いたずらアクマ   作:ココリンク

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3話!!! アクマ相撲Ⅰ

舞維の家にお邪魔した次の日。

 

土曜日の朝10時。

 

憑は嬉しそうに微笑みながらビニール袋を片手に、ぎこちないスキップをしている。

 

お手伝いを頑張り、なんとかお小遣いを貯め、やっといつも読んでいる本の続編を買えたのだ。

 

「ケケケ

お前も好きだな!

あんな、おこちゃまな本の何がいいんだ?」

 

デビルルは憑の横を人間体の姿でついて歩き、おちょくるのように、顔を覗かせて訊いた。

 

さっそく舞維からもらった革ジャンとズボンを着こなし、久しぶりの人間体を謳歌している。

 

「おこちゃまじゃない!

とっても楽しくてかわいくて素敵な本なの!」

 

憑はムッとした顔で反論した。

 

「本って言っても絵本じゃねえか!

ケケケ!!」

 

デビルルは憑のふくれっ面を指さしてケタケタ笑った。

 

憑は恥ずかしさで赤面してしまう。

 

憑がいつも読んでいる本は、小さな犬のキャラクターが冒険する絵本だった。

 

幼稚園生の頃から読んでおり、1つ1つの話は短いが、絵の中にいろんな発見を見つけられ、何度読んでも楽しく、ついつい買い集めてしまい、学校の空き時間でも読んでいるのだ。

 

「もう絵本なんて卒業しちまえよ!!」

 

「あっ!!」

 

デビルルは憑の手から強引に、本の入ったビニール袋を奪い取った。

 

「返して!!」

 

憑は取り返そうと手を出すが、俊敏性のかけらもない動きでは、デビルルの相手ではなかった。

 

「ケケケ!!

ほーれ、ほれ!!」

 

デビルルはわざと見せびらかすろうにして、ギリギリのところで躱す。

 

そうする度に、憑の顔はますます赤くなり、目に涙を浮かべていく。

 

「ケケケ!!

ヘナチョコはやっぱりヘナチョコだなー!!」

 

デビルルは最近できていなかった憑へのイタズラができ、満足そうにしていた。

 

 

「あれー?

憑ちゃーん」

 

そこには聞き覚えのある女の子の声が聞こえた。

 

「ケッ!?」

 

デビルルは震え上がって動きを止めてしまう。

 

「えいっ…!!」

 

その隙に憑はビニール袋を取り返し、護るように胸の前に抱える。

 

「またイタズラー?

こりないねー」

 

その様子を“ぷっ”と吹き出したのは、綿多だった。

 

さっき声を掛けたのも彼女だ。

 

肩ではモコモコがリラックスしている。

 

「なんだ……クソガキか」

 

デビルルは綿多の姿を見ると、ホッと胸を撫で下ろす。

 

「クソガキとは失礼なー。

おはよー、憑ちゃん」

 

綿多はデビルルに不機嫌そうな顔をすると、柔らかい笑顔で憑に挨拶した。

 

憑は泣いているのが恥ずかしくビニール袋で顔を隠している。

 

「デビルル泣かせたのー?」

 

綿多はデビルルに詰るように訊いた。

 

「ケッ!

最近生意気だったから、からかっただけだよ!!」

 

デビルルは綿多を睨み付けた。

 

「だいたいな! クソガキ!!

お前が暴走するから、俺様の超絶素晴らしいチャームポイントを失うハメになったんだ!!

舞維っちに新しいの貰ったからいいけどよ!!

お前からはなんか弁償ないのか!!?

アッ!?」

 

デビルルは綿多のアクマ暴走の影響で、革ジャン、ズボン、悪魔の羽を失ったことを根に持っている。

 

怒り顔で綿多に詰り寄り、拳を握って今にも殴りかかりそうだ。

 

モコモコは目をキラリと輝かせて、毛を逆立たせて警戒態勢を取る。

 

「それはー……

ごめんねー」

 

綿多は一瞬、きまりが悪そうに目線をそらしたがすぐに向き直して謝った。

 

「てめ! この!!

謝って済む問題じゃねえんだぞ!!」

 

デビルルはさらにヒートアップし、顔を綿多に近付け、大声で怒鳴った。

 

綿多はその勢いに身をすくめる。

 

モコモコは主を護るためにと、体当たりしようとしたが

 

「舞維ちゃんに頼んだの私なのー」

 

と、綿多はモコモコを制止しながらデビルルに伝えた。

 

 

「はっ?」

 

デビルルは不機嫌そうな顔で首を傾げる。

 

「私が、舞維ちゃんに頼んでデビルルの新しい服どうにかできないかお願いしたの。

今はこれしかできないけど。

いつかきっと、弁償するから。

ごめんなさい」

 

綿多はいつもののんびりではなく、しっかりした口調で説明し、頭を深く下げて謝った。

 

肩のモコモコも一緒に頭を下げる。

 

「……ケッ!

絶対だからな!」

 

デビルルは少し考えた後、綿多に指をさしてそう言った。

 

「ありがとう」

 

綿多はお礼を言うと、顔を上げニヤリと笑った。

 

「でもー。

舞維ちゃんに頼まれたときー

交換条件出されてさー」

 

と、ポケットからスマホを取り出し、画面をデビルルに見せた。

 

「……?

なんだー! よく撮れてるじゃねえか!」

 

それはさっき、デビルルが憑にイタズラをしているところの動画だった。

 

デビルルは自分の動きの軽やかさと、それに振り回される憑の滑稽さにご満悦だ。

 

「……?

で、舞維っちがなん…………」

 

そこまで言うと、デビルルの顔が青ざめる。

 

「おい!! 消せ!!

舞維っちに見せるな!!」

 

デビルルは慌てて綿多のスマホを奪い取ろうとしたが、

 

「もう送った」

 

綿多はそう言いながら素早くスマホをポケットの中に入れた。

 

「なっ!!!何してくれてんだ!!

クソガキ!!!」

 

デビルルは焦りと怒りに身を任せ、綿多の肩を掴んで前後にブンブン振り回す。

 

モコモコはキラリと目を輝かせ、デビルルのおでこに頭突きをかました。

 

「いて!!」

 

デビルルはその勢いで綿多から手を離し、後ろによろける。

 

「て……てめ…!!

この暴走アクマ!!」

 

と、デビルルはモコモコに指差し殴ろうとしたが

 

「キュ…!!」

 

珍しくモコモコは鳴き声をあげると、もふもふの体を巨大化させ、特大のもふもふ毛玉になり、デビルルを包み込んだ。

 

「……あっ……

いい肌触り……」

 

毎日手入れされた極楽の毛並みに包まれたデビルルは、怒りを忘れ癒されてしまう。

 

 

「ほ……

ありがとー、モコモコ。

いつの間にそんなの覚えたのー?」

 

綿多はモコモコにお礼を言いながら、初めて見るモコモコの変化について訊いた。

 

モコモコは嬉しそうに体を揺らすだけだった。

 

 

「大丈夫ー?

憑ちゃーん?」

 

綿多はしゃがみ込んでずっと泣いている憑に心配して声を掛けた。

 

憑は泣いたまま首を横に振る。

 

綿多はゆっくりと憑の隣にしゃがんだ。

 

「私もー。

その絵本好きだよー」

 

「…………え?」

 

綿多の言葉でやっと憑は顔を上げた。

 

「たまに引っ張り出して読んでさー。

いつ見てもワクワクする名作だよねー」

 

憑は涙を手の甲で拭い、嬉しそうに頷く。

 

「憑ちゃん、いっつも読んでるよねー。

とっても楽しそうにしてるからー、大好きなんだねー」

 

「うん!!」

 

憑に笑顔が戻り、元気に頷いた。

 

綿多は微笑むと、モコモコに包まれたデビルルを見たあと、優しい視線を憑に送った。

 

「デビルルの言うことは気にしなくていいと思うよー。

好きなものをずっと好きでいるのってー。

かんたんなようでむずかしいからねー。

私もモコモコのこと好きだけど、ランキングだけ気にしちゃって、ああなっちゃったからねー。

純粋な好きを続けられるのはすごいよー」

 

綿多の言葉に、憑は恥ずかしそうに頷くだけだった。

 

それでも少し誇らしいような気もした。

 

そして、新しく買った絵本がいつもより輝いて見えた。

 

 

「あ、そうだ憑ちゃーん

私、今からこれ行くんだけどー、憑ちゃーんも行くー?」

 

綿多はスマホを取り出し、憑に画面を見せた。

 

憑は不思議そうに画面に出されたポスターを見た。

 

「…………わんぱく……?

ちびっこアクマあ……あい………そ………」

 

「相撲(すもう)だよー」

 

漢字が読めなかった憑に、綿多は優しく教えて上げる。

 

「小学生限定のアクマ相撲大会でー

優勝賞品はおやつ1年分だってー」

 

憑はおやつ1年分と聞いて、目の輝きが増した。

 

「憑ちゃーん、おやつ好きでしょー、教室の自己紹介シートに書いてあったよねー

好きな食べ物、おやつ、カッコ“とくにはちみつかかったホットケーキ”カッコ閉じってー。

当日参加もできるからー、参加してみるー?」

 

「……え……えっと……」

 

憑は迷った。

 

確かにおやつ1年分は魅力的だが、早く帰って絵本を読みたい気持ちもあり、そういう大会に出る恥ずかしさもあった。

 

「どーするー?

おやつー、1年分だってー」

 

「はう!」

 

綿多の優勝賞品の復唱で、憑の心がおやつに傾く。

 

「おやつ1年分ー」

 

「うっ!!」

 

綿多は優勝賞品を繰り返し、憑の興味を引いていく。

 

というより、一々反応する憑の様子を楽しんでいる。

 

「どーするー?」

 

綿多はニヤニヤしながら改めて憑に訊いた。

 

「……………い」

 

憑はもじもじしながら、口を開き答えを出した。

 

「行く……」

 

 

 

 

 

 

学校近くの広めの公園では、アクマ相撲大会の参加者が集まっていた。

 

商店街の協賛もあり、出張販売する店もちらほら。

 

「うわ……(すごい人)」

 

見覚えのある同じ学年の人や、1年生だと思われる小さな子、背の高い6年生かもしれない大きなお兄さんお姉さんが集まり、受付として設営されたテントに長蛇の列ができていた。

 

憑はもっと少人数なものかと思われていたが、盛り上がりに圧倒される。

 

「ケケケ!

なんだヘナチョコ?

ビビってんのか?」

 

デビルルは憑をおちょくると、胸をドンと叩いた。

 

「安心しろよ!

この超絶

 

「憑ちゃーん、いこー」

 

綿多はデビルルの話を無視し、憑の背中を押して一緒に受付の列に並びに行く。

 

「お…! おい!!

無視すんな!!」

 

デビルルは急いで追い掛け、まあるい姿になって憑の肩に乗った。

 

 

 

 

数分後

 

「すごい人数だねー、みんなおやつ欲しいんだねー」

 

綿多は36と印刷された感熱紙を持って、憑に話し掛けた。

 

憑は37番を持って、プルプル震えていた。

 

(さ……参加しちゃった……)

 

大会名と自分の名前と、自分の番号を何度も見直し、人生で初めての大会参加に不安と緊張を覚える。

 

反対に、肩に乗るデビルルは余裕そうだ。

 

「ケッ!

俺様の力があれば連戦連勝よ!!

ケケケケケ!!」

 

怪しく笑うデビルルの声も聞こえないほど憑は、緊張で青くなっている。

 

「おーい……?

ヘナチョコー!」

 

大声で呼んでも全く反応がない。

 

「デビルルー、ちょっとみてて

飲み物買ってくるー」

 

綿多は憑の気持ちを落ち着かせるため、売店に飲み物を買いに行った。

 

 

「ちっ!

クソガキ……面倒押し付けやがって!

おい! しっかりしろ!!」

 

残されたデビルルは、悪態をつき、いつまでも震える憑に頭突きを食らわせた。

 

「あうっ!!」

 

憑は後ろによろけなんとか踏ん張れた。

 

「いたいよ……デビルル」

 

憑は涙目で不満そうにデビルルを見た。

 

「ケッ!

やっと口効けたか!」

 

デビルルは皮肉そうに言った。

 

憑はその言い方に口を尖らせ、そっぽを向いた。

 

 

その直後

 

何かが衝突するような大きな音が鳴り響いた。

 

まだ開会はしていないので、試合は行われていないはずだ。

 

憑とデビルルは驚きと興味でその音の方を見た。

 

「わっ……」 「なんだ!!? すげえ!!」

 

憑は息を呑み、デビルルは興奮して憑の小さな肩をくるくる動き回る。

 

そこには、カブトムシのような大きな一本角を持ったまあるい姿と、クワガタのような大きな顎を持ったまあるい姿があった。

 

公園のベンチで、クワガタのアクマがカブトムシのアクマのツノを挟んで止めている。

 

だが、完全に力を抑えられているわけでなく、ジリジリとカブトムシのアクマが前に進んでいた。

 

「押せ!! イッポン!!」

 

「負けるな!! アギト!!」

 

カブトムシのアクマの後ろには、赤い帽子を被り日焼けした半袖短パンの活発そうな男の子。

 

クワガタのアクマの後ろには、クワガタの顎のように大きく髪を固め、虫の翅のようなマントを着た男の子が、それぞれいた。

 

「あっ」

 

憑はその2人を知っていたため思わず声がでた。

 

「?

なんだ? 知り合いか?」

 

デビルルは憑の反応に質問した。

 

憑は頷く。

 

「去年、同じクラスだったの。

持上さんと、桑田さん」

 

赤い帽子を被った方は、カブトムシのアクマ──“イッポン”の主である、持上一郎(もちあげ いちろう)。

 

クワガタの顎のような髪型の方は、クワガタのアクマ──“アギト”の主である、桑田双次(くわた そうじ)

 

去年、憑と同じクラスで、休み時間もよくアクマ同士で激しく戦わせていたので学年でも有名なのだ。

 

「へえ!

アイツ、変な頭だな!!」

 

デビルルは双次を見ると憑の肩をケタケタ笑い転げた。

 

(アクマ合体のときの私の髪型も少し似てるよ……)

 

憑は心の中でそう思ったが、どうせ伝わるだろうと声には出さなかった。

 

「あー、憑ちゃーん!

よかったー、緊張治まったー?」

 

戻ってきた綿多は震えが収まってる憑を見て、ホッとした表情になり、買ってきたオレンジジュースの入ったペットボトルを渡した。

 

「あ……ありがとう」

 

憑は恐縮そうにオレンジジュースを受け取る。

 

「どういたしましてー

……デビルルはどーしたのー?」

 

「…………。」

 

憑は未だに笑い続けているデビルルの様子を説明しようしたが、双次の髪を変だと説明すると、少し似ている自分の髪も変と言っているようなのがいやで、言葉が出なかった。

 

「あ、そうだ」

 

憑は買ってきてもらった分のお金を渡そうとしたが、本を買ったお釣りは8円しかなかった。

 

「いいよー、デビルルの弁償代だと思ってー

まだ全然足りないけどー」

 

困った様子の憑に綿多は苦笑いしながら優しく言った。

 

「……ありがとう」

 

憑は申し訳なさそうにお礼を言うと、オレンジジュースを飲もうと、キャップを開けようとするが、緊張による手汗か、そもそも力がないため、開かなかった。

 

「……デビルル………開けて」

 

憑は渋々デビルルに開けてもらうよう頼んだが

 

「ケッ!! ケ〜ケケケケケ!!!

なんだあの!! ケケケケケ!!!」

 

ツボってしまったようでまるで取り合わなかった。

 

憑はデビルルに頼むのを諦め、再び挑戦するがやはりビクともしなかった。

 

「……確かに、舞維ちゃんの気持ちわかるかもー………」

 

綿多は憑の頑張って開けようとしている姿をじっと見ながらそう呟くと

 

「貸してー

開けてあげるー」

 

憑からペットボトルを受け取り、キャップを開けてあげた。

 

「ありがとう……」

 

憑は恥ずかしそうに顔を俯かせて言うと、両手で持って半分くらいまで一気にゴクゴク飲んだ。

 

(今のも動画撮ればよかったかなー)

 

綿多は憑のちっちゃく頑張る姿を見ながらそう思っていた。

 

 

 

「今だ!!

イッポン!!」

 

一方、イッポンとアギトの均衡が崩れた。

 

アギトが一瞬バランスを崩し、その隙にイッポンはツノを体を上げ、角でアギトを持ち上げた。

 

「離れろ!

アギト!!」

 

「もうおそい!」

 

双次は逃げるよう指示するが、イッポンはすぐにツノを振り回して、アギトをぶん投げた。

 

「よっしゃー!!」

 

イッポンは一郎の肩に乗り、誇らしげに角を掲げる。

 

「クソー!!」

 

双次はコロコロ転がるアギトを拾い上げると、マントで隠した。

 

「だがな!

デモンストレーションはここまでだ!!

本番はこのオイラが勝つ!!」

 

そして、一郎に捨て台詞を吐き、その場を去って行った。

 

「俺も負けないぞー!!」

 

一郎はガッツポーズをし、双次の背中にエールを送った。

 

 

 

「ケケー!!

あの変な髪型逃げたぜ!!」

 

「笑いすぎだよ」

 

デビルルは双次の敗走にまた笑い転げる。

 

憑は流石にと思い注意した。

 

 

「あの2人も出るのかー。

これは頑張らないとねー」

 

綿多は強力な力でぶつかる2人の戦いを見て、モコモコを優しく撫でながら鼓舞するように言った。

 

 

「そうそう。

頑張らないと」

 

その横ではいつの間にか舞維が腕を組んで呟いていた。

 

「わー!? 舞維ちゃーん?」

 

綿多は舞維の急な登場に驚く。

 

 

「えっ…!?

舞維っち!!?」

 

その声で、デビルルも驚き震えた。

 

「……?

デビルル? 具合悪いの?」

 

急に震えるデビルルに、憑は不思議そうに首を傾げた。

 

 

「ちっちっち。

ふわっちよ、私は舞維ではない」

 

舞維は綿多に指を振り、含みのある言い方で言うと、一郎に向かって歩き出し、肩のアゲエを鱗粉を回せながら、舞維の上空を飛び立たせた。

 

「また始まった……」

 

綿多は呆れたような表情で舞維の背中を見送った。

 

一郎は舞維が近付いて来るのを見て、少し嫌そうな顔をした。

 

舞維はアゲエの鱗粉を浴びながら、腕を広げてポーズを取り

 

「蝶のように舞い!!」

 

と声高らかに劇役者が台詞を言うように叫んだ。

 

近くにいる人もその声に驚き、舞維に視線が集まる。

 

「じょ……城都さん……?」

 

憑も目が点になる。

 

舞維は叫んだ後ポーズを取ったまま、3,4秒くらい動かず無の時間が生まれた後

 

「我ら!!」

 

とまた叫び。

 

「チーム.インセクト!!」

 

腕を組んで高らかに宣言した。

 

それと同時に、アゲエの鱗粉がさらに撒かれ、紙吹雪のように舞維を彩った。

 

そして最後に

 

「……………………2号!!」

 

とピースしながら言った。

 

 

憑はそれを見て、なぜか恥ずかしくなりこの場から立ち去りたい衝動に駆られた。

 

「憑ちゃん。

ああはなっちゃだめだからね」

 

綿多は憑の肩に手を置き、なんともいえない顔を向けた。

 

憑はただ目を点にして首を傾げるだけだった。

 

 

舞維はニッと笑い、一郎に指をさす。

 

「ここで会ったが百年目!

今日こそチーム.インセクトに入ってもらうぞ!

4号!!」

 

「だから……俺はそんなのに入らないって」

 

一郎は迷惑そうに呆れながら言う。

 

「そんなこと言ってえ!

我らの仲間に入りなよ!

今なら特製缶バッジもあげるよー!!」

 

舞維は一郎の肩を組み、大きく“4”と書かれた缶バッジを見せた。

 

一郎はイラッとした様子で舞維の腕を払った。

 

「だから要らねえって、興味ない!

だいたい、チーム作ってなにするんだよ」

 

「勧誘」

 

「集めるだけかよッ!!」

 

素朴な疑問への即答に、一郎は即答で突っ込んだ。

 

「沢山集まると楽しいよ!」

 

舞維は無邪気に言うが、一郎はずっと不機嫌な顔のまま。

 

「くだらない。

虫のチーム作りたいなら、虫取り網持ってそこらの茂みでも探したらどうだ?

俺はイッポンとアクマ相撲の最終調整するから。

じゃあな」

 

一郎はイッポンのツノを優しく触りながら、コンディションの確認をするため、この場を去っていった。

 

立ち去る背中に舞維は叫ぶ。

 

「考えが変わったらいつでも大歓迎だよ!

4号!!」

 

「だからチーム入りしてないのに番号で言うのやめろ!!」

 

一郎は振り向いて4号呼びにツッコむと、また歩いて行った。

 

 

 

「あれ……なに?」

 

憑は理解の追い付かない舞維と一郎の掛け合いの詳細を綿多に訊いた。

 

「なんかー、虫のアクマの主を集めたチーム作ってるみたーい」

 

「へ……へえー」

 

憑は変なポーズや変な名乗りなど他にも気になる事はあったが、頭の整理が出来ていないため、深入りはしなかった。

 

 

「舞維ちゃんもアクマ相撲でるのー?」

 

悔しそうに戻って来る舞維に、綿多は声を掛けた。

 

「ふわっち、私は舞維などではない……

チーム!!」

 

チーム的ななんかそういう体裁があるのか、舞維は自分を舞維と認めず、改めてポーズ付きで名乗ろうとしたが

 

「インセクト2号は出るのー?」

 

目の前で名乗られるのは共感性羞恥で堪えられないため、調子に合わせることにした。

 

「いや、出ないよ。

私の美しいアクマ2号に野蛮なことは似合わないからね」

 

舞維はアゲエの翅を優しく撫で、自惚れるように言った。

 

綿多はその物言いとなんだか癪に障る態度に、人気ランキングの敵愾心が刺激された。

 

「そー、でもー、美しさとかかわいらしさってー、日頃の鍛錬の賜物でもあるよねー。

見栄えの美しさってさー、体力も大事だと思うなー。

あー、でもー、“2位”には関係ないかー」

 

煽るような言い方に、舞維は眉を顰める。

 

「今それ関係なくない?

っていうか、2位ってなに?

私インセクト2号だからわからなーい!」

 

舞維と綿多は睨み合い、バチバチに火花を散らす。

 

「ふ……2人とも………仲良く…………」

 

憑は仲裁しようとするが、どうしたらいいか分からずあたふたしている。

 

「ケケケ!!

舞維っちじゃねえなら怖くねえや!」

 

デビルルは舞維になにか後ろめたい気持ちがあるためか、舞維が来てからは震え上がっていた。

 

しかし、舞維が舞維じゃないスタンスで動いてると分かると、余裕そうに笑った。

 

 

だが、舞維の耳にデビルルの笑い声が聞こえた瞬間

 

「あ、そうだ。

なんでここに来たのか思い出した」

 

と綿多との睨み合いを急にやめて冷静になった。

 

「あ、今から城都舞維ね」

 

舞維は軽くそう宣言すると、笑っているデビルルを鷲掴みした。

 

「ケッ……?

え……? 舞維………っち?」

 

デビルルはまあるい体から滝のような汗を流す。

 

「ねえ、デビルル。

昨日、私、“憑ちゃん泣かせたらぶっ殺す”って言ったよね??」

 

「ケッ…………なんのこと……か………よくわからないなあ…………」

 

「言ったよね」

 

舞維は憑に聞こえないように、デビルルと囁き声で話す。

 

だが迫力は凄まじく、デビルルは萎縮してしまう。

 

「あ……」

 

憑は不安そうに舞維を見上げる。

 

舞維は微笑みながら、憑の頭を撫でた。

 

「憑ちゃん、アクマ相撲頑張ってね!

私、ちょっとだけデビルルとお話があるから少しだけ借りるね!!」

 

と言うと、人の少ないところへデビルルを連れて行った。

 

 

「……大丈夫かな……?」

 

憑は心配そうに見送った。

 

「デビルルが憑ちゃんのアクマじゃなかったら大丈夫じゃなかったねー」

 

綿多は慈悲の目をしながら、察するように言った。

 

「……?

どういうこと……?」

 

憑はよく分かってなかった。

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