いたずらアクマ   作:ココリンク

9 / 11
9話!!!!!!!!!

この少年、激斜 駆流(げきしゃ かける)。

 

高身長で痩せ身。

 

メガネを掛けてどこかナードな雰囲気を醸し出す彼だが、ある一点は他を遥かに凌駕する。

 

靭やかで力強い脚だ。

 

彼は憑のクラスメートの新聞係。

 

その健脚で走り回り狙ったスクープは逃さないのである。

 

 

──数日前、舞維から本人のためを思ってやっていたアクマ人形ランキングの八百長をやめるように言われてしまった。

 

ショックを受けた駆流に舞維は最後に笑顔を向けてこう言ってくれた。

 

“次も楽しみにしている”と。

 

 

 

 

昼休み。

 

頬杖をつき、綿多とアクマ自慢対決をし、クラスメートの注目を集める舞維の後ろ姿をみていた。

 

彼は悩んでいた。

 

 

(嗚呼……舞維さん。

あなたはどうして舞維さんなんですか?

次の記事はあなたが驚くような大スクープを持ってきましょう。

それこそ、不正により舞維さんの名誉を傷付けたことへの贖罪であり、僕の……いや、新聞係の誇りのために)

 

 

そう思い立ったまでは良いのだが、なかなかスクープらしいものは見付からない。

 

土曜日行っていたアクマ相撲の結果は、舞維は知っている。

 

そもそも、そう言った定期的な行事ごとは別の人の担当だ。

 

初めから誰かが優勝すると分かりきっている大会は、眼中になかった。

 

駆流は誰も知らない誰も分からない未知なるものを追求していく。

 

自らの脚、そして相棒を使いながら──

 

駆流の肩に、前後に長い楕円のようなまあるい姿に長い尻尾を持ったアクマが素早く靭やかな動きで登った。

 

駆流のアクマである、チーターのアクマ──スプリーターだ。

 

 

スプリーターは尻尾にぶら下げたデジカメを駆流に手渡す。

 

「相棒よ。今日もありがとう。

さてさて、いいネタはあるだろうか」

 

駆流はデジカメを操作し、スプリーターが撮ってきた写真を眺めた。

 

スプリーターは素早い動きで、街中を駆け回りいつもと違うものや物珍しいものを撮ってきてくれる彼の相棒だ。

 

だが、あまりの速さにピンボケが酷い物が多いのが玉に瑕。

 

クラスメートが誰もいないところで盛大に転んだところや、苦手な食べ物をこっそり他の人の皿に移すところ。

 

様々あるが、どれもパンチが弱い。

 

 

「スプリーター。

きみ、これが気になってるのか?」

 

そんな中、とある写真が多いことに駆流が気付いた。

 

それはまあるくて黒い翼と嘴がある。

 

クラスチャットで話題になっている、キラキラしたものを集めるという鳥型のアクマだ。

 

スプリーターは頷くと、デジカメを尻尾で操作し写真を選んだ。

 

「……ほう」

 

そこには鳥型のアクマに掴まれたデビルルの姿があった。

 

 

 

 

 

憑は舞維と綿多のアクマ自慢対決を聞きながら、この間買った本を1人で読んでいた。

 

「ケッ、ヘナチョコ。

お前もう10回は読んでるだろ」

 

デビルルはまあるい姿で憑の肩に乗りながら退屈そうに言った。

 

「まだ8回目」

 

憑は本に視線を向けたまま応えた。

 

「ケッ!

細けえこたあいいんだよ!

アイツらと遊ばねえのか?

この超絶イケメンな俺様を自慢してみろ!

アクマ人気ランキングのダークホースとして首位独走間違いなしだぜ!!」

 

デビルルは高笑いする。

 

憑は迷惑そうな顔をし、デビルルを摘んで立ち上がり、2人たちの下へ向かった。

 

「ケッ!

ヘナチョコ!! ようやく俺様を自慢する気になったか!!」

 

デビルルはしたり顔で嬉しそうに言うが

 

憑は綿多の背中をチョンチョン突く

 

「んー?

あ、憑ちゃーん。どったのー?」

 

綿多は振り返り、憑を見ると微笑みかけた。

 

舞維は他のクラスメートにちょうど声を掛けられていて憑に気付いていない。

 

憑はモジモジしながら

 

「不破原さん。

あの……うるさいから預けていい?」

 

と言い、デビルルを綿多に差し出した。

 

「ケッ!?

うるさいだと!? ヘナチョコ!!

もっぺんいってみ んぐっ!!」

 

デビルルは思いも寄らない言葉に文句を言うが、綿多に口を塞がれてしまう。

 

「わかったー。

絵本楽しんでー」

 

綿多はそう言いながら暴れるデビルルを受け取った。

 

「ありがと……」

 

憑は申し訳なさそうに言うと、いそいそと自分の席に戻っていく。

 

「ぷはっ!

クソガキ!! てめえ!! なんで引き受けるんだよ!!」

 

デビルルは綿多の手を除けると、怒りをぶつけた。

 

綿多は舞維の方をちらっと見た。

 

「うるさい人の扱いに慣れてきたからー」

 

 

 

 

 

憑はバクバクなる心臓を抑えながらホッと深呼吸すると、改めて本を開いた。

 

だが、そこへ1人の人影が見える。

 

「出門さん。

少しお話いいかな?」

 

憑は恐る恐る顔を上げた。

 

話しかけてきたのは駆流だった。

 

去年からクラスメートだったが、ほとんど話したことがない。

 

憑は無視したわけではないが、どうしたらいいか分からず何も答えずに視線を本に戻してしまった。

 

(これは防御が硬い。

流石、悪魔使いの妖精(僕が勝手につけた)。

昨年転校してきてから、人見知りをし続け、あまりにも不憫な反応に話しかけた人がイジメをしているのではないかと疑われるほど。

だが、僕はきみがどれほどの逸材かを知っているよ。

それで、舞維さんの虜にしたのだろう?)

 

駆流はクラスメートの情報はある程度把握している。

 

憑のこの反応も予想通り。

 

「……きみは凄い力を秘めている」

 

駆流の言葉に、本に向かう憑の目が泳いだ。

 

駆流はニヤリと笑うと、憑に耳打ちをした。

 

「図星かね?

知っていると思うが僕は新聞係でね。

それを記事にしてもいいんだが。

……きみはそれを隠したがっている。

違うかね?」

 

そう言いながら、憑がアクマ合体している写真を見せた。

 

憑は驚き涙目になりながらゆっくりと頷いた。

 

そして助けを求めるように綿多に視線を送るが、綿多はアクマ自慢に熱が入っている。

 

普段から心の声を聞かれてしまうデビルルもモコモコに包まれて極上気分で、まるで気付かない。

 

「そんな顔しないでおくれよ。

僕はきみをいじめたいわけではない。

少し取引をしたいんだ。

協力してくれたら、この写真も消すし、もし他人にバレたとしても隠蔽するよう動くこともできる。

一方的でない。きみにもメリットのある取引だ」

 

駆流は憑に顔を近付けて迫った。

 

憑は堪えている涙が溢れそうになった。

 

そのとき

 

「あ! 駆流!!

鬼斗からデジカメのメンテしたいって伝言!!」

 

クラスメートとの談笑が終わり、ふと憑の姿を盗み見ようとした舞維が、駆流に気付いて声を掛けた。

 

駆流はすぐさま顔を離す。

 

舞維の声で、綿多も振り向くと憑が泣きそうになっているのを発見し、駆流を無言で睨み付けた。

 

「ありがとう。

舞維さん」

 

駆流はキザに手を上げて舞維に礼を伝えると

 

「協力する気になったら、今日の放課後、第1公園に来てほしい。

損はさせないよ」

 

と憑にギリギリ届く声量で伝えると去っていった。

 

綿多は駆流を目で追う。

 

「舞維ちゃーん。

激斜さんと憑ちゃんって、なにか同じグループ?」

 

「ううん。

違うよ。

なんで?」

 

綿多の質問に舞維は即答で答えた。

 

「……いやー。

なんでもー。

そろそろ今日のはお開きにしよーかー」

 

綿多は笑ってごまかすと、憑が心配になったため、アクマ自慢対決を終えることにした。

 

「えー、早くない? モコモコもっともふもふさせて!」

 

だが舞維はモコモコともっと触れ合いたいらしい。

 

自慢対決というものの、仲良くなってからはふれあい会みたいになっている。

 

「うーーん……」

 

綿多はモコモコだけ残すことを考えたが、向かう先が憑となると、舞維も一緒についてくるのは自明の理だった。

 

メンタルがやられている憑に、とびきりポジティブな舞維を当てるのは逆効果になり得る。

 

綿多はチラッと憑を見る。

 

 

(あれ……?)

 

憑はいつの間にか席を外していた。

 

(トイレかな? それとも激斜さんに場所を変えるよう言われた?)

 

綿多が悩んでると

 

「あ! もしかしてふわっち、トイレいきたい?」

 

と舞維がもしやと訊いてきた。

 

「……あー。

そーそー。 トイレー。

よくわかったねー。 さすがー」

 

綿多は棒読みでそう言うと、デビルルを包んだままのモコモコを手に乗せて、急いで教室を出て行った。

 

 

 

 

出たのはいいものの、どこにいるのかが分からない。

 

トイレかもしれないが、個室に入っているかどうかを確かめる方法もない。

 

「(こうなったら……)

モコモコ」

 

綿多はモコモコに呼びかける。

 

モコモコはデビルルを放すと綿多の肩に乗った。

 

「……はっ!?

俺様は…なにを…?」

 

極上気分から解放されたデビルルは綿多の掌の上でまあるい姿をキョロキョロさせる。

 

「デビルル。

お願い! 憑ちゃんどこにいるか分かる!?」

 

「……ケッ!?

いきなりなんだよ? クソガキ!?」

 

「いいから!! 教えて!!

憑ちゃん泣いてたの! アクマなんだから主の居場所くらいわかるでしょ!!」

 

「ケッ!

だれがおまえなんかに……」

 

デビルルはいつものように悪態をつこうとしたが、綿多の鬼気迫る表情と口調に、やれやれとした顔をし、人間態の姿になった。

 

「別にアクマだからってそんな便利じゃねえよ。

それにアクマ暴走を心配してるんだろうが、ヘナチョコはお前が思うほど弱くねえよ」

 

見透かしたような言葉に綿多は何も言えない。

 

だが、いくら主の心の声を読み取れるアクマがそう言おうとも心配で心配でたまらない。

 

「でも……!!」

 

「ケッ!」

 

叫ぶ綿多の眉間にデビルルは指を差し威圧した。

 

「アクマ相撲のときに励ませたことがそんなに嬉しかったのか?

お前はヘナチョコの唯一の理解者ぶりたいのか?

そんなんだからクソガキは、クソガキなんだよ」

 

綿多はデビルルの指摘に涙目になる。

 

言い返してやりたいが、言葉がまるででてこない。

 

「いつものマイペースはどうした?

いつもの歯に衣着せぬ物言いはどうした?

1回成功したからと言って浮かれんな。

今のお前じゃ無理だ。

じゃあな」

 

デビルルはそう言い捨てると、まあるい姿になってカサカサと廊下の床を這ってどこかへ行ってしまった。

 

 

綿多は立ち尽くしたままだった。

 

モコモコが心配そうに綿多に頬擦りをする。

 

「…………」

 

綿多は無言でモコモコを優しく撫でると、心の中で思った。

 

(余計なお世話だったのかな)

 

 

 

 

 

 

「ケッ!

やっぱりここにいたか。ヘナチョコ」

 

デビルルが向かった先。

 

それは、校庭の隅の花壇だった。

 

憑は花壇の端でしゃがんでいた。

 

その顔に涙はなく、真剣に悩んでいる真顔の表情だった。

 

 

「…………おい、無視しなくてもいいだろ」

 

デビルルはとなりにしゃがむと、呆れたように言った。

 

「……うん」

 

憑は返事をするが心ここにあらずという様子だ。

 

「ケッ!

凄いこと言われたな! あののっぽ眼鏡、どうやって情報得てるんだろうな!」

 

「……うん」

 

「けど変だよな〜! なんでこの超絶イケメンな俺様じゃなくてヘナチョコにインタビューなんだよ!」

 

「……うん」

 

「…………………………7かける4は?」

 

「……うん」

 

「〇〇こ。 〇〇の中に入るのは?」

 

「……うん」

 

「……ケッ」

 

何を言ってもうんしか返さないデビルルは呆れ果て、項垂れた。

 

「デビルル」

 

憑は急に視線はそのままでデビルルに話し掛けた。

 

「行ったほうがいいのかな?」

 

憑はデビルルの反応を待たずに言葉を続けた。

 

「ケッ!

“うまく質問に答えられなかった。悔しい” “人に頼って貰えた。嬉しい” お前の気持ちだろ」

 

デビルルは憑の心の声を読み上げた。

 

「でも……」

 

「………………“隠してた秘密がバラされるかも……何をされるか分からない。こわい” だろ?

ケッ、この俺様が超絶ハイスペックイケメンアクマでよかったぜ! 自分の気持ちは自分で言わないと分かんないだろ」

 

「……うん」

 

「ああもう! うぜえな!

お前もいつまでたってもヘナチョコだ!

お前はひとりじゃねえんだ! 俺様が付いてる!! いざとなったらアクマ合体でもなんでもしてぶん殴ってやろうぜ!!」

 

憑は一瞬クスッと笑うと

 

「…………やっぱりやめようかな」

 

顔をそらしイタズラに笑いそう言った。

 

 

 

 

 

 

メンテナンスのために、スプリーターのカメラを鬼斗に預けた駆流。

 

「憑ちゃんに何話したの?」

 

廊下に出た瞬間、待ち伏せしていた綿多が話し掛けた。

 

「おや?(不破原綿多……マイペースうさ耳シュシュガール。

僕の八百長によってアクマ人気ランキングを落とされ嫉妬と努力の否定でアクマ暴走したが、出門さんと舞維さんの活躍で沈静化され、クラスメートには知り渡っていない。

モコモコが好きで好きでたまらないが、自分のことはあまり自慢しない他にアイデンティティを任せているタイプ……といったとこか?

いつもは語尾を伸ばす癖があるが今はない?

怒ってるのか? 最近出門さんと仲良しみたいだし、なんか探られたら面倒だ。

少しカマかけてみるか)」

 

駆流は一瞬で綿多の情報を思い出しスプリーターとアイコンタクトを取る。

 

スプリーターは駆流の肩から降り、教室へと駆けた。

 

「クラスの人気ナンバーワンさんが、僕に何かご用かな?」

 

綿多はその物言いに激しく足を踏み鳴らした。

 

「だから! さっき憑ちゃんに何を言ったの!?」

 

大声で叫ぶ綿多に、廊下を通る同級生の注目が集まる。

 

「ふわっち?

トイレ長いと思ったらどうしたの?」

 

綿多の声なのか、憑という言葉なのかに反応した舞維も教室から顔を覗かせる。

 

「舞維ちゃん! この人! 憑ちゃんに!!」

 

綿多はもうこの際、味方を多く付けようとし、駆流を指差しながら、舞維に必死の形相で叫んだ。

 

「ふわっち…………」

 

だが、舞維は綿多の顔を見て、綿多がアクマ暴走したときのことを思い出し、思わず体が震え怯えてしまう。

 

「……………っ」

 

“今のお前じゃ無理だ” 

 

舞維の顔を見てデビルルの声がリフレーンした。

 

駆流は綿多の肩に手を置き

 

「“暴走”し過ぎはよくないよ」

 

ギリギリ綿多に聞こえるくらいの声量で伝えた。

 

「……っ!?」

 

綿多は驚いた顔で駆流を見る。

 

駆流はふっと笑うとキザに舞維に微笑みかけた。

 

「舞維さん! ご安心を!

出門さんにちょっとしたインタビューですよ!」

 

「そっか! よかった!

……あれ? じゃあなんでふわっちと喧嘩してるの?」

 

駆流は綿多を横目で見て不敵に笑う。

 

そこへちょうどスプリーターが戻ってきた。

 

スプリーターは1枚の写真を尻尾にぶら下げている。

 

綿多はそれを見て驚愕した後、悔しそうな表情をすると、舞維に笑顔を作った。

 

「舞維ちゃーん。

ごめーん。 私の早とちりだったー。

なにもないよー」

 

「そっか! よかった!

あ! ふわっち!! 早く戻ってよー! モコモコもふらせて!」

 

「……う……うん。

わかったー……」

 

綿多は舞維に言われるがままに、教室へと戻った。

 

モコモコが綿多の肩から駆流に威嚇していた。

 

 

「(“憑ちゃんに変なことしたら許さない”ってところかな)

相棒。 助かったよありがとう。」

 

駆流はスプリーターを撫でるとスプリーターが持ってきてくれた写真を受け取った。

 

それはピンボケしているものの、綿多がアクマ暴走している姿だった。

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