取りあえず、方針としては原作崩壊できたらいいな、的な感じで頑張ります。
それでも良いという方だけご覧下さい。
皆さんは「生まれ変わり」と言うものを信じますか?
人間は死ぬと諸説ありますが、記憶を失い、新しく生まれ変わると言われています。
なぜ、私がそんなことを言うのかといいますと。
………………ご察しの通り、私にも「前世」の記憶があっちゃったりします。
前世の私は苗字は二文字、名前は三文字の普通の女子大生でした。
ある日、ちょっとしたミスでいつもの電車を逃してしまって、仕方なく次の電車を待っていたのです。
ですが、もう少しで電車が来るというその時、ドンっと、背中を誰かに押されました。
突然だったので、私は抵抗もできずそのまま線路へ身を乗り出して。
私が最後に見たのは、般若のように怒りで顔を歪ませた、知らない女の人だった。
その後、何か大きいものが近づいてくる感じがして、そこで私の意識は途絶えました。
これが私の前世の記憶。
それからずっと、眠っている感じがして、ふと気がついたら小学四年生。
まったく、ワケがわかりません。
あ、性別はそのままです。
男に生まれ変わったとか、将来結婚できなくなるような問題はありませんでした。
また前の私、つまりはこの体の持ち主ですが、彼女の体を私が乗っ取ったというよりは、私が夢から覚めたような感じに近いです。
忘れていた事を思い出した、とも言います。
なので、私がこの体の持ち主を消してしまったという悲劇は起きていないようです。
これだけは素直に安心しました。
しかし、安心したのも束の間、この世界には前世にはなかった災害が存在したのです。
特異災害「ノイズ」。
これがこの世界に発生するとある災害の総称。
テレビで見たところ、スライムのような柔らかそうな肌で、愛らしい外見なのですが、触るとなんと人間は炭化してしまうらしい。
確率は聞いたところによると通り魔に会うより低い、とのことですがいつどこで発生するかがわからない分、少し不安です。
ピピピッ、ピピピッ。
少し大きめの電子音が、部屋に響く。
「う~ん…………」
布団から手を出して目覚まし時計を探す。
二度三度、そして四度目で目的の物を掴み、スイッチを切る。
「はわぁ…………」
布団を押しのけ、体を起こす。
窓から差し込む光が、少し眩しい。
「顔、洗わなきゃ…………」
フラフラと危ない足取りで、洗面所へと向かう。
「あ」
ふと、あることを思い出して足を止める。
「いけない、いけない…………」
ベッドのすぐ横の窓辺に置かれた二つの鍵を手に取る。
金と銀の綺麗な色をしていて、大きさは手のひらに収まるほど。
二つの鍵は細い紐のような物で繋がれていて、それを私はいつも首から下げている。
二つの鍵はよく似た形をしていて、もし色が同じだったらどっちがどっちだかわからなかったかもしれない。
ちなみに、この鍵が何の鍵なのか私は知らない。
物心ついた時には既にあったし、家の鍵穴全て試したけど、合わなかった。
でも大切なものらしく、肌身離さずずっと身につけている。
「さて、次はランニングかな」
朝食を食べ終え、学校の体操服に着替える。
大人になってから思い知ったことだけど、小さい頃からの体作りというものはとても大切だ。
前世ではあまり運動もせず、家でゴロゴロしていたせいか、自分でも驚く程貧弱な大人になってしまった。
流石にあんな思いは二度としたくはないので、少し面倒だけど毎日トレーニングを欠かさない。
………………まあ、ノイズなんてありえないモノがあるくらいなんだから、超人的な何かになる可能性を夢見ても、別にいいよね。今までそんな予兆は欠片もなかったけど。
ふと思う。
この世界特有の災害「ノイズ」について。
世界各地に現れては人を襲い、炭素に変換する災厄。
仮にこの世界が物語だとすると、主人公は「ノイズ」と戦うことになるのだろうか?
……そもそも、「ノイズ」とはなんなのでしょう。
この世界の住人にはあれが「日常」の一部なのだろうけれど、前世の記憶を持つ私にとっては違和感しか感じない。
どうして人を襲う?
聞くところによると、「ノイズ」が襲うのは人間だけらしい。
だからこそひとたび現れれば甚大な被害が生じるわけだけれども、私はそこが納得できない。
あれは本当に災害なのだろうか?
SFとかにある、「人類を殲滅するために作られた特殊兵器」と考えたほうがまだ現実味がある。
仮にそうだったとして、いったい誰が何の目的で、またどうやって発生させているのか?
…………わからない。
まあ、小学四年生が解明できる程度の存在ならとおの昔にもっと偉い人に全て解き明かされているだろう。
じゃあ、今の私が出来ることを考えてみる。
……特にない。そりゃそうだ。
戦火に巻き込まれて親を失ったわけでも、生まれながらに宿命を背負った人間でもない、ちょっと変な記憶があるただの小学四年生に何ができるというのか。
いや、もしかしてこの記憶も偽物なのかもしれない。
「ノイズ」がいない世界なんて、この世界から見れば素晴らしいことだと思う。
「ノイズ」に恐怖するあまり、小さな私が作り出したただの幻想、嘘っぱちの記憶。
……。
…………。
………………うん、考えれば考えるほど深い混沌の泉に沈んでいっている。
結局のところ、私には何が事実で何が嘘なのかもわからない。
そもそも、こういうことは考え始めればきりがない、証明できない以上可能性だけが無限に湧き出るだけ。
今、ここで生きている。
これが私が出せる精一杯の答えだと思う。
そう言えば、生まれ変わって新しい趣味もできた。
どうやらこの世界は私がいた世界よりいろいろ発達しているように思える。
科学技術はもちろん、不思議なことに音楽方面も前世よりレベルが高い。
この前テレビで見たコンサートホールなんて天井が割れたりして凄かった。
まあそれはそれとして、繰り返すけれど私は小学四年生。
塾に通っているわけでもないので受験勉強もそれ程時間を必要としていない。
部活、といっても小学生なのだからそんなに熱心じゃない。というか私は入ってない。そんな暇があるなら体を鍛える。
……まあ、そのせいで若干友達少ないけど。
とどのつまり何が言いたいかというと、暇なのだ。
体を鍛えるにしても、無理をしすぎれば体を壊して元も子もない。
だから私は朝晩のランニングと少しの筋力トレーニングしかしていない。
なので、どうしても時間が余る。
余った時間は、我が家に代々受け継がれてきた古い土蔵の探索に費やしている。
私の家、轟家は大体明治以前から商業を生業にしてきたらしい。
その商業も敗戦後は「地元のちょっと有名な商店」にまで減退してしまったが、その無駄に広い土地と屋敷はいまだ健在で、ちょくちょく中を散歩している。
中でも屋敷の端にある土蔵は結構大きい。体積だけで言えばちょっとした一軒家よりも大きいくらいだ。
土蔵の中にはかなり昔に使われていたと思われる物や、ちょっと昔の漫画まで幅広く置いてある。
おそらく、両親かその兄弟あたりが捨てられなくてここに隠したのだろう。
特に年齢制限のあるイカガワシイ物も多くあった。
もちろん、そんな邪悪なものはまとめてダンボールに封印、土蔵の地下室の奥の奥に封じ込めたけれど。
閑話休題
まあとにかく、ある日私はその土蔵で面白いものを見つけた。
古びたマイクとラジカセだ。
両方ともまだ壊れておらず、埃をはらって電池を入れれば簡単に動いた。
幸いにも、土蔵近くは普段は私以外誰も立ち入らない。近所もほとんど畑のようなものだった。
つまり、何が言いたいかというと、カラオケをするにはもってこいの環境だったのだ。
「――――――♫、――――――♪」
少し古めのCDを再生して、私は歌う。
音響に若干の不満があるが、贅沢は言ってられない。
それに前世の私はこういう娯楽には疎かったのだから、こういうのも面白い。
だから私は今日も歌う。
胸の鍵が日々輝きを強めていっていることも知らないで。
リハビリの意味を込めてひっそり投下