STARWARS スターバードとニューオーダー 二つの翼   作:バケツ頭 小説もどき家

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第4話『護送』序章

 通信を切ったヘイスティンは深いため息をついた。地表から戻ったというのに、早速任務だ。どうやら上層部のお偉方は今回の戦闘で得た捕虜を御所坊らしい。速やかに引き渡たさなければならない。

 

 ヘイスティンと彼の中隊はゴサンティ級に“吊り下げられて”シャトルの後ろを追っている。使い古されたゴサンティ級クルーザーに、真新しい次期主力TIE戦闘機。

 

従来型TIEファイターより鋭く伸びたソーラーパネルと、翼の先端を切り欠いた独特のシルエットが目を引く。漆黒の機体は整備を終えたばかりなのか傷一つなく、機体表面はハンガーの照明を鈍く反射していた。

 

『乗り心地はどうです?』

 

 ドラグゼフの声がヘルメットのコム越しに聞こえてくる。彼は超空間を進むシャトルに搭乗している。

 

「最高だ。そっちはどうだ? シャトルのパイロットになった感想は?」

 

『悪くないですね──戦闘機パイロットからシャトルパイロットになるなんて俺は“ラッキー”です。帝国アカデミーを卒業して、クソ難しい試験をパスした甲斐があるってもんです』

 

「一時的だ。シャトルパイロットが不足していたからな」

 

『どうだかね』

 

「捕虜の様子はどうだ?」

 

『静かなもんです。機内食を楽しんでますよ』

 

 ドラグゼフの呑気な報告に、ヘイスティンは苦笑した。

 

「そうか。騒ぎを起こさないなら、それでいい」

 

 今回の捕虜は、シャトルを強奪した女だ。

 ただの民間人ではないことは明らかだった。

 帝国軍人を躊躇なく撃ち、シャトルを奪い、封鎖を突破しようとした胆力。尋問にかければ、ISBが何らかの情報を引き出すだろう。

 

 もっとも、それは自分たちの仕事ではない。

 レクス中隊の任務は、捕虜を無事に引き渡すことだけだ。暗黒卿の元に。

 

 

 超空間の青い光がコックピットの窓を絶え間なく流れていく。

 ゴザンティ級は一定の速度を保ったまま航行を続け、シャトルもその前方を静かに飛んでいた。艦内では誰もが次の任務を待ちながら、それぞれの持ち場で時間を過ごしている。

 

 しばらくして、通信機から電子音が鳴った。

 

『まもなく目的地に到着する。超空間航行を解除』

 操縦士の声に、ヘイスティンはシートへ深く身体を預けた。

 

 数秒後、青い光の奔流が窓から消え去る。

 暗闇と小さな光が現れ、その虚無の中央に巨大な艦影が姿を現した。

 

 エグゼクター級スター・ドレッドノート。

 その巨影とその周囲を航行する主力艦は漆黒の宇宙空間に異様な存在感を放っている。外周では哨戒任務中のTIE編隊が幾重にも警戒網を築いていた。

 

「全機、切り離せ。エスコートに移る」

 

『了解』と、ヘイル。

 

『イエッサー』と、バイグ。彼は義手と義足姿のエースだ。

 

『了解。あの艦では美味い料理が食べられるかしら?』と、セレナ。

 

「どうだろうな」

 

 ヘイスティンは僚機が編隊を形成したことをスキャナーで確認し、速度をシャトルに合わせる。

 

「どのみち堪能している時間はないぞ。捕虜を届けたら艦隊に戻るんだから」

 

『それは残念』

 

 漏れ聞こえるセレナのため息。

 

『最大の艦だから食事も豪勢だと期待してたのに』

 

『俺は早いとこオサラバしたいですね』と、ドラグゼフ。『あの艦を率いているのは誰だと思います? 最高司令官の暗黒卿殿です。おっかなすぎて食事なんて喉が通らねぇや』

 

「お前じゃ、三秒ももたずに処刑だな。ドラグゼフ」

 

『その瞬間を是非みたいものね』と、セレナが笑った。

 

『はいはい』

 

 部下のやり取りにヘイスティンが笑いを浮かべていると司令船から通信が入った。バリバリというノイズ音の後に士官の声がヘイスティンの耳に響く。

 

『本艦に接近──に告ぐ。直ちにコースを変更せよ。当艦隊は間もなく超空間航行に移行する』

 

「こちらレクス中隊。我々は命令通り、捕虜を護送しに来ました。任務コード144……──」

 

『引き返せ。着艦は許可できない』

 

 士官の声は冷たかった。

 

「……了解」ヘイスティンは通信をローカルに切り替えた。「全機引き返すぞ。どうやら我々はお呼びじゃないらしい」

 

 

 

 

 

 

 

『門前払いってことですか?』

 

『そのとおりだ』

 

『サイアク。ここまで来たのに』

 

『そう言うな、セレナ。よくあることだ。スタードレッドノートを拝めただけでも良しとしないと。……よし、全機ポイント221に移動、シャトルが超空間に入るまで護衛する』

 

 

「了解」

 

 ヘイルは操縦桿を右に傾け、反転するシャトルにしっかりと自機を合わせる。

 任務のキャンセル。恐らく艦隊は新たな獲物を見つけたのだろう。どちらにしてもシャトルの捕虜を必要としなくなったのは事実だ。捕虜にとっては幸運か不幸かは分からない。

 

(何だか嫌な予感がする……)

 

 ヘイルは超空間に消えていくシャトルを目にしながら、胸騒ぎを感じた。その気持ちに反応するかのようにコックピットに吊り下げられた御守りのツリーが不意に揺れるのだった。

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