いたずらアクマ   作:ココリンク

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12話!!!!!!!!!!!! 天使のアクマⅠ

駆流の暴走事件の翌日。

 

よく晴れた空から太陽の輝きが街中を照らしている。

 

そんな中、いつも元気でとにかく元気で、元気いっぱいなとこが取り柄というべき舞維が珍しく暗い顔をしていた。

 

いつも被っているスポーツキャップも、顔に影を作っているように見える。

 

 

大好きな友達のアクマのデビルルがいつもと様子が違った。

 

駆流の暴走を食い止めてくれたのだが、その方法が強引でデビルルの主である憑の体を乗っ取り、用が済むと投げ捨てた。

 

舞維はアクマとその主は仲良しであるべきと思っている。

 

だから、憑にイタズラばかりするデビルルに注意して最近ようやく止められて来たと思ったばかりの出来事だった。

 

 

普段はおちゃらけて憑と仲良くなる前から、教室で遊ぶこともあったくらいなのに、そのとき舞維はデビルルに恐怖を覚えてしまった。

 

 

「……あっ…!!」

 

舞維がふと顔を上げると、道端の生け垣に向かってしゃがんでいる憑が見えた。

 

なにかに集中している様子だ。

 

隣にも肩にも、デビルルはいない。

 

 

(憑ちゃん……大丈夫だったのかな……?)

 

舞維は不安そうにアゲエを見ながら思った。

 

アゲエの翅につく、姉の形見のビーズがキラキラ光っている。

 

舞維はそれを見て、指で口角を少し引っ張り笑顔を作ると、軽やかなステップで憑に近付き

 

 

「おっはよー!!」

 

と憑の2本のアホ毛を掴んで元気に挨拶した。

 

 

「わっ……!?」

 

憑は肩をビクつかせ驚き

 

「………あ……」

 

視線の先にいたテントウムシが飛んで逃げていくのを目線で追った。

 

 

舞維もテントウムシの行方を目で追ったあと、憑の顔を見る。

 

「あ……!

ごめん、憑ちゃん……!!

邪魔しちゃった?」

 

誰が見ても悲しそうな表情を浮かべる憑に、舞維は平謝り。

 

憑は目線だけ舞維に向けると、唇を尖らせながらコクリと頷いた。

 

「ごめんね……!!

あたし……見付けてくる!!」

 

舞維はそう言うと立ち上がり、肩のアゲエを飛ばそうとしたが

 

「あ………そ……そこまで…………

大丈夫……」

 

憑も立ち上がり、まだ小さいがいつもよりかは大きな声を出して止めた。

 

「え……でも……」

 

舞維は不安と心配が入り混じった顔で憑を見た。

 

「あ……え…………

少し……見てた……だけ……。

…………好き……だから。

……テントウムシ」

 

憑はいつも笑っている舞維の珍しい表情に戸惑いつつも、自分の元気を分けてあげようとニコリと笑った。

 

舞維は呆気に取られたような顔をして頷くと、またアホ毛を掴み

 

「やさしいね……憑ちゃん」

 

と落ち着いた口調で言い、微笑んだ。

 

憑は舞維の珍しい口調に不思議そうな顔をする。

 

「学校行こう!」

 

舞維は憑のアホ毛を両手で揉みながら元気に言った。

 

憑は嬉しそうな顔をしてゆっくり頷いた。

 

 

 

 

 

昨日──

 

「デビルル……っち?

あなたは…………なんなの?

……………。

憑ちゃんにこんなことして!!

ポイ捨てするなんてひどいよ!!

言ったよね!! 憑ちゃんにひどいことしたら殺すって!!」

 

意識を失った憑を庇いながら、舞維はデビルルを詰った。

 

主をぞんざいに扱い不可解な行動は怖かった。

 

でも、ひと言ごめんなさいと言ってくれれば。

 

舞維はそう願った。

 

まだデビルルを信じることができると。

 

でも

 

「ケケ。

なんなのって、俺様はそこのヘナチョコのアクマだ。

それ以上でも以下でもねえよ!」

 

デビルルは悪びれる様子もなく、不敵に笑う。

 

足元に転がる手のひらサイズの石を拾い、お手玉のように片手で投げる。

 

「なんだよ舞維っち、そんな顔すんなよ。

ヘナチョコは心配するな、俺様に任せりゃ明日には元気になってるよ」

 

デビルルは石をつかむと、憑へと近付く。

 

舞維は両手を広げて憑を庇った。

 

「ちゃんと答えて!

なんで作戦通りにしなかったの!!

憑ちゃんを危ない目に合わせて……怪我したらどうするの!!?」

 

「ケッ!

散々俺様に殺すって脅しといてよく言うぜ!

俺様が悪いやつみたいじゃねえか!!

俺様が悪魔のアクマだからか?

ケケッ!!

じゃあ、悪魔の契約と行こうぜ!!」

 

デビルルはニヤッと笑うと

 

「俺様がヘナチョコを乗っ取ったことを誰かに話したら殺すからな」

 

石を片手で粉々に粉砕した。

 

「俺様と舞維っちはバイブスアゲアゲの友達だろ?」

 

デビルルは舞維の肩を掴むと、乱暴に引き離した。

 

危うく転びそうになるくらいの力だった。

 

舞維はデビルルが自分では扱いきれない勝てない何かを持っていることに本能で理解した。

 

デビルルは憑の体を乗っ取り

 

「バイバイ」

 

と憑の声なのに、デビルルのトーンで言うとそのまま歩いて去ってしまった。

 

 

それから残された舞維は暴走が止められたことだけ話すと、チーム・インセクトの仲間や学校の先生に任せ、傷心の中、家に帰った。

 

デビルルの行動についてはもちろん誰にも言えていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

舞維は憑の隣を歩きながら、チラチラその様子を見る。

 

怪我があるわけでもなければ、昨日の事件を引きずっているわけでもない。

 

綿多の暴走事件の時の勇気や、本人でも知らない過去を知りたがる強かさがあることは舞維もわかっていたが、不気味なくらい何もないのだ。

 

憑はその視線に気づいている様子であり、少し顔をそらし恥ずかしがる。

 

「そういえば、デビルルっちは?」

 

舞維はずっと黙って観察するのがまだるっこくなり、直接訊いた。

 

憑は少し不満げな表情をすると

 

「…………朝から起きないの。

寝てる……」

 

とぼやいた。

 

「疲れてるから……今日はいかないって…………。

寝させて………って。

起きないから寝させてる……。

だから……その……寝てる」

 

憑は話の終着点を見失った様子で寝てると言い続けてしまった。

 

舞維はデビルルの不在の確証に、内心ホッとした。

 

「そうなんだ!

珍しいね!!」

 

舞維の明るい口調に安心したのか、憑も微笑んで頷くと

 

「うるさくないから……こういうのも……好き」

 

と小さく呟いた。

 

 

舞維は笑っている憑の顔を見て安心する。

 

だからこそ、さらなる安心も求めた。

 

「そういえば憑ちゃん。

昨日、あれから大丈夫だった?」

 

「…………?

昨日……?」

 

舞維の問いかけに、憑はキョトンとした顔をし首を傾げる。

 

「うん。

ほら、憑ちゃん倒れちゃったから」

 

舞維の補足に憑は目をパチクリさせた後、ゆっくりと頷いた。

 

「……?

え……どっち……?」

 

その頷きが大丈夫だったのか、倒れたことへの事実確認のものなのかが分からず、舞維は改めて訊いた。

 

が、そのとき

 

憑たちが住む下町には似つかわしくない白い高級車が、2人の横を通り抜け、小学校の校門の前に止まった。

 

2人はさっきまでの話は忘れて釘付けになる。

 

「平べったあ…!!

なんだろうね!?

憑ちゃん!」

 

舞維は珍しい車に興奮した様子だ。

 

憑も物珍しそうな顔をし頷く。

 

 

周りの児童の視線を集めながら、車のドアが開いた。

 

 

(……あ……。

あの人……)

 

車から降りた人物に憑は見覚えがあった。

 

綺麗なウェーブのかかった茶色のロングヘアー。

 

年は同じくらいに見えたが、思わず見惚れる優雅な立ち振る舞いと、高そうな白いワンピース。

 

昨日、駆流からインタビューを受ける前に公園の前ですれ違った子だ。

 

 

その女の子はランドセルを背負うと、車の中になにか一言かけると、1人校舎へと歩いていった。

 

 

 

「かわいい!!

なにあれ!! ねえ!! 憑ちゃん!!

お嬢様みたいだったね!! なにかなあ!!

転入生かなあ!!!」

 

舞維は非日常的な可憐な少女に興奮し、憑の腕を掴んでブンブン振り回す。

 

「じょ……城都さん………。

おちつ……いて………」

 

憑は舞維の勢いに体も振り回されそうになってしまう。

 

「行こう!!

憑ちゃん!!!」

 

だが、舞維は止まらず憑の腕を引っ張り教室まで走って行った。

 

 

 

 

 

 

ほとんど走るくらいの早足で教室に着いた舞維と、勢いに目を回しながら引っ張られている憑。

 

「文実ちゃん!!

おはよー!!」

 

舞維はチーム・インセクト仲間の文実に挨拶する。

 

文実は振り返り挨拶を返そうとしたが

 

「おう、おは

 

「ねえねえ聞いてよ!! 今朝さ!!

なんかすっごく真っ白ですっごくぺったんこな車が停まってさ!!

すっごくかわいくてすっごくきれいな子がでてきてさ!!!

転入生かな!! 転入生だよね!! 何年生だろう!! 同い年かなあ!!」

 

舞維は文実の挨拶を待たずに、興奮した様子で喋り続ける。

 

腕をブンブン振り回しているため、その度に憑が前後に揺れて、更に目が回っていた。

 

「ちょっと待て…!

話が見えない……。

あと、それ!」

 

文実は何のことかさっぱりわからず、舞維を止めると、フラフラの憑を指差した。

 

「それ…?

……あ! ごめん!! 憑ちゃん…!!」

 

舞維はようやく憑が目を回していることに気付き、手を離した。

 

憑は蹲り、顔を青褪め口を手で押さえてしまう。

 

「大丈夫…!?

憑ちゃん……

ごめんね……」

 

舞維は慌てた様子で憑の背中をさすり、謝る。

 

「ちょっと休む……

えっと……保険室……いく?」

 

憑は黙って小さく首を横に振る。

 

「えっと……じゃあ……」

 

「放っておけよ。

自分で大丈夫言ってんなら大丈夫だろ」

 

あたふたする舞維に、文実は呆れた様子で言った。

 

「でも……」

 

舞維は不安そうな顔を文実に向ける。

 

「らしくねえな……昨日もそそくさ帰っちゃうし。

こっちは大変だったんだぞ。

倒れた不破原を運んだり、先生たちにアクマ暴走のこと伝えたり…………まあ、過ぎたこと言ってもしゃーねえか」

 

文実は再び呆れ風に言うが、舞維はいつものようにおどけたり、文句を言ったりする様子がなく更にしおらしくなる。

 

文実は不思議に思いながら、蹲る憑に目線を向ける。

 

「……お前もなんか言ったらどうなんだ?

保険室行くのか? 行かないのか?

席に座ってた方がいいのか? それとも舞維によしよしされてたほうがいいのか?」

 

憑はちらっと顔を上げると、ぎりぎり聞こえるかどうかの声量で

 

「1人ですわってる」

 

と言った。

 

「そう。

じゃ、立て」

 

憑は頷くとゆっくりふらふら立ち上がり、自分の席に向かって行った。

 

舞維は口をもごつかせながら手を伸ばしたが、何もできず何も言えなかった。

 

 

 

そのとき

 

舞維の手に、モコモコが乗っかった。

 

「おはよー」

 

綿多がのほほんとした様子で挨拶した。

 

「どったのー? 舞維ちゃーん。

珍しく元気ないねー」

 

綿多は舞維の顔を覗き込むようにして話し掛ける。

 

モコモコも舞維の肩に移動して、頬擦りする。

 

舞維はモコモコのふわふわな毛並みが大好きで、笑みが溢れていた。

 

「出門を振り回しすぎた反省中なんじゃねえの?」

 

文実は皮肉っぽくそう言うとトイレに行くのか、廊下へ出て行った。

 

舞維の表情はまた暗くなる。

 

綿多は舞維の帽子のつばを引っ張り目深に被らせた。

 

「わあ…!

なにするの……!? ふわっち!!」

 

予想外の行動に舞維は帽子を直しながら綿多に文句を言う。

 

「舞維ちゃーんがふわふわな私が好きなよーにー、私もアゲアゲの舞維ちゃんが好きだよ」

 

綿多はイタズラに笑った。

 

昨日のお返しというべき言葉に、舞維はふふっと笑うと

 

「もー!!

好きって告白かあ!!」

 

と綿多の背中をビシバシ叩きながら、いつものハイテンションで返した。

 

「いっ……あ……ちょ……

モコモコ……!!」

 

綿多はその勢いに昨日のお腹の痛みが再発しそうになり、モコモコに助けを求めた。

 

モコモコは大きな毛玉になり、舞維を包み込む。

 

「わ……ああ……きもちいい」

 

舞維は極楽気分になり、蕩けた声を出す。

 

「……0か100しかないのかなー……この人……」

 

綿多はそう呟くとモコモコを肩に戻して、憑に駆流を止めてくれたお礼を言おうとしたが、どっぷり疲れている様子だったため、自分の席に向かった。

 

が、

 

(あれー?

なにか席増えてるー?)

 

一番後ろの窓側に昨日までなかった机と椅子が置かれていた。

 

(転入生? そーいえばなにか騒がしかったようなー)

 

「ねえねえ! ふわっち!!」

 

考えていた綿多のサイドテールを舞維が勢いよく掴んだ。

 

「わー! 復活はやー!!」

 

「あれなんだと思う?

転入生かな? 転入生だよね!!

ねえねえふわっち見た!?

今日、校門の前に長くて平べったくて綺麗な白い車停まってさ!!

そこから綺麗で可愛い子が降りてきたんだよ!!!

絶対その子だよね!!」

 

(情緒どうなってんだー……)

 

さっきまで暗かったのに、今では興奮気味の様子の舞維に綿多は心の中で突っ込む。

 

「あー……だからいつもより騒がしかったんだー。

……というより、長くて平べったい車ってなにー……?」

 

「わかんない!! でも!!

凄かった!!」

 

「薄ー……

それよりーもうすぐ朝の会始まるよー」

 

「あ!

そうか!! その時分かるか!!

テンション!! アゲッアゲエ!!!

ありがとう!! ふわっち!!」

 

舞維は興奮した様子で、サイドテールをピクピク動かすと、パッと離して自分の席に向かって行った。

 

「…………いつも以上にわからないー」

 

綿多は目を丸くして、モコモコにそう言った。

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