異世界迷宮でハーレムしない 作:とくめい
縛り上げた盗賊達の前で、拾った拳大の石を顔の前に掲げる。
目の前で握り潰して砂を盗賊の頭にふりかけた。頭をポンポンと叩く。
「僕からは特に何も聞いたりしないから。これから好きなようにするけど。話したい事があったら聞いてあげるよ」
色々教えてくれた。アジト。残った仲間。隠してる金品。
村側の近くにも拠点が一つあるそうだがそちらは後回しに。
今夜はこの町にある拠点にいく。
少し治安の悪い場所、いわゆるスラムじみた場所に本拠点があるらしい。
残った仲間はこちらの拠点側にいるようなので先にツブしておく事にした。
土地鑑もない上に方向音痴なので二人にめっちゃ頼る。せ、制圧は己がするから…。
辿り着いた。さっき服を買った時ついでに揃えておいた外套のフードを被り直す。
アシュリーに小声で尋ねた。
「一人います。血の匂いもします…たくさん。死んでるとしたら多分二人以上です」
生き残った仲間は二人と聞いていた。よくわからない。あの様子で嘘をついていたんだとしたらアカデミー賞取れる。
考えられるとしたら、別の盗賊グループにやられた?でもそっちは今迷宮の方狙ってるからーとかシノギが違うから関わりが全然ないとかそこそこ拠点も離れてるとか色々言ってたよな。
「いく。僕の後ろに。扉はヤンガス」
扉にそってデュランダルを滑らせ鍵を無効化。己は扉に向かって構えながら鑑定を連打。ヤンガスがそっと扉を開く。
物音を立てないように慎重に侵入した。間取りは3部屋。入り口から左右と奥側。奥側がボスの寝室。
アシュリーがそっと肩を叩いて奥を指差す。その後右を指し鼻を摘んだ。ヤンガスが扉を閉めた。
右手を上げた。待機の合図。
入り口は中途半端に開いていた。薄い灯りが漏れている。恐らく手持ちのランタン。鈍い物音。断続的に続いている。
何かの作業中と判断。位置は入り口からはいって右寄り。
オーバーホエルミング
中途半端に開いた内開きの扉。右手で開きながら侵入しようと。
扉越しに何かを動かした手応え。引き延ばされた世界では奇妙に聞こえる、金属が出す音。
扉を開こうとしたら音が鳴るように仕掛けがあった。判断できるまで硬直。
オーバーホエルミングも音より速くは動けない。部屋に侵入した時点で中の人物はこちらへと視線を向けていた。男。
既に得物はぬいている。こちらへと向けようと。
オーバーホエルミングがきれた。
瞬時に突きが飛んできた。はや。細身の剣。避けむりうける。
デュランダルで受けた。相手の剣が奔る。
はや。オー、うま。オーバー、つよ。
一撃目こそ命をとりにきていたが、それ以降の攻撃はこちらの出鼻を挫くような。受けに回らされる。
全力を以て後ろに間合いをとった。
この間を取れた瞬間にオーバーホエルミングをしていれば確実に勝利できた筈だったが、リョウの脳内では一時的に以前の世界で強者と競っていた時の感覚に陥っていた。
この世界に来てからは純粋な技術を見せられた事はなかった。
ただ身体の性能にあかせた戦い方。盗賊も魔物も。
確実にやってた者の技術。
身体が自然に構えをとる。相手の姿をはっきりと捉えた。
瞬間、相手が自分の背後に置いていた光源を叩き壊した。灯りが消える。こちらは逆光だった。視界がブラックアウトする。くる。
防いだ。先程の攻防、初手の突きこそ相手の最も信頼する技と読んだ。狙う先も。なら相手の首がどこかもわかる。
今度は相手の先手を許さず、受けた剣を使い剣を弾く。そのまま流れるように首を突いた。
とった。だが妙な手応え。間違いなく首を突いた筈。
仕留めていた場合、もしくは仕留められなかった場合ならば生じなかったリョウの硬直の隙に、今度は相手が間合いをとった。
ああ身代わりか。そこでやっと思い当たる。己の隙に舌打ちしたくなる。
同時にこの世界の道理も取り戻した。オーバーホエルミング。鑑定。
カール 人間 男 34歳 盗賊Lv3
「少し話しませんか」
自然と話しかけていた。自分でも何が話したいかわかっていないうちに。
「盗賊風情が。てめェらときく口なんざもってねェよ」
相手が動いた。もう問題ない。オーバーホエルミング。
相手の細身の剣の、剣身を握りしめた。捻りあげる。
オーバーホエルミングがきれると同時、相手の姿勢が崩れる。しかし剣は手放さなかった。
「降伏してください」
「お断りだね。突然舐めてンのか?装備付けてるからって刃を…」
引き抜こうとする男。だが圧倒的な膂力によってびくともしなかった。
オーバーホエルミング。 剣から手をはなし、腹パン。
後ろに回って両手を掴んだ。
効果がきれた途端えずく男。ちょっとビクンビクンしてる。やば。
両腕を後ろ手に縛り上げて、二人を呼んだ。