異世界迷宮でハーレムしない 作:とくめい
体力とはなんだろうか。
ゲーム的な表現で言うならば、多くは打たれ強さ。HPの多さを表すことが多いように思える。
現実的な表現で言うならば、心肺及び筋力の持久力を表すことが多い。
ゲーム的にも持久力という意味で使われる事はままある。
スタミナと表現される事も多い。
この身体の性能で力の強さ以上に驚きを感じる部分がある。
それこそが持久力だ。
精神的な動揺状態を除き、この肉体で疲労を感じた事が一切ない。
これがどういう事を表すのか。
竜人は心肺機能に優れているのでは。とミチオ君が考察していた。
間違いないであろうと己も確信する。
人が全力疾走を行える時間は40秒ほどと言われているらしい。
恐らくはこの世界において指標になるものではないと思われる。現代日本に比べ過酷な環境だ。厳しい表現をすれば、病弱であったり虚弱であったりすれば淘汰されてしまう社会なのだ。
命を失う事が多いとは言え、低層では殆ど稼ぎにならないと言われる迷宮にて日々命をかけ戦い続ける者が多い世界であるのだから。
ではその中でも上澄みと思われる竜人の肉体ではどうなのか。
モンスターハンターというゲームでは、武器をふったり回避行動をするたびにスタミナが消費される。味わい深いシステムだと己は思う。
もしスタミナの概念がなければもっと雑に武器をふってしまうかもしれないし、回避なんて無敵時間を利用して連打する事になるのではないだろうか(勿論上級プレイヤーは別として)
それがゲームではなく現実として、更に元々身体を動かす事がある程度得意であり好んでいたとしてどういう事になるのか。
初の迷宮探索より明けて翌日。
正確には日の出る前。夜が早く朝が早い社会だ。まだ外は暗いまま。
再びの迷宮に来ていた。面倒は嫌いなため宿から直接迷宮の小部屋へワープである。
ツダ リョウ 竜人 ♀ 18歳 竜騎士Lv5
竜騎士Lv5/英雄Lv3/剣士Lv4/戦士Lv4
キャラクター再設定 1 必要経験値1/10 31
ワープ 1 獲得経験値10倍 31
4thジョブ 7 武器5 31
鑑定 1
前日よりも時間帯の優位もあり十数匹を撃破。
やはり英雄は上がりにくく、ついで竜騎士からの一般戦闘職と伸びが良くなっているようだ。
それにしてもポイントが足りない。デュランダルが重すぎる。
ので一つ下げてみた。結果一撃で倒せなくなってしまったが、左手のボーナス武器であるフラガラッハで切りつけた後右手の鉄の剣で続けて薙げば倒せるので、体感では一手で倒せているのとあまり変わりがなかった。
デュランダルでないと1層でさえ一撃で倒せないと考えるか、物理特化ジョブであるからほぼ一手で倒せていると言えるのか悩ましい。
経験値加速もそれぞれが更に倍になってしまうため、最高効率のレベリングは難しく暫くはこのままの倍率が限界だろう。
アイテムの圧迫も深刻なため、早くも探索者ジョブ抜きでの迷宮探索は再考の必要性に迫られていた。効率厨の自覚がある己は既に苦しみを覚えて内心悶えている。
フラガラッハのスキル効果はデュランダルからMP吸収がなくなっている。試しに武器4まで落とした時は想定通りHP吸収がなくなっていた。
デュランダルからフラガラッハほどではないものの火力も大きく落ちている。つぎ込んだポイント分の能力はあるのだ。
とは言え1層では充分であり、現状ダメージを受ける事もなく撃破できている事を考えると武器4まで落とす事も検討に値するのだがそこは効率厨といえど命に関わるHP吸収の有無である。何らかの事故(具体的には魔物の部屋)を考えると4まで落とす事のリスクの方が上回ると思われた。
「焦る必要はないな。殆ど初日のようなもの。このペースで問題は無いはず」
自分に言い聞かせるように独り言を呟いた。
好んでいたRPGにて、主人公が独白する理由を己の考えを整理するためと設定して現実では不自然なほど独り言を呟くゲームあるあるを上手く落とし込んだものがあった。その世界観に没頭し、主人公に憧れて真似をしてしまう痛い大人だったが今では美少女。声まで美しい。ついニヤけてしまう残念さをも持ち合わせていた。
完全に手遅れであった。
そろそろかと迷宮の小部屋から宿屋の部屋に直行する。
日ものぼっておりいい塩梅だ。危険性と効率のバランスを考え迷宮では基本的に競歩以上小走り未満程度で休みもなく移動を続けていたにもかかわらず汗すらかいていない。流石美少女ボディである。汗をかいた身体が好みの紳士諸君もいるだろうが、己は美少女に神聖さを見出したいタイプであった。アイドルはうんちしない。
完全に手遅れであった。
朝食を平らげ早速宿を出る。体力お化けの美少女ボディは間違いなく己のアドバンテージである。
続けて迷宮に潜るのもアリだったがまずは奴隷商館を見に行く選択をとった。
ここで手に入れずともどういった奴隷が揃っているかは逐一確認していく必要性があるだろう。原作では紹介状も問題ないと大事な情報があった。あれは既に購入済みの上客だからだったかもしれないが。
「どういった奴隷をご要望でしょうか」
ナイスミドルな奴隷商人は隙もないが嫌味も感じない姿勢で言った。
己の中で奴隷商人といえば正しく原作のアランか傷だらけの奴隷少女をひたすら撫でる怪作を生み出した製作者のイメージであったが、この奴隷商人はアラン寄りであった。
「共に迷宮に入れる者を探しています。ドワーフなど力が強い者が特に望ましいですね」
鏡はないが間違いなく完璧な微笑みと共に答えた。自分自身に驚く。そうか自分には美少女の才能があったのか。
一般的な社会人であったため、必要以上に腰がひいたりもせずしっかりとした対応が表向きは出来ていた。
一般的な社会人であったため表面上は真剣ながらも、内心で上司やクライアントへの罵倒や今夜何食べようかななどと関係ない事を考えるスキルが身に付いていた。
早速連れてきてくれるようだ。ドワーフがいるのならばと瞬時に思考が切り替わっていく。美少女は切り替えも早い。
商人は極めてエレガントな所作と共に席を外した。
己は笑顔で早々に3割引の設定を行い始めていた。
「ヤンガス。二十歳のドワーフです」
男のドワーフだ。ヒゲに矮躯とステレオタイプな印象の。
鑑定では探索者Lv10と表示されている。セリーと同じく鍛冶師になれなかったってタイプだろうか。
「探索者がLv10になるまで迷宮に、はいっていました。ドワーフの中では力が強くないですが、できる限り頑張りますのでどうかよろしくお願いします」
そう言って首を垂れた。
自分から力が弱いというんだ?その割には真剣に購入されたいと意思を感じるし、謙虚というよりは正直なのだろうか?そういう人物はけっこう好感を持ってしまう。
軽く話をふってみた。どんな武器が得意か。どこの迷宮にはいっていたか。魔物を探す事は得意か。
しっかりと一所懸命な様子ではっきりと答えてくれた。特に光る才能を感じるとかではないが個人的に好ましい人柄を感じる。
第一ファンタジー好きにはドワーフドワーフしてる見た目がイイ。めっちゃドワーフしてる。名前も良い。兄貴って呼んでくれないかな。
ヤンガス君が退出した。ここからは奴隷商人のターンである。
「いかがでしたでしょうか。頭の回転も悪くなく、本人は力が弱いと言いますがそれもドワーフ基準のこと。経験も積んでいますし迷宮では充分に活躍してくれるかと存じます。
お値段は15万ナールでございます」
女性の方が高いと言われていたがやはりそんなに違うのか。戦うのなら男性の方が高くなりそうな気もする。ジョブとかあるからやっぱり性差は関係なくなるのかな。
「左様でございますか。うーん」
とはいえ半分様子見で来ているためお金がない。商会に来る前にドロップ品を売ってきたが15万だと割引使ってもギリギリすぎる。悩んでる風にして譲歩を引き出せないか。これくらいの文化レベルだと吹っ掛けてから段々下げていく商売してそうだし(偏見が含まれている)
「そうですね。お客様は初めての奴隷とのこと。特別に14万にさせて頂きます」
お。早速1万下がった。
「加えてヤンガスは税金が1万ナールとなっております。初めて奴隷を迎える主人にとって奴隷の税金も中々に気になるもの。
このタイミングは絶好の機会と言えるでしょう」
お客様だから!とか今がチャンス!とか思いの外芸がない押し方である。ワザとかもしれないが妙に饒舌だし売ってしまいたいのは確かなのだろう。それに税金安いってことは初年度ではない=売れ残りって事なんですよね?
「仰る通りでございます。素直ではあるのですが生憎あの顔ですので…」
あの顔ってディスカウントポイントなのか。イカついし傷だらけなのがむしろかっこいいと思うのだが。さっき普通に話してたから割り引く必要ないと読んだのかなー。
13万5千まで下がった。これ以上は…と表情で察せられたので購入を決定する。
「ありがとうございます。お客様の初めての奴隷購入記念と、購入と同時に死後解放を約されるお優しさに感服しまして合わせて
9万4千710ナールとさせていただきます」
3割引スキル強すぎー。
異世界 2日目