ポケモンバトルランカーズ〜クソゲーハンターの挑戦〜 作:マロニエ19号
無数の樹が広がる雑木林では、あちこちから蝉の鳴き声が喧しく響き渡っている。そんな中、一人の男がトカゲのように木に張り付いた状態で獲物を睨みつけていた。
その時、雑木林の中では不釣り合いなピーーーッというアラーム音が鳴り響いた。男が虚空に視線を向けると、そこにはCREARの文字が浮かんでいた。それを見た男は大口を上げて、歓声を上げた。
「よっひゃあ! はいひゅうふてーひ、ふりあしたぞー!」
大きく口を開けたことで、男の口からは無数の哀れな蝉達が空に向かって飛び出していく。一週間しかない寿命も、あんな目に遭えばストレスでマッハだろう。可哀想なことをした。まぁ、ゲームだから関係ないが。
そんなことを思いながら、ほんの少しの余韻に浸りながらヘッドギアを外した俺こと陽務楽郎が真っ先にしたことは、洗面所に駆け込み、口の中の蝉が蠢く感触を洗い流すことだった。
「うげぇ……もう蝉なんか見たくねえな。蝉のいない季節で助かった……」
洗面所から出た俺は呻きながら、窓の景色に視線を向ける。今は十月、あの癪な鳴き声は聞こえない。八月の夏休みにやらなくて正解だった。レビューの一つに、『夏休みにプレイするのはマジでやめた方が良い』とあったけど、本当にその通りだったと思う。
部屋に戻ると、俺は早速、忌々しいゲームのチップをパッケージにしまう。そのパッケージにはデカい蝉が描かれている。
『セミGARI!』 これが俺がさっきまでプレイしていたクソゲーの名だ。
このゲームは、広い雑木林の中で制限時間内に、目標数の蝉を捕まえるという至ってシンプルなものだ。虫取り網と虫籠で蝉をひたすらに捕まえる。そして、ステージが進むと蝉の種類も増えていき、複数種類の蝉をそれぞれ決められた数捕まえろというものに変わっていく。
ただ、このゲームはステージが進むと、蝉が木の上の方にしか止まらなくなるのだ。そうなると当然虫取り網で捕まえることができない。木をよじ登りながら蝉を捕まえることができるのだが、厄介なことにステージが進むと蝉の反応速度も上がっていくので網を構えようとしたり虫籠が枝に当たるだけで蝉もどこかへ逃げて行ってしまう。
なら、どうするか。虫取り網も虫籠も捨てて体一つで捕まえるしかないのだ。都合の良いことに、人間の身体には網と籠両方の役割を担うことができる器官が存在する。つまりは、口で蝉を直接
人間を辞めた動きをするのは今までのゲーム(ゴリライオンラインや便秘)で慣れているが、リアルな蝉を生きたまま口に咥えるのは、二度と経験したくない。
『少年時代の記憶を呼び覚ませ!』がこのゲームのキャッチコピーだったはずだが、生きた蝉を口で捕まえるとかどこの世界の少年の記憶だよ。
そんなことを思いながら、俺はこのゲームを棚に
ちなみに余談だが、その日の夕飯のおかずはイナゴの佃煮だった。妹の瑠美はブツブツ文句を言っていたが、あの修羅場を経験してきた俺にとって死んで動かないだけ有り難かった。
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翌日の学校で、次は何のゲームをやるか俺は真剣に悩んでいた。そんな時、近くのクラスメイトの会話が耳に入ってきた。
「なぁ、先月発売されたポケモンのゲーム、結構酷くねえか?」
「分かる。あれ鬼畜すぎるだろ、色々な意味で。クソゲーだろ、クソゲー。期待外れだったよなー」
「それな。ああ、そうだ。こないだ出たシャンフロのアップデート情報だけどさ……」
ポケモン……ね。天下のポケモン様のクソゲーか。試しに調べてみると、「ポケモンバトルランカーズ」というゲームが出てきた。レビューを見ると、まぁ評判は高くないらしい。それでも星が五段階中三あたりなのだから流石は天下のポケモン様だ。
まぁ、ポケモンなんて小学生以来だし、久しぶりにやってみるのも良いかもしれないな。早速帰りにいつものゲームショップに向かうことを決意した。
あくまで主人公が、ポケモンのオリジナルクソゲーをプレイするというのが本作です。原作より少し前の時系列という設定で書いています。