異世界迷宮でハーレムしない   作:とくめい

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第16話

男は白目剥きながら気絶した。やべえ。

回復薬と水を口に放り込んでおいた。くそ!盗賊め!なんてことを!

 

 

他の部屋では死人が二人いた。盗賊で間違い無いと思う。盗賊ってググったらでてきそうなくらい盗賊の見た目してた。北斗の拳くらいよくわかる。これでパン屋だったら草。

 

やったのはあの男だと思うが、あの見事な剣捌きの持ち主とは思えないほどズタズタというか、憎しみを感じる始末だった。

 

二人には先に金目のものの回収をお願いした。なかなか溜め込んどるやないかぁ…。

回収しきったようなので一度宿屋へのワープを開いて荷物を置いてきてもらう。

 

男が目覚めた。

鋭い目付きで見るともなく部屋全体を見渡している。

確認を終えて、深く溜息をついた。

 

「えっと。剣士さん。こちらで何をされてたんですか?」

 

取り敢えず気になっていたことを聞いてみた。

 

「……………」

 

えっ無視されてる…嘘でしょ…この美少女を無視するなんて…

 

 

「ええっと。私達はですね。ここを根城にしてる盗賊たちが村を襲ってきてですね?全員返り討ちにした後、根こそぎ金目のモノを奪うためにアジトを聞き出して、生き残りも二人いるって聞いてこっそり侵入してきたんですけど」

 

 

すっごい顔で見られてる…コイツらマジかよって顔が言ってる…マジだよ…

 

 

「……そうかい。盗賊の仲間じゃあなかったわけだ。…悪かったな」

 

「いえ、こちらこそ…」

 

………。

 

男は物凄くバツが悪そうな顔で探し物をしていたと言った。

大事なとられたものを取り返しに来たとか。

 

……やば。

 

「えっと…金目のモノは根こそぎしちゃって…どんなものか教えてくれますか?お返ししますので…」

 

気まずっ

 

 

「いや…ココにはなかったンだ。気にしなくていい」

 

「そうなんですか?…なら、もう一箇所のアジトにあるのかも?」

 

途端に男は強く反応した。

 

「どこにある!頼む教えてくれ」

 

うううーんどうしよう。

 

カール  人間 男 34歳 盗賊Lv3

 

 

「一先ず、パーティに入ってもらえますか?」

 

ヤンガスに目配せすると詠唱してくれた。パーティの誘いを飛ばす。

 

カール  人間 男 34歳 盗賊Lv3

盗賊Lv3 探索者Lv3 戦士Lv32 暗殺者Lv1 剣士Lv1 村人Lv8 僧侶Lv1

農夫Lv1 騎士Lv42

 

うっわつっよ。

そんでなんとなく想像ついたような…

 

 

カールは事情を話してくれた。

ここからは離れた町だそうだが…元々騎士だった。

生まれは良くなかったが、実力で堅実に騎士の座を手に入れたこの世界の一般人では最高レベルの成功と努力を積み重ねてきた男だった。

彼には友人がいて、剣は弱っちかったが優しい男で美人の嫁さんと可愛いお嬢さんがいたが、ある日盗賊にやられてしまった。

愕然として、その盗賊を追ううちにひょんな事からある金持ちと盗賊が繋がってる疑惑が上がり執念の捜査で証拠を掴んだのだが、なんと更にお家柄の良い騎士団関係者が協力関係にある事まで発覚。

彼はそいつをブン殴って辞職を申し出た。剣までは抜かなかった。

幸い上司は彼を物凄く気に入っていたらしい。特に問題にならないようにまでしてくれたとか。

お家柄の良い騎士団関係者は更にお家柄の良いお方に色々されて、いないないされてしまったとかなんとか…怖いので詳しく知りたくないです。

 

執念と努力でここまで結果を出してきたが、その友人から奪われているあるものが見つからなかった。逃げ延びた賊が持ち出しており、大事なものを必ず取り返し、友人を手にかけた敵を皆殺しにするため騎士を辞め日銭を稼ぐように旅してきたのだとか。

そしてここの賊がその手がかりだったと。

 

自分自身が盗賊になってしまっていることも告白した。

彼はそれについては何も自分を弁護するような事も言い訳の言葉も言わなかった。

…うっかりシステム的ななんかに引っかかっちゃったやつとかっぽいなー…この人絶対やらんでしょ盗みとか…盗賊のジョブを得るために時を止めいい人のフリして返すとかできなそう。あっなんか心が痛くなってきた。

 

 

「あンたが、アイツら全滅させたんだよな。ありがとうよ。お嬢ちゃん」

「終わったら、騎士団に突き出してくれて構わない。望むことがあるならなんでもする。頼む。アジトを教えてくれ」

そう言って深く頭を下げた。

 

 

「聞きたいのですけど…騎士には戻れないのですか…?」

 

彼は、顔を苦しそうに歪め、騎士には戻れない。戻らない。と言った。

 

 

「カールさんには私の奴隷になってもらいたいです。いいですか?」

 

彼はこちらを見てなんでもするともう一度言った。

 

 

 

詠唱のフリをお願いし、聞いていたアジトに近い場所へ跳んだ。

本拠点ほどではないにせよ、こちらの拠点にも財があった。

彼の求めていたものもあったようだ。

 

大声で泣き叫ぶ彼から三人とも距離をとった。

 

この世界は月がないんだよなあ。潮の満ち引きとかどうなってるんだろ。

三人でしばらく空を眺めていた。

 

 

「すまん。待たせちまったなァ」

 

彼がこちらへ歩いてきた。

 

「…もう一つ頼みがある。探してたコイツは…金になるようなモンじゃないんだ。ここに埋めてってもいいだろうか」

 

奴隷の持ち物は主人の持ち物。彼は申し訳なさそうに言った。

 

「どうぞ。…出てきたとこでお待ちしてます」

 

時間をかけず彼はすぐに戻ってきた。

もういつもなら起きる時間になってる。

今日も休日にしようそうしよう。

 

 

 




本編には書けなかったカールさんが言わなかったこと。
本編に関係することではないので読まなくても大丈夫です。

己の腕の一部に感じるほどに馴染んでいる愛用のエストックは探索者時代からの相棒。色々カツカツな彼を思ってパーティメンバーが金を出し合って贈ったもの。
友人とその奥さんは騎士になる前の元パーティメンバー。
奥さんの方は兄弟同然に育った義理の妹。
カールの両親は幼い頃に盗賊に殺された。
不憫に思った両親の友人に引き取って育てられた。友達の嫁の両親。
貧乏だったが家族を愛していた。
苦しい迷宮生活の中でも気合いで家族に仕送りしていた。
努力が認められて騎士になれた時、義理の両親は盗賊に殺された。
友達夫婦は盗賊風情に殺されるほど弱くなかった。娘を人質に取られ殺された。現場の状況から彼にはそれが理解できた。
彼は盗賊を憎んでいる。
自分自身でさえ。
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