ポケモンバトルランカーズ〜クソゲーハンターの挑戦〜 作:マロニエ19号
「だぁああ! 畜生! あの石塊野郎! いきなり“だいばくはつ”かましてくれやがって!」
現れたと思ったら、初手で自爆してきた色違いのイシツブテに、ムカつきながら、俺はリスポーン地点であるポケモンセンターに飛ばされていた。
ポケモンセンターは、今までのゲームではポケモン達の回復を無料でしてくれる場所だが、このゲームではそれだけではない。プレイヤーのリスポーン地点も兼ねている。
「だが、新しくポケモン達を仲間にできた。このまま、ランキングに挑んでみるか。今のままでどこまで通用するかまだ分からないしな」
そういうわけで、ポケモンセンターを出た俺は、そのままトレーナー達が蔓延るバトルゾーンへ直行した。そして、片っ端からトレーナーに挑みまくっていく。……言っておくが、これは色違いのイシツブテをゲットし損ねた鬱憤晴らしではない。
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……この四日間、何十戦ものバトルを繰り返して、なんとかランキング二位まで上がることができた。途中、このままじゃキツイということで、ワイルドゾーンでバトルして更にレベルを上げたりもした。おかげで、チコリータもベイリーフに進化したし、ポケモン達も新しく技を覚えたりした。技構成なんかも色々見直して自分なりのバトルスタイルを組み立てていったつもりだ。男子三日合わざるは刮目して見よという言葉があるが、心なしか俺もポケモン達もどこか凛々しくなったような気がする。
そういう訳で、次に挑むトレーナーは、ランキング一位のトレーナーだ。こちらからバトルを挑む時は、バトルゾーンにいる、自分と順位の近い上位ランカーがランダムに選ばれマッチングされる仕組みになっている。このまま留まっていると、下位ランカー達から鬱陶しいくらいにバトルを挑まれかねないので、早いところランキング一位とボストレーナーに勝って次のフロアへ行こう。
幸い、ランキング一位のトレーナーもこのバトルゾーンにいたようで、すぐにマッチングした。マッチングと同時に、俺の身体はバトルコートに転送される。
向かい側に、相手トレーナーが現れる。……が、その姿に思わず呆けた声が漏れる。
「おいーす、おいらはネズミーラット。素敵な夢の国からやってきた、ただのネズミだ。だが、ランキング一位であるおいらの実力は伊達じゃねえぞ。覚悟しろよ、不審者野郎」
相手トレーナーは、黒の全身タイツと赤のオーバーオールを合わせたどこか変質者っぽい服装に、ネズミ顔をした、何か色々と存在していて大丈夫なのか、心配になるアバターのトレーナーだった。しかもいちいち仕草がうざったらしく、どこか人をイラッとさせる。あと、俺は不審者じゃねえ。ちょっとフードを被って洒落た仮面をしているだけだ。
バトル開始の合図が出たので、俺達は同時にポケモンを繰り出す。まずは様子見を兼ねてツチニンで挑む。
一方のネズミ野郎はピカチュウを出してきた。相手が不利な地面タイプということで、ネズミ野郎は露骨に舌打ちする。だが、すぐにポケモンの交代はできない。ポケモン交代ができるようになるには、一定時間必要になるからだ。だからこそ、一番手のポケモンには弱点の少ないタイプだったり、相性差を補える技を覚えたりしたポケモンがベストだったりする。
「ツチニン、“あなをほる”!」
「ピカチュウ、“でんこうせっか”!」
ツチニンが地面を掘って潜ろうとするが、ピカチュウの方が速い。すぐに間合いを詰めて、体当たりを仕掛ける。ツチニンはダメージを受けるも、“でんこうせっか”はそれほど威力は高くない技なので、そこまで問題はない。ツチニンもすぐに立て直して地中に潜っていく。すかさず、ピカチュウが“かげぶんしん”で分身を作って攪乱していく。大方、命中率を下げるつもりなのだろうが、そんなもの俺の複眼ツチニンには関係ない。偽物には目もくれず、本物のピカチュウに向かって攻撃を当てていく。
ピカチュウは効果抜群の攻撃を受けて大ダメージだが、まだ倒れない。その時、交換の制限時間が切れたのか、ネズミ野郎がピカチュウを戻してきた。次に出してきたのは、水・フェアリータイプのマリルだ。ツチニンに“みだれひっかき”を指示したが、マリルの“みずでっぽう”でアッサリやられてしまった。倒れたツチニンをボールに戻しつつ、俺も次のポケモンを出していく。
「それなら……ベイリーフ、お前の出番だ!」
元気よくボールから出てきたベイリーフは、スパイシーな香りを放ちながら目の前のマリルを睨みつけている。またしても相性の悪いポケモンが相手で、ネズミ野郎は顔を顰めている。
ベイリーフが“つるのムチ”で拘束して一気に“のしかかり”で押し潰してマリルを瞬殺していく。ネズミ野郎は「我がネズミ御三家がここまで追い詰められるなんて……」とかほざいている。ピカチュウでは相性も悪いので、次に出てくるのはまだ出していない三番手だろう。
そして、ネズミ野郎が三番手として出してきたのはラッタだ。まぁ、ネズミポケモンといえば、確かにそうなのだが、ピカチュウ・マリルと比べたら色々見劣りするな。そんな俺の内心を見抜いたかのように、ネズミ野郎が甲高く笑った。
「ハハッ! おいらのラッタを甘く見てもらっちゃ困るよ。挨拶代わりの“かみつく”!」
「ラタッ!」
「来るぞ、ベイリーフ」
「ベイッ!」
ベイリーフが身構えると、ラッタがその場から姿を消した。その次の瞬間には、ラッタがベイリーフの首元に噛み付いていた。突然の痛みに、ベイリーフは怯んで動きが止まる。
……は? いくらなんでも速すぎだろ、あのラッタ。そうこうしている間にも、ラッタは縦横無尽に動き回って攻撃を仕掛けている。ベイリーフもラッタの動きに全然ついていけてない。
「それなら……“どくどく”!」
「なんだって!?」
ネズミ野郎は驚くが、もう遅い。ラッタがこちらを攻撃してきたのと同時に毒状態にしてやった。トレーナー戦でゲットしたBPを貯めまくってこいつに覚えさせた甲斐があったぜ。何せ、このベイリーフ、粉系の技を覚えられないからな。毒状態になれば、時間が経てば勝手に向こうが倒れてくれる。接近技しか使ってこないのが災いしたな、ネズミ野郎。
「ぐぬぬ……こうなったら、ラッタ、“きあいだめ”だ。そして、連続で“かみつく”! 一気に倒し切れ!」
「させるか! ベイリーフ、相手はもう毒状態。避けて時間を稼ぐんだ!」
ラッタは、素早い動きでベイリーフに襲い掛かる。“きあいだめ”で急所に当たりやすくなったとはいえ、心なしか技の威力も高い。多分、あのラッタは根性の特性を持っているやつか。……厄介だな。ベイリーフも技を避けきれていない。
とうとう、ベイリーフはラッタの攻撃にダウンしてしまった。だが、同時にラッタも毒で体力がゼロになったらしく、相打ちになった。これでお互いに残る手持ちは一匹ずつか。
ネズミ野郎は最後にピカチュウを、そして俺はカラカラを出す。地面タイプのポケモンに、ネズミ野郎はまたまた嫌そうな顔をする。このまま効果抜群の地面技で倒してやる。
そう思っていると、ピカチュウは草をかき分けるかのような動きでカラカラに突っ込んでいく。今のは“くさわけ”という技らしく、その名の通り草タイプの技のようだ。え? 待って、ピカチュウって草タイプの技使えるの?
カラカラが咄嗟に骨でガードしてくれたおかげで、大ダメージは避けられたが、何度もくらえば間違いなくこちらがダウンするだろう。再びピカチュウは“くさわけ”を使ってきたが、こうなったら一か八かだ。
「“かたきうち”!」
「カラカラ!」
カラカラは居合切りのような構えでピカチュウに迎え撃った。“くさわけ”と“かたきうち”が激しくぶつかり合う。そして、倒れたのはピカチュウだった。先程の戦いでツチニンの“あなをほる”のダメージを受けたことや仲間が倒れたことによって“かたきうち”の威力が上がったことが勝利を掴んだのだろう。
こうして、俺は晴れてランキング一位に上がった。
ネズミ野郎は、悔しそうにしつつも、俺の健闘を讃えてくれた。
「悔しいが、おいらの負けだ。だけど、次は勝たせてもらうよ。ハハッ! そうだ、最後に一つだけ忠告しておこう」
「なんだ? 負け惜しみか?」
激闘の末の勝利なので、俺は今最高に気分が良い。敗者の負け惜しみくらい甘んじて受けよう。
「著作権はちゃんと守ること。良いね?」
「………………」
それ……絶対お前が言えることじゃないと思う。
その後に挑んだボストレーナーのタツオミは、まぁ強いっちゃ強かったが、所詮はNPCなので、割とすんなり勝つことができた。確かに何度かヒヤリとした場面もあったが、正直なところ、さっきのブーメランネズミの方が強かった気がする。多分、あのネズミが次のフロアに来るのも時間の問題だろう。
そんなことを思いながら、俺は次のフロアへの入口の前にいた。次のフロアに進むと、もう前のフロアに戻ることは出来ないらしい。だが、躊躇する気はない。俺もポケモン達もそんなことで止まらない。俺は足を踏み入れて、次のフロアに進んだ。
余談
トレーナーバトルはバトルゾーンで行う。トレーナーにはプレイヤーもNPCもおり、勝利するとBP(バトルポイント)が貰える。貰ったBPは、ポケモンセンターにあるBP引き換え所でアイテムを購入したり、ポケモンに技を覚えさせたりすることができる。ちなみに、プレイヤーの方が、NPCよりも貰えるBPが多い。サンラクが戦ったネズミ野郎はプレイヤーである。