屋根ゴミ、キヴォトスに赴任する   作:シャザ

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7話 ブラックマーケットへ行こう

 ホシノたちと共に蓮は数時間をかけてブラックマーケットへとやってきた。

 

“ここが、ブラックマーケットか”

 

「先生、来るのは初めて?」

 

“そうだね、そういう場所があるとは聞いていたけれど…”

 

 周りを見渡せば、ガラの悪い連中が嫌でも目に映る。

 

「や、やめてください……!」

 

 蓮が声がした方向を向くと、明らかに場違いな白い制服の女の子が不良に絡まれていた。

 

「そういうわけにゃいかねぇんだよなぁ!テメェ、トリニティの生徒だろ。ってことは金持ちのお嬢様だ!」

 

「お前を誘拐して学校に身代金要求してやるぜ、ギャハハハハ!!」

 

「ひ、ひえぇ…。どうしてこんなことに…」

 

 ホシノとシロコは目線を合わせると、不良と白い制服の少女に近づいた。

 

「……君たち、ちょっといいかなぁ?」

 

「あん?なんだてm」

 

 不良の顔面にロングロッドが叩きつけられる。

 

「ぐえぇっ!?」

 

「て、テメェら何しやがる!コイツはテメェらのダチかなんかか!?」

 

「違うけど」

 

「だ、だったらなんで襲ってき……ぐあああ!?」

 

 シロコは不良をバットで殴り倒す。少女は目を白黒させていた。

 

「え…ええ…?いったい何が…」

 

「もう大丈夫ですよ☆悪~い人たちはみんなおねんねしちゃいましたから!」

 

「あ……ありがとうございます…?」

 

 少女は急展開についていけないようだった。アヤネは慎重に彼女に問いかける。

 

『あの…さっきの人たちも言ってましたけど、あなたトリニティの生徒ですよね?どうしてブラックマーケットになんか……』

 

「………その、欲しいものがあるんです。このブラックマーケットにしかない、特別なアレが…」

 

「………こんな子にまで噂が広まってるのか…参ったねこりゃ」

 

 ホシノの台詞を聞いた少女は目を丸くして驚いた。

 

「え!もしかして…あなた達もあの話を聞いてブラックマーケットに!?」

 

「……もしかしなくてもそうみたいだねぇ」

 

「なるほど…だったら一緒に行きませんか?私、今日のために色々調べてきたんですから!」

 

「しょうがないなぁ…こっちとしても情報は欲しいし、お願いするよ」

 

「「そう…」」

 

 ホシノと少女は同時に言った。

 

「限定ペロロ様グッズの情報を!」「召喚器を売ってる連中を追うためにね」

 

「………へ?ペロロ?」

 

「……しょうかんき??」

 

 少女はポカンとしている。一方のホシノは珍しく冷や汗をダラダラかいて焦っていた。

 

「………もしかしてさ。おじさんと君全く違う話題を話してた…?」

 

「えっと、そうかもです…」

 

「ペロロってナニ?」

 

 シロコの言葉に少女は本気で驚いた顔をする。

 

「ええぇ!?知らないんですか《モモフレンズ》を!人生半分くらい損してますよ!」

 

 少女は背負っていた変なリュックサックからこれまた変なぬいぐるみを出して見せてきた。ぎょろりとした目玉が目立つ白い鳥のぬいぐるみは、妙な威圧感を放っている。

 

“これはまた…ずいぶん貫禄のある目つきだな…”

 

「私の一番好きなキャラクターのペロロ様です!」

 

「わあ☆まさかこんな場所でモモフレンズファンに出会えるなんて!私はミスターニコライが一番好きなんです!」

 

「わかります、哲学的な所が本当にカッコいいですよねニコライさん!」

 

 ノノミはメンバー内で唯一モモフレンズを知っていたようで、少女と意気投合した。

 

「私の名前はヒフミです!あなたは?」

 

「私はノノミです〜」

 

“(……ヒフミ、かぁ…)”

 

 蓮の脳裏には女流棋士であり親しい仲である東郷一二三が浮かんでいた。またいずれ将棋を打ちたいなぁと感慨に耽っていると、遠くからドタドタと不良たちがこちらに近づいてくる。

 

「お前らよくもさっきはやってくれたなぁ!!全員ブラックマーケットの商品として売り払ってやるぜぇ!!」

 

「どうして不良ってどいつもこいつも似たようなこと言うのかしら」

 

「勉強してないから語彙が偏ってるんじゃない?」

 

 セリカの素朴な疑問にホシノは辛辣に答えた。蓮は思考を戦闘指揮に切り替える。

 

“よし、それじゃあ降りかかる火の粉を払おうか”

 

 人攫いを行おうとしたチンピラたちはアビドス生たちにコテンパンに伸されて全員地べたを舐める羽目になった。

 

「ハイおしまい」

 

「とりあえず敵の勢いは収まったみたいですね…増援が来る前にこの場を離れましょう!」

 

「みなさんこっちです!」

 

 ヒフミの手招きに導かれ、一行はその場を後にする。しばらく歩いてからノノミはヒフミに尋ねた。

 

「あの…ヒフミちゃん?迷いなく道を進んでるみたいですけど、当てずっぽうではないですよね?」

 

「はい、このブラックマーケットは連邦生徒会の目が届かない危険地帯ですから。それに学園数個分の規模を誇るこの場所でペロロ様の限定グッズを手に入れるためには危険を承知で下調べする必要があったんです。私は普通の女の子ですから」

 

「………普通の女の子はこんな治安最悪の場所に来ないのでは?」

 

「そうでしょうか?ペロロ様の限定グッズですよ?」

 

 ヒフミは不思議そうに首をかしげた。どうやら自分が普通の女の子だと本心から思っているようだ。

 

 一行はヒフミのペロログッズを買いに行く傍ら、召喚器を売っている何者かの情報を探る。……しかしどれだけ探してもそれらしき物の情報は掴めなかった。とりあえず一行は休憩がてらたい焼きを買って頬張っていた。

 

「……それにしても見つかりませんねぇ」

 

“完全に誰かが隠してるな。アヤネ、そっちは?”

 

『芳しくありませんね…ロクに情報が転がっていません。口コミなどのアナログな方法でないと召喚器の売買をしている誰かにはたどり着けないかも…』

 

“そっか…”

 

 蓮は出来立てほやほやのたい焼きを食べる。サクッという音と共に中のあんこを味わい、笑顔になった。

 

“美味しいな”

 

「ん。焼きたてもいいけど、きっと冷やしてもおいしいよ」

 

 全員がたい焼きを食べ終わったのを見計らって、ヒフミは今まで感じていた違和感を吐き出した。

 

「……なんだか妙じゃないですか?ブラックマーケット内でここまで情報を隠せるなんて、どこの大企業が関わってるんでしょう…」

 

「……これって異常なの?」

 

「はい、さっきも言いましたがブラックマーケットは連邦生徒会も手を出せない無法地帯です。基本的にどの企業も開き直って悪事を働いているので隠さないんですよ。……例えば、()()とか」

 

 ヒフミが指さしたのは一棟のビルだった。

 

「あそこはブラックマーケットで最も大きな闇銀行の一つです。なんでもキヴォトスで行われた犯罪の二割弱の盗品を扱ってるそうで…」

 

「うへぇ、マジでやりたい放題じゃん?」

 

「そうやって犯罪で稼いだ金を違法な武器や兵器の購入や開発に使って、さらに他の犯罪に使われる…。このブラックマーケットでは、そんな負のスパイラルが起きているんです」

 

「……銀行が犯罪を煽ってるってことなんですね。こんなこと許されていいわけありませんよ!」

 

 それを聞いて、いつの世にも悪は蔓延るものだなぁと蓮はため息をついた。そんな彼らにアヤネが慌てた様子で言った。

 

『皆さん、武装勢力がこちらに接近中です!気づかれた様子はありませんが、警戒を!』

 

「……ま、マーケットガード!ブラックマーケット最凶の治安維持組織です、隠れましょう!」

 

 ヒフミの言う通り身を潜め、マーケットガードを遠巻きに監視する。どうやら何者かを護衛しているらしい。彼らは闇銀行のビルに入っていった。

 高級車が停車し、中から小綺麗な服装の大人が出てくる。彼は銀行の職員に金の入った包みを渡す。

 

「「「…………は?」」」

 

 ホシノたちはその人物を知っていた。そいつはアビドス高等学校の借金を取り立てにくるカイザーローンの銀行員だったからだ。

 

「今月の集金です」

 

「ご苦労様です、ではこちらの集金確認書類にサインを」

 

「はい」

 

 彼はにこやかにその場を去っていった。呆然と去っていく車を見る一同に、ヒフミは困惑しながら尋ねた。

 

「み、みなさんどうしたんですか…!?」

 

「あ、あいつ…毎月うちの利子を取り立てに来てる銀行員じゃない!!なんでこんな場所に!?」

 

『……車のナンバープレートを照合しました。毎月アビドスに来ているカイザーローンが使用しているものと一致しています…』

 

 セリカは青筋を立てて低く呟いた。

 

「………ちょっと待って。まさか…うちの借金返済資金、全額犯罪資金に横流しされてた…?」

 

“……黒に限りなく近いグレーってところかなぁ”

 

『しかしまだグレーゾーンで留まっています。決定的な証拠がないと……』

 

 アヤネの言葉にヒフミが反応する。

 

「……あっ!さっき銀行員たちがサインしてた書類!アレなら決定的な証拠になり得るんじゃないでしょうか!」

 

「………おぉ、さすがだねぇヒフミちゃん!」

 

「……でも、もう書類は銀行の中に入って行っちゃったし無理っぽいですね…。中にはマーケットガードがわんさかいて、セキュリティも頑丈ですし…。あはは、今のは聞かなかったことに…」

 

「……!ううん、いい方法があるよ」

 

 シロコは目をキラキラさせた。蓮はそんなシロコを前に見たことがあったため、次に何を言い出すか容易に想像できてしまう。

 

銀行強盗をしよう

 

「………はい??」

 

 シロコは自分の鞄の中から覆面を取り出し仲間たちに手渡す。ホシノは肩をすくめた。

 

「シロコちゃんさぁ…………ナイスアイディア!」

 

 ホシノはノリノリで覆面を被る。ノノミも笑顔でそれに続いた。

 

「よーし、悪い銀行をやっつけちゃいましょう☆」

 

「え、えええええ!!?と、止めないんですか!?失敗前提ですよ闇銀行襲撃なんて!!」

 

「だってシロコちゃんを止める理由ないじゃん?」

 

「あ、あぁ…あの三人を止めてください!このままじゃ大変なことに…!」

 

 セリカに止めるように頼んだヒフミであったが、当の本人は諦めムードに入っていた。

 

「もう無理よ。シロコ先輩はホシノ先輩の言うことしか聞かないけど、ホシノ先輩もうゴーサイン出しちゃった…。こうなったらやるしかないわ!!」

 

「は…はわわ……」

 

「ヒフミ、残念だけどあなたの分の覆面がない。そのまま行ってもらう」

 

「……は、え…?わ、私も行くんですかぁ!?」

 

「ヒフミちゃんの覆面…あ!コレ使いましょう!」

 

 ノノミはたい焼きの入っていた袋に視界確保のための穴を開けて渡す。ヒフミはしばらく悩むが、観念したのか袋を被った。

 

「……うう、ティーパーティーと正義実現委員会にバレませんように…」

 

「そういうわけだから先生、ちょっとここで待っててくれる?」

 

“……いや私も行く。盛大に、派手に暴れてやろうじゃないか”

 

 シロコは目を丸くする。蓮の姿が一瞬だけ没個性なスーツから特徴的なロングコートに変化したからだ。……何度見てもいつものスーツだったので、見間違いだったのだろうかとシロコは首を傾げた。

 

『では、作戦開始です!』

 

 アヤネの号令と同時に、一行は闇銀行を襲撃した。

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