機動戦艦ナデシコ Lily of the valley 作:勿忘草
その後ナデシコは何事もなく火星へ向けて出発しました、と言ってもナデシコは最新鋭の戦艦であり艦のメインコンピューターであるオモイカネが航行、及び防御や攻撃の制御を担っているため緊急事態以外では全自動になっています、オマケに今回はそのオモイカネも自己学習によって成長して制御プログラムも私がバグ取りやデバッグを既に行っているためはっきり言って暇です
ナデシコにそこそこ必要なのはオペレーターである私と通信士のメグミさん、そして相変わらず操舵士のミナトさんは朝寝坊で居ません、一応艦内は朝と夜の時間の感覚を崩さない為にブリッジ以外では照明の明るさを調整していますが、明るさが一定のブリッジ要員であるミナトさんが夜更かししてしまうのも仕方がないのかもしれません、特に今回はサツキミドリ二号での戦闘を防いだ事で亡くなった方の二週間かけて行った葬式もなく、結婚式と葬式を代行する契約となっている艦長のユリカさんもブリッジで暇しています、これがナデシコCであれば艦長であった私一人で全てを管理していましたので艦長と通信士とオペレーターが居る今の状態でも逆に多く感じますね、そもそもこのナデシコでも偶にオペレーターの私一人だけでしたし…
「ふわ~あ、本当に暇だね」
ブリッジだけは24時間何時でも照明が明るいので多少の時間の感覚がズレる事もあるでしょう、それでもローテションを組んで対応しているため睡眠時間はきちんと取られているハズです、つまり眠そうにしている艦長のユリカさんも夜更かししているのかもしれません
「敵の攻撃です」
「えっ?何処どこ!?迎撃を!」
「必要ありません」
「へ?」
「ディストーションフィールド出力安定、順調に作動中です」
バチューンと遠くから放たれた木星トカゲの無人艦からの攻撃はナデシコに搭載されている強力なディストーションフィールドで防がれます、このナデシコは相転移エンジンを二基搭載している事もありこの程度の攻撃では破ることが出来ない強力なフィールドがあるため特に迎撃の必要性はありません、そもそもエステバリス隊を出撃させたとしても反転して逃げる事でしょう、散発的な攻撃に留めてナデシコを火星におびき寄せる目的もあります
「地球圏を離脱して以来、木星トカゲが本格的な攻撃を仕掛けて来ないのは恐らくこの艦の能力を把握するまで、少なくとも制宙権を確保している火星まで攻撃は挨拶程度のモノと思われますが…艦長はどうお考えです?」
「ルリちゃん鋭いわね、子供なのに」
「私、乙女です、攻撃第二波来ます、フィールド出力問題ありません」
続けて放たれた無人艦からの攻撃もディストーションフィールドで防がれます、今の状況を分析されて火星ではそこそこの数の無人艦隊に囲まれてナデシコがタコ殴りになってピンチに陥りましたが今回は火星圏内を離脱するために、いざとなればステルス状態で待機させているナデシコGを使ってでも脱出する予定ですが戦力はギリギリまで隠していたいですね、不確定要素が多くなってしまうので
「そっか、私火星までは暇なんだ、あぁ~あ」
しかし、何故ユリカさんは私のIFSコンソールの上に座るのでしょうか、暇すぎて構ってほしいのだと思いますが流石にはしたないと思います
「ユリカさん邪魔です、そこは椅子ではないので艦長席にお戻りください」
「は~い・・・そうだ!やる事ないし食堂に居るアキトに会いに行こう!、アーキートー」
そう言って食堂まで駆け抜けて行ってしまいました、駄目ですね普段は副艦長のジュンさんやプロスさんが止めるのですが今日のシフトでは止める人が居ません、始めは手探りでの運用をしていたため、今のように艦長が居ない時でも対応出来るようにと副艦長及び軍事顧問のゴートさんとを分けた勤務ローテーションを組んでしまった為ですが、ちなみに私は夜勤をさせられないとの話が出たので朝と夜が変わることなく通常通りの勤務ですが
このナデシコの勤務体制もしばらくすると今までの既存の戦艦と違いディストーションフィールドによって不意打ちなどにより、いきなり艦が沈むことなく時間稼ぎが出来るため後々落ち着いたらシフトが変わり夜間のブリッジ要因は一人体制に変わったのですが
「ふ~ん、アキトねぇ」
本を読んで時間を潰していたはずのメグミさんが読む手を止めてブリッジから出て行ったユリカさんを見つめていました、何か思いついたのか口角が上がって手に持っていた本を片付け始めました
「ルリちゃーん、私ちょっと用事を思い出したから悪いけどここをお願い、何かあれば直ぐに戻るからよろしくね」
「私一人でも対応は出来ますが、何処に行かれるのですか」
「ちょっと食堂まで、艦長を注意してくるね」
そのまま私にウィンクをするとメグミさんまでアキトさんの所に行ってしまいました、艦長への注意はコミュニケを通して直接言えるのでまあ別の理由でしょう
山田さんの死亡とサツキミドリでの事件を防いだ事でアキトさんとメグミさんの接点は無くなった為、こういう事は起きないと思っていましたがメグミさんの性格的に艦長のユリカさんにちょっかいを出すのは仕方ないのかもしれません
「そう言えばメグミさんはイジワルでしたね・・・」
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ナデシコ食堂にやってきたユリカはコーヒーを飲みながら厨房で働くアキトを眺めていた
「えへへ、アキトが働いてるカッコイイ」
「そりゃ働くだろう俺はコックだぞ、ってちょっと待てユリカ、お前もいま仕事中のはずだろ何でブリッジじゃないんだ」
「艦内の秩序維持の為、クルーの体調や様子を見て回るのも立派な艦長の仕事です、エッヘン!」
そういって立派な胸を張り、何故か誇らしげにしているユリカ、そう言えば前は火星までコロニーの戦闘で亡くなった人の葬式で忙しく、俺も葬式に出す郷土料理を作るという関係でゆっくり出来なかったな、そんな話をしていたらメグミちゃんも食堂にやってきた
「艦長、サボるのは良くないですよー」
「ほら、やっぱり皆から言われてる…あれ?メグミちゃんもこっちに来たって事はもしかして今ブリッジってルリちゃん一人だけ?」
「はい、休憩の間だけお願いしてきました」
いくら最新鋭の戦艦で自動化されているとは言えメグミちゃんが出て行った後にブリッジで独りぼっちのルリちゃんは流石に絵面が悪すぎる、ちょっとコミュニケで連絡しておこう
「はい、こちらオペレーターのルリです、アキトさん何かありましたか?」
「いや、こっちにユリカとメグミちゃんが二人共来てるからさ、一人だけで大丈夫かなと思って」
「木星トカゲからの攻撃は散発的な行動に留まっているため私一人でも対処可能です、心配して貰いありがとうございます、お昼は私も食堂でご飯を食べるのでその時はよろしくお願いします」
そう言ってモニター越しに頭を下げるとそのままコミュニケの通信が切れた、未来を知っているとは言え冷静沈着でこのナデシコクルーの中では一番の大人かもしれない
「何でルリちゃんの方がお前よりも大人なんだ…そうだ、お昼はデザートのオマケを付けてあげるか」
ついそのまま口から出てしまった、ダメだなついユリカにきつく当たってしまう。
未来の事を考えるとこのままでいいのかという思いがあった、スノーフレークさんもルリちゃんも大丈夫だと言ってくれたけど突き放した方が幸せになれるのではないかという考えが頭を過る、気負いすぎているのだろうか
「えぇー、なんでぇ、ユリカもお仕事頑張ってるよぉ、ブゥブゥ」
違った、ナデシコが自由で緩すぎるだけだな、と言っても俺の立場から厳しく言ってもユリカでは暖簾に腕押しになるだろうがそれでも一応言っておかなければ
「お前はそう言うがそういう風には見えてないからなユリカ、ちゃんとこの艦の性能を把握出来てるのか、ダメージを受けたら何処に撤退するのかとか、敵と戦う時に指示を出すだけが艦長の仕事じゃないんじゃないかとかあるだろう、せっかく艦長として戦闘も経験したフクベ提督が乗ってるんだから今のうちに色々と聞いておいたほうがいいんじゃないか?」
「それはちゃんと聞いてきたよぉ、でもフクベ提督は『私の事は気にせずに好きに悩むといい、私はこの艦の艦長ではなくアドバイザーの立場だ、私の艦長としてのやり方を真似してしまうとそれは民間の戦艦ではなく連合軍の戦艦と同じやり方になってしまう、ただ一つだけお節介な事を言わせて貰えば艦と共に沈むような旧時代の価値観は止めたほうがいいだろうな、馬鹿バカしいよ痛いし、逃げられるなら逃げたほうがいい、今この艦に私が乗っているように未来なんて分からないものだ』って言われてそれっきり」
そうか、提督はチューリップに戦艦をぶつけたせいで火星のコロニーを壊滅させてしまった事から自虐的になった人だからな、ただフクベ提督の行動が無くてもどの道火星は奴らが移住するために全員滅ぼす予定だった、それに関して知らないから今も自分の行動による自問自答を後悔の念で続けて居るのか、地球で唯一チューリップを撃破した英雄に祭り上げられて居たのも理由の一つだろう何せ既に遺書を書いている人だったからな
「そっか、教えて貰えなかったのなら仕方ないか、この前練習で作った苺のショートケーキがあるから食べるか?」
「わーい、やった、ありがとうアキト!」
「それって、確かこの前サユリさん達と作っていたやつですよね」
「そうだよ、メグミちゃんよく知ってるね、味は問題無かったんだけどスポンジに生クリームを塗るのを失敗しちゃってね、まさかホイップとスポンジに塗るクリームの硬さが違うとは、デザートは難しいな」
業務用の大きな冷蔵庫から練習で作ったケーキを切り分けてユリカとメグミちゃんが座っている席のテーブルに並べた
「えっ、私にも…良いんですか?テンカワさんありがとうございます」
「流石にお客さんに出せるレベルじゃないからね、お金も要らないから食べた感想だけ聞かせて欲しいな」
それからユリカとメグミちゃんは姦しく言い合いながらも俺が出したケーキを食べ終えた
「ユリカはもっと甘い方がいいな」
「えっ、そうですか?ほんのり甘くてコーヒーに丁度いい甘さだと思いますけど」
まあこれはユリカの料理の腕前に関係している部分だしある程度今のうちに本人にも説明しておこう
「ユリカはたぶん舌が鈍いんだろうな、火星でもあまり味に煩くなかったし、分かったこれからユリカの料理は味の調整を濃いめにしておくよ」
それを聞いたメグミちゃんが反応した
「もしかして艦長ってバカ舌なんですか」
「私バカじゃないよぉ」
「ユリカそうじゃない、バカ舌は味の感じ方が鈍い人って意味だ、ユリカにとっては丁度いい味でも他の人は濃く感じる味の強さだから気を付けたほうがいいぞ」
「へぇー艦長ってもしかして味の違いが分からない人なんですか」
何故かメグミちゃんがユリカに突っかかっているが【バカ舌】って言い方が悪いのだろう
「そっ、そんなことないよアキトの料理は美味しいもん」
「あーメグミちゃん、別にバカ舌って悪いことばかりじゃないよ、味に鈍いのは確かだけどそれって好き嫌いがほとんどないって事だし普通の人が食べられないような激辛料理や苦みがある料理を美味しく食べられるって事だからね」
「なるほど、こういう話をするとコックだと分かりますね、普段はエステバリスに乗ってるパイロットとしての通信しか出来ていなかったのでアキトさんの斬新な一面を見られて楽しいです」
あれ?、サツキミドリ二号での事件がなかったからメグミちゃんとの接点は無かったはずだけどなんでこんなにグイグイくるんだろうか?
「それとユリカは今まで知らなかったなら他の人とのズレは意識した方がいいぞ、他人のコーヒーに砂糖やミルクを入れる時は量を気にしたほうがいい、自分の基準で入れると多めになるだろうからな」
「ほへー、アキトって物知りだね」
「これでもコックだからな、色々と日々勉強しているんだよ、それじゃあ二人とも仕事頑張ってね」
流石にルリちゃん一人にブリッジ任せているのは心苦しかったのかケーキを食べて味の感想を話した後に二人とも素直に仕事へ戻っていった
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何事もなく一週間ほど時間が過ぎいつものようにブリッジの艦長席へと座っているユリカとオペレーターのルリと通信手のメグミという変わらない日常を過ごしていた
「ルリちゃん艦長ってなんだろうね」
何もやる事がなく過ぎていく日々、散発的に仕掛けてくる無人艦からの攻撃をディストーションフィールドで防ぎそれを報告書に纏めて一日が終了する、アキトさんと会う事でメンタルヘルスケアのように一時的に回復するものの想像していた艦長と違いそのギャップに苦しんでいるようですね
軍とは違いナデシコは民間の戦艦なのでこの辺りの規則などが緩々ですからね、定期的な非常事態の訓練なども無い為、緊張感とやる気の維持が難しいです、しかしそれがナデシコのいい所だと思いますが
「知りたいですか」
「うん」
「戦艦という閉鎖空間で必ず起きる乗組員同士の対立する意見を纏めて方向性を決めるというのが古来より艦長と呼ばれている人ですが、データならあるので出しますよ」
「え?あるの」
「オモイカネ、データ転送ライブラリーから検索、艦長の傾向と分析」
「ルリちゃん、すごーい」
「いつ頃の艦長を調べますか?」
「あっ、ここ百年で」
「検索結果が出ました、読み上げます、【最近の艦長の傾向と分析】、第二次世界大戦以降に名艦長と呼ばれる艦長は出現していない、現代のように戦闘がメカニックでシステム化した時代は僅か一艦の長の決断に戦闘の優劣を決めるほどの力はない、艦長は戦艦のシンボルになるような象徴、ないしは戦闘員の不平不満を気持ちよく吸収させる役目が取れればよい」
データを読み上げていますが目に見えてユリカさんが萎れていきますね、これは過去の情報なので今とは状況が違うのですが…
「旧年は頼りになりそうな冷静沈着を思わせる老人タイプの艦長が多かったが、若者にやる気を持たせる為に美少年タイプや美少女タイプの艦長も多い、要するに現代は作戦能力や決断力という意味での艦長は必要としないのである」
「それって、どういう事それって…」
「ユリカさん、これは旧時代のデータから導き出した答えであって昔の話ですよ、最新鋭の機動戦艦であるこのナデシコでは話が変わります、旧来の核融合炉を使用した戦艦の動力が相転移エンジンに変わり武装も強力なグラビティーブラスト、防御もディストーションフィールドによるバリアによって技術革新が起きました」
「あっ、そうか、そうだよね」
「地球ではこの一艦で上手くやれば連合軍の艦隊を壊滅させる事だって出来ましたよ、つまり今の情報はあくまでも過去のモノであり、これからこの技術に合わせた新しい戦術を模索していくという意味では前人未到の領域になります、そういう意味では今までのお飾りのような艦長ではなくユリカさんの戦術的な判断でこの艦の真価が決まります、ナデシコの艦長、意外と責任重大かもしれませんよ?」
実際に戦略が変わるんですよね、今までは大型艦に小型艦を体当たりさせて沈めて戦力差を覆して有利盤面にするというような連合軍が使っていた戦術が出来なくなり軍内部であった根性論が通用しなくなりました、ディストーションフィールドを張った大型艦を沈めるために一点集中の攻撃を行えば相手から狙わてたこちらの小型艦が沈み戦力差が逆に開いてしまうといったような事が起きます、大型艦は小型艦を狙い小型艦は必要最低限の攻撃を集中させての攻撃を仕掛けての削り合いになります
つまり遠距離から強力なグラビティブラストによる殲滅戦というナデシコ級の戦い方はある意味理にかなっているわけで、時代が巡り再び旧大戦時代の大艦巨砲主義に戻ったようです
「そういうわけで艦長、大変ですが本日の報告書作成もしっかりお願いしますね、攻撃された時間と場所、及び回数等は艦長の作業用データ領域に日付ごとに纏めてありますのでそちらをご覧ください」
「ルリちゃん、ユリカさんより艦長みたいだね」
「私、乙女です」
確かに艦長をやっていたので間違いではないのですが、そのおかげでこの艦がどれだけ特別だったのかを再確認出来ています、やはり皆さんが居てのナデシコだったのだと
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一方エステバリス格納庫の一角では整備班の男達が集まり会議中で何やら波瀾万丈の予感
「紳士諸君!、この契約書の最後に書いてある文章を読んでくれ」
一人の男が手に持つ契約書、この機動戦艦ナデシコのクルーになる時にネルガルと交わした契約書である
「なんだこれは、いったい何のためにこの艦に乗ったと思ってるんだ、おのれネルガルめ、こうなったら全員でプロスペクターとゴートを取り押さえれば…いやジュンも居たな」
「保安部の連中はどちらに付くのか、ネルガル側に付かれたら流石に勝てないぞ」
「だが彼らは全員がネルガルの社員というわけでもない、大半は民間の警備会社からも採用している、取り込めればこの契約文を消すことが容易になるハズだ」
ガヤガヤと契約書に書かれている事に不満を感じた人が状況を打開しようとアレコレと好き勝手に話し出して収拾がつかなくなりそうになった時、それを纏め上げる人物が居た
「皆の者落ち着け、軍では暴れる民間人を取り押さえる訓練もやってるからな、流石に何の準備も無しでの交渉は分が悪い、こういうのは準備が大切だと何時も言っているだろう?」
「それじゃあウリバタケ班長、我々はどうすれば…」
「まずは同志を集めろ、頭数を揃えなきゃ話し合いにもなりゃしねぇ、後は女性パイロット達にもそれとなく伝えて反応を見た後で引き入れるぞ、彼女達は銃の発砲訓練も義務になっているから実際に撃てるか撃てないかの違いで銃口を向けられるのでは話の重さと真剣味が変わる」
「では艦長とテンカワはどうしますか、普段の行動を見る限りではこの契約書の最後に書かれてあることは知らないと思われますが」
「ばかもん!この『自由への反抗作戦』はブリッジクルーに知られた時点で潰されるかもしれないのだ、彼らは給料が良い分こういう事態を知ったときにネルガルへの報告義務が発生する、ましてやあの艦長に聞かれたら必ず事の真偽を確かめるハズだからそうなったらネルガル社員の連中に気取られるぞ、つまり今回の話はブリッジクルーである艦長やミナトさんにメグミちゃんとルリちゃん、あと何処から報告されるかも分からないのだからパイロット兼コックであるテンカワにも極秘で進めるぞ!」
「あっ、もう作戦名決まったんだ」
「素直に羨ましいって言えばいいのにな」
「なー、まあ話してもそもそもテンカワは参加しないと思うが…艦長は協力してもらえればセキュリティー関係をロック出来るからブリッジに立てこもる事も出来るが、プロスペクターさんに直接聞きに行ってバレそうだから仕方ないか」
「というかテンカワは無しだろ、あいつ厨房の娘たちとも仲がいいし、そっち側から知られる可能性もある」
「先ずは整備班以外からか、パイロットは定期的にエステバリスのVR訓練が入っているからその時間に合わせて行動すれば接点が出来るからそれと無く聞いてみるか」
密かに進んでいた作戦会議の終了後に各々は行動を始めた、しかしそれを見ていた人が…いや人ではなくAIが居た、ナデシコの中枢コンピュータであるオモイカネである、そして当然のように仲がいいオペレーターのルリにその状況を逐一チクって…報告していた
「少々動きが早いですね、それはそれで好都合ですが…、今晩アキトさんに伝えて準備を始めますか」
そしてここにも何やら企んでいる少女がいた
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その後、数日が経ち火星に近づいていたナデシコの艦内では平和に見える日々が続いていたブリッジでは
「それにしてもルリちゃんがお休みを貰ったって珍しいね、毎日オペレーター席に座ってお話しても寡黙だったのに」
「艦長に会いたく無かったんじゃないですか、いくらIFSで直ぐに目的のデータを調べられるとは言えアレもコレもと横で煩く言われて毎日コンピューターで検索させられたら嫌になりますよ」
「だってジュン君居ないし、書類で分かんない箇所が沢山あるんだもん、それにルリちゃんも『暇なのでいいですよ』って付き合ってくれてるし」
「もしかして艦長その言葉そのまま鵜呑みにしてるんですか?、ルリちゃんはナデシコのオペレーターで毎日艦内の制御プログラムやシステムチェックをやってるのにそんな暇なわけないと思いますけど」
「でも、『ほとんどのシステムプログラムのバグ取りは終わらせましたので』って話したし、わざわざそこで噓を言う理由が無いと思うんだけどなぁ、でも念のために今度聞いてみる」
通信士のメグミがチクチク言葉でユリカ艦長をつついていたが本人は意に介しておらず純粋に疑問に思っているようだ、そんなやり取りをしているとブリッジの扉が開いて大勢のクルーが乗り込んできた
「えっ、なになに!?皆さんどうしたんですか!?」
首を右へ左へと行ったり来たりさせながら乗り込んで来たクルーに質問するが数名はその手に銃を持っており、その中にはエステバリス女性パイロットのリョーコ、イズミ、ヒカル三名が居て、整備班の班長であるウリバタケも大きな工具を持ち、いつものナデシコとは思えない剣呑な雰囲気が漂っていた
「ごめんね、艦長、メグミちゃん」
「あえて言わせてもらおう、反乱だ!我々は本気だぞ、これを見よ!」
ウィンドウが表示されそこにはエステバリスの格納庫やレクリエーション室で横断幕を掲げており、その中でネルガルとの軋轢があることが分かるように各々が叫んでいた
『我々は~断固ネルガルの悪辣さに~抗議の声を上げ屈する事無く~……』
「どうして!?皆さん何か不満があったんです、なんでこうなる前に私に言ってくれなかったんですか!」
「今回の事は艦長には関係ないからな、取り合えず『責任者出てこーい!』」
コミニュケに向かって叫んでいるので恐らくネルガル社員であるプロスペクターさんやゴートさんに通信を送っているはずだが皆ののコミュニケにも届いているので全回線を開いて通信しているようである、しかしそれなら艦長であるユリカを通して要望や苦情を伝えればよいだけの話のはずで今のように人質にされることは無いハズであった
「せ、説明はしてもらえるのでしょうか、私艦長なのに何も聞いてないんですけど!?」
「艦長だから言えなかった問題だ、この契約書に見覚えはないか」
そう言われてユリカはウリバタケさんが手に持っていた用紙を受け取った確かナデシコに乗る時にネルガルと交わした契約書であった、一般的な雇用契約から新しく搭載されている相転移エンジンにより身体的な不調等が発生した場合の保証など、こと細かく書いてあり時間をかけて読まなければ全容は分からないであろうという書類だ
「わぁ、細かい」
ユリカがその事を確認して更に話を聞こうとしたその時、ブリッジの扉が開き副艦長のジュンやミナトのブリッジクルーが入ってきた、だが肝心のプロスペクターとゴートの姿はそこには無かった
「皆さん、先ずは落ち着いて話はちゃんと聞きます、銃は誤発射の危険があるのでせめて銃口は人に向けないでずらしてください」
「ふあぁぁ、皆どうしたの?って艦長それ契約書じゃない、それがどうしたの?」
よく徹夜して夜遅くまで起きているミナトは眠そうに状況を確認していた、余談だが彼女は前職は社長秘書をしていたため契約書はきちんと読んでからサインしている
ちなみに銃の危険性に関して、その辺りは反乱したクルーも分かっておりコッキングを行っておらず薬室に弾を装填していないので誤射の危険が無いため圧をかけるために銃口は向けたままにしているという能力だけで選ばれたナデシコクルーという無駄な優秀さを見せていた
「例えば死亡した場合など艦長又は副館長が冠婚葬祭にまつわる業務を行うと書いてあるだろ、俺達が死んだら艦長が葬式をやってくれるのは分かったが、俺たちはそんなの知らなかった」
「えっ、でも契約書に書いて……」
「今時そんな細かい文字をいちいち読んで契約するやつ居るか?、この反乱の人数が物語っているだろう、だからこそ、そこに書いてある契約が問題になった」
「そこの一番下の小さい文字を読んでみな」
反乱に加わっているパイロットのリョーコである、イズミとヒカルという彼女らはエステバリスの操作にも関連している対人訓練も行っており、軍属経験があり屈強なゴートに対抗するために全員ブリッジの担当となっていた
「えー、『社員間の男女交際は禁止致しませんが、風紀維持のためお互いの接触は手をつなぐこと以上の事は禁止』…なにこれ?」
「読んでの通りさ」
「なぁ、分かったろ?お手々繋いでってここはナデシコ保育園か!いい若いもんがお手々繋いででで済むわきゃなかろうが、俺はまだ若い」
「班長ってもうすぐ
「20代後半は若いの!」
それから反乱を起こしてまで主張をする恋愛の説得力を出すためか、ウリバタケとヒカルによる寸劇が始まった
「若い二人が見つめあい、見つめ合ったら」
「唇が」
「若い二人の純情は純粋がゆえに不純」
「せめて抱きたい抱かれたい」
「そのエスカレートが困るんですなぁ」
突然寸劇の最中に乱入者が現れる、ブリッジで中二階となっており全てを見渡せるメザニン席にあたる中央の艦長席にスポットライトが当たり、目的だった人物のネルガル社員であるプロスペクターとゴートがいつの間にかそこに居た
「出たな、貴様ーーー!」
「やがて二人が結婚すればお金かかりますよねぇ、更に子供が産まれたら大変ですナデシコは保育園ではありませんので、ハイ」
会話に入るタイミングを見ながら話を聞いていたのだろう、皮肉を込めてここは戦艦であり保育園では無いと語った
「黙れ黙れ、いいか宇宙は広い、恋愛も自由だ!、それがお手々繋いでだと、それじゃ女房の尻の下の方がましだー!」
「とは言えサインをされた以上…」
「うるせぇー!コレが見えねぇか」
待機していた反乱者達が一斉に武器をプロスペクターとゴートに突きつけて武力による契約変更を求める
「この契約書も見てください」
そこは黒い噂があるネルガルの役員という事で突き付けられた銃口に動じることなくよく読まずにサインしてしまった契約書を文字通りに盾にして武力による強引な契約変更は認めないという強い意志を示していた
だがお互いに譲れないモノがある時、争いが起こるのは必然でありブリッジでは一触即発の状態になってしまい誰も動くことが出来なくなってしまった
「どうしよう…こんな時いったいどうすれば」
ナデシコ艦内での反乱という前代未聞の騒動にミスマル・ユリカが艦長としての決断を迫られた時、各部所にウィンドウが複数開き艦内放送が始まった
なぜなに
アキトおおかみ:「おーい、みんな集まれぇ、なぜなにナデシコが始まるよー」
ルリおねえさん:「みんな~集まれ~」
「なっ、なんだこれは…」
「艦内放送?アキトはおおかみの着ぐるみ姿だしルリちゃんはベレー帽被ってまるで教育番組みたいだけど…」
「あはは!ルリルリ可愛い、そっか、この為に休みを取ってたんだ」
「アキトさん私はこういう番組に出たことあるのになんで誘ってくれなかったんですかぁ」
一触即発だったブリッジでは始まった放送によりある程度の緊張が緩和され余裕が生まれた
「おいおい、今はこんな放送見てる場合じゃないんだ、ウィンドウを消せ!」
ルリおねえさん:「さて、今回は特別に艦内で起こっている事の説明をするために契約と雇用について、ついでに艦内での恋愛について解説していきます、よく分からなかった話があった時は後でお父さんやお母さんに詳しく聞いてみてね」
アキトおおかみ:「へーそうなんだ、おねえさん雇用契約ってなーに」
ルリおねえさん:「おや、それはいい質問ね、簡単に言えば労働する人が雇う会社のもとで働いて、その会社から労働の対価としてお金を受け取ることを約束する事を雇用契約と言います」
「班長、なんか関係ありそうな放送ですよコレ」
放送を止めようとして動いていた人も内容を聞いて一旦作業を止めて放送を見ていた
ルリおねえさん:「さて、例えばこの契約を使って恋愛禁止、休日無しで24時間毎日働く事にサインしたからと言ってその人を毎日働かせる事が出来るかな?」
アキトおおかみ:「サインしたならその通りに働かないとお金が貰えないんじゃないの?」
ルリおねえさん:「そうだねー、でも法に違反する事を契約してもそれは無効になります、例えば契約書に書いてあるからと言って労働する人に盗み強要出来るかというと無理です、それは違法契約という事になり無効つまりなんの実効性も無い内容という事になります」
アキトおおかみ:「いくら契約と言っても違法な事は出来ないんだねー、勉強になったよ」
ルリおねえさん:「はい、それでは前提知識を学んだ後で皆さんのナデシコ内で起きている勘違いと理想的な恋愛コミュニケーションを実演していこうと思います」
アキトおおかみ:「え?ルリちゃん俺、何も聞いてないんだけど」
ルリおねえさん:「大丈夫です、台本は用意してあるのでアキトさんはこの通りに読むだけで問題ありません、それとこの番組での呼び方はルリおねえさんでお願いします」
ルリおねえさん:「それでは先ずこの契約の一番下に書いてある『社員間の男女交際は禁止致しません』ですが、そもそも禁止にする事が黒よりに近いグレーゾーンですね、人権をある程度無視できる軍であれば任務優先の為にそういう命令も可能ではありますがナデシコはあくまでも民間でありそもそも社内恋愛を禁止にしてしまってはネルガルではゴシップ記事に書かれているような上役と社員との蜜月など発生しません、その後の『手をつなぐこと以上の事は禁止』ですが上役が手をつなぐ以上のことをしているのであればクビになりますからむしろこういう契約を作ることが不自然だとは思いませんか?」
「ん?何か雲行きが怪しくなってきたような…」
ナデシコ放送を聞いていた反乱者達はお互いに顔を見合わせてざわついていた、プロスペクターさんはニコニコと笑顔で放送を見ている
ルリおねえさん:「さて、まずは企業側の視点で何故この契約文が最後に書かれているのかの解説です、ナデシコは乗員のストレス緩和の為にレクリエーションルームや温泉など様々な娯楽を提供しているため皆さん気付かれなかったようですがナデシコは戦艦であり広大な宇宙を進む閉鎖された環境です、そのためストレスで精神が可笑しくなる人が出てくる事例が連合宇宙軍での報告にありました、まあ幸いなことにナデシコではまだ確認されていませんが…」
アキトおおかみ:「へぇー、だから戦艦なのにバーチャルルームや展望台があったのか」
ルリおねえさん:「お金をかけて完備せざるを得ない事故が発生してしまったのですよ、具体的にはストレスで可笑しくなった人が女性を襲うような事件ですが、そのため軍では即刻隔離されましたがここでナデシコは民間戦艦という今までにない枠組みなのが問題になります、保安部があるとは言え事件が発生した場合捕まえて警察に連れて行ってもらうという事が出来ないという事です」
アキトおおかみ:「それは事件が起きたら独房エリアや縄で縛って隔離すれば…」
ルリおねえさん:「そうですね、しかしそれは既に事件が発生してしまい終わった後の話になりますつまり刑事裁判も出来ないのに事故を起こした社員をどうするのかという話になります、まあ長々と話しましたが要する男性や女性がこの逃げることが出来ない戦艦内でそういう事態が発生しそうな場合、この最後の契約文を使いクビにすればもう社員ではないので不法侵入等の現行犯という事で保安部で対処可能になるという事です」
アキトおおかみ:「そうか、それなら…いやでもそう風に契約文に書いておけばこういう事は起きなかったような」
ルリおねえさん:「プロスペクターさんが言われたように戦艦内で子供が出来たら育てるのが困難ですのでそういう意味も含まれています、本当に意地悪ならこんなに分かりやすく契約文に入れませんよ、この契約が分かりやすく契約書の最後の行に書かれている意味を考えて下さい」
アキトおおかみ:「言われてみれば隠すなら契約書の真ん中くらいに書いたほうが分かりにくいかな」
ルリおねえさん:「はい、最後に書かれている時点で隠す意図はありません、そういう訳で実はこの最後の契約文は実効性のない契約になっていますので実際にその例を実演しましょう、オオカミさんよろしくお願いします」
渡された台本を元に今度は番組内でアキトとルリの二人が寸劇を始めた
アキトおおかみ:「星が綺麗だなぁ」
外に星が煌めく窓を見ながらアキトがそう呟く、しかし本人は台本を読んでいるだけで意味が分かっていなかった
ルリおねえさん:「手を伸ばせば星も取れますよ、部屋に天象儀・・・いえ、プラネタリウムがあるので見に来ますか?」
アキトおおかみ:「わぁ、ルリおねえさんプラネタリウム持ってたんだぁ、後で見せてもらいに行っていい?」
ルリおねえさん:「ええ、何時でも構わないので部屋に来てください」
寸劇が終わるとルリおねえさんの後ろにホワイトボードが出されて今の流れを解説されていく
ルリおねえさん:「はい、という訳でOKを出したルリお姉さんは部屋に招き入れた狼さんに食べられてしまいました」
アキトおおかみ:「えっ!?今の流れで何でそうなるの!?」
台本のセリフを読んでいただけのアキトは訳が分からず「何で?何で!?」と騒いでいる
ルリおねえさん:「さて、皆さんが知りたいのはここからでしょう、恐らく皆さんはこれから契約書を盾にクビになったりすると思っていませんか?」
「そっ、そうだ、それだと自由な恋愛が出来ないじゃないか!」
ルリおねえさん:「だからそれが勘違いだと最初に言ったじゃないですか、最後の契約文はそもそも親告罪なんですよ、だから私が何も言わなければ契約した企業はオオカミさんをクビに出来ません」
「「「なっ、なんだって!?!?!?!?」」」
前提が崩れて驚愕した反乱クルーがお互いに顔を見合わせて小声でひそひそと話し始めた
ルリおねえさん:「皆さん契約書の読み方が分かってないので分かりやすくこの最後の文章の読み方をまとめますね、『社内での結婚等は構わないが戦艦という閉鎖空間であることを考えて付き合っている事を言うのは構わないが他人の見えない範囲、つまり個室ですね、この範囲内でコウノトリが子供を運んで来ないようにしながら過ごして下さい』という事です、コウノトリが運んで来たらそれは手をつなぐ以上の物的証拠になりますのでこの契約書が効力を発揮する事になりクビに出来ますからね」
アキトおおかみ:「確かに言われてみればそう読めるけど普通は勘違いするような」
ルリおねえさん:「ある意味そのように勘違いさせている部分もあります、なにせ戦艦である閉鎖空間、しかも位置を特定されるため電波を送信出来ないので一般回線では通信出来ずにオフラインで何ヵ月も一緒に過ごしていたら大半のクルーが結婚する可能性がありますからね、過去に都市部で大停電が起きた際に出生率が上がったという話があります。そもそもナデシコの場合艦長が冠婚葬祭で結婚式も執り行うと分かればこの意味が読み解けると思いましたが難しかったようですね」
アキトおおかみ:「あっ!そうか、結婚する場合この艦だとユリカが式を取り仕切るから否定はされていないのか…あれっ、でも何でこんなに人が居て勘違いが起きたんだ?」
ルリおねえさん:「それはいろいろと失敗したからですよ、では今度は失敗例をやってみましょう、台本の続きからお願いします」
その言葉でこれから起きる事を察したウリバタケが今度は慌てて「今すぐこのウィンドウを消せ、放送を止めろ!」と大声で叫ぶ、だがその叫びも虚しくウィンドウ上では直ぐに寸劇が始まってしまう
アキトおおかみ:「星が綺麗だなぁ」
ルリおねえさん:「手が届かないから綺麗なんですよ」
アキトおおかみ:「部屋にプラネタリウムがあるから見に来ないか?」
ルリおねえさん:「残念ですがこの契約書により部屋に尋ねる事が出来ません・・・、ごめんなさい」
再び寸劇が終わり今度は後ろに置いてあったホワイトボードの軸を回転させると裏面に既に解説する内容が書かれており説明が始まってしまった
ルリおねえさん:「はい、という事で今回は失敗したパターンですね、私がオオカミさんに誘われて断りましたが、それが分からずしつこく誘われるので契約書を盾に断るというわりと直接的な内容となりました」
アキトおおかみ:「えぇ…、この台本のセリフだとそうなるの?最後のは嫌がって断られたのは流石に分かったけど」
ルリおねえさん:「残念ながら分からなかった人が多くこの反乱が起きてしまいました、断られた事が分からずにこの契約書さえ無ければと実力行使をしてしまいましたが、まあ民間戦艦という初めての試みにより齟齬が生じたということでしょう。しかし今回はある意味間違いが起きる前で良かったですね、バッサリと断って関係がこじれてしまっても戦艦なので翌日に顔を合わせるという事が発生します、そこでこの契約書により皆さんが仰るようにネルガルのせいにすれば後腐れなく断れますからね、という訳で艦内で問題が起きてもネルガルが介入できるようにこの契約書の最後の文章が必要な事が皆さんにも分かって頂けたと思います、女性クルーの方々は男性を個室に呼ぶと誤解される可能性が非常に高いことを留意して物の受け渡し等は公共や交流の場、又は間に男性クルーを挟んでの間接的な受け渡しとするように気を付けて下さい、それでは終わりますか」
アキトおおかみ:「以上なぜなにナデシコでした、次回をお楽しみに」
アキトおおかみ・ルリおねえさん:「「バイバーイ」」
ウィンドウが閉じると反乱者達数名が膝から崩れ落ちた
「そ、そんな…俺たちはいったい何のために…」
優秀という点が逆に仇となり綿密な計画を立て大規模な反乱を起こしたことが無意味だったことを知り呆然とする反乱者たち、場が落ち着いた事で艦長であるユリカが話し始める
「皆さん、間もなく火星に着きますのでお仕事に戻りましょう、そうしましょう」
艦長としてフォローを行いクルーの士気を何とか上げようとするユリカ、だが崩れ落ちた反乱者達に思いもよらぬ追撃が入る
「って言うか、そもそも契約書の内容変更をプロスペクターさん達に言ってもねぇ、どの道成功していても地球までお預けになるわよ?」
「そう言えば契約の変更って上層部の承認を通さないといけなかったハズですよね、という事はナデシコを制圧しても契約は変更できないということですか、へぇ~良くできていますね」
ミナトの話にナデシコに入る以前は声優業をやっていて個人契約などで契約書の仕組みに触れる機会が多かったメグミはこのからくりに気付いた様子だ、ネルガルという大企業では社長等がいない現場で勝手に契約変更などそもそも不可能な話だったのである、しかも不満を持っていたとして火星までの航路でストライキを起こしても宇宙空間で遭難するだけなのでネルガル側もそこは
身も蓋もないメグミとミナトの何気ない会話が止めを刺してしまい長い沈黙が訪れる、そこに扉が開き服を着替えて戻ってきたルリがブリッジへ入って来た、何もなかったかのように淡々と自分の席まで移動するとIFSコンソールに手を当ててオペレーターとしての仕事を始める
「では仕事に戻ります」
その瞬間警報音が鳴り響き大きな振動がナデシコを襲った
「なっ!?なんだぁ!何が起こった!?」
「ルリちゃんディストーションフィールドは!?」
ただならない様子にユリカが慌てて確認を行う
「利いています!敵戦艦確認ヤンマ級7、カトンボ級60、今までの攻撃とは違います、迎撃が必要です!」
そこにウィンドウが開き今まで姿を見なかった山d…ダイゴウジ・ガイが映る
「きたきたきたー俺の出番、活躍の場所だ、博士、直ぐにゲキガンガーの発進準備を頼む!」
その言葉に動けなくなっていた反乱者が助かったとばかりに動き出し、誤魔化すようにウリバタケが声を張り上げ指示を出した
「こらー、お前らぼさっとしてんなパイロットが能力を発揮出来るようにするのが俺たちの仕事だぞ、直ぐに現場に戻れー!」
その言葉にまるで何事も無かったかのようにブリッジや各所で反乱者達が蜘蛛の子を散らすように仕事場に戻って行った、ブリッジでは各者席に着きやるべき事をこなしていく
「それではグラビティブラスト発射の後にエステバリス隊は各機準備が出来たら発進してください、また発射した後すぐに回避行動を行い、敵の攻撃をフィールド全面で受けないように」
「了解、グラビティブラスト発射します」
「回避行動後に重力カタパルトをオンラインにしますエステバリス隊は各機発進準備を行ってください」
ナデシコから放たれたグラビティブラストでカトンボ級の敵無人艦が薙ぎ払われた後にエステバリス隊が発艦していく
「火星か・・・戻ってきたんだな」
エステバリスの中で自分の故郷を遠くに見つめてアキトは戦場に飛び出していった
これより未来で僅か一艦で戦闘の優劣を決めたルリちゃんが何か言ってる…