只中に居たんだな俺とナデシコのクルーは
「はい、恐そらくそれがクリムゾングループに伝わって今回の一件が仕掛けられたのだと思われます、そこで今回は私がサツキミドリ二号にハッキングを仕掛けて中に搬入されていると思われるコバッタを停止させます」
推測でしか無いが当たっていればエステバリスで駆けつけても被害を抑える事が出来るだけで防ぐ事が出来ないということか、なら今回は何かあっても直ぐに出撃出来るように待機しつつルリちゃんに頼むしかない
「ああ、頼んだよルリちゃん」
だがその言葉に納得がいかなかったのかルリちゃんが眉をひそめて抗議の声を上げた
「他人行儀なお願いですね、ラピスという子には仲良く、相棒のように振舞っていたように見えましたが私には言ってくれないんですか…」
未来での出来事であるが確かに俺は火星の後継者と戦いの為に電子戦と援護をラピスに任せてはいたのだがそれには理由があったのだ、何か誤解されている気がする
「えっ、いやラピスはネルガルの研究所から奴らに誘拐されてね、俺が救助してから鈍くなっていた五感を機械で補っていたのをサポートしてくれていたんだ、あと彼女はルリちゃんより感情の起伏が少なくてね俺が言った事に素直に従ってくれていたから、それにラピスちゃんって言うと反応してくれなかったから呼び捨てにするしかなくてね」
「その手がありましたか…いえ、私には無理ですね、なるほど一気に距離は近づけますがそれ以上は…んんっ、失礼しました、でしたら私からお願いがあります」
「大抵の事は大丈夫だけど何だい?」
「今回サツキミドリニ号の問題を無事に解決出来たらナデシコは物資の搬入及び実稼働のデータ収集及び転送のため数日の間サツキミドリ二号に停泊する事になります、そこでアキトさんとコロニー内でのデートのお願いです」
「デ、デート!?…あっいやデートは構わないんだけど俺はサツキミドリの事何も知らないから案内出来ないしつまらないと思うけど…」
「大丈夫ですよ分かっていますから、デートとは言いましたが一緒に商店街をあちこち散策して買い物や一緒にお店を見て回るだけですので、二人っきりで街に遊びに行くようなものです」
「あっ、それなら問題ないよ、よろしくねルリちゃん」
良かった、前はユリカとも出掛けたりしたが結局二人で同じように街中を散策したりしていたため意識してのデートというものが無かった、そもそも前はルリちゃんを連れてミスマル家を家出して来たユリカと三人だったからそういう機会がほぼ無かったとも言えるが
「はい、それとどの道ユリカさんはネルガルへの報告書のまとめで忙しくなる為、残念ですがナデシコの艦内からは出られないと思います」
「そっか、あいつ毎日のように食堂で話してたからなぁ、いや食事の為に確かに毎日食べに来るのは普通なんだけどね」
「そうですね、まあそのせいか分かりませんが艦長からの書類提出が滞ているためネルガルから正式に今までの報告書を纏めて提出するようにと業務命令がでました、恐らくジュンさんと一緒にナデシコに缶詰めになると思います」
「ユリカの事だから投げ出して付いてきそうだけどそういう事なら止めるか、流石に仕事を放りだすのは艦長として不味いだろう」
「言質を取りました、そうですね、ではお休みなさい、今日はいい夢が見れそうです」
こうしてルリは日常のようにアキトの部屋で会話をして一緒に寝て朝方には自室に戻るという生活を続けていた
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ナデシコの火星行きは決まったものの、まだ宇宙に出て間もなく戦闘も無かった為、戦争中とは言えナデシコの艦内ではのんびりとした生活の日々が続いていた、アキトが働いている食堂では…
「いやー仕事中は格納庫でいつも缶コーヒー飲んでたけどやっぱり食堂で飲む方が美味いな、ホウメイさんコーヒーのお替りお願いね」
「あいよ、豆には自信があるし最新のコーヒーメーカーもあるからね、缶コーヒーにゃ負けないよ、おや、何を見てるんだい?」
ウリバタケが席に座ってコーヒーを飲みながら手に持っている小型端末を弄って様々なデータを表示していた
「これ?、今度サツキミドリで受け取るエステバリスの0G戦フレームの仕様書さ、これだけでエンジニアにとってはたまらんものだ、パイロットも3人補充されるからこれからは出撃の度に俺ら整備班も忙しくなるぜ、重力波推進で機動して、その分の増大した電力消費は大型の重力波エネルギー受信アンテナによって解消するという力押しではあるが問題点を解決している、バッテリーも積んでるがこりゃナデシコからの重力波ビーム圏外に出た時の保険だな、くぅ~これだけでもメカニックにとっては涎が出るような一品だからな、何日も読んでいられるぜ」
「へぇ、今度来るパイロットはどんな奴なんだろうね」
「さてな、整備班長である俺にもその辺は伝えられてないからな、整備マニュアルも最低限で今ようやく宇宙用の0Gフレームの仕様書を受け取ったくらいだからな、その辺秘密主義のネルガルらしく制限かけてあるようだぜ、…しかし艦長はまた来てるのか」
「そうさね、ああやって料理しているテンカワを暇さえあれば見てるよ」
厨房で鍋を振って炒め物を作っているとまたユリカが俺を見に来ていた、今更ながらこれでよく艦長を務められたなとは思う、戦術は確かに凄かったが…いや大分俺頼りな部分も多かった気がするけど
「ユリカぁ、お前艦長としての仕事はいいのか?食堂なんだから飲み物以外にも何か頼めばいいのに」
「うん、大丈夫大丈夫、それにもうすぐ向かっているコロニーに着くから」
「そっか、そうだ、せっかくだから俺もデザートに手を出すか、料理は問題ないけどデザート系はあまり手を付けてなかったからな、暇な時にサユリさん達に教わろう」
前はホウメイさんに言われて作ったがそれが原因で騒動が起きたりしてたな、あれは結局誰だったのだろうか謎のままだったな
「え?ユリカの為にデザート作ってくれるの?、ユリカが甘いもの好きなの知ってて、やっぱりアキトは私の事が好きなんだね」
「いや、それお前が好きなケーキ作ってるフタバ屋のコックも好きって事になるだろう、そもそも女の子って基本的に甘いものが好きで嫌いな子はあまり聞かないぞ」
言い争いになろうとしたその時、空中ウィンドウが開き通信士のメグミが表示された
「艦長、間もなくL2のコロニー、サツキミドリ二号に到着します、至急ブリッジまでお戻りください」
「はーい、直ぐに戻ります、それじゃあまたねアキト!」
いつものんびりしていたユリカは急いで仕事場に戻って行った、今回の事件はルリちゃんに全面的に頼っているけど大丈夫だろうか、まあ彼女のハッキング能力なら心配する必要は無いが今のナデシコは彼女に最適化されてない状態だからなぁ、かといって今回の電子戦では下手に動くと素人の俺は邪魔にしかならないので成功するように祈るくらいしか出来ないのが現状だ
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「お待たせしました!それではサツキミドリ二号が確認できたらディストーションフィールド解除、ナデシコの受け入れ申請をメグミさんお願いします」
「了解しました」
「距離残り三万二千、約5分後にコロニー見えます、同時に通信可能となります」
艦長のユリカがブリッジへ戻り、サツキミドリ二号がまだナデシコの最大望遠では見えないが通信がギリギリ届く範囲に入った時にルリは動いた
「いくよ、オモイカネ」
IFS端末に乗せた右手にナノマシンで出来たコネクターが光りサツキミドリへのハッキングが開始され、小さなウィンドウが無数にルリの前に表示され流れていく
(見つけた、搬入済コンテナ224、250、266に各五機、合計15機のコバッタを確認、時限式の起動による奇襲作戦のようですね、敵コンピューターを抑えます、7機クリアー、アルゴリズム解析完了残り8機のタイマー停止後全てのデータコピー後に初期化開始・・・完了です)
大変よくできました 流石ですルリさん 思兼
小さなウィンドウでオモイカネが短時間で全てを制圧したルリを褒めている
「まあ初めから分かっていた事ですが」
スノーフレークさんに最適化やフィードバック、及び様々な機能追加をしてもらっているため速度も向上して今のナデシコでもこのくらい朝飯前になっています、アキトさんは私が比較対象なので今一分かっていないようですが地球でやっていた反ネルガル企業へのパスワードのハッキングからデータ閲覧及びコピーまで単独でこなすというのは既にIFS強化体質並みの能力です、普通はオモイカネのようなAIの補助があって初めて出来る芸当ですが相手に気付かれずにそれが出来るというのはそれだけで技術があります、っとそろそろサツキミドリ二号の通信範囲に入りますね
「最大望遠でサツキミドリ二号のコロニーが見えました、メグミさん通信エリアに入りましたのでいつでもこちらから通信可能です」
「ディストーションフィールド解除、ナデシコ停泊準備」
「こちらは機動戦艦ナデシコ、サツキミドリ二号、聞こえますか?」
「サツキミドリ二号より通信良好、識別ビーコン受信、機動戦艦ナデシコ確認しました・・・いやー可愛い声だねぇ」
「これより停泊します、準備のほうは」
「OK、OK、任せといて誘導ビーム起動確認、牽引システム通信確認、後は自動でドックに収容後にナデシコが固定用アームに接続されるからそれまで待っててね」
「誘導ビーム確認しました、自動牽引システム起動」
「へぇー全自動なんだ、操舵士としては楽チンでいいわね」
「牽引終了まで後
そのままオモイカネのサポートもありナデシコは自動でサツキミドリの戦艦ドックへと収容されていく
「ドックへの収容確認、固定用アーム接続されました、アームのロック確認、ナデシコ停泊完了しました」
「ではパイロット及び0G戦フレームと各種物資の受領と搬出お願いします」
「了解、地球から積んできた機材コンテナ搬出後、各種物資の受け渡しを開始します」
「艦長、ネルガルから宇宙でのナデシコの運用データをレポートと一緒に提出するように要請が来ています、データは既に纏めて」
「分かりました、物資の受け渡しの為ナデシコはサツキミドリ二号に三日停泊します、各班はローテーションでシフトを組んで1日コロニーでの休憩を許可します、ナデシコはこれから火星へ一直線で向かうので買い忘れなどがあれば乗組員の方はここで済ませておいて下さい」
「了解、各班のシフトは既に組みましたので参考にしてください、オモイカネに申請すれば自動でローテーションを組んで貰えます」
ウィンドウに各班のローテーションが見られる、重要なブリッジ要因である操舵士と艦長、オペレーターであるルリはナデシコの運用データーの為一日目は業務になり二日目が休みであった、
「へぇー、準備万端だね」
「ここが最後の補給地点なので、宇宙に出てからはナデシコ内の一般的な備品しか無いですからね、地球を離脱する際に色々ありましたから先に作っておきました」
コロニー用に地球から運んできた物資の搬出が済むと搬入に入ります、リストに細工をして機能停止させたコバッタが入れられている搬送コンテナも搬入リストに入れておきました、後でウリバタケさんに相談しましょう、あの人はこういう事に聡い方なのでエステバリスの新規設計図と一緒に渡せば思うところはあるでしょうがそれよりも改造や開発に熱中されるでしょうから
その後受領予定だった0G戦フレームと3名のパイロットがエステバリス格納庫へと機体が歩いて搬入されていると艦長のミスマル・ユリカ以下ゴートやプロスペクター等、就任挨拶の為に集合していた
「エステバリスにも色々なカラーがあるんですね、カラフルだなぁ」
「まあ新素材で硬いとは言え基本的には樹脂だからな、比較的簡単に塗装出来る、それにコクピットのアサルトピットは搭乗パイロットに最適化されていくから試運転程度ならともかく長く乗っているパイロットだと動きが変わるからな、整備班としても色分けしてあった方が指示しやすいし機体を間違えるミスが減ってメンテナンス作業はやりやすい、新規搬入分の二機の0G戦フレームは下地の灰色だからな後で塗装作業がある」
そうこう話していると格納場所へと搬入が終わったエステバリスのコクピットから昇降機へ乗り移る人影が出てきた
「おっ、パイロットが降りてくるぞ」
「ん?まさか」
「「「新入パイロット達が全員女性だと!?」」」
首のスイッチを押して宇宙用パイロットスーツのヘルメットが脱がれると3名のパイロットは全員女性であることが確認できた
「は~い、皆さん私がナデシコ艦長ミスマル・ユリカです、ぶい!」
「「「ぶい!?」」」
「ったく、訓練が終わったらいきなり乗船だし艦長はこんなんかよ、手続き済んだら風呂と飯に行くぞ」
「えっ?あのぉ…皆さんの自己紹介をお願いしたいんですけど」
「あ?私の名前はスバル・リョーコ、パイロットだ以上、戦艦に露天風呂があるって聞いてたんだけど何処だ?あと飯だな腹減ったし食堂行くか」
「どーも!私もパイロットのアマノ・ヒカル、蛇使い座のB型18歳、好きなものはピザの端っこの硬いところとちょっとしけったお煎餅で~す」
「マキ・イズミ、パイロットで貴重な出会い・・・撫で合いだから・・・フッフフ、アッハッハッハ」
ナデシコは民間の戦艦という事で個性的な民間人が集まっていたが、流石にこれには艦長のユリカも引きつった笑みで思考停止するしか出来なかった
「へっ…えへへ」
だが元軍人で訓練を受けた経験からゴトーはクルーが困惑している中でも冷静にタスクを消化していく
「艦内の案内図はコミュニケに入っているので各自確認を、道順に迷ったら管理AIに尋ねれば案内される、基本的に区画の中心にエレベータが在るのでそこまでの道が分かれば一度戻ってエレベーターから目的地に案内してもらえばたどり着けるハズだ、ナデシコはこのまま休暇を取り各人の個人的な備品購入の為などで二日間停泊後に三日目に発進予定だ、他に何か質問は?」
「あー、何人かコロニーに入っていたのはそれか、いやある程度の教育は受けてるから問題ねぇよ、じゃ俺は風呂入ってくるぜ」
「私は部屋に運ばれてる荷物を荷解きしようかな~多分大丈夫なハズ」
「部屋にこもって弾き子守り、引きこもり・・・フフフ」
そう言ってリョーコ達パイロットはさっさと格納庫から出て行った
「相変わらずナデシコのクルーは濃い連中が多いなぁ、まっ俺も人のことは言えんがな、ほらお前らボーっとしてないで仕事だ!搬入された二機の0G戦フレームはさっさと塗装終わらせるぞ、今日中に終わらせれば明日ゆっくり出来るからな、分かってんだろうな!」
整備班長のウリバタケによる掛け声で整備班がドタバタと動き始めた
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その後、パイロット3人は各々の雑用を済ませた後にナデシコ食堂で食事を取っていた
「おー、戦艦といえども食事はしっかりしてるな、流石にレーションじゃ味気ないしどうしようかと思ったが今後もやっていけそうだぜ、中華丼一つ」
「わぁー、火星丼がある~私、火星丼一つ!」
「煮込みうどん一つ」
するとその声を聞いて厨房から料理長のホウメイが出てくる
「注文承ったよ、あんた達が噂のパイロットだね、私がこの食堂を任されてる料理長のホウメイだ今後ともよろしく」
「「「あっ、よろしくお願いします」」」
「そう言えば予備パイロットがコックやってるって聞いたが何処だ?」
「ああ、そうだね、それじゃ料理が出来たらテンカワに持ってこさせるから話すといいよ、おーい、テンカワ、例のパイロット達が来たからあんたが料理を持ってきな、そのまま休憩入っていいよ
」
厨房の奥で返事があった
「分かりました、休憩入りまーす」
その後しばらく時間が流れた後、厨房の奥からテンカワがリョーコ達が座っているテーブルに料理を持ってやってきた
「お待たせしました、中華丼と火星丼と煮込みうどんです」
「へぇー、お前がパイロットか」
「意外と普通だねぇ、でも鍛えてはいそうな体付き」
「いや、俺は臨時パイロットで見ての通りコックだ、本来のエステバリス隊のパイロットはガイ…いや、山田二郎って名前なんだけど魂の名前とかでダイゴウジ・ガイって名乗ってる奴だよ」
「普通じゃなかった…その山田さんって何処にいるの?」
「あー、ガイは暇さえあれば自分の部屋でゲキガンガーのアニメを見てるから普段はほとんど会うこと無いかも…一応エステバリスのVRシミュレーションルームでトレーニングはしてるからその時に会うと思う」
「ふ~ん、そうなんだゲキガンガーねぇ」
「ってイズミ先に食べるなよ」
「だってぇ~麺が伸びちゃう」
待てなかったのかイズミさんが煮込みうどんを先に食べだした、あまり長引かせるような話でもないから切り上げるか
「まあ、俺は臨時パイロットとして雇われてるからそんな感じかな、格納庫には沢山のエステバリスが有るけど操縦者はガイ含めても4人だったから君達が来ても多分俺はまだ臨時パイロットのままだと思うよ、それじゃご飯冷めるから先にどうぞ、あと俺はサツキミドリに買い物に行くから明日は居ないからね」
「そっか、せっかくパイロット同士で親睦を深めようとしたんだけどな~」
「食堂も普段は5人の女の子達がメインで俺は裏方だからね、今彼女たちが先にサツキミドリに休暇で出掛けてるけど火星に着くまで時間はあるから、俺やガイともVRでの模擬戦で戦う事もあると思うし、それじゃ改めて俺の名前はテンカワ・アキト、普段はコックで臨時パイロットをやってる、何はともあれこれからよろしくね」
「あっ、ああ、よろしく」
「よろしくねー、それじゃあいただきます!」
「頂いてます、板うどんだけに…フフフ」
この三人は変わらないな、少し話しただけだが気持ちが軽くなる、彼女達の為にも出来るだけ頑張らないとな
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それから俺はナデシコの停泊後二日目にルリちゃんと一緒にサツキミドリ二号の商店街に買い物に出かけた
「それでは行きましょうかアキトさん、歩きながら報告しますね、想定した通りに搬入されていた搬送コンテナにコバッタが入っていました、ハッキングを行い機能停止させてそのままナデシコの物資として搬入するように細工をしています、このことはネルガルの会長にも匿名で伝えておきましたがネルガル内での争いなので恐らく派閥内での取引材料になると思われます、後はこれをどう会長が使うかですね」
「流石にコロニーに仕掛けるなんて思いたく無かったが、まあ社長派に倫理なんて言葉は無かったから」
未来でも見たが倫理なんて終わっている実験を繰り返していたからな、それを火星の後継者に襲撃されていたがあれはネルガルから意図的にリークされていたものだったのだろう、元々ボソンジャンプ実験もそういう人として超えてはいけないような一線を越え続けてきた末路だ、俺は目的地に歩きつつ今回の顛末をルリちゃんから聞いていた、シフトの関係で食堂ではホウメイガールズの5人が全員1日目にコロニーへ買い物に出て行っていたため食堂での仕事が忙しくて話が聞けていなかったのだ
「そうですね、ナデシコによる火星奪還のスキャパレリプロジェクト、これは会長派のプランAです、目的は火星の技術をネルガルのみでの独占ですね、しかし社長派であるプランBではある程度軍と歩調を合わせて火星の奪還を目的としています、この場合相転移エンジンなどの技術がある程度は軍に漏れてしまい販売も軍からの委託になり連合軍以外には売れなくなりますが商売という意味ではこちらのほうが莫大な売り上げになります」
「どの道、連合軍との協力関係は必須になるからね、ナデシコもデモンストレーションという意味では成果を上げている、連合軍における宇宙艦隊にはこれから戦艦に相転移エンジンを積んでそれから高出力ジェネレータとバリア発生器を搭載される、各武装の出力も向上して無人兵器にも対抗出来るようになるはずだから地球での死者は減るはずだ」
「その点は大丈夫ですよ、私がビッグバリアを停止させてナデシコがバリア衛星を破壊していない事でブラックアウトが発生していませんので、今の地球ではチューリップの侵入をある程度防げている筈です、後にナデシコが軍へ組み込まれても市民感情は刺激しません、元々あれは軍への不満の一部を私たち民間のナデシコに押し付ける目的もありましたから…」
ナデシコは民間戦艦という事もありプロパガンダから責任の押し付けまで手ひどく好き勝手にやられていたからなぁ、ネルガルが言い訳出来ないくらいナデシコが強引に進んだ結果でもあるが
「ありがとう、その辺りはスノーフレークさんにも言われたからね、『未来を知っているからと言って全てを助けようなんて傲慢だぞ、両手で届く範囲を守ってから余裕があれば目の前の人を助ければいい、出来る事を積み上げろそれが未来に進むという事だすべてを助けるという事は過去に向かおうとするに等しい、時間とは今の積み重ねだ後悔しないように今を生きろ』ってね、彼女にはあれもこれも助けようと思う事は筒抜けだったな」
「それがアキトさんのいい所ですよ、私にも優しくして貰えているので一緒にデートに来れました、ということでまずは買い物に行きましょう、下調べは既に済んでいます」
「ああ、そうだねじゃあこの話はここまで、助けることが出来たこの
それから立ち寄った服屋でルリちゃんは沢山の服を買っていった
「猫の着ぐるみにバニースーツになんだか個性的な服が多いね」
「そうですね、飽きられてしまうのが怖い…のかもしれません、アキトさんも私に着てほしい服があれば何でも言ってくださいね」
「え?いや、それは…」
「大丈夫です、分かっていますから、それとお金の心配はしなくていいですよ、地球でアキトさんに名前を借りて作った株式会社で儲けていますのでアキトさんにもロイヤリティで得たお金の一部が振り込まれている筈です」
「何もしてないのに流石に使えないよ、今回の服の代金も振り込まれてる分から俺が出すよ」
俺も未来知識で色々とやってはみたが、ルリちゃんの年齢だと会社が作れないので代わりに名義貸しして作ったルリちゃんの会社からの金額の桁が違って戸惑ってしまう、まあ金儲けが目的ではないのだが
「ありがとうございます、では今度はアキトさんの服ですね」
「えっ、俺の?」
「はい、これからナデシコ放送で色々と必要になりそうなので、これは経費のようなものなので代金は私が払いますね」
そうして俺の私服やオオカミの口から顔が出る着ぐるみなど買ってもらったりした、どうやら艦内で放送していたナデシコTVの番組で使うようだ、TVとは言っても暇なクルーが艦内の回線を使ったナデシコ内部だけの番組で地球で放送しようものなら電波が送受信の関係上敵に見つかる為出来ない、そのため後日その映像データが軍の内部で回されていたようだがそれが密かに人気があったという話は聞いていた、ルリちゃんとは一緒に番組を撮ったことがあるしきっとそれが楽しかったのだろう
その後日用品などの細々とした買い物を済ませた後続けて街中を散策しているとゲーム屋のクレーンゲームの前でルリちゃんが立ち止まった
「アキトさん、これやってもいいですか?」
「ゲキガンガー人形のクレーンゲームか、買い物も終わったし問題ないよ」
そしてルリちゃんはクレーンに挑戦し始めたがなかなか取れないでいた、そうかあの時上手にぬいぐるみを取れていたクレーンゲームはバーチャルルームでの再現だったからこのクレーンは…
「アームのパワーが貧弱ですね、本体に中心で掴んでも動かないのでタグを狙いますか…」
それから何度も挑戦していたが取れる様子が無く時間が過ぎていった
「ルリちゃん変わるよ、ここはコロニーだからかクレーンの設定が渋いみたいだね」
「え、設定ですか?」
「…残酷な現実なんだけど、このクレーンゲームは確率機で設定した周期でしかアームが強くならないんだ」
「周期…」
衝撃を受けたのか珍しく顔が固まっている、未来で宇宙軍に入った後は任務続きで遊ぶ時間などあまり無かった筈だこういう事に疎いのは一緒に居てやれなかった俺のせいでもある
「設定しだいだけど二十回プレイした後一回アームが強くなってるからその時に上手く掴むようにするしか無いけどゲキガンガー人形の重心安定しないからね、こういう時はアームで押すといいんだ」
そう説明して俺は5回ほどクレーンのアームで人形を押して、端に寄せた後タグの部分にアームを通して穴に引きずり落とした、ガコンと音がして人形が手に入る
「はい、取れたよ、ルリちゃんならやり方さえ分かれば次は大丈夫だと思う」
そういって取れた人形をルリちゃんに渡した
「ありがとうございます、あの、アキトさんはゲキガンガーの事は…」
そうか、ルリちゃんはその事を心配してくれていたのか、火星の後継者の後で嫌いになっているかもしれないと…まあ今の俺はそこは切り分けて考えることが出来るようになっている
「ああ、大丈夫だよ今でも好きなのは変わらない、というかスノーフレークさんからゲキガンガーを何故か解説付きで見せられていたんだ、何で補助脳にアニメ詰め込んだのか聞いてみたいけど、多分あの人は未来が見えてたんじゃないかな、彼らを変える事が出来るのはゲキガンガーでもあるって言われてね、俺も知らなかった細かな設定とかを追加で解説されたよ…何でそんなこと知っていたんだろう?」
一目見て不安そうだったルリちゃんの表情が和らいだ
「そうですか、良かったです」
「
「はい、ゲキガンガーが原因ならそのゲキガンガーを再現しましょう、オモイカネにも協力して貰えます、一緒にバカをやりましょう」
「まっ、どうなるか分からないけどルリちゃんに協力して貰えれば前よりは良くなる筈さ、やれるだけやってみよう」
ルリちゃんはそのまま受け取ったゲキガンガーの人形を大事そうに手に持って、俺達はナデシコへと帰っていった
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場所が変わり日が落ちて薄暗くなった頃にエステバリス格納庫の人が通らない隅にて、整備班長のウリバタケ・セイヤとテンカワ・アキト及びホシノ・ルリはコソコソと内緒話しをしていた
「オペレーターの子とテンカワか、人には言えない話があるって事だったが…」
「ホシノ・ルリです、ウリバタケさんは口が堅い方なので現状を飲み込めると思いお話します、それにオモイカネにアクセスして技術開発をされているようなのでお願いできそうなのが貴方しか見当たりませんでした」
そう言われて『あちゃ~』という顔をした後に腹を括ったのかメガネの位置を調整した後で
「バレないようにやってたつもりだったが、流石にオペレーターにはバレちまうか、まっ、俺は技術屋だからな、ネルガルから秘密保持の契約はされているがその中で好きに機械を弄ってはいる」
「はい、それは問題ありません、閲覧不可能な資料にはそもそもオモイカネがアクセスをブロックします、お礼という事でプログラムのゴミ掃除などを手伝って貰ってオモイカネも感謝していました」
「それとは別の話です、ちょっと搬入されたコンテナに想定外の物資が入っていたことでウリバタケさんに相談がしたくて…訳アリなんです」
「ああん?なんだテンカワ訳アリって…俺に相談するってぇ事は何か壊しでもしたのか?」
「壊したと言えばそうとも言えますね、見て頂いたほうが早いのでこちらのコンテナまでお願いします」
そして、3つ積まれている鍵がかけられているコンテナの前まで移動するとルリちゃんが入力パネルにパスワードを入力していく
「それは確か昨日ここのコロニーで補給した時に搬入されたコンテナだったな、パスワードが分からないからネルガルから後で開示されると思っていたが・・・」
パスワードの入力が終わりコンテナが開くと木星トカゲの昆虫の形をした無人兵器、バッタのサイズが半分以下になっているコバッタが5機並んでいた
「バカ、おま!?ンーーーーー!」
大声で叫ぼうとしたウリバタケさんの口を急いで塞ぎ静かにさせる
「落ち着いて下さい、私が既に機能停止させているので動き出すことはありません」
「面倒な事に巻き込まれたようなので、コレをバレないように処分してしまわないと不味い事になるかもしれないんです」
話を聞いて落ち着いたのかウリバタケさんは首だけ縦に振ったので塞いでいた手を離したら小声で喋り始める
「おい、これはどういう事だ!?詳しく説明して貰うぜ」
「私たちが何かしたわけでは無いのですが…ナデシコを火星に行かせたくない人達が居るようです、このコンテナはサツキミドリ二号にナデシコの補給用の物資として搬入されていました、ナデシコが停泊する予定時間に起動するようにタイマーが設定されていたのでそれに気が付いた私が解除しました、データは全て消去したので、そもそも動き出そうとしてもそのプログラムが無いため移動すら不可能な状態ですのでいきなり動くことはありません、安心してください」
「ネルガルが邪魔な企業が送り込んだのか、それともネルガル内部での権力闘争なのかその辺りは流石に俺達には分かりません、だからルリちゃんに頼んで見なかった事にしようかと思いまして、コンテナの搬入リストの方は既に書き換えて貰ってるので捨てても良かったのですが…」
「そういうわけでコッソリと捨てても良かったのですが、せっかくの小型ジェネレータと新品の部品があるのでウリバタケさんに問題が無ければ渡してしまおうと思いまして」
するとウリバタケさんは眼鏡の位置を調整してしばらく悩んだ様子だったが目を見開くと
「興味はあるが流石に俺でも無人兵器の事は初めてだからな、もちろん慎重に分解するが失敗してオシャカにしちまう可能性が高いが…俺は機械屋だ、それでいいなら任せて貰いたいね」
「そうですか、ではオモイカネにお願いしてウリバタケさんからのアクセスに関してはTier3までの技術資料を閲覧許可を出しておきます」
「あん?なんだそりゃ」
「ウリバタケさんの小型端末で確認してください、ネルガルや連合軍が調べた木星トカゲ側の無人兵器の技術資料になります、開示されていませんが、当然ですが彼らは徹底的に調べていたようですね」
「まあ、よく考えれば木星トカゲの無人兵器に合わせてエステバリスが開発されたからな、当然といえば当然か、相変わらず秘匿されてたようだが、俺は技術資料が見れて機械を弄れれば何でもいいさ」
「それではこの話はここまでという事で、面倒な話に巻き込んだかもしれませんがよろしくお願いします」
「へっ、そう心配するな、こんなものはバラして部品にしてしまえば意外と気づかれないもんだぜ、折角部品が手に入ったんだ何か作ってこそ機械屋ってもんだ」
それからウリバタケさんは裏に大人の事情が見え隠れするのを飲み込んで、自分の欲を満たすためにコンテナの中身を引き取った、まあ俺達も未来の知識があるとはいえ企業の思惑に振り回される立場であることは変わらないようだ、今はこうやって一つ一つ積み上げていくしかない、ナデシコが民間だから出来る事だ
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ナデシコ艦内ブリッジにて
「ぴえーん、結局お買い物に行けなかったよぉ」
「ユリカ、ナデシコは軍じゃないから緩いけど報告書は毎日書かないといけないモノだよ、何もなければ書かなくてもいいわけじゃないからね」
「うん、書類の製作に付き合ってくれてありがとうねジュンくん」
褒められてジュンさんが顔を赤くして喜んでいますね
「僕は副艦長として当然の事をしたまでだよ、コレからも困ったら相談してくれて構わないからね」
こうやってジュンさんが甘い顔をしているのでたまに仕事を丸投げされていたのですが、そして、今回も未来を少しだけ変える事に成功しました、どのように変わっていくのかは分かりませんが良い方向ではあるはずです、そう言えばアキトさんとメグミさんの交流が無くなってしまいましたね、そう思いメグミさんの方に視線を向けると丁度サツキミドリ二号の管制官と通信を行っていました
「発艦許可でました、何時でもOKです」
「ナデシコ発進してください」
「了解、固定アーム接続解除確認、ナデシコ発進します」
「それでは、火星を目指して出発進行!」
ガイが生きている場合サツキミドリでの戦闘はどうにかしないとパイロットの数に比べて0G戦フレームが足りなくなる問題
そう言えばアキトは元々お前のようなコックが居るかってなるくらいにはスペック高いんですよね、本人の意思とは別に戦闘にスペック降られてパイロットも公式で才能あり(というかそうじゃないと序盤死んでる)だし