SAO 剣の三原色   作:アンコモンの雑草

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アルゴを成人女性だと思っていたのは、こぉの男ー!!
Yes! I am!!


高校生なんすね。wiki見るまでマジで知らんかったっす。
許してください。死にますんで。

ひでぶっ!!


5

 

25層以来、リーベはフロアボスレイドの()()には行っていない。

 

≪隠蔽≫スキルを使っていても隠れきれない可能性があるのと、≪鍛冶≫スキルが楽しくなっていたのと、それからあの悲劇が原因だ。

 

あの光景を間近で見てからというもの、背骨に冷たい布が巻かれているような感覚が、時折襲ってくる。

 

最初のうちは訳の分からない感覚だったが、じっくりと考えた末にそれを"恐怖"と定義した。

 

死ぬのが怖い。意識が消えるということの想像がつかず、恐ろしい。つまりはそういう風に思っているのだ。

 

鎚を振るう間も考えることはそれしかない。それが反映されているのか知らないが、リーベの打った武器はやたらと禍々しかったり歪だったりする。あまり好みではない。

 

何とか気を逸らそうと思っても、出来ない。それは必ず訪れることであり、存外に早くやってきそうであり、リーベの脳はとても簡単にそれを理解してしまう。

 

何せ攻略の速度は衰えを知らない。詳しいことは知らないが、()が指揮を取っているのが大きいのかもしれない。()のやることはいつもリーベの神経を逆撫でる。

 

オレンジギルドもまだ活発らしいし、上げ切ってしまった鍛冶は飽きたし、かといって呆けているとまたあの感覚に襲われる。

 

何でもいい、気晴らしが欲しい。久しぶりにカフェにでも行こう。

 

最後に打った、やはり斧刃の歪んでいる両手斧をインベントリに入れ、リーベは久しぶりにフード付きのケープを手に取った。

 

 


 

 

ミトの手に握られた紙切れに、テスト用紙に記入することになれば嘆息ものの長ったらしい横文字の羅列が並んでいる。これらは全てモンスターのドロップ素材で、店番のあるアシュレイに代わってミトが回収しなければならない品だ。

 

なぜ生産職がパーティに居ないと出ない素材があるのか、甚だ疑問だ。面倒臭いだけではないか?茅場晶彦の思考はまるで分からない。分かりたくもないが。

 

30層レアモンスターの素材、45層中立モンスターの素材35個、50層雑魚モンスターの素材20個。改めて漏れが無いことを確認し終えて、手伝ってくれた2人に礼を言う。

 

「今更何言ってるんですか。もう4回目です、気にしてませんよ」

 

「リっちゃんの言う通り、僕らで良ければ幾らでも手伝うよ」

 

全身鎧の少女と普通の装備の青年。奇抜なように見えるが、見慣れた組み合わせだ。何故ならこの2人は所謂カップルで、攻略組のトップ層は大体そのことを知っている。ミトだって一応、あの件以前はギルド有数の実力者だった……つもりだ。

 

そしてこの2人もミトの症状を知っている。その関係故に最初こそ()のことを思い出してしまっていたが、カウンセリングや彼らの努力、何より時間の流れが和らげてくれている。今では2人のイチャつきを揶揄するのも平気だ。

 

しかし今日のそれは違う。いや僅かにそういう反応も期待していたが、本命は彼らに感謝を伝えるための、きちんとした贈り物だ。

 

ミトは実体化した2着の()()()()をテーブルに置く。緑と青を基調にしたデザインの、完全プライベート用の服。アシュレイにもお墨付きを貰った、針子ミトとしての第1作目だ。

 

「これ、俺たちの為に作ってくれたのか⁉︎しかもペアルックか⁉︎」

 

「お、お揃いですか⁉︎嬉しいですけど、良いんですか?最初に作った品なら、他の方の方が……」

 

それは別に構わない。2人には今までも素材集めを手伝ってもらったし、針子として再起するにあたって最も世話になった2人には、1番に礼をしたかった。

 

それに、2人には言わないが、ミトは()()にあまり会いたくない。

 

()()を騎士団に押し付けたのは他ならぬミトだ。それも本音を隠し、騙すような、優しさにつけ込むようなやり方で。

 

だからなるべく、そこには触れたくない。

 

(ついでに装備枠において、インナーは()()()()着るものだということも言わない。そこの文句はいつか気づいてから存分に聞こうと思う)

 

2人はミトの暗い部分には気づかず、「そういうことでしたら、遠慮なく頂きますね。ありがとうございます!」と嬉しそうに言った。

 

少しだけダシにしたような気がして罪悪感が湧いた。勘付かれないようにコーヒーの入ったカップに口をつける。

 

鎧の少女……リーテンが友人から聞いたという路地裏の寂れたカフェだが、コーヒーは美味い。軽食のサンドイッチも、瑞々しい野菜の食感が良い。

 

「スゴ!メッチャ似合いそうじゃん!ちょ、今着てみてよ!」

「うぇ今⁉︎」

 

このコーヒーとサンドイッチを味わっていると、どこに行くにもグルメをインベントリに入れていたプレイヤーを思い出す。今では真似をしている攻略組も多い。

 

「シバ、さ、さすがに恥ずかしいから……2人っきりのときに……ね?」

「リ、リっちゃん……!」

 

ミトは以前はそういうのに興味がなかったし、最近はそれどころではない状況だった。折角だし何か探してみようか。

 

()は層ごとの特産品をよく食べていた。今ミトがいる38層は南国風だから、例えばココナッツに似たものがある。リアルよろしくストローを刺して果汁を味わっても良いし、果肉の部分はスイーツ系のレシピに使えたはずだ。

 

これなら店で買わなくても集められるし、売って小金にできる。割るときも最悪ソードスキルで叩き割れる。ちょうどあの窓からヤシの木が見える。今はまだ実をつけていないが、実ったら適当に蹴り飛ばせば良い。そうすれば実が落ちてくる。()()()()()()()()()()()()

 

「ミトさん?」

 

リーテンの声に顔を向ける。コロコロとした笑顔が無くなっている。

 

ミトの持っているカップのコーヒーに、さざなみが立っていた。すぐに置いて腕をテーブルの下に追いやる。

 

もう片方の手を振りながらなんでもないと言うと、リーテンは「それならいいんですが」と引き下がってくれた。カウンセラーやディアベルから、“本人が平気と言っていれば平気”と聞いているからだ。

 

とはいえ、ミト自身も無理をするつもりは無い。2人に一言謝って、残ったコーヒーを置いてでも席を立つ。

 

「分かった、ディアベルさんには僕達から言っておくよ。服、ありがとうな!」

 

青年の方、シヴァタが言う。こんな風に必要以上に気を遣わず、けれども理解を示してくれるのが、ミトには嬉しかった。

 

足早に店を出て、ウエストポーチから結晶を取り出す。握り拳サイズの、長方形の青い水晶だ。あまり圏内で気軽に使えたものでは無いが、ディアベルは気軽に投げ渡してきた。“必要になったら使うんだ”と。

 

胸に手を当てると、爆発するかのような振動を感じる。あの記憶を思い出すといつもこうなる。深呼吸をして、結晶を強く握った。

 

「転移、リンダース」

 

 


 

 

リーベがちょうど転移門に触れようとしたときだった。青い光の柱がすぐそこに立った。

 

通常の門の使い方なら空間が波打つようなエフェクトだから、これが結晶による転送エフェクトだということはすぐに分かった。

 

初日の夕方以来久しぶりに見た演出だから、なんとなくじーっと眺めてしまった。

 

光が消えて現れたのは、見覚えのある少女だった。確か攻略組で、ボス戦にもよく参加していたはずだ……そうだ、思い出した。大鎌持ちの、器用な戦い方の少女だ。

 

あの件以来元気が無いと知ってはいたが、実際に様子を見るのは初めてだ。ボスレイド以外の、人通りの多い場所や迷宮区にも出向いていないから、彼女の件に限らず、情報はほぼ入ってこないのだ。

 

とりあえず分かるのは、随分様変わりしたということだ。いつぞやボス戦で見た雰囲気がまるで無い。

 

リーベを見て、驚いたように目を見開いている。服装は以前よりも布の目立つものに変わっている。鎌もない。長いポニーテールが小動物の尻尾みたいに見える。

 

「アスナ……?」

そよ風じみた声だった。一瞬なんと言ったか分からなかったくらいだ。

 

響きからして多分人名だろうと思う。背格好がリーベに似ているのだろうか。「違いますけれど」

 

途端に彼女の様子がおかしくなる。呼吸が乱れはじめる。

 

「ちが、アス、ま、まって」手をこちらに伸ばそうとしているようだが、上手くいかずに彷徨っている。体がフラフラと揺れたかと思うと、グラリと傾いた。

 

地面に向かって勢いよく落ちる少女をなんとかキャッチして、リーベは彼女を横たわらせた。

 

浅い呼吸を繰り返し、手足をあてもなく暴れさせて、うわごとのように何かをずっと言っている。だがリーベにも何を言いたいかはよく分からない。

 

アインクラッドに熱や風邪などの身体的症状は無い。あるのは精神由来のもののみだ。そしてリーベは精神由来の発作を治療できる程の知識は持ち合わせていない。

 

多少の心得はあるが、だからこそそれが危険なことだと分かる。勝手な処置は症状を悪化させかねない。

 

バタつく手足を抑えつつ、すぐにメニュー画面を操作する。オプションボタン、通報メニュー。GMコールの下にあるボタン、“カウンセラーコール”。

 

押した瞬間に、再び近くに青い光柱が立つ。先ほどと似ているが微妙に違う、僅かに赤みがかった専用のエフェクトだ。その光の中から、また1人の女性が出現する。

 

真っ白のワンピース、黒の長髪。恐らくリーベが、というか()()()()()()()()()()なっているんだと思うが、切り揃えられた前髪が微妙に違う。()の趣味ということにしておく。AI関連はほぼ全てアッチの仕事だ。

 

「初めまして。メンタルヘルスカウンセリングプログラムAIです。お気軽にYui(ユイ)とお呼びください」

 

滞りの無い美しいお辞儀と、合成と分かるものの抑揚や発声は自然な音声。黒い瞳と貼り付けた表情テクスチャに、何となく不気味さを感じる。

 

長い黒髪を一切揺らさず、ワンピースに皺を全く作らず、女はリーベの側に屈み込んだ。

 

「急性の発作ですね?私にお任せください」

 

その目をこちらに向けて言った。得体の知れない感覚がして、リーベの全身が緊張する。女は包み込むようにして少女の体を腕の中に抱いた。

 

そこからは一瞬だった。リーベにも一瞬としか言えない。AI女はただ少女の顔を覗き込んだ。動かないように顔を両手で抑え、1秒か2秒程度見つめ合っただけだ。

 

そうすると少女の呼吸が落ち着き始め、ジタバタしていた手足が大人しくなり、顔から強張りが無くなっていった。

 

10秒もせずに少女は落ち着きを取り戻した。深呼吸を何度か繰り返してから、「ありがとうございます……もう大丈夫です」と言った。

 

AI女に支えられて上体を起こすと、リーベと目が合う。しかし今度は発作は起こらない。さっきより距離が近いからとか、フードが少しだけズレているからとか、思いつく理由はあるが、全て違うはずだ。リーベの中の何かが警告を発している。

 

「すみません……その……」

 

「いいですよ、私は構いませんから」

 

正直言って、早くここから離れたかった。しかし下手に変な印象を抱かせるとそれこそ()()()。少女は「でも」とリーベを引き留めている。何とか自然な流れで離れなければ……。

 

「ミトさん」

 

AI女が唐突に言う。音声は喉から聞こえている。口も動いてはいるが、よく見ると合っているようで合っていなかった。

 

「気持ちは分かりますが、この方も急いでらっしゃるかも知れません。お礼などはまたお会いしたときに改めて、というのはどうでしょう?」

 

それを聞いて、リーベは驚きを隠せずAI女を見る。

 

少女がたじろいで言う。「お急ぎでしたか?本当にすみません、私はもう大丈夫ですから、気にしないでください」さっきまでの発作の余韻は感じられない。

 

リーベは少女とAI女を交互に見る。()()()()()()()()。そうとしか思えなかった。

 

フードを被っていて良かった、なければ少女に違和感を抱かせていたかもしれない。AI女はこの階層に来たときから変わらず、絵画のような笑みを浮かべていた。

 

「そういうことでしたら、私はこれで。お大事にしてください」

 

とにかく少女はもう平気だ。さっさと立ち上がって転移門に触れる。

 

()()()さん」

 

首筋が、金属メッキされたみたいにガチガチだった。なんとか違和感なく振り向くと、AI女は白いワンピースを貴族みたいに摘んで頭を下げていた。

 

「ミトさんのこと、ありがとうございました」

 

芸術品めいた滑らかさで姿勢を戻すと、こちらを見て柔らかく微笑んだ。真っ黒い瞳が、じっとリーベを見つめる。全身を包む得体の知れないじっとりとした空気に、肌が粟立つ気配がした。

 

少女も真似をするように頭を下げていたが、それを微笑ましく思う余裕もない。

 

「ええ」

 

逃げるように、すぐに門に向き直る。閉じた瞼の裏に瞳が浮かんでくるのを無視して、転移先を呟いた。

 

 

 

カウンセラーと会ってから3日が経った。死の恐怖は未だ止まず、それどころか大きくなっている。

 

しかし、AI女に感じた得体の知れない何かは、すぐに消えた。

 

代わりに感じるのは“焦り”だ。大事なものを忘れたような不安が、常に付き纏っている。その正体は分からない。

 

朝日を浴びるときも夜風を感じるときもカフェ・オ・レを楽しんでいるとき、湿ったものが体に巻き付いているかのような寒気がする。

 

姿見を見ていると、何かが鏡越しに襲ってくるのではないかと思うときがある。

 

何かをしていないと気が済まない。何かに向かって動いていないと、また悲劇が起こるのではという気分になる。

 

48層主街区リンダースの隅。林の中に孤立した一軒家。目立たないうえ転移門からそこそこ近く、間取りも良いから気に入っていたが、今では唯一つながっている獣道を通る度に、緊張する。

 

リーベのすぐ近くをオレンジ色のカーソルが通っていく。機会があったら隠蔽ボーナス付きの装備でも買ってこようと思っていたが、もうしばらくは平気かもしれない。誰もリーベに勘付く様子はなかった。

 

さながら野営地のように設置型キャンプが並んでいるが、目当てのプレイヤーがどこにいるかはすぐに分かった。見るからに貫禄があり、尊大な歩き方を隠そうとしていない。

 

入っていったキャンプに、タイミングを見計らって入り込む。さすがに入り口の幕が動くから気付かれてしまったが、ここまで来れば何も困らない。

 

中には目当ての男以外には誰もいない。いてもよかったが、いなければ楽ができてありがたい。

 

男は最初驚いたように目を見開いていたが、リーベが()()()()()()()短剣をしまうと、不敵に笑った。

 

「ハーン?」彫りの深い、整った顔立ちだが、笑みは歪んでいた。

 

「さては、例のチーターさんか?これはまた随分と」

 

「あなたに用がある」

 

内臓の震える低い声を遮って、リーベは持っていた青い結晶を近くのテーブルに置く。転移結晶よりも色が濃く、一回り大きい。

 

「明後日の15時に使って」返事を待たずに踵を返す。

 

「オイちょっと待て」

 

無視してキャンプを出る。さっさと野営地を抜ける。彼と話したときに隠蔽スキルが切れていたから何人かに見つかるが、フードで顔は見えないし追い付かれるわけもない。

 

適当な森に入ると追いかける声が途切れた。代わりに木々が風に揺れる音だけが聞こえる。

 

まだ陽も沈んでいないのに、奥の方が暗くて何も見えない。

 

ひとつ深呼吸をして、森を抜けるべく動き出す。休んでいる暇は無かった。

 

なぜならもう、始めてしまったからだ。

 




展開を考えているときにネズハの存在を思い出した俺
「コレいけるでマジ!ウヒョオオオオ!!」

オレンジプレイヤーは普通には圏内に入れないことに気づいた俺
「そうやったやんけ!オエエエエエエ!!」

(AA略)
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