モコモコのアクマ暴走事件から数日後。
金曜日の中休み。
憑は窓際の席で静かに本を読んでいた。
あの日、綿多と舞維と一緒に登校したが、憑はうまく話せず、聞かれたことに一言二言で返すだけだった。
アクマ暴走やアクマ合体について訊かれたが、アクマ暴走に関しては最初に見た記憶がほとんどない。
アクマ合体は、褒められたもののまだ苦手意識があったので深く語ることはできなかった。
教室に着いたら、2人はそれぞれ元の友達のところへと行ってしまったので、結局、憑は変わらず1人本を読むだけだった。
クラスの掲示板に飾られたクラス新聞は、改訂版と銘打たれ、アクマ人気ランキングの1位がモコモコに書き換えられ、アゲエは2位になっていた。
舞維は新聞係に口酸っぱく、不正をしないことを言い付けたのでこの順位は本物だ。
この日はクラスの男子女子が10人くらい集まって、モコモコのかわいい仕草とアゲエの美しい所作を見詰めていた。
憑は楽しそうなやり取りを遠目からチラチラと見るだけだった。
「“あーあ、わたしもあそこに混ざりたいなー。
あそこに混ざって、このすばらしく優秀でとっても頼りになる超絶イケメンアクマを自慢したいなー”」
デビルルはまあるい姿で、憑の肩に乗り、憑の心の声を言うように喋る。
モコモコのアクマ暴走の影響はまだ続いており、未だに目と口が着いただけの黒い丸のままだ。
憑は無視して本に集中する。
「“本気を出せば人気ランキング1位は目指せるんだけどなー。 でも、今この超絶凄いスーパーハイパー絶大アクマ様の美貌が失われて” うぶっ」
流石に耳元でよくわからないことをずっと言っているのが、鬱陶しく思い、憑はデビルルをひょいっと摘み上げて、机に叩き付けた。
「いて…!
なんだよ! ヘナチョコ!!」
デビルルは飛び跳ねながら文句を言うが、憑は頬杖をついて余裕そうな笑みを浮かべて、デビルルを見下ろす。
「ヒマそうだね」
デビルルはここ数日、人間体になってなかった。
人間体の服装も戻っておらず、ひとりっ子でかわいい服装しか持ってない憑の服を使うわけにはいかないので、恥ずかしさでまあるい姿から変化できないのだ。
それにより、憑へのイタズラが減り、今のように口出しでイタズラされても、すぐにあしらえるので、どこか憑の心は晴れやかだった。
「うるせー!
誰のせいだと思ってんだ!」
それと引き換えに、デビルルは自由を失いご立腹のようだ。
「デビルル、このままの方がかわいいよ〜」
憑はイタズラな笑みを浮かべて、今までのイジワルの仕返しかのように、デビルルをコロコロ転がす。
「わっ! やめ!!
弱いものいじめ反対!!」
デビルルはわあわあ叫ぶが、憑はいつも威張っているデビルルを弄ぶのが楽しくなり、笑顔でデビルルを転がし続けた。
その背後から、こっそりこっそり人影が近付き
「つーきちゃん!!」
との明るい声と共に、憑の悪魔の角のようなアホ毛を掴んだ。
「うわっ!?」
憑は驚き、身を縮こませる。
それによりデビルルは解放されるが机の外に転がり落ちそうになる。
アゲエが舞維の肩から飛び立ち、デビルルを止めるが、デビルルは目を回していた。
「あ……ありがとな……アゲエ………
う……酔ったあ…………今まで喰ったオーラ吐きそう……」
憑が恐る恐る後ろを振り向くと
「よっ! 憑ちゃん!!」
舞維が嬉しそうな顔して立っていた。
「ど…………どうしたの……?
城都さん…?」
憑は1人でデビルルを転がしているのを見られたと思うと、急に恥ずかしくなり、赤面しながら舞維に尋ねた。
「だからあ!
舞維でいいって!!」
舞維は縮こまる憑の頭をわしゃわしゃ撫でながら、笑顔で言う。
「アクマ自慢終わったからさ!
そういえば、デビルルっちどうしたかなーって、見に来たの!」
「……あ、……デビルル………ね」
憑は自分でも無意識に期待外れな様子で呟いて、目を回すデビルルを見た。
「そうそう! 最近絡みに来ないでしょー!」
舞維は無邪気にそう言うと、デビルルの姿をチラリと見ると
「ってなんだー!
まだその姿なんだ!!」
と手を叩いて大爆笑。
「ウケる!
いや、待って……」
と、急に一旦冷静になり、改めてデビルルを見ると
「待って! ホントに待って!!」
どうやら、いつもバッドボーイしてるデビルルが、小さくまあるい姿でクラクラしているのが笑いのツボに入ったらしく、舞維はケタケタ笑っていた。
「だ……だいじょ……ぶ?」
憑は心配になり、舞維に声を掛けると
「あー、笑った!
うん、大丈夫!!
やーさしいなー!! 憑ちゃん!!」
と、舞維はまた憑の頭をクシャクシャ撫で回した。
「わあああああ」
その勢いは憑の頭を揺らすほどで、憑も頭がクラクラしてしまった。
「あ! そうだ!!
はい!! テンションサゲサゲなデビルルっちをアゲアゲにする大提案!!」
舞維はテンションが上がってしまい、なりふり構わなくなっており、クラクラする憑とデビルルをよそに1人盛り上がって大きく手を挙げた。
そして、憑の肩を組むと、にこやかな笑顔でこう言った
「今日! 家来る?」
放課後
帰りの会が終わると、憑はいつものようにすぐに教室から出ようとしたが
「逃さないよ」
舞維は憑を待ち伏せしており、手をがっしり握ると
「じゃあね! 今日は憑ちゃんと帰る!」
と、いつも遊んでいるクラスメイトの女子に言うと憑の手を強引に引っ張った。
そのまま引っ張られて昇降口まで着いてしまい、舞維はすぐに靴に履き替え、ワクワクした様子で憑を待っていた。
憑は靴に履き替えようとしたが、やっぱり言わなきゃと思い、舞維に視線を向けた。
「あ……あの…………わたし……城都さんの家行くって………」
中休みの提案のあと、すぐチャイムが鳴り、憑が答えを出す間もなく、舞維は自分の席に戻ってしまったのだ。
憑は舞維のことは嫌いではないのだが、家にお邪魔するのは申し訳なく思ってしまい、断ろうとしていた。
だが、舞維のテンションは上がりっぱなしである。
「そうだよー! あたしの家!!
どうしたの? 憑ちゃん、靴履けない? あ! あたしが履かせてあげようか!!」
「……え!? い……いいよ……」
憑は流石に履かせてもらうのは恥ずかしく、すぐに自分で靴を履き替える。
それを見た舞維はすぐに憑の手を取り、
「じゃあいこー!!」
とテンション高く、反対の手を挙げ、憑を引っ張り走り出した。
「デビルル…!
城都さんのこれって……アクマ暴走…?」
憑は異常なテンションにアクマ暴走を疑い、小さい声で肩に乗るデビルルに訊いた。
「いや。
オーラが出てねえから違う。
あと、舞維っちはテンションアゲアゲになるとよくこうなる」
デビルルは舞維のテンションを慣れているかのような口調で、淡々と言った。
「ええ……」
憑はアクマ暴走じゃなくて良かったと思う一方、ついて行けないテンションに少し引いていた。
10分くらいすると、舞維の家に着いた。
住宅街の中にある、2階建ての家。
舞維は勢いよくドアを開けると、乱暴に靴を脱ぎ捨てる。
「ほら、憑ちゃん!
あがって! あがって!!
ママー!! 憑ちゃーん!!
憑ちゃん!! 遊びに来たよ!!」
舞維は憑に上がるよう催促したと思ったら、リビングと思わしき方向に呼び掛けた。
「ほらほら、憑ちゃん!
脱いで脱いで!」
「う……うん」
憑は友達の家にお邪魔するのは初めてだったので、恐る恐る靴を脱ぎ、玄関ホールに上がって靴を揃えようとしたが
「いいからいいから!
こっち! あたしの部屋!!」
「わぁ!」
舞維は憑の手を引っ張って、階段を上がり自分の部屋に憑を連れ込んだ。
「えっとねえっと
はい、これクッション!
座って座って、ささ遠慮なさらずに!
ママー!! 憑ちゃんにおやつとジュース出してー!!」
舞維は散らかったベッドの上から、適当にクッションを引っ張り出し、憑の前に出すと、部屋から顔を覗かせて、ママに呼び掛けた。
憑は状況の整理ができておらず、オドオド立っているだけだった。
「なにしてんだ……?
ヘナチョコ、座れよ」
動かない憑に、デビルルは声を掛ける。
「う……うん
え……いいのかな」
憑は前に1回だけ何かのテレビで観た、マナーを思い出し、こういうときすぐに座っていいのかと不安になり、動けずにいた。
「ほらー!
憑ちゃん! 遠慮しないで!!」
だが、そんな心配をよそに舞維は憑の両肩に手を乗せ、体を沈ませて無理矢理座らせた。
「え……あ……」
憑は困惑しながら、クッションに正座で座る。
「舞維ー!!
持ってってー!!」
「はーい!!
アゲエ! ここで憑ちゃんの相手してあげて!」
舞維はママからの呼びかけに応えると、アゲエを憑の膝の上に乗せて、階段を降りていった。
止まることのない舞維のテンションが離れ、ようやく静寂が生まれる。
憑は緊張で固くなりながら、アゲエの翅を凝視した。
(やっぱり……キレイだな)
翅の美しさとビーズのかわいらしさは繊細な輝きをしていた。
憑は思わず見惚れたが、それと同時にビーズが舞維の姉の形見だということを思い出した。
「デビルル……」
憑は表情を暗くして、肩のデビルルに話し掛けた。
「なんだよ。ヘナチョコ。
ていうか、部屋散らかってんな!!
舞維っち片付け苦手か…!?
お、いい革ジャンあるじゃん!
あれ、男物だろ!? なんで、舞維っちの部屋にあるんだ!?」
だが、デビルルは部屋の中を楽しそうに見渡し、まるで取り合わなかった。
「…………あんまりじろじろ見ちゃダメだよ……」
憑は言いたかったことを飲み込み、デビルルの無礼を指摘した。
「あ? いいじゃねえか!
お前もそんなにしんみりしてねえで楽しめよ!
舞維っちはそういうの好きじゃねえぞ!」
アクマは主の心の声も読み取れるので、何を言いたかったかは伝わっており、気を遣い過ぎないよう咎めた。
「……うん」
憑は頷くと、アゲエの触角をツンと触った。
すると、アゲエは触角を憑の指に当てて、翅をパタパタはためかせた。
小さくキラキラした鱗粉が舞い、その美しさをさらに際立たせる。
「すごい……」
憑はまたアゲエに見惚れていた。
「くーっ!
ズボンがあれば、あれ着れたのにな!!
いや、ヘナチョコの前なら平気か!!
ガマンできねえ!!」
デビルルは舞維の部屋に飾られていた、ドクロの革ジャンの魅力に抗えず、憑の肩から飛び出した。
「わっ!?
ダメだよ! デビルル!!」
憑は止めようとしたが、間に合わない。
デビルルは人間体に変化しようとしたが
「うぐあっ!?」
アゲエはデビルルに体当たりし、体を抑え込んで制止させた。
「くっ! この! 離せ!!」
「あわわ……
あ……アゲエさん。ありがとう…………」
憑はあたふたしながらアゲエにお礼をいう。
「おまたせー!」
そのとき、部屋の扉が開き、舞維は嬉しそうな顔をし、何かを両手で背中に隠しながら戻ってきた。
「わあああ!!」
憑は慌ててジタバタするデビルルを拾って、肩に乗せ直した。
「……?
どうしたの? 憑ちゃん?」
舞維は不思議そうに憑を見詰めたが、特にそれと言った言及はせず、憑の前に座る。
「はい! これ!!
オレンジジュースと……」
舞維は背中に隠していたお盆からストローが刺さったコップを出し、もう1つ取り出そうとしたとき
「おい! 舞維っち!!
俺様をアゲアゲにするために呼んだんだろ!
こんなヘナチョコなんか相手にしてねえで、アゲアゲにしてくれ!
ほら! あの革ジャン!!
俺様のなくなっちまったから、あれくれよ!!」
デビルルは舞維の肩に乗ると、興奮した様子でお願いする。
「あ、うん」
舞維はデビルルに軽くそう言うと、憑に笑顔で向き直し
「そしてね! 憑ちゃん!!
じゃーん!!」
と、はちみつがたっぷりかかった4段重ねの美味しそうなホットケーキを憑に見せた。
それを見た、憑は今までのオドオドから一変、目をキラリと輝かせた。
「お……おいしそう……!!」
憑はヨダレを垂らし、今にも食いつきそうなくらいの前傾姿勢でホットケーキを見詰める。
その勢いで、アゲエは投げ出され、天井近くをパタパタ飛んだ。
「お! おい!!
舞維っち…!!
俺様のことを無視するじゃねえ!!」
軽く済ませられたデビルルは、舞維に文句を言うが
舞維は無視して、ナイフで(少し大きめだが)食べやすいよう、一切れ切り、それをフォークで刺した。
「はい、憑ちゃん
あーーん」
そして、ホットケーキを憑の口へと運ぶ。
「あーーーー」
ホットケーキの魅力に取り憑かれた憑は、言う通りに口を開け、舞維に食べさせてもらった。
「っ…!!? ほっ……ほいひー!」
憑は口いっぱいに広がるホットケーキの甘さに、まだ飲み込めてないのに、思わず感想が口から出ていた。
「まだあるよー
どうぞ!!」
舞維はそんな憑にニヤニヤしながら、お皿とナイフとフォークを差し出した。
「うん!!」
憑は嬉しそうに頷き、潰したり切り損ねたり不器用に切り分けながら、ホットケーキをパクパク食べた。
舞維はその様子を見惚れたような表情で、じーっと見ている。
「あ……あの……舞維っちさーん……
お……俺様の声、聞こえますかー?」
ほったらかしのデビルルは舞維に耳元で遠慮がちに言うが、
「かわいい……」
舞維は時折、“かわいい”と呟くだけで、まるでデビルルのことは意に介してなかった。
「ぷはー」
憑は2切れ分をパクっと食べきり、オレンジジュースを飲むと、ふと、舞維が自分を見詰めているのに気付いた。
(え……?
な……なにか……わたし……やっちゃった……?)
憑は何か失礼なことや不満にさせることをやってしまったのではないかと思い、不安になる。
「あ……あの…………
城都さん………?
なんで……?
見てるの?」
憑は恐る恐る訊いた。
「いやあ。
美味しそうにモグモグ食べるなあって。
大好物でしょ? はちみつたっぷりのホットケーキ」
舞維は惚れ惚れした表情を憑に向けたまま、そう答えた。
憑は少し不気味に思いながらも、頷いた。
(なんで知ってるの?)
そして、教えたはずのない大好物を知っていることを疑問に思い、デビルルに視線を向けた。
デビルルは“俺様じゃねえ”と言わんばかりに体を横に揺らして否定する。
「憑ちゃん。
もっと食べていいんだよー!」
舞維はまた1切れ切り分けて、憑の口に運ぼうとした。
「え……えっと………」
憑は舞維の怪しい態度に警戒したが、目の前の大好物の誘惑に負けてしまい
「美味しい…!」
気付けば食べていた。
そこから憑は一心不乱にパクパク、ホットケーキを食べすぐに完食していた。
「ごちそうさまでした!!」
憑は手を合わせてとびきりの笑顔で言った。
「かわいい……」
舞維はそう呟きながら、ティッシュを1枚取った。
「ほら、憑ちゃん。
はちみつ……ついてるよ」
そして、憑の口元から垂れるはちみつを拭き取ってあげた。
「あ……ありがとう」
憑は正気に戻り、上目遣い気味にオドオドしながらお礼を言った。
「ゔっ!」
その瞬間、舞維は変な声を出し、胸を押さえ立ち上がって後ろを振り向き、口元を押さえた。
「え……?
城都さん……!?
だ……大丈夫……?」
憑は舞維を心配し、声を掛ける。
「か……かわいすぎる………!!」
舞維はふーふーと息を漏らしながら思わず声も漏れ出ていた。
「な……なんだ…………
まさか……舞維っち、俺様じゃなくて、ヘナチョコ目当てか…?」
デビルルは、憑に対する舞維の異様な目線や表情から、自分を出しに、憑を部屋に連れ込むことが目的だったのではないかと思った。
「あ、そうだ。
デビルルっち、あの革ジャンと、その後ろにズボンかかってるからあげる」
舞維は振り返ったときに、革ジャンが見え、ついでとばかりに肩のデビルルに言った。
デビルルはジト目になり、舞維を見詰めた。
「ほら!
あたし、なんでも似合うからさ! 男子のものも女子のものも、兄貴が買ってくれるんだけど、ちょっとこれはちがくてさあ。
別に、そんな目してえ! 彼氏とかそんなんじゃないから!
デビルル、この前のでなくなっちゃったんでしょ?
だからあげる!」
「お……おう。
サンキュ」
デビルルは、“あのヘナチョコのどこがいいんだ?という視線を送ったんだが”と言おうとしたが、めんどくさくなりそうなのでやめた。
「はい、憑ちゃん!
これ、デビルルにね!」
舞維はハンガーから革ジャンとズボンを無理やり引っ張って取ると、そのまま憑に渡した。
「あ………ありがと………」
憑はお礼を言うが、これでまたデビルルが人間体になり、イジワルが再会するのだと思うと憂鬱だった。
「だーいじょうぶ!!」
舞維は憑の顔が曇ったのに気付くと、デビルルを摘み上げて、自分の顔の正面に向けた。
「な……なんだよ」
デビルルは舞維に見詰められ、たじろぐ。
「別にー」
と舞維は笑顔で言った直後に、デビルルを口元に近付け、小さく囁いた。
「……っ!? はい……」
デビルルは恐怖で震え上がり、しおらしく答えた。
舞維は震えるデビルルを憑の膝の上に乗せて、アゲエに指で指示して自分の肩に乗せた。
「デビルル……大丈夫?」
普段憎たらしいのに、ガチガチ震え上がるデビルルに、憑も心配して声を掛けた。
「こ……こわい………」
デビルルはそういうだけだった。
「あ、あとこれ」
舞維はついでというふうに、引き出しからアクマ用のアクセサリーケースを取り出し、その中から悪魔の角のカチューシャを、デビルルにつけた。
「羽はなかったけど、これでガマンして」
「あ……ああ」
「ありがと……城都さん」
「どういたしまして!!」
「じゃあね!! 憑ちゃん!!
また月曜日!!」
少しして憑が帰る時間になった。
舞維は玄関から大きく手を振る。
「う……うん。
……また」
憑は頭を下げ、躊躇しながらも小さく手を振り返す。
それを見た舞維は驚きのような嬉しさのようなよくわからない顔をし、さらに大きくさらに激しく手を振り返した。
憑は玄関の扉を閉め、帰路についた。
「もらっちゃったけど、よかったのかな」
「いいんじゃねえか……よっ!!」
デビルルは早速とばかりに、人間体になり、新しいドクロの革ジャンと、真っ黒の長ズボンを履いた。
「おっ!
いい着心地!!
どうよ!!」
デビルルは憑に見せつけるかのように、ポーズを取るが
「………だ……………
なんでもない」
憑は何かをいいかけながらもやめて、歩いて行った。
「はっ!?
おい! ヘナチョコ!!
止めても無駄だぞ! 心の中丸わかりだからな!!
何いいかけたか分かってるから!!」
おしまい