異世界迷宮でハーレムしない   作:とくめい

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第32話

友人達の側にはその娘の遺体がなかった。

状況から攫われたと判断していたカールは、目標にしていた到達点である騎士を辞めてまで必ず探し出す事を誓った。

あの夜。盗賊共の拠点で手掛かりを探していた。そこに己が現れた。

別の拠点で見つけた物は、その娘に昔贈った首飾りだった。

安物だったが、とても気に入ってくれて常に身に付けていた。

血で汚れ、壊れていた。

 

 

 

 

 

「盗賊を買い戻します」

 

己は踵を返した。

生け取りになどするのではなかった。

 

 

「お嬢ちゃん」

 

カールが肩を掴んだ。優しい力と声だった。

両手にも触れる物があった。アシュリーとヤンガスが己の手を包んでくれていた。

平静ではなかった。

フー。息をつく。

 

「家に帰りましょう」

 

いつもより早い時間。パーティがなくなった事でシルヴィは心配していたようだ。

己の様子が明らかにおかしかった事も。

大丈夫だよと声をかけ再びパーティに加えた。

ウォルターから連絡が来ていたらしい。

荷物の処分ついでに行ってくると皆に声をかけた。

 

店で盗賊共の所持していた装備品を売り払った。

スキルの付いている物も所持していた。

そちらはウォルターに任せる事にする。

 

随分と用意するのが早い。明らかにオークションではないから急ぐために商人仲間を当たったのだろうな。

恐らくそれなりに高くついたのだろうが深くは言わず、直近額相当の額で手に入ったと申告してきた。

うなずき支払いを済ませる。

トロールは既に現在必要ないがそのうち使うだろう。

オセロとチェスについての契約を進めた。

大枠は以前の商談で決まっている。スムーズに終わった。

盗賊共のスキル付き装備品達を見せる。

買取かオークションかだが、面倒なので買い取ってもらう。

さっさと手放したい気分だった。

 

ウォルターと別れ再び奴隷商館を訪れた。

 

「以前売った6人と話したいです。多少痛めつける事になるかもしれません。お金は幾らでもお支払いします」

 

テーブルに金袋を積んだ。

 

「……………かしこまりました。場所をご用意致します。少々お待ちください」

 

エレガントが席を立った。

 

 

用意された場所は牢のような。

汚しても大丈夫そうな部屋で安心した。

 

「今度は僕から聞く。覚えがある事全てを話せ。攫った子について」

 

 

ノースシーロードという町で家族を殺し少女を攫った。繋がっていた商人を通して捌こうとしたが商人が捕まってしまい捌けなくなった。

処理しようと思ったが上玉だったため惜しく、この町のスラムの娼館に関わってる者に売ろうと連れて移動していたがスキをつかれて仲間が2人も殺された。

腹を刺しまだ息がある少女を近くの迷宮に捨てた。首飾りは金になるかと奪ったが安物とわかり拠点で投げ捨てた。迷宮の近くの町の名はブルーフォレスト。

 

これ以上は出ないようだ。手首をふった。手加減は大変だった。心を抑えるのが。

 

 

 

「ありがとうございました。大体治してあります。突然無理を言って申し訳ありませんでした。お礼にこちらを」

 

金袋を袋ごと渡した。が、数枚抜いて返ってきた。

 

「いえ。またのご利用をお待ちしています」

 

エレガントな礼で見送ってくれた。

 

冒険者ギルドに来た。ブルーフォレストまで飛べるものを探す。

銀貨を払い、飛んでもらった。

近くの迷宮に飛べるものを探す。

歩いてすぐのようだったので場所を聞いて向かった。

聞いていた小部屋に向かう。

わかっていたが何もなかった。

 

 

 

騎士団の詰め所を探した。

事情を説明し、女の子が来なかったか尋ねる。

 

「事情はわかったが…ノースシーロードは別の領主様の町だ。

領民でなければ我々は動かない。町に送ってやったりもしない。事実確認もできないものにいちいち付き合ってはいられないからな。

もし娘が来ていてもそう言うだろう。哀れに思い移動代くらいは出す者もいるかもしれないが」

 

この辺で一番安い宿を聞いた。

迷いながらも辿り着く。

エマーロ族の亭主がこちらを見て口を開いた。

 

「ウチは安宿だが、お嬢さん間違ってないか?随分いい装備に見える。勿論利用してくれるならありがたいが」

 

「女の子を探しています。特徴は――――――。

心当たりはありませんか?」

 

「悪いが客の事をペラペラ話すわけにはいかない。見たところ事情があるようだが」

 

「もし心当たりがあるなら、カールという男性が貴女を探している、とお伝えいただけませんか。お礼は幾らでも致します。お願いします」

 

「心当たりがあるともないとも俺は言えない。   

…アンタだいぶ疲れてるみたいだな。ココを出て右に飯屋がある。マズイが安い飯を出す店だ。そこで何でもいいから食って休んだらどうだ。

そうだな。2時間くらい。2時間休んで落ち着いたら諦めて帰りな」

 

「そうします。ありがとうございます。お願いします」

 

「何もお願いされてないよ俺は。じゃあなお嬢さん。今度は泊まっていってくれ」

 

言われた店に入って適当に注文した。文字が読めない。

2時間邪魔する事を告げて先に金を払った。

己は何を頼んだのだろうか。考えた。

きっと生きている。盗賊を仕留めるような娘だ。だから大丈夫なはずだ。

 

 

店主が声をかけてきた。2時間過ぎたようだ。

飯はまずいが時間にはうるさいらしい。

酷く重く感じる身体を起こす。

この身体になって初めて疲労感を感じていた。

礼を言って店を出た。

そこに女の子がいた。可愛い子だ。

 

ソフィア  人間 女 12歳

探索者Lv2

 

 

「あなたが、カールおじさんの知り合いですか?」

 

「そうです。すぐに連れてくるから待っていてくれますか?」

 

少女は頷いてくれた。宿に連れて行くからと伝えて己はすぐに家に帰った。

 

 

 

「カールさん!すぐにきてください!」

 

みんな帰るなり大きな声を出した己に驚いている。

カールはすぐに来た。

 

「見つけました。今から会いに行きます」

 

返事も待たずに手を取ってワープゲートに引き摺り込んだ。

 

宿に入り亭主に話しかけた。

 

「本当にありがとうございました。こちらがカールです。言伝をお願いできますか?」

 

「はいよ。残念だが泊まりじゃなさそうだな」

 

亭主は笑いながら席を立った。

 

 

少女が降りてくる。

カールを見て、飛びついた。

カールは、そのまま少女を抱きしめた。

 

 

「亭主さん。こちらお礼です。是非受け取ってください」

 

「いいよいいよ。いつ死んじまうかって心配事がなくなってこっちも安心した。一応聞くが泊まるかい?」

 

「えっと。二人が落ち着いたら連れて帰ろうと思いますが。

ちょっと時間かかりそうなので、どうしようかな」

 

「飲み物でも出そうか。言っとくけど不味いからね。ウチは安い事だけがウリなんだ」

 

ほんとにまずかった。金とっていい味じゃないだろこれ。

 

 

少女も連れて家に帰ってきた。己は倒れた。

ああ。MPだわ。魔法職がないから。疲れたような感じってそういうこと。

何とか回復薬を口に放り込み、ちょっと寝るとだけ声を絞り出して目を閉じた。

 

 

ハッと気づく。めちゃくちゃ心配そうに半泣きになってるアシュリーとシルヴィが目の前にいた。

30分くらい寝ちゃってたようだった。いつもはMP回復速度上げたり薬飲んだりするのを忘れてた。ずっとイラついてたからな。エレガントとウォルターには悪い事をした。少し怯えてたから。

二人にごめんねえと言って状況を聞いた。

大体の事情を話したりだとか紹介も済んだらしい。

詳しく話し合いがしたいが、食事を摂りながらがいいか。

シルヴィを見るとソフィアの分まで準備していますと。ママ…

ソフィアはハッキリと痩せ細っていた。ギリギリで生きていたに違いない。

たっぷり食べさせねば…腹一杯にしなければならぬ…

細かい話は食事してからだな。

 

というわけで食事だ。己はさっき食べたが、この身体は食べようと思えば幾らでもはいる。燃費めっちゃ悪そうだもんな消費エネルギー的に。

ソフィアもぱくぱく食べている。よく食べる子はかわいい。

食後にお茶を飲みながらお話しだ。

 

 

自由民はそれなりの特権階級らしいが、一般農民は領主の農奴階級っていう世界だったっけ。

農民以外が変わるかはわからないが。ソフィアの両親の職業も知らないけど、お家とか財産ってどうなってるの?

よくわからないが領主の召し上げらしい。カールは生存を信じていたが、一家全滅と普通は見るよな…

財産はカールの方である程度確保したのがあるらしい。

昔のパーティメンバーに預けてあるとか。今度会いに行こうね。

んで実際は生きてて、でも未成年だけどどうするの?継承とかできるん?

正式な手順を踏めば後見人を付けてどうにかすると。15歳になったら成人扱いで正式にって形なわけね。

で現実的にはむり?手続きにも金がいるし生活にも必要。そらそうだ。

15歳からは人頭税も発生すると。土地も現実的じゃない?なるほど。世の中金だな。

親戚はいるかな?

 

「俺が親戚だ。友人の妻は妹だからソフィは姪になる」

 

カールさん…そういう大事な事は早く言って…

 

「すまない…」 いや言いづらいよねこっちこそごめん

 

「それでは、カールさんを奴隷から解放すれば何とかなりそうですか?」

 

優秀なメンバーを失うのは非常に痛いが仕方ないだろ。

なんでそんなキョトンとしてんの。

カールさん優秀だし、前に聞いた上司さんとか、うまいことねじ込んでくれたりしそうかなって…きつい?

まあそうか…解放すると税金も余計キツくなるのか…

詳しくないからわからないけど、以前の土地とか家を取り戻すのは無理目ってことね。

でもそれならお金ない人はってそうか奴隷になるのか。

未成年だけどその場合ってどうなるの。確か売買するのは成人してからじゃないっけ。

その町の奴隷商館で成人まで面倒見ると。あっそう。

つまりまともにやるならソフィアは奴隷商館で成人になって売られるのを待つ奴隷になるわけだ。

じゃあもうウチの子って事でいいでしょうか?

一緒に暮らしてくれますか?お目目ぱちぱちかわいいね。

いいの?って、勿論良いとも。美少女は美少女を拒まない。

今夜はー。アシュリーごめんけど一緒に寝てくれる?明日寝具用意するわ。

服とかも買ってー。明日だな。

 

 

 

外に出ていた。今日も色々あったぜ。

火を吹く練習をする。ハート型にして酒場をわかさなければ。

うん?そもそもハート型の文化通じるのか?

どうしよう。お前を殺すみたいな意味のニュアンス含まれてたら。

後できいとこ。それはそれとして火を吹く練習はするが。

カールが外に出てきた。

寝具大好きですぐ寝るのに珍しい事だ。

かわいい姪っ子が帰ってきて嬉しいのかな。

 

「どうしました。カールさん。眠らないんですか」

 

明日は休みにしたからゆっくりできるぞ。ふー。お、ちょっと形変わった。

 

 

カールさんは己の前まで近づいて跪いた。

 

 

 

 

 

「貴女には感謝してもしきれない御恩があります。

この身に代えても、必ず御守りすると誓います。

貴女に、一生の忠誠を捧げます。我が主」

 

 

 

 

 

 

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