STARWARS スターバードとニューオーダー 二つの翼   作:バケツ頭 小説もどき家

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第3話『脱出』

「しっかり見張ってろよ」

「はい」

 

 そう命令して離れていく軍曹達。2236は上官のTH771と共に外への出入り口を見張る事となった。

 

 遠くから時折聴こえてくる銃声。反響したブラスターの唸り声が暗い通路内に響く。

 

「用がありゃ、呼ばれるさ」TH771は自分に顔を向けるルーキーに肩をすくめる。「俺たちはここで待機してればいい。気楽にいこうや」

 

「……了解です」

 

 ルーキーは前を向いた。771の鼻歌とブラスターの銃声を聴きながら、彼は通路の奥を見つめた。レクス中隊と分隊の仲間達は今頃、ドロイド相手に激しい銃撃戦を繰り広げている、それなのに自分は出入り口の見張りだなんて。全くついてない。

 

 退屈さと771の鼻歌に我慢できなくなった頃、人影が通路の奥から現れた。

 

「誰だ?!」

 

 771がライフルを構え、2236もそれに続く。

 

「助けて!」女性の声だった。ひどく怯えているようだ。「奴らに捕まってたんだけど、戦闘の混乱から抜け出してきたの……!」

 

「捕虜の一人か。面倒な」771はため息をつく。「両手を挙げて、ゆっくりこっちに来い! はやく!」

 

「わかった!」

 

 近づく人影。暗闇のベールが解かれ、背の高い女性が目の前に映し出される。

 

 その美貌に背筋を伸ばし、咳払いする771。女性は若く、表情は怯えていても、その顔はとても整っていた。

 

「おっと──もう大丈夫だ。お嬢さん」と、771は声を掛けた。「俺達は君達を救助しに来た。この極寒の地獄からね」

 

 なんて芝居がかった口調だろう。771が停泊地への上陸許可取り消しの常連なのも理解できる。

 

「助かった……」と、女。「もうダメかと思ったわ」

 

『こちら、アベンジャー。デッキに着陸した。待機する』

  

 コムリンクにシャトルからの通信が入った。

 

「ついてるね、お嬢さん」と、771。「直行便が到着したようだ」

 

「ありがとう……恩に着るわ」

 

「シャトルまで案内しよう。2236、ここを見張っててくれ──アベンジャー号へ、女性を一人──」

 

「身元のチェックはしないんですか……?」2236が771に聞いた。「規則では──」

 

「大丈夫だろう。気にしすぎだ」そうとだけ言って、771はシャトルのパイロットとの通信を再開する。「女性を一人保護した。そちらに連れて行く」

 

『了解』

 

「こちらへ、お嬢さん。シャトルまで連れて行こう」

 

 771に案内されながら出入り口をくぐる女。

 

「何だか嫌な予感がする……」

 

 2236は妙な不安を感じるのだった。

 

 

 

 

 

 

 レクス中隊とストームトルーパー達は施設最深部を制圧した。守備戦力はB1バトルドロイドばかりであり、被害は三人のストームトルーパーが負傷した程度であった。

 

 制圧するまでに確保した非戦闘員の数は十七人。上で確保された女性を含めると、十八人だ。非戦闘員達はエントランスに並べさせられ、搬出の時を待っていた。

 

「よし、聞けお前達」

 

 集結する部下達の前に立つヘイスティン。室内では寒冷地装備が暑すぎるのか、彼はヘルメットを外している。ヘイルは彼のやっきりとした表情を静かに感じ取った。まるで大人に怒られた少年の様であった。

 

「先ほどスターデストロイヤーのお偉方からお怒りのメッセージが届いた。捕虜達の身元チェックは確実に実施しろとの事だ。どうやらスターデストロイヤーでトラベルビスケットを貪っている連中は僅かな労力もリスクも割くつもりは無いらしい」

 

 ブーイングや失笑が沸き起こる。

 

「なので今回はシャトルに乗せる前に身元チェックを実施する。反乱軍のシンパや構成員、政治犯だと疑われる者はグループから引き離し、ISBの到着まで拘束するんだ」

 

 ヘイスティンは一度言葉を切り、部下達を見渡した。

 

「疑わしい奴は全員引き剥がせ。その後の判断はISBがやる──質問は?」

 

 沈黙。それが答えだった。

 

「よし、作業開始だ」ヘイスティンはヘルメットを被り直し、手を叩いた。「手早く済ませるぞ」

 

 

 

 

『771。現在、非戦闘員の身元チェックを実行中だ。お前も──』

 

「嘘だろ? 俺の地元も同じだよ」

「そうなの?」

 

 シャトルの前で女性と雑談に花を咲かせるトルーパー。コムリンクから聴こえてくるノイズ混じりの音声が笑い声に掻き消される。だが、聞いている者がいないわけではない。

 

「奇遇ね。私達」

 

 タラはトルーパーに笑みを浮かべながら、コムリンクの通信に耳を傾ける。偽の身分など用意していない。いくら変わってるとは言っても、目の前のトルーパーが身分の照会を求めてくるのは時間の問題だろう。

 彼女はトルーパーが手に持つE-11に視線をチラリと向け、脳内でそれを奪う場面をイメージする。

 

 シャトルの昇降ランプは完全に降りている。

 

 ブラスターを奪い取り、トルーパーを無力化して素早くシャトルの昇降ランプを駆け上がる。そしてシャトルのコックピットを制圧して惑星を離れる。完璧とは言えないが、そうする他にない。

 

「俺の通ってたスクールはグラヴボールの名チームがあって俺も在籍してたんだ。知ってるか? ガンダーク・クローを」

 

「ええ、知ってるわ。地元じゃ知らない人はいないわ」

 

 走り込んでくるトルーパー。横目でそれを視認すると、タラの心臓が高鳴った。今しかない。

 

「なっ――」

 

 タラはE-11の銃身を掴み、内側へ引き込む。そしてバランスを崩したトルーパーの胸部装甲へ、肘を叩き込む。

 

 倒れ込むトルーパー。

 タラの手に握られたライフル。

 

 タラは迷わずにトルーパーにブラスターを食らわした。

 

「クソ!」

 

 走っていたトルーパーは停止し、ブラスターを乱射する。

 

 ライフル程の正確さはないが、弾幕は激しい。タラは後方に退きながらライフルを発砲し、昇降ランプを駆け上がった。

 

 入り口がロックされる前にタラはコックピットになだれ込んだ。銃を構えて立ち上がる副操縦士。彼はノラの放った光弾に倒れ、動かなくなった。

 

「離陸しなさい!」

 

「断る!」銃を突きつけても操縦士は動じなかった。「降伏した方が身のためだぞ」

 

 やむを得ない。タラは即座に判断を下し、操縦士を射殺した。

 

 死体をどかし、シートに座る。ラムダ級の操縦なんてアカデミーでのシュミレーション以来だ。彼女はまず昇降ランプを格納し、外敵の侵入を防ぐ。

 

「……大丈夫よタラ。あなたならできる」

 

 タラは操縦桿を握り、ゆっくりと機体を上昇させた。

 

 

「こちら2236! デッキでトラブル発生! 一名負傷! シャトルが奪われる!」

 

 上昇していくシャトルにDLT-19を乱射する2236。シャトルは宙に浮かぶと、可変翼を変形させ、空高く舞い上がった。

 

 

 

 

 

 

 タラは機体を上昇させ、大気圏を離脱した。大気の層を抜けた先にはインペリアル級が待ち受けていた。インペリアルⅱ級一隻にタータン級複数。TIE編隊もハンガーから既に飛び立ち始めている。

 

『投降せよ。望みはないぞ』

 

 通信機から聴こえてくる士官の声。タラは打開策を考える。

正面を塞ぐ主力艦。その左右に展開するタータン級。次々と出撃するTIE編隊。

 ここで諦めるわけにはいかない。タラは操縦桿を握る手に、わずかに力を込めた。ウェポンシステムのパワーをシールドとエンジンに振り分け、全速力で前へと突っ込む。

 

 無謀なのは分かりきっていた。だが、こんなにも早いとは。スターデストロイヤーから放たれたイオンが命中し、シャトルは全てのエネルギーを喪失した。まるで宙に浮かぶ的だ。 

 

 スターデストロイヤーへ勝手に引き寄せられる機体。トラクタービームが照射されたのだろう。「……ダンクファリック」徐々に近づくスターデストロイヤーの姿を目にしながらタラは呟いた。

 

 周囲に横たわるパイロットの死体。最早言い逃れはできない。戦って死ぬか、捕まってISBの尋問を受け、その後は独房で腐るか強制労働を強いられるか。どちらにしてもお先真っ暗だ。だが、無駄に命を散らす真似はしない。チャンスは常にある。それがタラの信条だった。

 

 

 

 

 

 

 昇降ランプが降り切ると、ヘイル達はスターデストロイヤーのデッキに降り立った。爆倉に爆弾を装填中のTIEボマー。戦場から連れ帰った負傷兵達をバクタ・タンクへと搬送するメディック達。忙しないハンガーの片隅に捕獲されたシャトルはあった。

 

 シャトルから手を挙げて出てくる女性。彼女を直ぐ様取り押さえるトルーパー。

 

「俺たちが戻ってくる事なかったな。もう終わったみたいだ」強奪犯が捕まった光景を目にし、ドラグゼフが言った。「逃げようなんてバカなやつだ」

 

「ほんと」と、セレナ。「封鎖線を抜けられるわけないのに。ホント馬鹿」

 

 笑って兵舎区画へと行く仲間達。

 ヘイルはヘルメットを外し、ISB士官に連行される女性を静かに

見つめた。

 

「投降したみたいですね」

 

 ヘイルの隣に立つトルーパー。素顔はヘルメットに隠れているが、手に持つDLT-19で誰かが分かった。2236だ。

 

「ええ」と、ヘイルはトルーパーに顔を見る。「仲間の事は残念だったわね……」

 

「はい……」2236は息を吐く。「致命傷は免れましたが、意識は戻らず、復帰できるかどうかは分からないそうです……」

 

「……そう」

 

「彼は同じアカデミー出身で良い上官でした……理想的な上官とは言えませんでしたが」 

 

 微かに微笑むヘイル。トルーパーは力なく笑い、ため息をつくと顔を下に向けた。

 

「自分のせいです。彼に逆らってでも二人で彼女をシャトルまで連れていけばこうはならなかったでしょう」

 

「自分を責めすぎないで、後から考えてもどうにもならないわ」

 

「ですが……」

 

 トルーパーは言葉を詰まらせ、ハンガーから立ち去る寸前の女を見た。その背中は、妙に落ち着いていた。

 捕まった者のそれではない。怯えも、絶望も、怒りすらも見せない。ただ静かに、自分の運命を受け入れているように見える。

 

 銃のグリップを強く握る2236。彼は自分の中で怒りが蠢いているのを感じた。

 

 

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