異世界迷宮でハーレムしない   作:とくめい

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第8話

3000ナールの定期収入を手に入れる事に成功した。

 

10日で宿泊食事付き、うち3日は1時間ステージに上がる事が条件である。それ以上歌う場合、1日に別途500ナールの報酬を受け取れる。

 

日で300ナール計算となる。10日毎に更新期間を設けたのは、今後の己の動きによって都合が変わる可能性があるため自由度が欲しかった。

 

歌う日数についての取り決めは白熱したが、体力の問題や新曲を作るために必要だと主張し、連日歌う事になっても新鮮味が薄れてしまうデメリットを説いた事で着陸した。

体力については嘘だし、客もそうだが己が飽きる可能性があるからなのだが。

 

おひねりだが12125ナールもあった。

 

そう、金貨を投げた客がいたのである。

 

マジかよ…異世界でもクレカの限度額までスパチャする文化があったらしい。

大体2、30人の客がいたように思うので銀貨率が高かったようだ。

まあ初披露のご祝儀かもしれないので毎回期待していいものでもないだろう。

 

ヤンガスもお小遣いを全部投げていた。返そうとしても笑顔のまま受け取ろうとしない。気のせいか迷宮での大暴れを見せているときより視線から感じる尊敬度が上がっている。

 

生活費がまるまる浮いた事も助かった。これで取れる手が増える。

 

モンスターカードを手に入れたい。

現状入手しておきたいのはみがわりのスキルと、低層から対策しておきたい毒耐性だ。

 

詠唱の妨害も検討したが、己のボーナス武器に付加されている。

パーティの戦闘スタイルから、別メンバー分までは急ぐ必要はないだろう。

毒耐性も非常に申し訳ないが己を優先させていただく事にする。

 

求めるカードは

 

アリ  1

イモムシ 2

コボルト  1

 

一般基準では多いだろうが己視点では現状の最低限だ。

 

後はある程度有能で信頼ができる仲買人を見つけたい。

 

 

 

商人ギルドに入った。

ヤンガスは自由時間とした。ドワーフを連れていって面倒を起こしたくない。昨日の分とは別だからと半ば無理やり小遣いを渡した。

 

 

さて、原作では持ち回りで声をかけてくるのだったかと足を止めていると早速声をかけられた。

 

 

「お初にお目にかかります。 私、仲買人のウォルターと申します。よろしければお話をお伺い致しましょう」

 

 

防具職人で、レベルも高い壮年の人間族だ。

モンスターカードを求めている旨を伝え商談室へと案内を受ける。

 

希望のカードを伝えたところ、手元のメモをチラ見した後にスラスラと直近の価格と平均額を説明してくれた。

余りにスムーズであったため、暗記しているが念の為の確認を一瞬行なったのだろう。優秀そうである。

 

特に値上がってもいないようだ。おおむねどのカードも5000ナール前後である。

人気のカードだが、数も多いためすぐに揃うだろうとのこと。

 

手持ちが2万ナールを超えたが、4枚とも希望すると再びカツカツになってしまう。

心の中でヤンガスに謝罪し、アリ、イモムシ、コボルトをそれぞれ1枚。

直近の落札額を限度に依頼を出した。変に上げずとも3枚の注文に加え初見の客相手である。掴んでおくためにも素早く用意してくれるのではないだろうか。

 

手数料はひとつにつき500ナール。原作と変わらないな。

3割引を使用し、逗留先を伝え握手をした。

最後に中古の服屋の場所を尋ねお別れする。

 

 

ヤンガスは宿屋にいるようだ。一度戻って合流する。

作成した装備を売って品揃えのチェック。ヤンガスの防具を更新したいところだが目を引くものはなかった。

 

服屋でヤンガスに一揃い選んでもらう。己も金をとって人前で歌うのだから衣装とまでいわずとも、もっと見れる服がほしい。

 

が、女性服は全くわからない。困った。ヤンガスにも聞いてみるが同じくわからない。仕方ないので店員に見立ててもらう。

己は服屋で店員と話すのが好きなタイプであった。余りに高いと思われる商品は弾くつもりだったが、真剣な目で己と商品を見比べて体に当て始めた。この分なら問題なさそうだ。

やはり美少女は強い。ヘタな仕事はできないというものだろう。

 

一揃いのつもりだったが随分と熱心に勧められてしまった。高いどころか、むしろ安めであったため悪さをしてるようでもなさそうだ。

購入することにした。容赦なく3割引は使わせてもらうが。

 

宿に戻り準備をしたら迷宮だ。

 

 

 

竜騎士Lv8/英雄Lv6/戦士Lv8/探索者Lv7

 

 

成長は悪くないのだが、やはり索敵に難がある。ヤンガスが案内できる階層で己の戦闘に問題ない限りは先に進む方が良さそうである。

切実にあの麗しい狼人族の第一奴隷様が欲しい。

 

前日の探索でボス部屋近くの小部屋にはブクマ出来ている。ボス部屋に早々に向かうと待機部屋には人が既にいた。

 

若い3人組のようだ。それぞれがまず己の顔を見て少し惚けたあと、ヤンガスに目を向けて怯えの色を見せた。

イカツいだけじゃなくて傷が凄いもんな。

そして己は美しい。もっと見てもいいのよ。

 

 

「そっちは2人なのか?」

 

立ち位置で何となくリーダーぽく感じていた若者から声をかけられる。

微笑みながら返事をすると少し早口になりながら話し始めた。

 

自分たちは3人でボスを狩ってる〜人気のボスだからこの時間は並ぶ事も多い〜金が貯まってきたから装備を用意して5層に行きたい〜4層のコボルトはおいしくないからな〜とか何とか。

 

微妙に目が合っていない。初々しい反応である。可愛くってごめん!

 

仲間の方は己の竜革装備を見て、ペラペラ喋ってる仲間を見て、やっちゃったなあって感じの表情を浮かべている。こちらに目を向けて謝るような仕草を見せた。気にしていないという視線で返す。

 

ボス部屋が開いた。残ったもう一人に小突かれながら話を切り上げ突入していく。仲が良さそうで良いことだ。

 

己らもブリーフィングを行いボス戦へ備え始めた。

 

 

 

扉が開く音がした。閉じていた目を開いてヤンガスを見る。

視線と頷きで返すヤンガス。

デュランダルを取り出した。

 

急に原作の場面を思い出す。

ミチオ君の前に並んでいた若い男がボス戦で散ってしまう場面。

何となく先ほどの若者と重なったからだろうか。

 

前回のパーティがボス戦で全滅していた場合、最初からボスがポップしているため注意が必要だったなと思考しながらボス部屋に踏み込む。

煙が出ない。

 

オーバーホエルミング

 

念じながら剣を構え素早く周囲に気を配る。

扉のすぐ横。ゆっくりと構えを取ろうとしているヤンガスのすぐ隣。

 

ラッシュの一撃でボスは消えた。モンスターカードがドロップ。そして装備品も。

 

あの位置に最初から現れていたなら己は気付くはず。恐らくはパーティがボス部屋に入るまで存在しない扱いなのかもしれない。そうでなければ部屋に入らず扉の外から攻撃できてしまうから得心がいく。

 

落ちているものをヤンガスが集めてくれた。こちらをそっと窺う素振りがある。動揺を見せるべきではない。

 

4層へ進んだ。大丈夫。己は気にしていない。

 

 

 

――早く倒して良いところを見せようと焦っていたり――

 

 

 

フー。

大丈夫。己は平静だ。

 

 

 

4層はコボルト。弱い魔物だが初戦はデュランダルを使う。

 

「ボス部屋方向へ。武器はデュランダルのままにする」

 

指示を出し案内についていく。

 

 

 

3体。コボルト2とミノ1。

 

オーバーホエルミングからスキルを使わずミノを切りつける。

倒せた。オーバーホエルミング中にコボルト2体も始末がついた。

 

フラガラッハに変更し経験値ボーナスへ。

 

 

次のエンカウントは2体。ミノとコボルト。おあつらえ向きだな。

 

オーバーホエルミングを使用しラッシュをミノへ。

一撃。効果中のまま今度はスキル無しでコボルトを切る。

倒せず。切り返す。今度は沈んだ。

 

3階層と変わらないなら数が多い分美味しい。

念の為3匹の時はオーバーホエルミングを使った方がいいだろうか。

 

いや、ラッシュの方が消費が全然少ない。接敵から二振りで2体倒すのは造作もない。不意のタイミングでオーバーホエルミングを使えるかどうかは問題ない。既に癖付いていた。

ならばリソースを温存しつつ最高率を。

 

 

 

己もヤンガスも体内時計の感覚にブレがある。夕食の時間に間に合うよう、知らず疲れで判断が鈍らないよう、感覚より気持ち早目に切り上げるようにしていた。今日も少し早すぎたようだ。

 

 

竜革の装備より上は確保するのが大変だろう。あの後コボルトのカードもドロップした。ヤンガスにスキルを付けてもらう。

これで機動力が上がる。

 

若者パーティの装備は特筆するものはなかった。売却する。

亭主に今夜は歌うと伝えた。

 

 

いくつかの歌が終わり喉が渇いた。視線をカウンターへ向けるとマスターと目が合った。頷いて、飲み物を用意してくれるようだ。気が利くなあ。

 

何だか前日より盛況な気がした酒場からはける。マスターに支払いをしようとすると笑って奢りだと言ってくれた。

 

 

おひねりは昨日よりむしろ増えている気がする。流石にもう金貨はないと思うのだが…

ヤンガスはまた小遣いを突っ込んでいた。

 

 

 

元はあまり酒が強い方ではなかったが、この美少女ボディはアルコールにまで強いらしい。食事の際もいつもより飲んだにもかかわらず全く酔いがなかった。

それでも床につけばすぐ寝られるだろう。美少女は美容の維持に必要な能力を持っている。

 

眠りにつく前にもう一度若者パーティの事を考えた。

完全に切り替えられている己に安心と寂しさを覚えながら目を閉じた。

 

 

 

 




異世界 4日目
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