二つの鍵を持つ少女   作:火影みみみ

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第二話「未知」

 異変が起きたのは、カラオケを始めて一ヶ月半くらい経った時のことだった。

 私は自分の部屋で首にかけている鍵を指でつまみ、眺めていた。

 

「…………ん~」

 

 ここ最近、一人寂しく歌っているとどうにも胸の辺りが熱くなる。

 昨日、気になって見てみたのだけど、その時確かに鍵が光っていた。

 驚いて歌を止めると光はすぐに消えてしまったのだけど、あれは普通じゃなかったと思う。

 確実に歌が関係していると思うけれど、歌をエネルギーに変換する技術はこの世界にはない、と思う。

 少なくとも、私が今の年齢になるまでそんなことは聞いたことはなかった。

 となると、この世界は歌が重要なキーワードなんだろうか?

 ……だめだ、某超時空要塞しか思いつかない。こんなことならもっとアニメかマンガでも読んでおくべきだったかな。

 まさか、転生したあとにそんなことで後悔することになろうとは思いもしなかった。

 

 でだ。

 今私がすべきことは、単純に歌うか歌わないかの二択になる。

 好奇心に任せて何か変化があるまで歌い続けるのもいいし、君子危うきに近寄らずとも言うように蔵の奥底に封印するという選択肢もある。

 

「はぁ……」

 

 とてつもなく、面倒だ。

 鬼が出るか蛇が出るか、わかったもんじゃない。

 しかし、先が見えない筋トレにいい加減飽き飽きしてきたのもまた事実。

 ここらで一つ、刺激を求めても許されることだと思う。

 

「しゃーないかな」

 

 私は動きやすい服に着替えて、蔵へ向かう。

 これから何が起こるかわからない、そんなドキドキを胸に秘めながら。

 

 

 

 

 歌うこと三曲、歌うごとに輝きが強まってきている気がする。

 いや、胸に感じる暖かさも増していることからたぶん強まっていると思う。

 気持ちを込めて歌えば、もっと効果が出るのだろうか。

 そんなことを思いつつ、次の曲を準備する。

 

「♪~」

 

 いつもより楽しく歌えて、私の気分も上がっていたのだと思う。

 ついつい鼻歌混じりに次の曲を探していた。

 

――ガコン

 

 背後から変な音がした。

 

「…………え?」

 

 ゆっくりと、私は 後ろへ振り向く。

 

 いつも見慣れた蔵の中に、その中に一つだけ見慣れないものがあった。

 一言に言えば、それは椅子だった。

 もちろん、ただの椅子ではない。

 王様とか貴族の人が座りそうな豪華な作りの椅子だった。

 それも下に台みたいなものがあり、どうやら二人ならんで座る仕様らしく、中央と端に肘掛が設置されていた。

 

「わぁ……」

 

 試しに座ってみるとかなり座り心地はよかった。

 感覚的にはソファーに近いかもしれない。

 いや、この低反発感はソファーをも上回るかもしれない。

 

 などと、能天気にこの椅子の座り心地を堪能していると、ピコンと何か電子音のようなものが聞こえた。

 

「はて? なんだろ?」

 

 きょろきょろと辺りを見回してみると、外側の肘掛に何かタッチパネルのようなものがあることに気がついた。

 大きさは、ちょうど大人の手のひらサイズといったところだ。

 

「こんなの、さっきまでなかったと思うけど……」

 

 少し考えて、私はそれに触れる。

 

――ピッ

 

 指の先から手首にかけて一本の赤い線が走る。

 おそらく、これは手相などを認識しているのだと思う。

 使うのはこれが初めてだから、今は私のデータを入力しているのだろう。

 

「――っ!?」

 

 指先に鋭い痛みが走る。

 見てみると、人差し指の先に小さく血の珠が現れていた。

 先ほど触れていたパネルを見ても、怪我をするような所は見当たらない。

 

――ピ

 

 もう一度電子音。

 鳴り終わると同じくらいだったか、私の目の前、つまりは空中に薄い光り輝く電子画面のようなものが出現した。

 よくある未来のSFものではよく見られるものだけれど、実際にそんなオーバーテクノロジーを体験してみると、結構戸惑うものだ。

 

 空中に突如出現したそのモニターは、よくわからない文字のようなものを何種類も表示しては消し、表示しては消しを繰り返していた。

 ただ、二・三回見ているとその現れる文字にパターンがあることに気がついた。

 おそらく、これはどこかの国の文字だろう。

 それも一つの国ではない。これが造られた時代に存在して文字や、漢文のようなもの、果ては象形文字など様々な文字が表示され、消えていく。

 そうした作業の末、その電子画面はある言葉にたどり着いた。

 

『生体認証〈確認〉 言語検索〈終了〉 該当する言語〈日本語〉 現在時刻・暦確認〈完了〉 現在地〈特定〉 機能〈正常〉 異常〈なし〉』

 

 それは紛れもない、日本語だった。

 これがいつ造られたのか、私には創造もできないほど昔なのはさっきまでの体験でわかる。

 しかし、ならなぜこの機械は日本語を知っている?

 こんなものを造れる頃には、まだ日本語なんてなかったはずだ。

 それともこれは未来、または平行世界から呼び出したものだというのだろうか?

 ……いや、そうじゃない。違う。私の勘がそう言っている。

 

 私はもう一度、画面を見直す。

 言語検索、確かにそう書いてある。

 検索、つまりは調べたということだ。

 なら、どうやって?

 電子辞書ならば、内部に蓄えられたデータから目的のものを調べることができる。

 しかし、これはおそらくだが、そうではない。

 多分、パソコンのようなものだ。

 内部ではなく外部、これが起動した瞬間、どこかからデータを検索してきたのだ。

 先ほど表れたいくつかの言語、中には漢文も混じっていたと思う。

 つまりは、これが造られてから今までの間、どこかでデータを収集する装置があると思われる。

 

 それは現在地、と表示されている所からも想像できる。 

 これは示す現在地とは、文字通りこの倉庫がある座標のことだろう。

 つまりは、GPSのような機能を持っていると推測できる。

 もちろんGPSは発信機だけでは成り立たない。

 詳しくは私も知らないが、電波を発信する装置とそれを受信する衛星のようなもが必要だったはずだ。

 

 しかし、わからないことがもう一つある。

 どうやって私の主要言語が日本語だと特定できたのだろう?

 いくらデータが膨大でも、私が日本語を使うことは座標から推測は出来ても、完全ではない。

 日本語が不自由な外国人もいるのだから、そう考えると、自ずと答えは見えてきた。

 

「まさかこのイス、私の――」

 

――ピピ

 

 そんなことを考えていると、また電子音が鳴った。

 画面を見てみると、また新たな文字が浮かんでいる。

 ただし、日本語のままだ。

 

『新規使用者の名称を、入力、してください』

 

『音声入力、または端末からの入力も可能です』

 

「端末?」

 

 そう呟くと、私のお腹くらいの高さに光るパソコンのキーボードのようなものが現れた。

 何故か、本当に家電屋さんで売ってそうな感じのキーボードが。

 あれか、これはこの時代に常識も収集しているのか?

 

 まあ、物は試しだ。私はいつもパソコンを使うのと同じように、私の名前を入力する。

 驚くことに、それに触れると確かに感触があった。

 立体映像だけではないようだった。

 

 名前を入力し終えると、今度は先ほどとより多くのモニターが出現した。

 頭上、右下、左上、右上、左下、とにかく見える範囲の九割はそのモニターで埋め尽くされた。

 

「おお……」

 

 私は感動のあまり、それらに見入ってしまう。

 それらは様々な出来事を私に教えてくれた。

 地球の大気の動き、世界中の天気・温度、太陽系の星ヶの動き、今私がいるこの街の人の動き、そして私自身の生体情報。

 

 これは、面白い。

 

 私がいた世界では考えられないほどの技術を使って造られたこの機械。

 かつて存在したであろう文明。

 そして、それらが今も残っているという事実。

 それだけでも私の好奇心を引き出すには十分すぎた。

 

 だからだろうか、私はいくかあるモニターの中で、見慣れないもの項目のものを見つけた。

 

「フォニック、ゲイン?」

 

 

 




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