2度と繰り返さないために彼は剣を振るう。 作:お寿司のネタのサーモン
「ええ!未来、来れないの!今日のライブ未来が誘ってきたんだよ?」
「ごめんね響。お父さんがいきなり家族旅行だって言って聞かないから。」
イベント会場に連なったライブを見に来た大勢の人の列から一際大きな声が聞こえて来た。
友人に誘われ行こうと思っていった所なのにその肝心な友人が来れなくなったら誰でも声は大きくなるだろう。
「私良く知らないのに・・・」
このライブはツヴァイウィングと言う女性ヴォーカルユニットであり1年ほど前からその人気を爆発させている有名なユニットであるがどうやらこの響と言う少女はそれを知らないらしい。
「済まないが道を尋ねてもよろしいかしら?」
響「え?あぁ、はい!良いですよどこですか?」
彼女がこのライブ会場に来るのは初めてのはずだが彼女は人一倍のお人好しだったようだ。
彼女、響に声をかけた女性は茶色い髪を纏め青いジャンパーを着てピンクのズボンを履いていた。
響(この人綺麗だな・・・あ、道案内道案内っと。)
「ライブ会場はどちら?」
響「多分この列の先に有るはずですよ。」
「そうなの?ありがと、お礼として電話番号交換しましょ?」
響「え!?いいんですか!」
「良いの良いの、私がお礼で教えてあげたいだけだし。」
響「じゃあお言葉に甘えて・・・『ピロリン!』その携帯もしかしてアップルの最新型ですか?」
「ええ、そうよ。しかし良くわかったわね、最新型とは言っても前の型と形は同じなのに。」
響「えっと・・・欲しくてもお金が無いから調べるだけにしてたんですけど・・・そしたら違いが分かるようになっちゃって・・・」
「すごいことよ私なんてこれより一個前の型が欲しかったんだけどね、おんなじだから間違えて買っちゃったの!恥ずかしいわ。」
響(値札でわからなかったんだろうか・・・)
「あ!そうそうまだ名前は言ってなかったわね、私の名前はアルベルト・テスラっていうの、気軽にテスラって言ってね。まあ私の友達はベーコンって言うんだけどね。」
響「何でベーコンって言うんですか?」
テスラ「髪の毛の色がカリカリに焼けたベーコンと同じ色だかららしいわ。」
響「・・・酷いですね。」
テスラ「まぁ気にしてないから良いけど・・・じゃあまたライブ会場で会いましょ。」
響「はい!」
響(いい人だったな・・・それに比べて私は私の家族は・・・)
響「私って・・・呪われてるかも。」
その時掴んだ腕には少しの青さがあった。
舞台裏で
これから始まる最大規模のライブに向けてスタッフ達が最後の調整を行っていた。
そんな慌ただしい空間に一人コンテナの裏で小さくなっている人物がいた。
澄み渡った青空の様な色をした髪を持つ気の弱そうな少女、彼女こそがツヴァイウィングの一人、風鳴翼である。
そこに赤い髪をした少女が近づく。
「あたしさ、間が持たないっていうか。なんていうか、さ。開園するまでのこの時間が苦手だな。」
翼「そうなの、奏?」
それに夕焼けを連想させる赤色の髪を持つ少女天羽奏は答える。
奏「ああ、こちとら速く大暴れしてやりたいってのにそいつもままならねぇからな。」
翼「・・・そうだね。」
奏「もしかして翼・・・緊張してる?」
か細い返事をする翼をからかうように奏は微笑みを浮かべて問いかける。まあ明らかにからかっているんだけど。
翼「当たり前でしょ!櫻井女史とアルベルト博士も今日は大事だって言っていたじゃない!」
奏「かぁーーー!真面目だね~」
照れながらも真剣に答える翼の額を奏はあきれ半分面白さ半分といった様子でからかうように小突く。
するとそこに長い髪をオールバックにし、赤いスーツを着た大柄の男性がやってきて二人に話しかけてきた。
「奏、翼、ここにいたのか」
翼「指令」
奏「こりゃまた弦十郎の旦那」
弦十郎と呼ばれた男は落ち着いた様子で二人を見つめる。
弦十郎「わかっていると思うが今日は」
奏「大事だって言いたいんだろう?分かっているから。大丈夫だって」
真面目な忠告を行う弦十郎。それを奏は手をひらひらとさせ聞き流す。
弦十郎「分かっているなら、それでいい。」
するとそこにもう一人分の足音が聞こえて来た。
「もうすぐ始まるぞ、二人共。」
翼「博士!?」
奏「アルベルトさん、もう準備は出来たのか?」
アルベルト「ああ、準備万端だよ、それでどうだね?体調の方は。」
翼「問題ありません。」
奏「モーマンタイだ!」
アルベルト「それで・・・娘は今どこかな?」
弦十郎「アルベルト博士、ここは舞台裏ですよ、一般の人は入れないんです。」
アルベルト「なんだと・・・まあ後で監視カメラから映像を抜き取ればいいか。」
奏「この親ばかはいつになったら治るんだ?」
翼「あはは・・・」
その時弦十郎の通信機が知らせを知らせる音を鳴らす。
弦十郎「もしもし、風鳴弦十郎だ。」
『あ、ごめんなさいね、今そっちにアルベルトはいるかしら?」
弦十郎「ああ、今日も元気に親ばかを発揮しているぞ。」
『ということはそっちに居るのね・・・とっ捕まえてきて!今すぐ!』 ブチッ
アルベルト「そういうことなので私は帰る。」 ガシッ 「ん?」
弦十郎「帰らせませんよ。」
アルベルト「別にいいだろ!私にはもうやることがないはずだ!」
弦十郎「作った責任です、最後まで見て下さい。」
アルベルト「んがーーー!!」
弦十郎に肩を掴まれ逃げ出せなくなったアルベルトはそのあと来た警備員に連れていかれた。
奏「ステージの方はまかせな。」
そうサムズアップしながら弦十郎に言った奏。
弦十郎「ああ、任せた。」
そういいながら頷き、弦十郎は去っていった。
奏「さて、難しいことはさ。旦那や了子さんに任せてさ。あたしらはぱーっと」
言いかけて気づく。翼はまだ、緊張しているのだろう。俯いている。奏はそんな翼を優しく後ろから抱きしめ手を重ねた。
奏「真面目が過ぎるぞ、翼。あんまりがちがちだとそのうちぽっきり行っちゃいそうだ。」
翼「奏・・・」
奏「私の相棒は翼なんだから。翼がそんな顔していると私まで楽しめない。」
翼は一度奏の方を見る。
その時の奏の表情は夏に咲き誇るひまわりのようだった。
奏「私とあんた両翼そろったツヴァイウイングはどこまでも遠くへ飛んでいける。」
翼「どんなものでも超えてみせる。」
そう言って二人は大勢の観客が見守る表舞台に走って行った。
その頃響は
響は物販に並んでいた。電子決済で会計を済ませペンライトを購入。そして会場へと足を踏み入れる。
響「わぁ!」
そこには広大なステージと今から始まるステージを心待ちにしている大勢のファンがいた。響自身も心が徐々に高揚していくのを感じる。
座席表を見て自分の席を探し出す。
ステージから向かって右側、中段くらいの席が自分の席だった。ワクワクと今か今かと待ち構えていると先程話をしたテスラが何と自分の席の隣にいた。
響「テスラさん!」
テスラ「響ちゃん?ここにいたのね。」
響「はい、まあ・・・」
テスラ「話をするのはこのライブが終わってからね、そうだ!一緒に見ましょう。」
響「はい!」
そんな話をしていた時ライブ会場が急に暗くなった。
響「うひゃあ!停電!?」
テスラ「アハハハハ!違うわよ、ライブの演出よ・・・響ちゃんはおかしなことを言うわね。」
そう笑いながら目に浮いた涙をふき取るテスラ。
響「もう・・・酷いですよテスラさん、私ライブに来たのは今日が初めて何ですから。」
それに対して響は顔を膨らませながら言った。
テスラ「あ~面白かった!ほらはじまるよ。」
そういった直後、最初の曲のイントロダクションが流れ始め七色の照明がステージを輝かせた。
両サイドから一斉に光始めるペンライト。天井から舞い降る羽のエフェクト。その中から二人の歌女が舞い降りた。
響とテスラは自分のペンライトをつけて掲げる。
響&テスラ「「いえーい!」」
響の声も歓声の中に混じり会場は熱気に包まれた。
ここにいる誰もがただただ純粋にこのライブを楽しんでいる。
観客の声が一つになり合いの手を入れる。
二人の歌はそれに呼応するように勢いを増す。
二人の歌女はステージを駆け抜ける。誰もがその姿を追いかける。
メインステージへと到達し、天幕が開け夕焼けの美しい空が両翼を朱く照らしだす。
会場の熱狂は最高潮に到達する。舞い歌うその歌に奏も、翼も会場にいるすべての人がひとつに繋がったような感覚を響は感じていた。
(ドキドキして、目が離せない。すごいよ、これがライブなんだ。)
頬を赤らめ、響は今まで感じたことのない感動を覚えた。
だがそれもすぐに終わった。
会場正面のアリーナ部分の一部が爆発し周辺から観客たちが悲鳴を上げながら離れていく。
テスラ「・・・これは演出じゃなさそうね。」
響「何ですか!いったい?」
テスラ「何か事故が起きたみたい、早く避難しましょう。」
響「・・・テスラさん。」
テスラ「何?」
響「あれは何ですか?」
そう震える指を必死に伸ばしながら響が指し示した場所では人が炭になっている現場であった。
テスラ「ノイズ・・・!」
テスラが空を見上げるとそこには飛行型のノイズが辺り一面を覆っていた。
ギュ・・・ビュン!
響「え?」
するとウジのように居るノイズの一体が響をめがけて飛んできた!
テスラ「危ない!」
ガギン! ブウン! ドギャン!
テスラが火事場の馬鹿力で先程まで座っていた自分の椅子を強引に取り外しあわや当たるかという際どい距離でノイズに椅子をぶつけた。
バサッ
ノイズはその突然の衝撃に耐えきれずに崩壊し炭の山になった。
テスラ「早くいくよ響ちゃん。」
響「え?あ・・・はい!」
テスラが響に手を伸ばして響の手を掴むと同時に・・・
バゴ!
丁度響が立っている地面が崩壊し響とそれに引っ張られるようにテスラが落ちて行った。
ベギ ・・・嫌な音とともに。
響「いててて・・・大丈夫ですかテスラさん!?」
テスラ「如何やら落ちるときに折ったみたい。」
その視線の先には真っ赤に腫れているテスラの足だった。
テスラ「この足じゃ走れないわね。」
響「肩を貸します!逃げましょう!」
テスラ「ええ・・・危ない!」 ドスッ
又もやノイズに狙われた響をテスラが・・・庇った。
響「え?・・・テ、テスラさん?」
テスラ「あはは・・・やられちゃったみたい。」
響「え?・・・だ、ダメ!テスラさん!」
テスラの体に突き刺さっているノイズは既に炭になっていてテスラの体がどんどん炭素分解されて行っていた。
テスラ「響ちゃん、よく聞いてね。」
響「いや!いや!いや!ダメです!生きてください!」
自分よりも大きいテスラの体を抱き寄せながら響は泣きじゃくっていた。
テスラ「響ちゃん・・・あなたは、自由に生きなさい、見た感じ、あなたは生きづらそうだから。」
響「え˝?」
テスラ「さっき会って、話を少しした奴、の言う事じゃない、けど・・・自由に生きて、でも、自ら終わっちゃダメよ、ちゃんと生き抜くの。」
響「そんなこと言われても・・・わかりませんよ。」
テスラ「そうね、いきなりは無理よね、じゃあ暇なときにでも思い出し、て考えてみて。」
遂に体の半分以上が炭になってしまった。
テスラ「最後に言っておくわ・・・諦めないで・・・・ーーー」
最後に顔が炭化し崩れて消えた。
響「・・・・・・グスッ・・・」
「あんた早くここから逃げろ!」
響は悲しみに暮れていたが運命は待ってくれない。
ギギギ・・・バギャン! ドッ
何かの破片が響の心臓を貫いた。
響「え?」
「おい!死ぬな!お願いだ!目を開けてくれ!」
「生きるのをあきらめるな!」
身体から血が抜けていく感覚、体温がさがっていく感覚を味わいながらその言葉を耳にする。
響(そうだ・・・諦めない。諦めてなるものか!)
だが体が限界だった。
僅かにあいた目はすぐに閉じた。
だが完全に意識が失われる前に響にはなにか雷鳴の様な音と歌声が聞こえてきた。